※この作品はR-18です。

IS学園の中心で「エロス」を叫ぶ   作:葉川柚介

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簪 空白の一ヶ月編

「準備は全部したつもりです。もしそれでも足りないものがあったらいつでも連絡してください。可能な限り迅速に届けます。……じゃあ、あとのことを、真宏くんのことを、頼みます。簪ちゃん」

「うん。……がんばる」

 

 ほとんどの人が存在を知らない、とある湖畔。

 静かな水面と周囲をぐるりと囲む山脈が外界の視線を遮っている盆地のただ中に、そこはあった。

 湖を望む位置にコテージというには大きく、屋敷と呼ぶには手頃なサイズの別荘のような建物が一軒建っている以外は、人の手が入った形跡がほとんどない自然の中。

 そこで今、二人の少女が言葉を交わしている。

 一人は、ワカ。蔵王重工のISテストパイロットにして、先のザ・ワンによる地球侵攻時は軌道爆撃により地上を守った英雄の一人であり、同時に爆撃先近隣住民に「蔵王にだけは逆らわないようにしよう」という恐怖を植え付けた張本人。

 そしてもう一人は、簪。こちらもまた英雄の一人として現在世間をにぎわせている人物で、実際にザ・ワンの迎撃に向かい、見事強敵を撃破してのけたIS操縦者だ。

 

 だが今、この二人はそういった名声よりも大切なもののため、ここにいる。

 ワカの背後にはローターを止めず周囲に風を巻き起こしている離陸寸前のヘリが1機。あれこれと多忙に多忙を極めるワカが、それでも時間を作ってここへ来た。それだけ大切なものがここには、あの別荘の中にはある。というか、いる。

 

 

 風で乱れそうになる髪を押え、遠ざかるヘリを見送る簪と、窓から簪を、別荘を見守り続けるワカの心は一つ。なんとしても助けなければならない、一人の男の姿を思い描いている。

 

 

◇◆◇

 

 

「……真宏、具合はどう?」

「うぐぅ……」

「そう、よかった」

 

 コテージの中にある寝室。大きなベッドに横たえられた男、神上真宏に簪は声をかけた。

 帰ってきた返事は元気なんだかヤバいんだかよくわからないが、少なくともいつもの真宏の反応ではない。こいつは本来こういう時、もっとテンション高くはっちゃけるやつだ。

 

 真宏がそうできない理由を、簪は知っている。そうならざるを得なかった理由もまた同様に。

 

 

 ロマン魂。

 真宏のIS、強羅のワンオフ・アビリティ。真宏の心をそのまま力に変える能力で、無限に等しいエネルギーの供給と際限ないスペックの上昇を可能とする無茶苦茶な能力で、だからこそ代償もまた大きい。

 通常時の使用程度ならば問題になることはないが、ザ・ワンとの最終決戦において誰より長く戦い続けた真宏は、ロマン魂の過度の使用によって精神が磨滅しかけた状態にある。

 

 決戦後に助け出された時からずっとこの調子で、時折意識を取り戻す以外はまともな反応を返すこともままならない状態になっていた。

 この状態が続くことは絶対に避けなければならない。ただでさえ心が朽ち果てかけている今、周囲からの刺激に対する反応も薄く、このままではさらに反応しなくなり、最後には廃人になる。そんな診断が下されていた。

 そんな真宏を救うには、とにかく心に刺激を与え、人としての心を取り戻させるしかない。

 

 そのため、この場所が用意された。

 蔵王重工の提供による、外界と遮断された自然あふれる保養地。ゆっくりと静養し心を癒すにはこの上ない環境だろう。そんな真宏の療養に当たっての看護役を、簪は進んで務めた。

 ザ・ワンとの戦いで傷つき、しかし雄々しく戦った真宏。その戦いを手伝い、その身を守れたとはお世辞にも言えない。だからこそ、今度は真宏を助けたい。

 顔色が悪く、いつも表情豊かで大好きなその顔に無表情を張りつかせている真宏の手を取り、頬を擦りつけて無事の回復を祈りながら、簪はそう決意する。必ず、助けてみせる。

 この場所を提供してくれたワカも同じことを思っている。その思いまで託されたのだ。必ず真宏を救わなければ。

 

 

「……ゆっくりしててね、真宏。少しこの家の中を見てくるから」

「あー……ぃって、らっしゃ……ぃ」

「……っ。うん、ありがとう」

 

 心が磨滅するということは何もする気力が起きないということ。言葉を発するだけでも億劫だろうに、真宏は簪に言葉をくれた。決意は強く、心はもっと強く。真宏からもらったこの力、必ず返してみせると誓った。

 

 

◇◆◇

 

 

「すごい、本当になんでもある……」

 

 簪と真宏がしばらく暮らすことになるこの家。まずは何があるのかを把握するべく一周りしてみた感想がこれだった。

 本当に何でもあり、その一つ一つの質が高い。

 太陽の光が差し込む大きな窓と高い天井。広いリビングと使いやすそうなダイニング。シンクはピカピカで、巨大な冷蔵庫の中には肉も野菜も魚も新鮮なものが山ほどあったし、コーラやらポテチやらも完備という至れり尽くせりっぷり。

 書斎にはそれっぽい難しそうな本が飾りのように片隅に置かれている他は、マンガやらラノベやらDVDやらCDやらゲームやらが唸るほど。

 ためしにテレビ(薄型かつ巨大)をつけてみると、普通に見ることができた。これはおそらく、毎週日曜朝に安定してテレビを見る環境が整っていないと死ぬ体質の真宏と簪のためだろう。外界からは物理的にも情報的にも隔離されていた方が真宏にとっては良いとはいえ、これだけは譲れない。

 

 そして、そういった生活に必須となる施設以外にも色々と備わっていた。

 たとえば、温泉。総檜の内風呂と岩で縁を囲まれた露天風呂はこのために掘った温泉が源泉かけ流しの上、サウナもある。……あとなぜか内風呂にはエアマットと妙に大きな穴の開いた椅子とかも置いてあった。

