イリヤが死んだシーンで重要な一文が抜けてました。アホですみません。編集で訂正しておきました。死亡したけど心臓は破壊していない、ということでお願いします。
さて、聖杯戦争も残すところ後一人の敵となり、戦争も二週間目に入ったところですが。
「士郎はまたセイバーにいじめられるの?」
「人聞きの悪いことを言わないで下さい凛」
「言葉を変えてもやっていることは同じと言いたいのさ、師匠は」
「明までそのような」
俺達同盟は和気藹々としています。まあ衛宮と俺はまだ口を利かないんだけどね。って衛宮の奴ぼーっとしているな。何か……ああそうか。この辺りの朝セイバーの過去を夢に見るんだっけ。セイバーはセイバーで衛宮の過去を見るしな。
「セイバー。最近夢とか見たりした?」
「――え?」
「何言ってんのよアンタ」
「いや、夢とか見たのかなーって世間話だよ」
「…………夢、とは違うと思いますが、似ているものなら……」
「…………」
「そっか。それはマスターとサーヴァントにとって通過儀礼みたいなもんだよ。あまり気にしない方がいい」
「……そうですか」
過去を見たからといって何か変わる訳ではないしな。
§
「ふーむ」
今俺は衛宮邸の部屋で行動計画表を見ていた。今日は考えることが色々あるので一つずつ整理していこう。
この辺りになれば、セイバー、アーサー王の夢を見た衛宮がセイバーの望みを聞き出そうとするのだが……。
「そんな気配がないな……何かが影響しているのか?」
これが進まないとセイバーが自分の望みは間違っていると気づかない可能性があるが。
「っま、いいか。そうならなくても」
俺の行動計画表は基本的に自分の生存と聖杯の破壊を元に作ったものだ。衛宮の葛藤やセイバーの答えなんて解消されなくても構わない。セイバーが別の聖杯を求めるなら、それに付き合うのもいいかもしれない。
イリヤの心臓を残して殺した。心臓、つまり小聖杯を壊してしまうと、原作のように聖杯が顕現するかどうかわからなかったので残した。王様と言峰さんなら確保してくれるだろう。でも原作のセイバールートであった言峰戦、あの泥は出てこない、か、な? だってセイバーもアーチャーもキャスターも残っているのだ。確か六騎のサーヴァントが死なないと起動しないはず。ギルガメッシュを倒すと出るかねぇ?
俺はペンを鼻の下と唇に挟んでへこへこさせた。ふむぅ。さて次は……と。ペラリとノートをめくる。
うむ、そろそろアーチャーさんの警戒レベルが高くなって、彼の精神にアラートを鳴らすことだろう。詰問されそうになったら催眠をかけなくちゃな。
そして残りは同じ陣営のランサーだけになった訳だが、王様は動くのだろうか?
なんて考えていたら敵襲ですよ。衛宮邸に設置されている警鐘、鈴の音が響く。来たか! 一日早いが充分想定内だ。扉を開けると師匠も出てきた。
「外だ!」
叫んで皆に行動を促す。そして外に出る――と。
ガンガンガンガン!
豪雨じみた武器によって、視界が埋め尽くされた。武器が、降ってくる――。
「キャスター転移!」
一瞬で転移魔術を始動させ、その場を逃れる。最初に外に出たのが俺で良かった。俺以外の誰かだったらやられていただろう。
「え……? な、に……」
「お前は! アーチャー!!」
俺に続いて外に出てきたのは師匠とアーチャー、そしてセイバーだ。衛宮はまだ来ていない。セイバーによってアーチャーと呼ばれた奴――もう面倒だから真名で呼ぼう、ギルガメッシュ――は屋敷の塀に立ってこちらを見下ろしていた。そこにいたのは月をバックにした黄金の姿。金色の甲冑に身を包んだ倣岸不遜な男だった。
「アーチャー、ですって?」
師匠がセイバーの声に反応する。その間もギルガメッシュはセイバーだけを見つめている。
「セイバー、説明を! アーチャー、迎え撃ってくれ!」
ことここに至ってはアーチャーも宝具を使用せざるをえまい。一応不安なので「迎え撃つ」を催眠にしておいたが。
ギルガメッシュがセイバーに声をかけた俺を見た。クソッ見んなよ。人間扱いしていない目で見やがって。
「雑種。とく消えるがいい」
死の宣告がなされた。パチン、という指を鳴らした音で攻撃が始まった。アーチャー頼む! 突然空中に現れた無数の武器。それは散弾銃のように炸裂した。が、
「
ガンガンガガガガガ!!
