我が家の戸前で、曙を除く3人がそわそわしながら待つ。
「ご主人様〜、早く開けてくださ~い」
「早く挨拶がしたいよ」
「渚ちゃん、どんな可愛い子なのかなぁ」
「早く開けなさいよ、クソ提督!」
「分かっている。とにかく落ち着きなさい」
待ち遠しくて仕方ない皆の為、すぐに戸を開けた。
「渚、お袋、ただいまー!」
私の挨拶に反応し、家の中からドタドタ騒がしい足音が聞こえる。
「父ちゃん、おかえりー!」
まもなく娘の渚が玄関に来て、勢い良く私の胸へ飛び込んだ。
「ただいま、渚。いい子にしてたか?」
「うん、いい子してた! おばあちゃんの言うこと、ちゃんと聞いてるぞー!」
「そうか、偉いな」
「えへっ、父ちゃんくすぐったー!」
思わず渚の頭を撫でて褒めたくなる。
元気な渚の姿を見た4人とも驚愕していた。
「うっそーん……」
「この子、本当にクソ提督の娘?」
「そうだろうけど、どう見ても……」
「潮の小さな頃に、そっくり……」
しかし彼女達が驚くのも仕方ない。
何せ渚は、潮を7歳まで引き下げたような姿なのだから。
「ううむ、やはりな」
渚が潮にそっくりな事を、機関車に乗っている際に伝えるべきだったが、私ごとに惑わされ、口に出来なかった。
「父ちゃん、この人たち誰ー? お客さまー?」
「ははは、みんな私の大切な部下だ」
「部下かー! じゃー、なぎさの部下だなー。よーしっ!」
渚は私から離れ、外にいる4人の前へトテトテ走る。
目の前に立つキリッとした表情の渚を見て、4人が平常心を取り戻した。
「初めまして~。ご主人の一番のお気に入り、漣でございまーす☆」
「さざなみかー、よろしくー!」
「よろしくなのねん、ハイタッチ~!」
「はいたっちー!」
漣は、跳躍する渚に合わせて優しく両手の平を叩く。
この2人の相性は中々に良い。
次は、朧の前へ。
「君が渚なんだ」
「うん!」
「アタシは朧。お手柔らかに頼むね」
朧が渚の両手をしっかり握ると、その場でぐるぐる回って喜ばせた。
「わーい、まかせろー!」
若干目を回しながらも渚は、次にしかめっ面をしている曙の正面へ。
「じー……」
「何よ?」
「おねーさん、カッコイイー!」
「はあっ!? ふ、ふんっ、当然じゃないの!」
キラキラと目を輝かせる渚に褒められ、曙は満更でもないようだ。
「なぎさは渚だよ。よろしくねー!」
「よろしく、あたしは曙よ。よーく覚えておきなさい?」
「うん!」
最後に潮の前へ立ち、不思議そうに首を傾げる。
「うーん……」
「あっ、渚ちゃん、どうしたの?」
「うん! おねーさん、なんか好きー!」
「わっ――」
渚はいきなり潮の下腹部に抱き着く。
「えへー、お腹フカフカ落ち着くー」
「えへへ……潮です。よろしくね」
潮は優しい笑顔で渚の頭を撫でる。
「わーい、よろしくー!」
その光景を見た私の目頭がやたらと熱くなるが、指で眉間を摘んで抑えた。
「おおう……まるで姉妹みたいにゃあ」
「本当だね。なんだかホッコリするよ」
「ていうかクソ提督、なんで潮に似てること黙って……ちょっと、大丈夫?」
困惑する曙を安心させる為にも私はすぐに眉間から指を離した。
「ああ、問題ない。それはだな……お前達を驚かす為だ」
そんなことは考えていないが、事実を話す勇気がない。
「ふーん、それなら別に構わないわ。驚かすんじゃないわよ、クソ提督のくせに」
「はは、すまなかったな」
「あんた、やぁっと帰ってきたんか」
遅れて来たお袋が、私の顔を見て安堵する。
「ああ、帰ったよ。やっぱり家が一番落ち着くなあ」
「ほうじゃろうの、ところで後ろの可愛ゆお客さん達は、どがぁな人ね?」
「ああ、私の大切な部下でさ。ちぃとばかし着いて来てたんだ」
「ほうかほうか、それならしゃぁないの。ちょうど、えっとの昼御飯を用意しとったし、お隣さんから山ほど食材を貰ったところじゃ」
「ほうか、それならえかった。お袋、4人を泊められるか?」
「ああ、構わんよ。寧ろ大歓迎じゃ」
これで4人の飯の種は大丈夫だし、お袋が歓迎してくれるなら寝床も空いている部屋を使えば問題ない。