 

 さらに、目の前に湖があるのにプールまで用意されている始末。入口に「例のプール」と書いてあったのはどういう意味なのかさっぱりわからないが、中の様子を見てみると斜めになった壁全体が窓となった、サイズは大きくないが解放感に溢れる作りのプールがあった。

 そしてなぜか撮影器具も完備。なにを撮れと言うのか。

 

 

 しかしそれら全てを越える、一番の衝撃を簪に与えたのは、服だった。

 

 

「す、すごい……なんて数なの……」

 

 呆然と呟く簪。

 その目の前にあったのは、服。

 だが一着や二着ではない。折りたたまれてしまわれているわけでもない。

 ハンガーに掛けられ、ずらりと並ぶその数は視界に入るだけでも100は下らないであろう、無数の衣装たちだった。

 

 当然、それらがあるのはタンスやクローゼットの類ではない。ウォークインクローゼットですらなく、これはもはや衣裳部屋。服屋が丸ごとひとつ入っているのではと錯覚するほどの広々とした部屋、規則正しく並ぶハンガー、大きな姿見と壁にかけられたり小物入れにも大量に入っているだろうアクセサリの数々。並々ならぬ情熱が籠められていることが、足を踏み入れる前からわかる部屋がそこにあった。

 

 簪はなぜか無駄に勇気を必要とされながらも部屋に入り、どんな服があるのかを確かめる。一着を手に取り、鏡の前で自分の体に合わせてみて、また別のものを取ってと数回繰り返し。

 

「どうしてほとんどが私の体にぴったりなの……!?」

 

 そこに用意された衣装が、紛れもなく簪のために、ひいては真宏のために用意されている物だと悟らざるを得なかった。

 衣装のラインナップは様々だ。やたら肩が出た、何となく前世か何かで着たような気がするメイド服。どう考えても腰骨のあたりまで見えることになるだろう深いスリットの入ったチャイナドレス。ゼッケンに「かんざし」と書かれたスクール水着、巫女服、ナース服。およそ思いつく限りのアレコレがデザイン違いも合わせて無数にあり、ことごとくが簪の体にぴったりなものだった。

 しかし一部例外もあり、簪が着るには少しだけ小さいものもあった。たとえば布面積が指先くらいしかないやたら小さなビキニとか、バニーガールなどがそれだ。こんなものを着れば必ずや色々とこぼれてしまうだろう。そう思わせるものに限ってそうなっている辺り、うっかりサイズを間違えたのではなく確信をもってこのサイズにしていることは疑いの余地がない。

 

 簪は、この部屋から強い意志を感じる。

 真宏の心を案じる優しさと、癒すためなら手段を選ばないという決意。それがこの、簪が着たら真宏がとても喜んでくれるだろう衣装のラインナップに現れている気がした。

 

 

「……ん? こ、これは……! どう見てもワカちゃんサイズ……!」

 

 そしてさらに。

 部屋の隅に少しだけある例外中の例外。

 簪の体格と照らし合わせると、少しきついでは済まない明らかに小さいサイズ。

 こちらもメイド服やゴスロリ、ブルマの体操着など。このサイズがぴったりだろう人物に、簪は心当たりがある。今日ここへ簪と真宏を届けてくれた、簪に負けないくらい真宏の身を案じている彼女。

 

『簪ちゃんが無理なら、私がやります』

 

 ワカには、覚悟がある。弟のように想っている真宏のことを必ず救おうという、強い覚悟が。

 簪は、改めて思い知らされた。

 

 

「……大丈夫だよ、ワカちゃん。私も、覚悟決めてるから。……色々と」

 

 自分が着ることはできないサイズの服を眺めてしばし。

 簪は自分の決意もまた宣言し、元の位置に戻した。

 

 その意思は自分が継いだのだから。なにより今やるべきことは、決まっていた。

 

 簪は衣装部屋の中を歩き回り、選び、着替え……真宏の待つ部屋に、向かった。

 

 

◇◆◇

 

 

 扉を開け、寝室に入る。

 シンプルな部屋だ。箪笥があり、鏡台があり、ベランダがあり、そしてベッドがある。しかしそれだけだ。

 ただ寝て起きて身支度を整えるだけの機能しかなく、しかしゆったりとくつろげそうな落ち着いた内装の寝室。その部屋のベッドで、真宏は眠りについている。

 ちなみに部屋の中にはダブルベッド一つしかなく、枕は二つ。あとそれとは別に表裏にそれぞれ「YES」「ばっちこい」と書かれた枕が置いてあった。選択肢とはなんだったのか。簪は自分の頬がかっと熱くなるのを感じた。

 

 だが、その程度のことで怯んでいる暇はない。今は何より真宏のことだ。

 すやすやと眠っているとはいえ、真宏は紛れもなく今も死の淵にいる。欠けた心はいまだ回復したわけではなく、一度眠りにつけば再び元と同じく目覚めるという保証すらない。

 

 だから、簪は真宏を起こしに行く。

 ベッドに膝を乗せ、にじり寄るように。

 真宏の寝顔は安らかで、見ているだけで簪の顔にも笑みが浮かぶ。

 そっと頬に手を添えて見れば、普段真宏が使うISのごりごりごつごつとした感触とは違う、血の通った人の肌の柔らかさがそこにあった。

 守りたい、という思いが簪の心にごぼごぼと湧いてくる。母性とも愛とも呼べるその感情に、しかし今だけは別の名をつけて呼ぶべきだろう。

 

「真宏、起きて」

「んん……う……?」

 

 体を揺すると、真宏がうっすら目を開ける。

 焦点の合っていなかった瞳が意思を宿し、簪の方を向く。そして、ふにゃりとほほ笑んでくれた。安心しきったその笑顔を浮かべてくれたということだけで、簪もまた安心する。ああ、これなら大丈夫だろう。

 

 簪の姿を認めた真宏はそのまま目線を少し下にズラし。

 

「……? ……んん!?」

「きゃっ」

 

 簪が驚くほどの勢いで、跳ね起きた。

 

 

「え、あ……ここ、どこだ? それに、え……簪?」

「うん、簪だよ。安心して、真宏。ここはワカちゃんが用意してくれた、別荘みたいなものだから」

 

 しかし簪は慌てない。驚いた様子の真宏に寄り添って、落ち着いて疑問にも応えてやる。そうすることこそが、真宏を回復させる一助になるだろうと信じて。

 簪は既に覚悟を決めている。真宏を元気にするためなら、何でもすると。

 

 

「いや、その……えーと、それはそれでいいとして、簪さん? ……なんで、裸エプロン?」

 

 

 そのためなら、いつぞや姉である楯無が一夏にやったというフェイクを交えない、マジ全裸にフリルつきのかわいらしい純白エプロン1枚で真宏の寝所に潜り込む事すら、厭わないと!