家の中からも無数の武器が打ち出され、男が撃ち出した武器が撃墜される。
「……
ギルガメッシュは贋者に打ち落とされてたいそうご立腹の様子だ。良かった。アーチャーが助けてくれて。ギルガメッシュは怒りのままにまた武装を撃ち出した。だがそれも撃墜される。ギルガメッシュは持っている蔵の中から武器を投擲する。アーチャーは投影魔術で宝具の偽物を造って迎撃する。
「アーチャー、アンタ……」
師匠が呆然と呟く。アーチャーが宝具らしきものを使っているので驚いているのだろう。
「何故、貴方が現界しているのです。
セイバーの声に目を向けるギルガメッシュ。ようやく出てきた衛宮と、師匠は驚いた。
「何故も何も――聖杯は
雑種か。アーチャーとキャスターのことを言っているのだろう。
「ふざけたことを……!」
「騎士王よ。戦うつもりではあったが、興が削がれた。ここはみすぼらしすぎる」
言って、踵を返す。
「いずれ会おうぞセイバー。それまでにその雑種どもは始末しておけ、いいな」
塀の向こうに姿が消える。良かった。引いてくれたぞ。とりあえず襲撃が終わったことで、俺は安堵するのだった。
§
「セイバー、貴女さっきの奴と顔見知りなの?」
「………………」
セイバーは答えない。聞いてみるか。
「セイバー、知っていることを話してくれないか? さっきのあいつの正体を。アーチャーと呼んでいたが」
「……はい、私は彼を知っていました。ですが、あり得ないのです。サーヴァントは七人だけ。彼が召喚されることなど……」
「もしかして、セイバーが参加していたっていう前回の聖杯戦争のサーヴァントか?」
既に答えを知っているので誘導してみる。
「は、はい。その通りです。前回の聖杯戦争における最終日に、私と彼は戦いました。ですが、倒すことはかなわなかった。何故なら、私は」
「逆にあいつに負かされた。ちゃんと召喚された前回で貴女が勝てなかったのね?」
顔をうつむかせるセイバー。
「セイバーが――勝てなかっただって?」
衛宮は信じられないという風に頭を振る。
「じゃあ、あいつは今回呼ばれたんじゃなくて、前回からそのまま残ったサーヴァントってこと? そうじゃなければ辻褄が合わないわ」
「前回の戦いで生き残ったサーヴァントって訳か」
うーん、知っていることを確認するだけなのに手間だなあ。
「聖杯を手に入れれば、現界することが可能なのか……」
衛宮が感心したように言う。
「それで? あいつの正体、真名は?」
俺は話をちゃっちゃか進めたいので手早く聞く。
「それが……わからないのです。前回も、私は彼の正体が掴めなかった。シンボルとなる宝具が存在しないのです」
「あいつ、沢山武器をもってたな。しかもどれも本物っぽかった」
鑑定眼を持つ衛宮が保証する。
「そんな馬鹿なことがある!? あんなデタラメな数の宝具を持っている英雄なんていないわ」
逆に湯水のように宝具を持っているので、特定できなかった、とセイバーは語る。
「士郎、明。アンタ達は何かないの?」
「お手上げだ」
「一つ思いついたことが……あれって全部の宝具が本物で、なんて言うのかな、原典なんじゃないか?」
「原典?」
「そう、つまり、大昔の、全ての宝具の原典を所有している奴だよ。例えば、メソポタミアの英雄ギルガメッシュとか、彼の逸話とかそれっぽくないか? 世界全ての財を所有していたっていう」
「宝具の、原典……なるほど、確かに」
セイバーがコクコクと頷く。
「ギルガメッシュか……確かにそういう逸話があったわね。全ての財を所有しているから、宝具の原典となった武器を所有している……か」
いやあ、実に簡素なギルバレである。え? 情緒? んなもんないよ。
「次に、あいつの目的だけど……」