「あんた、はよぉあの子達の紹介をして欲しぃんじゃけど」
「ああ、すぐ紹介するよ」
まずは私の側で方言を聞いて固まっている曙から、簡単に紹介をさせよう。
「曙、お袋に挨拶をしなさい」
「はっ……ふんっ、言われなくても分かってるわよ!」
「がはは、元気な子だね」
お袋はニッコリとした笑顔を曙に向ける。
それに対して曙は、私には絶対にしないであろう礼儀正しい会釈をした。
「はい、曙と言います……。いつも、この人がお世話になってます」
「おいおい、私が世話をしてる側だろう」
「うるさいわね、調子狂うから黙っててよ!」
「ほうかっ、ぼちぼちしんさいね」
「えっ、ぼちぼち……?」
やはり曙は、方言に戸惑っている。
「ゆっくりしていきなさい、だ」
「あっ、そう言う……って、あんたに言われなくても、すぐに分かったから!」
「ははは。お袋、この子達にはなるべく方言なしで頼むよ」
過去にお袋は親父と東京に住んでいたし、それなりに標準語も話せる筈だ。
「がはは、仕方ないねえ」
「わざわざ、すみません」
「いいんだよ。じゃあ他の子も連れてきておくれ」
「ええ、連れてきます」
曙は、家の外で渚と楽しそうに遊んでいる3人の元へ駆け付けると、すぐに皆を玄関先へ連れて来てくれた。
「お母様、連れて来ました」
「ありがとね――なんとっ!」
老いて目が悪くなったお袋は、潮の姿を近くで見て大変驚く。
「あんたぁ……淑江ちゃんに似とるねぇ」
「えっ、淑江さん?」
潮は疑問符を浮かべながら首を傾げる。
「ああ、いきなりすまないね。この子の奥さんだった人さ」
「あっ、提督の奥さんも私に似て……そ、そうだったんですね!」
潮が顔を紅く染め、やたらと照れているではないか。
「そっかぁ~。ご主人様は奥さんに逃げられたから、潮ちゃんでがま――モガモガ!」
「漣、ちょっとこっちに来なさい!」
私は、漣の口を急いで塞ぎ黙らせた。
その様子を朧と潮がポカーンと見ていたが、気にも留めず家裏へ移動する。
「――ぷはっ、ご主人様のランボーもの~」
「漣、頼む。実家にいる間だけでも潮との一件は口にしないで欲しい……」
漣は、意地悪な笑顔を私に向ける。
「ええ、そんなのつまんないですわよ~」
「頼むっ……この通りだ!」
私は精一杯、漣に対して頭を下げた。
「うーん、本当なら土下座して欲しいけどぉ~、渚ちゃんに免じて許そうではあーりませんかっ☆」
「本当にすまない……」
「その代わり今晩……漣とたーっぷり、お相手してくださいね?」
漣は艶かしく唇を指で撫で、私の心を惑わそうとする。
「そんなっ、ここは実家だし、だいたい渚もいるのだぞ!」
「じゃあ約束はナシの方向で~」
「ぐうっ……分かった。約束する」
「えへへっ、そんな優しいご主人様がだーい好き! 今夜はいっぱい、サービスしてあげる〜☆」
漣は艶かしい表情から笑顔に戻り、皆の元へ駆け戻る。
残った私も皆に怪しまれないよう、何食わぬ顔で戻ったのだ。
それから曙を除く3人が、お袋に対して簡単な自己紹介を済ませた。
対してお袋の「いま昼飯をちゃぶ台に並べとるから、これ以上冷めない内に上がって食べな」という言葉で4人とも喜んで家へ上がり、私達家族の後ろを着いて居間へ来た。
「わ~おっ、美味しそうな料理ですね~」
「本当だね。お腹が空いて堪らないよ」
「あたしも、歩き疲れてもうペコペコだわ」
「うんっ、早く食べたいなあ」
4人とも昼飯を食べていないので腹が減るのは仕方ない。
私も、その1人であるし。
お袋が新たに4人分の取皿と箸を居間へ持ってきて座ると全員が手を合わせ、一斉に行儀の良い「頂きます」の声で、1年ぶりに実家で食べる昼食が始まる。
「おおぉ~、この里芋の煮っころがしテラウマス!」
「こっちの昆布巻も甘くて美味しいね」
漣と朧は、お袋の料理を気にいったようだ。
「もっと食べな、まだまだあるからね!」
「は~い!」
「遠慮せず頂きます」
「うまうま! ねー、うしおー?」
渚は嬉しそうに、潮へ同意を求める。
「うん、美味しいねっ。こんなに美味しいご飯を毎日食べられるなんて、渚ちゃんが羨ましいよ」