 

 

「うん、この別荘に用意してあったから、着てみたの。……どうかな、かわいい?」

「かわいい」

 

 結果は、食い気味の即答だった。

 まともに目覚めるかさえ心配だった真宏のこの反応、簪は自分の決意が無駄ではなかったのだと確信する。

 

 それと同時に、自分がどんな姿をさらしているかを改めて自覚し、顔を赤くする。

 

 真宏が口にした通り、簪は裸エプロン姿になっている。

 下着の一枚も付けない全裸に、エプロンのみ。前垂れの脇からのぞくのはほっそりとした足。きゅっとしまった足首からなだらかに続くふくらはぎ、可愛らしい膝、そして尻にかけて段々と肉を蓄えていく太ももの眩しさ。

 姉ほどに胸はないが、それでもエプロンの柔らかい生地を押し上げる胸の形は美しい。

 

「うふふ、ありがとう。……ねえ、もっとよく見て?」

「お、おぉう……!」

 

 そして、簪はここでさらなるサービスに出る。

 頭の後ろで手を組むグラビアポーズを披露。脇、二の腕、横乳の三点セットを見せつけ、真宏は身を乗り出して食いついた。

 

「……い、いやちょっと待ってくれ簪。状況が良くわからないんだけど、そういうのは良くないぞ。俺だって男なんだから、そんなことされたら……」

「うん、わかってる。……私のこと、襲っていいよ」

「ファ!?」

 

 そしてこの発言である。

 真宏は両手を前に、飛びかかろうとしているのか簪を止めようとしているのか、中途半端なポーズで固まった。

 

「ねえ真宏、気付いてる? 今の真宏は、すごく危険な状態なの」

「……まあ、多少はな。さっき簪に起こされるまで、俺はいつ意識があっていつ眠ってたのか、全く思い出せない」

「そう。真宏は今、心が擦り切れてなくなりかけてる。それを元に戻すには、とにかく刺激を与えて、心を奮い立たせなくちゃいけないの」

「影響は強く出てるけど、ロマン魂を使いすぎたときと同じってことか。……いやでも、だからって襲うなんて……!」

 

 真宏にはためらいがあった。

 目の前には可愛い彼女が、襲いたくなるくらいエロい格好でオッケーの空気を出している。男として滾るものは当然あるし、四つん這いになって寄ってくる切なげな表情の簪の目と、重力に従って垂れ下がり、胸元とエプロンの間にできた魅惑の空間との間を視線が行ったり来たりしている。

 

 その視線に気づいて簪が感じたのは、羞恥と……果てしない、喜び。

 こんな姿を真宏に見られるのは、当然恥ずかしい。恋人とはいえ、一生を捧げたいほど好きな人とはいえ、素肌を晒すことに抵抗を感じないはずもなく、真宏の視線がなぞった肌が熱を持ったように感じるのはただの気のせいとは思えない。

 だが、真宏が簪を女性として、異性として全てを求めてくれている証拠でもある。愛しいこの人に、全てを求められるなら。不思議と拒絶の心は全く湧いてこなかった。

 

「真宏、我慢はしちゃダメ。今の真宏に必要なのは、何かを求める心を、欲望を失わないことなの。だからとりあえずメダルあげるね」

「ああ、ありがとう……。いやでも、こんな形でなんて……! もっとこう、段階を踏んだりいい感じの雰囲気のとかで……!」

 

 しかし真宏はなんか女々しいことを言い出した。とんだロマンチストだなと簪は思うのだが、よく考えたら元からだったので気にしない。

 だから、あと一息。もう一押しで、真宏に知ってもらおう。

 今の真宏に必要なこと。心を失わないために、欲望に正直に求めること。

 

 

 そして、簪の欲望も、知ってもらわなければ。

 

 

「んっ」

「むぐ!?」

 

 簪からの、キス。

 飛びつくように、首に腕を絡めて。ついでに、さっそく舌も絡めてみたりなんかして。

 

 ちゅぷ、ぬちゅ。にゅるん。ちゅううううぅぅぅぅっ。

 

 そんな音が、真宏と簪の頭の中に響き渡る。

 戸惑う真宏をベッドの上に押し倒し、足の間に太ももを差し込み、胸を擦りつけながらのディープキス。状況が理解できずに反応できない真宏の舌を自分の舌で優しく撫でさする。

 つんつんと舌先を舌先でつつき、上面にも左右にも舌をこすり付ける。上あごも、歯茎も、頬の内側も。あらゆる場所を知りたい、味わいたいと動く粘膜の感触は、ただでさえ状況に振り回されている真宏の頭を恍惚の境地にたやすく導いた。

 

「んっ、ん。んんー……ちゅぅ、ぷはぁ……んっ。……えへへ。キス、しちゃったね」

「しちゃったね、なんて生易しいレベルじゃなかったような……いやすごく気持ちよかったけど」

 

 息苦しくなって唇を離しても、簪は体を離す気は全くない。それどころかもっと密着していたい、とばかりにますます強く真宏の体を抱きしめる。

 真宏もまた、口ではツッコミを入れているが可愛い彼女がエロい格好ですりすりしてくる状況が嫌であろうはずもなく、頭を撫でてますます簪をうれしがらせている。

 簪が身に纏っているのは、しつこいようだが裸エプロン。薄布一枚。脚も脇もほとんど見えているし、背中側に至っては紐がリボン結びになっているだけで覆い隠すものはなにもなく、肩からわき腹を通って尻、足へと続く美しいラインを余すところなく見せている。