俺はちらっとセイバーを見る。
「何だかあいつ、セイバーを特別視していたみたいね。そこんとこどうなのよ」
師匠、面白がらないでくれ。にやにやするな。
「彼が考えていることなどわかりません。ですが前回の戦いで求婚されました。無論、斬って捨てましたが」
「うわぁ……敵同士で求婚とか本気かよ」
「私にも良くわかりません」
「セイバーはそうでも、あいつはかなりお熱だったみたいだけど。セイバーも頑固さでは負けてないし、ああいう奴のがお似合いだったりして」
師匠、こっちみんな。
「ですから、私はそのようなことに関心がないのです」
「へー。だってさ明。セイバーは男なんて関心がないんだって。安心した?」
「安心はしないかな。あいつ間違いなく強いサーヴァントだし、セイバーをとられたくない俺にとっちゃでっかい障害だよ」
「凛! 今のは明には関係ありません。明も、そのようなことは言わないで下さい」
むすっとした顔でセイバー。
「はいはい」
心の底から面白がってんな。まあ対応した俺も俺だけど。
「……さて、夜もふけたことだし、寝るとしますかね」
「そうね」
俺達の味方である方のアーチャー、彼の宝具らしきことには触れなかった。あれは師匠とアーチャーの問題だ。二人になんとかしてもらおう。……ちなみに寝る、とは言ってもセックスはします。これで宝具一回分溜まる。
§
「セイバー、実は一つお願いがあるんだ」
「お願い……ですか?」
ベッドの中、まどろみながら話をする。事後とジゴロって似てるよね。
「うん……セイバーの善意にすがるようで申し訳ないんだけど……俺のお願いを聞いて欲しいんだ」
「どのような、ことなのでしょう」
「うん、セイバーのね、一日を貸して欲しい」
「一日を、貸す。ですか」
「明日一日を俺に預けてくれないか? 簡単に言うと、俺と隣町に出かけて欲しい」
恥ずかしいなぁ。デートの申し込みってやつは。
「出かけると言われても」
「衛宮のことなら心配ないよ。キャスターをつけておいて、いざとなったら転移で合流するから。だからお願いだ、俺と一緒に行動してくれないか?」
「マスターを捜すのですか? しかし私と貴方で出かけるというのは……」
「違う、二人で遊びに行くんだ」
「は――?」
呆然とするセイバー。そりゃそうだよなぁ。今まで戦いしか知らなかったのに急にこんなこと言われたら。
「えっと、その、明……遊びに行く、とはどういう意味ですか? 明と凛ではなく、その」
「俺と、セイバーの二人っきりで出かけたいんだ」
「一体どういうことですか」
は、話が通じない。
「ようするに、俺とデートしてくれっていう誘いなんだよ」
「ますますわかりません。具体的に言って下さい」
きょ、きょうてきだぁ。
「だからね、デートってのは、女の子と遊びに行くってことなんだよ」
「はい?」
ピタリ、と動きを止めるセイバー。
「女の子……? 私のことでしょうか?」
「もちろんそうだよ」
「言葉の意味は理解しましたが、意図がわかりません。何故そんなことを」
「…………はぁ。ようするにだねぇ、逢い引きするってこと。好きな女の子と一緒に遊びたいっていう俺の願望なんだよ」
「っ――!」
「ということでセイバー。俺とデートしよう。一緒に、遊ぼう」
「良く、わかりません。明になんの意味があるのか……」
「大好きな女の子と一緒に遊んで楽しい気持ちになりたいんだ。一緒に、行ってくれないか?」
「そ、そのようなことを言われても……あ……」
抱きしめた。
「セイバーと一緒なら俺が楽しい。衛宮のガードはキャスターに任せて、俺と一緒に来てくれ」
「……………………」
わずかに赤面するセイバー。やれやれ、前途多難である。
後書き
次回、ストーリー的に全く無意味なデート。