「えへへー」
「ところであんた、昼から行くんね?」
「ああ、渚とこの子達も連れて行ってくるよ」
「そうね、それがええよ」
お袋は安らかな笑顔で、4人が幸せそうに食べている姿を眺めている。
「ちょっと、行くって何処に?」
曙が箸を休め、不思議そうに私の顔を横目で見た。
「ああ、帰ってきた挨拶さ」
「ふーん……そう。本当にあたし達も着いてっていいわけ?」
「勿論だ。是非とも紹介したいからな」
「仕方ないわね。あんまり乗り気じゃないけど、たまには付き合ってあげる」
いつもより優しい曙の様子から、誰に挨拶をしにいくのか察しているのかもしれない。
「ありがとな」
「別に。お礼される筋合いなんてないし」
曙は行儀良く、且つ幸せそうな表情で、再び箸を働かせた。
「あの、提督。挨拶とは誰にするのでしょうか?」
「うむ、私の大切な人だ」
「そうなのですね、どんな人なのか楽しみですっ」
何も疑わず楽しみにしている潮に、私の良心が痛む。
「大切な人……ロマンチストだね、提督は」
朧がなんとも言えない表情で私の顔を見た。
「がはは、こいつは色々と罪作りな男じゃけんねえ」
「お袋、茶化さんでくれよ。恥ずかしいだろ」
「でも父ちゃんはカッコイイぞー!」
渚の嬉しい一言で私の心は洗われ、お礼に頭を撫でてしまう。
「わははっ、ありがとな」
「うん、父ちゃん大好きー!」
「お母様っ、おかわりくださ~い!」
「ええよ、どんどん食べんさい!」
どうやら漣が一番お袋の手料理に没頭していたらしく、私の話など聞いてもいない。
「はは、漣は実に食いしん坊だな」
「はぐはぐっ――だって、ウマウマですもの~」
「あまり急ぎすぎて、喉に詰まらせるなよ?」
「はいっ、ご主人様~!」
こうして元気に食べているだけならば、唯の可愛い少女で済むのだが。
本当にいろんな意味で漣は恐ろしい子である。
楽しい昼食が終わると私は、桶と柄杓、お袋が用意してくれた菊の花束、大きな風呂敷包で、線香や蝋燭に鋏、その他諸々の道具と、綺麗な布でつつんだ餡子がギッシリ詰まっているよもぎ饅頭を、ひとまとめにして包んだ。
「提督、花束はあたしが持つわ」
「アタシは桶と柄杓を」
「ああ、頼む」
持っていく道具を見て戸惑う漣と潮の横で、曙と朧は積極的に私を手伝ってくれた。
「あの、ご主人様?」
「提督……潮は風呂敷包みをお持ちします」
「すまないな」
潮も誰に挨拶をするのか気付き、悲しい顔をしながらも風呂敷包みを持ってくれた。
おかげで私の手持ちは箒と塵取りだけになり、とても楽である。
気付けば漣が一番落ち込んでいたので、彼女の元気を付ける為にも渚の世話を頼む事に決めた。
「漣、渚の手を繋いでくれ」
「あっ……はい。ご主人様」
「さざなみ、よろしくー!」
天真爛漫な渚から先に手を繋がれた漣に明るい笑顔が戻り、潮も横目でそんな2人を見て微笑む。
「うんっ、よろしくなのだ~☆」
「なのだー!」
「あんた、ぼちぼちしてきんさいね」
お袋は、ひたすら優しい顔で私達を見守ってくれている。
「ああ、行ってくるよ。皆、今から出発するが……大切な人の為、明るい笑顔を絶やさないで欲しい」
「はいっ、アタシもそっちの方が落ち着きます」
「あんたこそ、辛気臭い顔したら許さないから」
「漣、元気が取り柄の女の子でありま〜す☆」
「潮も、せいいっぱいに笑いますっ」
4人の明るい笑顔が、私の心を癒してくれる。
「父ちゃん、みんな、早く行こー!」
「ああ、行こうか」
漣を引っ張る渚に着いて、私達は大切な人の元へ向かう。
実家から更に山を登って20分経てば、大切な人が安らかに眠っている元に辿り着いた。
「さあ、ここだぞ」
「ほんと、近かったのに遠いのね……」
「うん。知ってはいたけど、実際に見るとね……」
「やっぱり辛く……なってくるよ」
「ご主人様、漣は悪い子です……謝っただけでは足りないぐらい」
たくさんの墓石に混じって、私の大切な人——淑江が安らかに眠る正面の墓石を見た4人とも、すっかり気落ちしている。