 

「ね、真宏。……触って?」

「っ!?」

 

 そして、簪の積極さは止まらない。真宏の手を取り、そのまま自分の胸へと導いた。

 ふにゅん、と沈む感触。ぴくりと震え、それでも拒否しない簪。真宏は簪の胸と、ますますうっとりとほほ笑む簪の表情を交互に何度も見て……自分の意思で、手に力を込めた。

 

「あんっ♪」

「すごい……柔らかい」

 

 それだけで、夢中になった。

 指が沈む柔らかさと、押し返す弾力。そのつり合いが男の心を掴んで離さない。簪は姉である楯無や同い年での巨乳筆頭たる箒達と比べてバストサイズが小さいことを嘆いていたが、そんな必要はなかった。

 真宏が夢中になってくれているこの事実だけで、簪は自分を何より強く肯定できた。

 

「ねえ、真宏ぉ……こっちも、ね?」

「あ、あぁ……って、簪。こっちもすごいことになってないか!?」

「はああぁぁんっ! すごい、真宏の指ぃ……!」

 

 胸への刺激だけでは飽き足らなくなった簪が、真宏のもう片方の手を自らの足の間に誘った。既に色々と覚悟しているのか観念しているのか、真宏もそれにしたがって簪の秘部へと手を伸ばし、予想外の熱さと濡れ方に驚きの声を上げた。

 

 真宏の指先が触れたそこは、じゅくじゅくと音を立てるほどに熟れた果実を思わせた。

 人の体がこれほどまでに、と信じられないほどの熱と、触れるだけで弾けるように愛液をこぼすそこは、しかもとても敏感なようで触れるだけで簪の全身に震えが走る。

 感極まった簪はますます真宏に抱き着いて首筋や胸板など目の前にある場所へ次々とキスの雨を降らせ、うわごとのように「好き、好き」とつぶやいている。

 

 そして真宏はそろそろ気づく。

 いくらなんでも簪の様子がおかしすぎる、と。

 

「ま、待て簪落ち着け! どうしたんだ一体、いくら興奮してるって言っても、これは……」

「えへ、気付いてくれた? 大丈夫、心配ないよ。ちょっと、お薬飲んできただけだから」

「お薬」

 

 その言葉に、果てしない嫌な予感を駆り立てられる真宏。

 なんか経験したことのないはずの記憶が脳裏をよぎるような、よぎらないような。

 

「更識家秘伝の、媚薬。いーっぱい気持ちよくなれるんだって。あまり信じてなかったけど……はぁ、はぁっ。予想以上だったみた……んんーっ!」

「簪!?」

 

 簪が嘘をつくはずもなく、その媚薬とやらの効果も眉唾ではなかったのだろうと、真宏は確信を持つことができた。

 キスと、胸を揉んだことと、指でわずかに弄ったこと。それだけで達した簪の姿を見れば、もはや疑う余地はない。

 

「あ、あーっ……気持ちいい、気持ちいいよ真宏ぉ……でも、でもね? ……ここが、すっごく切ないの。真宏が欲しくて、欲しくて……もうダメぇ……お願い、して?」

「……ごくっ」

 

 真宏は、息を呑む。

 媚薬の効果もあるだろうが、発情する簪の姿に欲情が止まらない。ロマン魂の使い過ぎで心が擦り切れかけているらしいが、多分今はその影響なんてない。全て、簪のおかげだ。

 恥ずかしいだろうに、正気に戻った時のことは考えたくないだろうに、こうして真宏のためにどこまでも淫らな姿をさらしてくれる、愛しい少女。

 そんな彼女が自分を求めてくれるのならば。

 いつの間にかむき出しにされた真宏にくちゅくちゅとこすり付けられるもの欲しそうなそこを、徹底的に満足させてあげなければ。

 

 真宏は覚悟を決めて、簪に覆いかぶさる。

 色情に霞んだ簪の瞳を正面から覗き込み、切っ先を簪の穴へと這わせて場所を確かめ。

 

「……行くぞ、簪。初めて、もらうから」

「うん。……私を、真宏にあげる。……っく、はああああああ!?」

 

 ずぶずぶぶぶぶぶぶっ。

 ゆっくりと、しかし一度も止まらずに。

 

 進んだ分だけ真宏を受け入れ、愛液を垂れ流す簪の膣内の最奥まで、つながった。

 

 

 

 

 簪は、真宏を一番奥まで迎え入れた瞬間に絶頂し、一度意識を途切れさせる。

 真宏は目の奥がちかちかする感覚を味わいながらもなんとか耐えたが、理性は失った。

 

 二人はその後のことを、全て詳しく覚えているわけではない。

 断片的な行為の記憶と、互いが互いを心から愛して、求め、貪り合ったことだけは、はっきりと覚えているのだが。

 

 

◇◆◇

 

 

 ずちゅっ、ぱんっ、じゅ、ぱんっ、ず、ずりゅりゅりゅ……ぱんっ。

 

「は、ぁぁぁああああ……ぁ?」

 

 気付いた時、簪は真宏の体にまたがって、腰を振っていた。

 引き締まった腹筋に手を置き、ガクガクと震える脚に力を込めて腰を持ち上げ、力が抜けたのと区別がつかないような動きで落とす。

 その度に気絶と覚醒の領域を曖昧に行ったり来たりしていたが、ようやく意識が戻ってきたようだ。

 

 簪は今、騎乗位で真宏とつながっている。

 二人の腰回りは愛液と精液で濡れそぼり、ダブルベッドのシーツの片隅に見える赤い染みは簪が今日ここで初めてを真宏に捧げた証であり、部屋に満ちる淫臭は初めてを捧げてからノンストップでセックスをし続けていたことによるものだった。

 

(ちょ、ちょっと待って……なにこれ、気持ち良すぎる……全然、止まらない……っ!)

