一ヶ月ぶりの実家の自室である。隣家の同じ階からやかましい話し声などが聞こえる。楽しそうなのは結構だが、やたらに声が通る。かといって夏に窓を締め切る気にもならない。ふぅ、と妙齢の少女はため息をついてカーテンをからりと開ける。あちら側も煌々と部屋の灯りはついており、二階の部屋で男同士じゃれあっているのがカーテン越しでもわかる。
「ちょっと、あなたたち……!」
窓から少しだけ身を乗り出して責めるような声をあげるが、彼らの放つ雑音にかき消される。はぁ、と何度めかのため息をつく。直接文句を言いにいくべきかとも考えたが、下階にはそう響いていなかったし、今から着替えて向かうというのにも少々億劫だ。エリィは悪態をつくだけにとどめる。
「全く、回りへの迷惑とか考えたことが……」
ないでしょうね、と彼らの所業を思い返して自ら納得する。自分達のことしか考えてはいないだろう。
「本当、成長しないわね……」
呆れたままに重たいスーツを脱ぎ始める。ふと我に帰る。よくよく考えればカーテンも閉めずに着替えようとしてしまっていたのである。かぁ、と頬を染めるエリィ。
「やだ、私ったら……」
窓の向こうに思わず目をやるが、隣家の二階に変わった様子はない。彼らが回りの様子に目を配ることはないだろう。
「そんな風にしていると、損するってわからないのかしら……」
シャツと下着だけになったエリィは首もとから一つ一つ、ボタンをはずしていく。
「回りに注意してたら……」
彼らもいいものがみられたのに、なんて、突飛な思いが頭をよぎる。いつぞやのなめ回すような視線をカーテン越しに夢想してしまう。ボタンを最後まではずすと、上はピンクのレースのブラジャーのみとなる。
音を立てているわけでもない。彼らがこちらに気がつく要素はない。窓から入る風が僅かに銀髪を浮かす。
無意識に唇を舐めて濡らせば、隣家から自分を見るのに遮るものは、隣家のカーテンだけにも関わらず、窓の正面にたつようにしてしまう。
「やかましくしてるから……いいものを見逃してしまうのよ……」
背中に自ら手を回す。ぱちん、とホックを外す音がする。エリィ自信には大きな音に感じて指を止めるが、隣には聞こえるほどではない。するりと淡いピンクの下着を外せば、夏の夜の空気にエリィのたわわな乳房が晒される。恐る恐る、といった手つきで、自らの細指で下からゆっくりと持ち上げるようにする。桜色の先端が瑞々しく震える。が、その時。
「え?……」
一陣の風がふわりとエリィの髪を巻き上げる。それと同時に、エリィの視線の先にあったカーテンも大きく捲れる。談笑する男たちの一人と目があう。にやけ面だった男が、その瞬間目を見開きポカン、と、口を開ける。
刹那、エリィはカーテンを閉める。先程までやかましかった隣家のハイブラッズの談笑がまるで聞こえてこなくなる。代わりにエリィは自身の心音が何倍にも高鳴っているのを感じてしまっていた。