「みんな、どうしたのー?」
気落ちした4人を見た渚も不安がっているので、なんとか元気を取り戻さなければ。
「皆、約束通り笑ってくれ。淑江はわいわいと楽しく騒ぐ様子を見守るのが好きなのだからな」
「そうよ、あんた達。このクソ提督が不謹慎な思いするぐらい、バカみたいにゲラゲラ笑えばいいのよ!」
曙がすぐに落ち込むのを止め、無理のある笑顔を3人に向けた。
そんな曙の顔が、他の3人に笑顔を与える。
「あははっ、そうだね。曙の言う通りだ。皆で楽しく語り合いながらお墓を掃除しようよ」
「えへへっ……うん! 漣ちゃんも、たくさん笑お!」
中でも一番落ち込んでいる漣の両手を、潮は涙を溜めながらも懸命に笑い、がっしりと繋いだ。
「潮ちゃん……。うんっ、楽しく笑おうね~!」
「えへへっ! 父ちゃん、早くせんこーたこー!」
渚の不安もすっかりと吹き飛び、線香の束を両手に持っては、わいわいはしゃぎ始める。
「待て、渚。まずは墓を綺麗にしてからだぞ」
「はーい!」
「提督、淑江さんのお墓に水を撒くね?」
「曙、頼む」
行く途中に汲み上げた桶に入っている水を、曙は丁寧に墓石へ撒いた。
「提督、潮が掃きます」
「すまない潮、頼むぞ」
その間に潮が地面を掃いて綺麗にしてくれる。
「クソ提督、勝手に整えるわよ?」
「ああ、お願いする」
更に曙が菊の茎を丁寧に整えてくれるので、非常に助かった。
「ご主人様、漣は何をすればよろしいのでしょうか?」
漣が申し訳なさそうに手持ち無沙していたので、彼女の為にも一番の仕事を与えなければ。
「ああ、蝋燭とマッチを用意してくれ。すぐに出番が来るぞ」
「はいっ!」
おかげで漣は元気になったが、私にはやる事が無かった。
「渚、一緒に山の麓を眺めるか?」
「うんっ、かたぐるましてー!」
「ああ、いいぞ」
頑張っている4人には悪いと思いつつ、私は渚を肩車し、淑江の墓石から一望できる山の麓を共に眺めた。
麓には綺麗な川や生い茂って少し雪の被った森が延々と続き、そこから少し離れた位置に建つ民家の群れに混じって、私の実家も見渡せるのだ。
「わあーっ、すっごいきれー!」
「本当にな。淑江もこの光景を見て、喜んでいるといいのだが」
「ご主人様、奥様はきっと喜んでます!」
待機していた漣も満面の笑顔で、私達と一緒に眺めていた。
「ああ、そうだな」
「たのしーぞー!」
「本当に……楽しいにゃ~!」
「クソ提督、漣! こっちは終わったんだから、さっさと線香を焚きなさいよ!」
曙の怒鳴り声を聞いては、私達は戻らざるを得ない。
「漣、一緒に線香を焚こうか」
「はいっ、ご主人様!」
「こらー! なぎさも一緒だぞー!」
「ああ、分かっているさ」
「渚ちゃん落ち着いて〜」
漣は、私と協力して怒る渚を宥め、元の場所に戻っては蝋燭に火を付ける。
それから渚に気を付けさせながら線香を焚かせ、皆へ均等に手渡してくれた。
「おっと、まずは淑江の大好物をあげないと怒ってしまうな。漣、線香を頼む」
「はい、ご主人様っ」
綺麗に菊の花束が飾られた墓石の真ん中へ、綺麗な布で包むよもぎ饅頭を風呂敷包みから取り出してはそっと置き、漣に預けた線香を頂いた。
「皆、淑江に伝えたい事を言いながら線香を置いて欲しい」
「おー、まかせとけー! 母ちゃん好きだぞー!」
渚は無邪気にはしゃぎながら。
「ふんっ、あんたに言われなくても……。淑江さん、こいつは皆を困らすクソ提督だし、誰よりも甘っちょろい大バカ野郎だけど……嫌いじゃないわ」
曙は優しい声で私を罵倒しながら。
「淑江さん、懐が大きくて優しい提督に出会えてアタシは幸せです」
朧は幸せを噛み締めながら。
「奥様、本当にごめんなさい! ご主人様を困らせる漣を、どうかお許しください!」
漣は何故か謝りながら。
「淑江さん、潮はあなたの代わりにはなれませんが、何があっても提督を、絶対にお守りします!」
潮はしっかりした顔で何か重要な決意をしながら。
それぞれ伝えたいを淑江に伝え、順番に線香を立ててくれた。
最後に私は黙って線香を立ててから目を瞑り、淑江を想いながら合掌する。