「簪……ぁ、はあ、っくぅ! ごめん、また射精るっ!」

「んんーっ! 奥、どぷどぷきてるっ! ……あっ、ダメ……イク、イクイクぅ!?」

 

 膣奥で震えた真宏の先端から、子宮へと注ぎ込まれる精液。既に何度目になるかもわからない膣内射精を、簪は背を反らしての絶頂で受け入れた。

 

 真宏の視線の先には、惜しげもなくさらされる簪の体。

 汗に濡れ、しわになり、それでもわずかに簪に張り付いたエプロン生地。胸元は両側から寄せられて胸を露わにし、前垂れもめくり上げられて結合部を隠しもしない。

 肩紐も片方は外れて落ちて、最初は確かにあった新妻のような清潔感はどこにもなく、二人の交わりを経て簪を下着よりも扇情的に彩る布きれと化していた。

 

 

 絶頂の果てへと意識を飛ばされながら、簪はこの夜の初めてを思い出す。

 最初は、一応普通に正面から抱き合ってしたはずだ。

 初体験らしい痛みも感じたような記憶がある。

 

「あんっ! いい、気持ちいいの! 真宏に奥をぐりぐりってされると……はあああっ!?」

 

 が、なんかすぐに吹っ飛んで自分から真宏を求めて腰を動かすようにもなっていた。

 おそらくあらかじめ飲んでおいた媚薬の効果、あるいは真宏を好き過ぎるせいだろう。自分が淫乱なわけでは決してない。簪は必死で自分に言い聞かせる。

 

 真宏もまた、そんな簪に興奮してくれたのだろう。

 心が生死の境をさまよっていたとは信じられないほどに興奮し、全身で簪を求めた。

 当然避妊などせず、初めては膣内射精だった。

 というか、簪が足で真宏の腰をがっちりつかんで離さなかった。

 媚薬で茹った頭の片隅で、多分夜が明けて元に戻ったら恥ずかしくて死にたくなるんだろうなーと思いつつ、それでも真宏を求めることを止められなかった。

 

 媚薬は確かに簪をエロくしたが、同時に素直にもしてくれた。

 真宏が愛しい。もっと交わりたい。

 そして、こんなにも愛しい人が失われるなんてことはあって欲しくない。

 そのためなら何でもしよう。この身を何度でも捧げよう。

 

 そういう愛によっての行動なのだ、これは。

 

「ぁ、はぁ……まひろ、まひろぉ……♪」

「か、簪!? イったばかりで動かれたら……!」

「あは、まだ固いよ、真宏。私の中をもっともっといじめたいって言ってるの。……だから、もっとしてぇ……?」

 

 そうなのだと、信じたい。

 

 

 

 

 結局その日、真宏と簪の行為は二人の意識が途切れるまで、何度も繰り返された。

 膣内射精の数は二人とも数え切れず、紛れもなく忘れられない思い出となった。

 

 そしてもう一つ。

 この日使われたエプロンは、この療養生活の中で使い物にならなくなったエプロンの「最初の一着」となったのだった。

 

 

◇◆◇

 

 

「ん……朝、か」

 

 真宏と簪、二人の寝室。

 窓から差し込む朝の陽ざしを顔に浴びて、真宏は目を覚ました。

 自分が目覚めることができたという事実に、少しだけ驚きながら。

 

 簪や他のみんなが心配してくれていたことを、真宏自身も深く理解している。自分の心は擦り切れる寸前で、ただ眠るだけでも二度と再び目覚めることはない、などということが十分にあり得ることも。

 ……その割に、簪と二人して意識を失うくらい激しくあれこれしてしまったのだが、そこはそれ。調子のいい時は普段と変わらないし、なんだかんだいって二人とも若いのだ。

 

 朝日の温かさに感謝しながら真宏はようやく目が覚めてくるのを感じ。

 

 

「じゅるるるるっ、んぶっ、ぐぽっ、ちゅぷっ。ん、んむうううぅぅっ」

「うひぃ!?」

 

 自分がかぶっていた布団の中、ちょうど足の間辺りから響いてくる水音と、下半身に力が入らなくなるほどの気持ちよさに思わず変な声が出た。

 

「っ! か、簪!? 朝から何を!」

「じゅちゅうううううぅっ。……おふぁよう、まひお」

「おはようございますぅぅぅ!? 待って簪! くわえたまましゃべらないで!」

 

 慌てて布団をはぎ取ると、そこにはさっきまで姿が見えなかった簪が、いた。

 てっきり先に起きてシャワーでも浴びているのかと思ったら、さにあらず。簪はひと時も離れず、ずっとそばにいてくれたようだ。

 

 ただし、真宏の足元に。

 寝ている間に、そそり立つペニスにおはようのフェラをしながら。

 口元が記憶にある昨夜の様子よりもさらに白濁の化粧を濃くしていることからして、既に寝たまま何度か射精までさせて。そういえば寝起きにやたら気持ちよかったような、妙に体がけだるいような気がしたが、まさかこのせいだったとは。

 お目覚めフェラなどという男のロマンをかなえてくれた彼女の、朝日の中で浮かべるにはエロすぎる表情を見て、真宏の喉がごくりと鳴った。

 

「昨日は……れる、おくちで、してあげられなかったから……」

「だから、俺が寝ているうちに? ……簪のすけべ」

「んん……じゅるるるる!」

 

 媚薬の効果は、さすがに夜を越しはしなかったようだ。

 真宏の言葉責めで真っ赤になるのはいつもの簪そのもので、しかしそれに対して唾液たっぷりの口の奥深くまで真宏を咥えこんで顔を隠すのは、あの一夜を越えたからこそか。

 亀頭を舌で包むような刺激と、激しく頭を振って根本までを飲み込む愛情たっぷりの朝フェラ。それまで何度か寝ているうちに射精させてもらったことも嬉しいが、実際に簪の奉仕をその目で見ながらの絶頂は格別の感がある。

 