渚も第七駆逐隊の4人も、淑江を思って合掌してくれているのだろうか。
「淑江、私は渚や艦娘達に慕われて幸せだ。そして、そんな有限な命を懸けてまで海の治安を守る艦娘達を、誰ひとり失わないと心から誓うよ」
いつも渚と一緒に墓参りする時は、1年目を除けば泣く事などなかったのに、今回ばかりは涙腺が緩む。
「クソ提督、泣いたらあんたは一生クソ提督だから」
「提督、笑顔でいなきゃ駄目だよ」
「そうですよ、ご主人様!」
「提督、潮も泣きません。だって淑江さんに提督をお守りすると、約束したのですから!」
皆の言う通り、私は泣いている場合ではない。
「ああ、分かっている」
「父ちゃん、がんばれよー!」
「もちろん頑張るとも!」
私が朗らかに笑うと、5人とも嬉しそうに笑い返してくれる。
そう、私も心から笑って淑江を見送らなければ、渚や艦娘達の笑顔を守る事など到底出来ない。
「わーっはっはっはっ!」
だから私は悲しみと涙をのみ、淑江と皆の前で、馬鹿みたいに腹の底からひたすら笑ったのだ。
○
雷と1日だけの関係を持った翌日、私は本日の秘書艦である利根型2番艦航空巡洋艦の筑摩と仕事をしていた。
「ううっ……姉さん、帰って来て」
だが筑摩は、資源輸送任務の旗艦として赴いた利根と1日半会えないだけで、やたらと狼狽するのだ。
時刻はもうすぐ午後10時だが、午前中から2時間おきに、切ない表情で窓の外を眺めながら胸に手を当てて独り言を呟くのだから、よほど利根を心配しているのだろう。
「筑摩、もう利根の心配はよしなさい。はははっ、僚艦も練度が高いし無事に帰ってくるさ」
「提督、無責任な事を言わないで」
私の笑い声が筑摩の逆鱗に触れたのか、一瞬だけ声が低くなる。
「す、すまぬ」
「あっ、いいえ……私こそ失礼な口を聞いてすみません」
「ううむ……。では、どうすれば心配せずに済むのだ?」
「簡単です。今すぐ遠征艦隊に帰還命令を出せばいいのっ♪」
「無茶を言うな!」
そんな事をすれば燃料、弾薬、時間とあらゆるものが無駄になり、我が鎮守府の損失にしかならない。
「それでは私ひとりだけでも遠征艦隊に合流して——」
「却下だ。筑摩ひとりで危険な真似はさせられん」
「では……私はどうすればいいの!?」
泣いてすがられても、私にはどうにも出来ない。
「ううむ……。何か他に寂しさを紛らわす道具などはないのか?」
「ぐすっ……姉さんの人形でしたら毎日の様に、大事に胸元へしまっています」
「お、おい!」
筑摩は胸元のリボンをスルスルと外して胸元を開け、大きな谷間に挟んであった小さな利根の縫いぐるみ(略して利根ぐるみ)を取り出し、私に見せ付けた。
「この可愛いお人形から、姉さんがいつも見守ってるの……」
「分かった! 分かったからすぐに胸元を閉めなさい!」
あまりにも刺激が強いし、無防備すぎる。
「提督、お願いがあります。少しだけ私と利根姉さんの会話に付き合ってください」
「ああ、付き合うから早く服を直して——」
『これ提督っ、吾輩の妹を悲しませるとは、どういう了見なのじゃ!』
筑摩は服も直さず利根ぐるみを私の目の前に突き出し、利根の声真似で腹話術を始めた。
くぐもってはいるが恐ろしい程に似ており、まるで本人の声である。
「なんと、会話とはこの人形遊びの事なのか?」
「ええと、まあ人形遊びと言えばそうですね……」
筑摩の顔が何故か紅く、妙に恥ずかしがっている。
『これはお仕置きが必要じゃな? 筑摩、予定通り下ろせ!』
「あっ、はい。姉さん」
「お、おい!」
混乱する私に筑摩は近付き、利根ぐるみを私の股間に押し付けながら、もう片方の手で器用にズボンとパンツを下ろし、単装砲を解放した。
「姉さん、提督の……大きいです」
『ほう……これは立派な男根じゃな。萎えとるのにデカいぞ』
「な、何をするのだ!」
『まあ落ち着け。ぬいぐるみですまぬが、吾輩が直々に勃たせてやる!』
「提督、失礼します」
筑摩は私の竿に利根ぐるみを押し付け、その上から手の平で包んでは擦り始める。
「おいっ——うおお!」
「姉さん、急激に膨らんで……」
『ほう、これで勃ちおるか。相当な変態じゃな』
利根ぐるみは地味に柔らかい素材だし、うまくカリ首に当たるから気持ちが良いのだ。
しかも見下ろすと、肌けた筑摩の胸元から柔らかな谷間が深々と見え、なおさら単装砲を膨らませる。
気付けばガチガチに勃起してしまう。
『まったく、んぅっ……いやらしい汁をこんなに垂らしおって。はぅっ……おかげで吾輩も、股間がびしょびしょだぞ』
「姉さん、あぅっ——私も、感じてますっ」
筑摩の顔は恍惚としており、空いた手で自らの股間を弄っては時々、演技に喘ぎ声を混ぜていた。
それでも彼女は利根を演じ続けるのだから、相当な演技派だ。
「筑摩、もう出るぞ!」
『なんじゃと……吾輩は利根じゃぞ! 吾輩としている時に、妹の名を口にするでない!』
「提督、姉さんの機嫌を損ねないで」
筑摩は怒りながら頬を膨らませ、利根ぐるみを握っている手を止めた。
「ぐうっ……利根、すまなかった」
『うむ、分かれば良いのじゃ。それでは褒美に絶頂を味合わせてやろう。筑摩、激しく擦れ!』
「ええ、姉さんっ」
私が素直に謝ると、筑摩は再び単装砲を擦り始めた。
『はぁっ、はぅ——クチュクチュとやらしい水音を立ておって……んぅっ、だらしない巨根じゃな!』
「すまない、利根があまりにも上手いものだからな」
『わはははっ……んぁっ——そ、そうか! ではこのまま、イクがよいぞ!』
「姉さん、私もイキそうよ!」
『ああ、筑摩も一緒にイけ。3人一緒にイクのだ!』
筑摩は利根ぐるみを尋常ではない速さで動かし、私の射精感を一気に促す。
同時に彼女も自らの股間を弄り、今にも絶頂しそうに淫らな声を上げていた。
「あんっ、駄目ぇっ、いっちゃいますぅっ!」
『吾輩もっ——らめぇっ!』
「もう駄目だ——出すぞおお!」
『うにゃああぁぁ!』
「うやああぁぁんっ!」
私が利根ぐるみに子種を大量に射精すると共に、筑摩も絶頂して全身を震わせながら潮を噴き出した。
そもそも今、筑摩と利根の声が被って聞こえたのは気のせいだろうか。
それにしてもこの人形遊びは、小さな利根から犯されているようで妙な興奮と罪悪感を覚え、何も考えたくなくなる。
『あぅっ……すごっ、本当に出しおったらしいな……んやぁ……』
それでも彼女は利根を演じ続けるのだから、もはや執念なのだろう。
「ぐうう、全然収まらない! 筑摩、おっぱいを失礼するぞ!」
「きゃあっ! 提督!?」
我を忘れて筑摩を怪我しないように床へ押し倒した私は、制服をずらして乳房を露わにさせ、ぐにぐにと揉んだり、吸ったり舐めたりした。
「やぁっ、すごいです……!」
「筑摩、ちくまあー!」
『筑摩、提督を落ち着かせろ! 抜けがけは許さんぞ!』
「うう……はい……」
「ちく——ぐわあっ!」
私が無我夢中になって筑摩のおっぱいを貪っていると、子種まみれになった利根ぐるみでゴチンと脳天を叩かれた。
『これーっ、勝手に妹を襲うでない! この不埒者め!』
「私はあのままでも良かったのに……」
そう呟くのなら、私を正気にさせないで欲しいものだ。
それにしても利根ぐるみの中身は金属の様に固く、やたらと脳天が痛かった。
「す、すまない……」
『まったく、お主は油断するとすぐこれだからな。とにかく、筑摩に手を出したいのなら、姉である吾輩に許可を得るのじゃな』
「許可を得るとは……?」
『簡単じゃ。筑摩、まず服を脱げ』
「はい……」
筑摩は利根ぐるみに言われた体で、顔中を紅潮させながら全裸になる。
「姉さん、恥ずかしくて死にそう……」
「おい筑摩、嫌ならば無理をするな——」
『さあ筑摩よ。次はいつも提督の使っているベッドで仰向けに寝転び、提督の為に股を開くのだ!』
「はい……姉さん」
利根ぐるみに言わせた振りをする筑摩はベッドに寝転んで股を開き、利根ぐるみを耳に当てながら、私が来るのを待っていた。
『提督よ、早くこちらへ来い。筑摩が寂しがっておるぞ?』
「姉さん、恥ずかしいからそんな意地悪言わないで……」
「ああ、今行くからな」