「はぁっ……はぁっ……。簪、もう、イきそうだ……一番奥で射精して、いいか?」

「んう! じゅ、ぐぷ、んむうううううぅ!」

 

 まして、簪は真宏の望むことは何でも叶えてくれる。

 辛いだろうに、一度頷いてから両手で真宏の腰を抱き、顔をうずめるようにして限界まで真宏を飲み込んだ。

 おそらくこれで、簪の喉は真宏の形になってしまっただろう。膣穴に続いて簪の体を自分専用に作り替えてしまったような気がして、真宏の心は与えられる快感以上の達成感に満ち。

 

「簪……簪、イクっ!」

「んんんんーーーーーーー!?」

 

 最後には背を丸め、簪の頭を腹に抱えるようにして射精する。

 亀頭の位置は簪の喉を突く口内最奥。簪は悲鳴にさえならない叫びをあげ、しかし全く拒否することなくごくり、ごくりと喉を鳴らして窒息しそうなほどに溢れかえる真宏の精液を、全て、飲み干した。

 

 

 この日から一か月の療養期間中。

 真宏の朝は毎日簪のお目覚めフェラで始まることが決まった瞬間だった。

 

 

◇◆◇

 

 

 これだけでは、真宏の療養期間がただの爛れた日々に思えてしまうだろう。

 だが実際はそうではなく、簪の献身的な看護があった。

 

「真宏、ご飯作って来たよ。一緒に食べよう」

「ぁ……ぅ……」

 

 反応はしているが、目も言葉も虚ろ。

 椅子に座ったままゆっくりと頭を持ち上げては力が抜けて落ちる、ということを繰り返している悲痛な姿でいる時間がとても長い。どっから持ってきたのか、なんか緑色の光を放つ三角柱をじっと見つめていたりもする。

 しかし簪はそんな姿を見ても悲痛な表情一つ浮かべず、笑顔で真宏に接し続けた。

 

「はい、あーん」

「百億の鏡のかけら……小さなともしび……とらわれた天使の歌声……ゼノ……ギアス」

「真宏、中毒になるならせめてコジマにして」

 

 ロマン魂の過剰使用による錯乱状態に陥っている事にもめげず、美味しい手料理を作り、いつも寄り添い、その心を癒し続けた。

 あとから見れば、ほんの一か月の間の逢瀬。だが簪はこの時、真宏に生涯を捧げる決意をすでに固めていた。

 一刻も早く良くなってほしい。だがもし万が一にもそうならないなら。真宏が一生このままならば。自分もまた、一生この人の側で支え続けよう。簪はそう決意していた。

 

「かゆ……うま……」

「それおかゆじゃなくてうどんだよ」

 

 まあ、あの真宏がずっとこのままなどありえないことだと確信してもいたのだが。

 

 

◇◆◇

 

 

 真宏と簪は、二人きりの時を楽しんだ。

 基本的に真宏は標準で半分意識がないような状態だったが、簪の看護のおかげか日を追うごとに普通の状態でいられる時間が長くなってきた。

 

「星、綺麗だな」

「うん。山の中だからかな。……真宏と見られて、よかった」

 

 夜には二人で厚着をして湖畔に出て、ただ星空を見たりもした。

 周囲に人工の明りがほとんどないだけに夜空は星で満ちて、宇宙まで飛びだして見てきた光景とはまた違った感動が二人の胸に満ちた。

 

 

「こぉら、真宏。動かないで」

「いやいや、簪の太ももが気持ち良すぎるからいけないんだよ」

 

 耳掃除は、当然膝枕で。

 とはいっても照れ隠しで真宏がもぞもぞ動くため、中々うまくできなかったようだが。

 

 

「いい景色……このあたりでお弁当にしよう、真宏」

「そうしようか」

 

 ある日は、近くの森の中へピクニックに出かけたりもした。

 手作りの弁当を持って二人で森の中を散策し、周囲が開けた小高い丘の上で昼食をとる。

 弁当の用意をする際、体調が良くなってきている真宏が手伝っている時にサンドイッチを作ろうとしたら簪がかたくなに止めたりもしたが、特に問題はなかった。

 

「ところで簪、どうしてそんなにたくさんピンクの花を摘んでるんだ?」

「……お楽しみ。うふふ」

 

 そして、近くの花畑で見つけたピンク色の花を大量に積んで花束のように持っていたりもするが、それを何に使うつもりなのか、真宏にはさっぱりわからない。

 ただ一つだけわかるのは、その花の香りが最近簪が淹れてくれるお茶の香りにそっくりということだけだ。

 

 

 とまあこのように、真宏の精神を癒すためという名目で仲睦まじくいちゃいちゃし続けた。

 表向きは。

 昼の間は。

 

 では、夜はどうだったのかと言えば、それは当然。

 

 

◇◆◇

 

 

「はぁ、はぁ……真宏、ううん、ご主人様ぁ……」

「まったく、簪は仕方がないな。首輪までつけてくるなんて」

 

 ある日の簪は、犬になった。

 犬耳のカチューシャと、真宏への服従を示す首輪。金具につけられたリードは当然ご主人様である真宏の手に。

 くい、とリードを引かれれば首輪ごと体が引かれ、人の身ではそうそう味わえない屈服感に簪は真宏の所有物になったような気分を存分に味わえた。

 ちなみに、一切の衣服をまとっていないことは言うまでもない。何故なら今の簪は犬なのだから。

 興奮にしこる乳首も、しなやかな腹筋が浮かぶ腹も、まだどこもいじってもらっていないのにぐっしょりと濡れている秘所も、全てが真宏の眼前に晒されていた。

 

「それに、尻尾まで生やしちゃって……ほら、嬉しいんなら尻尾を振らないと」

「んおおおおおっ!? ね、根本からほじらないでええええ!?」

 