私は筑摩が誘っているのだと思い込む事にし、餌を求める狼の如く彼女の元へ移動した。
私が来ると同時に、筑摩は二本指で割れ目をぱっくりと開き、私を虜にしてくれる。
「筑摩、なんと綺麗な割れ目なのだ……」
『提督、筑摩はもう欲しくて堪らないらしいぞ。よしっ、もう吾輩の許可など必要ない。さあ、どうするのだ?』
「提督、じっくり見ないで……顔から火が出てしまいます」
筑摩は恥ずかしさのあまりか、うつ伏せになって顔を隠してしまう。
そのかわり、彼女の大きく柔らかそうな尻が目の前に突き出された。
『まさか、顔を隠す為にうつぶせたのか……。筑摩め、本当に恥ずかしがり屋じゃな』
「姉さん許して……。冷静な提督の顔を見ながらなんて、恥ずかしさのあまりに心臓が止まります」
「ううむ、ならば止めた方が——」
『提督よ。構わんからそのままの体勢で、その巨根を筑摩の陰部にねじ込んでやれ』
相変わらず筑摩は利根ぐるみを私の目の前に差し出してまで演技をするが、とにかく彼女の本心として受け入れた。
「筑摩、本当に挿れて良いのだな?」
「あの……はい。提督さえ……筑摩を嫌いでなければ」
それが筑摩の答えなら、私も遠慮なく彼女を求められる。
「筑摩、初めは痛いかもしれんが我慢するのだぞ?」
「ええ、大丈夫です……。早く私のここに、挿れてください」
筑摩は腹部から手を伸ばし、単装砲を挿れやすい様に割れ目を拡げた。
「ぐうっ、堪らん!」
「あうぅっ——やぁっ!」
すかさずカリ首を割れ目に押し当てると、筑摩の淫らな喘ぎ声が上がる。
「筑摩、挿れるぞ!」
「あっ——いやああぁぁん!」
ゆっくり単装砲を根元までねじ込むと、筑摩の悲痛な叫び声が耳に届く。
同時に彼女の割れ目から初めての証が流れ出し、私を更に興奮させる。
『おお、筑摩のエロい喘ぎ声が聞こえおるな。まったく、吾輩も提督の巨根を味わいたいぞ……』
しかしこれでも利根の演技を止めないとは、一体どういう精神状態なのだ。
「ひうぅっ、提督ぅ……」
「筑摩、しばらく動かないでいいぞ。お前が痛がる声を聞くと、私の心も痛む」
「はぅっ、うぅっ……。提督、ありがとうございます」
『全く、提督はとことん優しい男だな。もっと激しくしてやれば良いのに』
「すまないな。理性がある内は良心が痛んで、好き勝手には出来んよ」
だが、最後まで我慢は出来ないだろう。
「提督、私は構いません。お好きなように動いて……お願いです」
『ほれ、本人もこう言っとるぞ?』
「分かった、筑摩が演技をしている間もないぐらい激しく突いてやるぞ!」
『なぬ……演技じゃと? ああっ——わははっ、お主は面白いやつじゃなあ!』
「提督? 私は姉さんの演技なんてして——んやぁ!!」
私は筑摩の両腰を強く掴むと、彼女の言葉を遮るほど激しく腰を振った。
「うおお! 筑摩の膣内、熱くてとろけるぞお!」
「いやぁっ、提督っ、駄目ぇ——恥ずかしい!」
筑摩が羞恥しながら喘ぐ度に私の興奮も増し、腰振る速度を上げてしまう。
「ぐうっ……筑摩、そろそろ我慢の限界だ!」
「きゃあぁっ、提督ぅーっ!」
私は筑摩の背中に覆い被さるよう密着して、彼女の柔らかな全身を感じながら、子宮にカリ首をねじ込むように、尋常ではない速度で腰を振った。
「あぁっ、ダメっ、すごいっ——こんな感覚っ、初めてぇっ!」
「ぐううっ——筑摩! 子宮に私の子種をたっぷりっ、植え付けてやるぞお!」
「あふぅっ——はいっ、来てぇっ! 提督のぉっ、いっぱいくださっ——」
「出すぞおおお!!」
「んやああぁぁっ——あっ、あうぅんっ!」
私はとうとう耐えられず、筑摩の柔らかい大きな尻に腰を力強く密着させ、容赦なくどぷどぷと彼女の子宮へ子種を植え付けてしまった。
「んやぁっ、提督のぉっ、子宮が犯されてぇっ」
絶頂している筑摩の痙攣が私の体にも伝わり、更に興奮して射精を促される。
「はあっ、はあっ……。筑摩、最高だ……愛しているぞ」
私は筑摩に挿れたまま一緒に横になり、彼女を抱擁した。
「うふふっ……。提督の逞しい体、大好きよ」
「私も筑摩の柔らかな抱き心地が好きで堪らない」
「提督、私は姉さんと提督の2人から愛され、とても幸せです」
「ああ、そうだな」
こうしてくっ付いていると、私も幸せな気分である。
『はあ……やっと終わりおったか』
「なんと、まだ演技を続けるか……」
もう腹話術はしないだろうと思ったが、私が甘かった。
『おい、提督よ。吾輩が遠征から戻ったら相手をするのだぞ! 筑摩ばかりズルい!』
流石に疲れたろうし、そろそろ演技を止めさせよう。
「ちょっと姉さん、落ち着いて」
「筑摩、寂しいのは分かるが利根の演技はもう止めなさい」
「あの、提督? 先程も言ってましたが、いつ私が利根姉さんの演技をしたのでしょう?」
筑摩は不思議な顔を、私に向ける。
『わはははっ! 筑摩よ、提督は勘違いしておるのじゃ。そのぬいぐるみの形のせいじゃろうがな』
「もしかして、明石さんから試験用に借りている無線機のことですか?」
「なに、無線機……?」
『そういう事じゃ』
「そういう事でしたか、うふふっ!」
何故か筑摩が心底楽しそうに笑い始めた。
「何故笑うのだ、ちゃんと説明してくれ」
「提督、ごめんなさい。実はですね——」
筑摩の説明によれば、どうやらこの利根ぐるみ自体は彼女が寂しくないよう真心を込めて編んだ普通のぬいぐるみ、らしい。
しかし、その中身が未知の存在で、明石がビスマルクと互いの技術力を結集させ協力しては、趣味で作ったらしい超最新鋭無線機と小型拡声器という、実に近未来的な機器が入っていた。
それで私は恥ずかしながら、筑摩が演技をしていると思い違いをしてしまったのだ。
「凄まじい技術力だな……今度、明石に量産して貰わなければ勿体無い」
「提督、明石さんの話ですと、この無線機を作る為の貴重な金属が全く手に入らないそうで、量産は不可能だそうです」
「なんとっ……ううむ、ではそれを私に——」
「提督でも、絶対にあげません!」
筑摩は全力で嫌がるが、離ればなれになった際に利根の声が聞けなくなるのだから、それは仕方ない。
「うむ、ならば諦めよう……」
「提督、本当にすみません」
しかし利根のくぐもっている声や、筑摩と被った声を聞いても気付かなかった私は、なかなかの馬鹿者だと自分で思い、自己嫌悪する。
「いいんだ。それにしても大切なぬいぐるみを汚してしまい、こちらこそすまなかった」
「いえ、ぬいぐるみはまた作ればいいのです。それにぬいぐるみをエッチな事に使う事を考えたのは、利根姉さん自身ですもの」
筑摩は、くすくすと笑う。
『これ筑摩、それは黙っておく約束じゃったろう!』
「姉さんごめんなさい、でも面白くてっ」
『くうっ、そんな意地の悪い事を言うのなら、もう通信せぬぞ?』
「ああっ、姉さん許して! ごめんなさーい!」
筑摩は今にも泣きそうな声で謝っている。
それほど切られたくないのだろう。
『全く……困った妹じゃな。まあそこまで姉として頼られては、僚艦の皆と相談した甲斐はあったがな。だが、吾輩の声だけでは物足りぬとは解せんぞ』
「だって、姉さんが側にいないと落ち着かないんだもの……」
『だったら代わりに、提督の近くにおれば良かろう』
「それはできません。だって提督は潮さんの事を……」
『すまぬ、そうだったな。悲しいが仕方ないか』
どうも2人とも、私が潮を愛している事に気付いていたようだ。
それだけ私の行動原理は分かりやすいのだろうか。
「ですが、今日だけは私の夫です!」
「ぬおっ……」
筑摩は一度腰を引いて単装砲を抜くと、私の胸に顔を埋めるよう抱き着く。
「うふふっ、このままもう一度しましょっ♪」
「ああっ、今日は何度でも付き合おう!」
『筑摩ーっ、吾輩の分の子種を残しておくのだぞー! あと通信は切る! もう惚気など聞きたくもない!』
「はいっ、姉さん。お気を付けて!」
『ああっ!』
何はともあれ、2人が仲良く掛け合う声を聞いていると私も幸せな気分に浸れるので、それだけで充分だった。
利根が帰った時の為、色んな意味で覚悟しなければと私は少しぐったりしてしまったが、筑摩との熱愛によって存分に癒され、幸福一杯な1日を終える事が出来たので良しとしよう。