 そして、犬となるからには当然尻尾も生えている。

 ふさふさの毛が生えた長い尻尾。当然簪の尻から生えているそれは、先端がプラグになっていて簪の尻穴へと埋め込まれている。

 犬が喜んでいるなら尻尾を振るだろう、と鬼畜なことを言い出した真宏によってぐいぐいと左右に振られると、当然尻穴の中のプラグも左右に揺れる。既に真宏に捧げた尻穴もまた快楽機関と化していて、簪にまさしく獣のような叫びをあげさせた。

 

 結局この日、簪は四つん這いのまま真宏に「お散歩」をしてもらい、周囲に人が立ち入ってくることはありえないといえど、それでも全裸で外を歩くのは死ぬほど恥ずかしいのだと教え込まれることになった。

 

 

 

 

「ねえ、真宏。部屋の中のプールだけど……この水着でないと、ダメ?」

「簪がその水着を着てくれた姿を見たいなあ」

 

 その日は、「例のプール」と呼ばれている室内プールで遊ぶことにした。

 水着に着替えてビーチチェアに腰かけている真宏が待つプールの入口で、簪が躊躇っている。

 扉から顔だけ出して、どんな水着を着ているのかは見えない。しかし真宏はリクエストした立場なので当然知っているし、恥じらうその表情を見れば真宏でなくともどんな姿をしているのかは予想がつくだろう。

 

「……あんまり、じっくり見ないでね?」

「それは無理な相談ってもんだ」

 

 しかし簪は優しく、可愛く、そしてエロい子だ。

 真宏の期待に満ちた視線を浴び続け、興奮し、大胆になる。

 意を決して真宏の前に晒した、簪の全身。

 

 それはほとんど裸と言って差しさわりのない姿だった。

 

 首から肩へ、胸からわき腹、腰、足へと至るまで、簪の体のシルエットを変える要素は一切ない。元々水着は人の体のラインをほとんど全て明らかにするものだが、今の簪が身に着けている水着の場合、さらにその効果は強い。

 

 なぜなら、簪の水着の布面積は、すべて合わせても両掌分程度しかないからだ。

 

 いわゆる、マイクロビキニ。

 トップは指先ほどしかない三角形の布地を、頼りないほど細い紐が繋いだもの。

 アンダーはトップの布地をそのまま逆向きにしたようなもので、こちらに至っては隠すべき場所を隠しきれず、少しでも動けば簪の花弁が見えてしまうだろう。

 先日の「お散歩」に引き続いての羞恥系。簪は自分の趣味がなんだかどんどん危ない方向へ突き進んでいる気がして、その危機感すらスパイスとなって興奮に息が荒くなる。

 

「やっぱり、良く似合ってるよ簪。かわいい」

「あ、ありがとう……でも待って真宏。どうして近づいてくるの? どうして手をわきわきさせてるの!?」

「それはもう、俺がどれくらい可愛いと思っているかを知ってもらうためにね?」

「や、今はダメ! 見られるだけですごく興奮しちゃってるから……きゃううぅん!? 乳首、引っ張らないでええ!?」

 

 そして真宏はやはり容赦がない。

 小さな布地ごと乳首をつまみ、引っ張る。既に固くしこっていた乳首は十分に指で掴めるほどで、羞恥に火照っていた体にいきなり与えられた刺激の強さに簪はつま先立ちになって震えた。

 そのままではすぐに倒れ込んでいただろうが、すぐに真宏が抱きしめて体を支えてくれる。力強く抱きしめる手はしかし、簪の尻にぴたりと張り付いている。ぐにぐにと尻房ごとこね回すような動きに、簪は自分の尻肉がホカホカと熱くなる気分を味わった。

 

「やはあああ! 乳首とれちゃう、ジンジンするうううう!」

 

 しかも、もう片方の手は決して乳首を離してくれない。

 指を擦り合わせるようにして擦り潰し、引っ張り、爪でかりかりとひっかいたり。布越しとはいえ今の簪を狂わせるには十分な刺激を与え続けた。

 

「本当に可愛いよ、簪。大好きだ。ちゅ。……じゅるるるるるっ!」

「んん!? んー! んんー! んんんんんんーーーーー!?」

 

 そして、キス。

 口からこぼれ出ていた舌に口付け、そのまま真宏の口の中に吸い込んで、啜りあげる。

 ついには声すら出させてもらえなくなったこと、上から下まで全身くまなく愛されていること、そしてこんな状況でもかけてくれる優しい言葉。その全てが簪を包み、声にならない叫びをあげながら、簪は真宏の腕の中でびくびくと震え、絶頂を味わった。

 

 

 そしてこの後、いっそ裸の方がましだろうマイクロビキニを絶対に脱がせてもらえないまま、プールの中で浮力を生かしたアレコレを楽しんだ。

 

 

 

 

「いらっしゃいませ。本日はようこそおいでくださいました」

「割と最初のころからわかってたけど、簪って超ノリノリだよね」

 

 こういう状況になってしまえば、真宏と簪は一緒に風呂に入ることも日常茶飯事。

 当初こそ真宏が浴槽で溺れないようにするためという理由もあったが、今ではほとんど通常と変わらない生活が送れるほどに回復したため、適当に口実をつけていちゃついているに過ぎない。

 そのことを裏付けるのが今の状況だ。

 珍しく簪が入った後しばらくしてから風呂に入ってきて欲しいと言われ、わくわくしながら風呂に入ると、そこには男のロマンがあった。普段真宏が体現しているものとは、別の方向で。

 

 浴室の内装に変わったところはない。

 二人だけで過ごす家にしては過剰なほど大きい湯船には湧き上る温泉が満ち、洗い場も広々としている。

 その洗い場に三つ指をついて出迎えたのが、簪。

 ひと目で育ちの良さが知れる美しいお辞儀をしているが、身に着けているのは体に巻きつけたバスタオル一枚というあられもない姿。

 一足先に体を洗い清めておいたのだろう。濡れた髪と水滴の浮く肌のつやがまぶしく、しっとりとした色気に真宏の喉がごくりと鳴り、期待に胸が高鳴った。

 

 風呂場で三つ指をついて迎える簪。これだけならば風呂でいちゃいちゃする図なのだが、今日はそこへさらに一味加えられている。

 それこそが、簪の横にあるもの。

 洗い場の広さを生かし、人が2、3人は寝そべることができるサイズのエアマット。

 

 風呂で、「いらっしゃいませ」で、エアマット。

 そしてついでに桶の中になみなみと満たされた、なんかやたらと粘性の高そうな液体。

 何をしてもらえるのかは、すでに一目瞭然だった。

 

 

「はぁ……はぁ……いかがですか、旦那様。れろれろ」

「うぅ、簪の体の柔らかさとヌルヌルが気持ちいい……っ!」

 

 二人は、エアマットの上で肌の境を失くすように絡み合う。

 というか、簪が積極的に絡んでいく。

 仰向けにした真宏の体に腕を絡め、足を絡め、乳首に舌を這わせる。うっかり「旦那様」と呼んだのは真宏のリクエストでは決してなく、自然と簪の口から出てきたものだ。目の中にピンクのハートが浮かんで見える辺り、そろそろ普通の生活を送れるほどになってきたこともあり、二人きりのこの生活ももうすぐ終わる。

 だからこそ、羞恥とかいろいろ捨てて真宏にしてあげたいことを残さずしたいと、そう願った。

 

 その結果が、風呂場でローションまみれになって裸でねちょねちょすることなあたり、更識簪という少女の性欲も大分凄まじい。

 もっとも、そのくらいでなければ神上真宏という男の恋人は務まらないだろうが。

 

「あぁ、おっぱい、太ももぉ……!」

「うん、いっぱいすりすりしよ」

 

 寂しそうにしていた唇に、ちゅうと口付けてそのまま舌を絡め合う。

 その間も簪は真宏と体を擦り合う。正面から抱き合い、胸板で自分のおっぱいをこねまわして乳首同士を弾かせ、天を突く勢いで反り返る真宏のペニスは、簪が太ももで挟んでいる。

 真宏が思わずとばかりに腰を振れば、熱い塊が太ももを擦り、花弁から尻穴までをなぞって簪の背筋がゾクゾクと震える。

 ぬちゅぬちゅ、という水音は絡み合う舌と、ローションによってぬめる肌の両方から聞こえてくる。口内だけでなく全身でディープキスをしているような夢心地。

 二人の腰回りを濡らすのはお湯なのかローションなのか、先走りなのか愛液なのかもはや区別はつかず、こうしているのももう限界だ。

 

「真宏、真宏ぉ……今日は私が上になるから、思いっきり楽しんで。……ね?」

「ぅあ、簪の中に、入っていく……うぅ~~~っ!?」

「ぁんっ! 入れただけで、射精てるぅ……!? あっ、だめ、私もイク……真宏の精液で、イクぅ……!」

 

 その結果、二人そろって挿入しただけで絶頂を迎えた。

 簪が全体重をかけているせいで根本まで包まれたまま逃れようもない真宏と、子宮を叩く精液の熱さに浸って夢心地の簪。最初の交わりは真宏の射精が尽きるまで終わることはなく。

 

「ぁは。真宏の、まだ固いよ?」

「……簪がエロ過ぎるのが悪い」

 

 力尽きて倒れ込む簪を、下敷きになっている真宏は柔らかく支える。

 その時ついでにおっぱいに手を置いて揉んだりもするが、この程度は役得だろうと自分に言い聞かせる真宏。

 簪のことは一から十まで過去から未来まで全て好きである自信を持っているが、それでもなんだか一か月前にこの事実上の同棲生活を始めたころと比べて一回りふっくらと大きくなったような気がする、そしてもし事実なら一か月間揉み続けた自分のおかげだろうと確信するおっぱいを揉みながら、真宏はぶっきらぼうに答える。

 

 いまだ二人はつながったまま、真宏も萎えることを知らない。

 もともと強羅というやたら重いISを使っていた真宏は体力に底がなく、この生活を初めてからは簪が真宏の体に良い手料理と、夜の生活を充実させるという更識家秘伝のお薬をあれこれ使ってくれたことで無尽蔵と言っていい精力もある。

 そして、くったりと自分にもたれかかる可愛い女の子は、絶頂後のけだるさに蕩けたエロい表情で微笑んでいる。

 心が通じ合った二人であるならば、その瞳の奥に秘められた感情を読むのは簡単なことで、真宏には簪の目に「もっと犯して」と書いてあるようにしか見えない。

 

 ならば、応えねばならないだろう。

 微笑みを返し、キスの仕返し。

 そして片手で簪の頭を撫でながら、空いている手をそっと下半身へ。

 

 頭を撫でられうっとりしている簪は不意打ちで強く尻房を握り締められる刺激に驚き、その直後に背を反り返らせる勢いで打ちこまれた真宏の亀頭に子宮を潰され、声にならない叫びを上げながら瞬く間に絶頂し。

 

 それが、この日の長い夜の始まりを告げる合図となった。

 

 

◇◆◇

 

 

 バラバラバラバラ、と空気を叩く音を響かせながら、湖畔の開けた場所にヘリが下りてくる。

 今日は、真宏と簪が世間から隠れて療養生活を始めてから一か月が経つ日。

 真宏の十分に回復したという連絡を受けて、ワカが迎えに来たのだった。

 真宏と簪は、長いようで短かった一か月を過ごした別荘を出てヘリを見上げている。二人で寄り添い、簪は真宏の腕を抱いて。もう二度と二人は離れ離れにならないという決意の形だ。

 

「真宏くーん! 簪ちゃーん! 元気そうでなによりですー!!」

「ワカちゃん、心配かけてごめんね。もう大丈夫だよ」

「よかったです! よかったですー!」

 

 ヘリから降りるなり、全力ダッシュで真宏に駆け寄り、飛びついて抱きしめるワカ。

 その姿からは弟のようにかわいがり、兄のように甘えていた真宏のことを心底案じていたことが伺えて、真宏も簪も笑みを浮かべる。

 零れる涙を真宏の服になすりつけるワカの頭を撫でつつ、真宏は感謝の言葉を述べる。

 

 これで、ようやく終わる。

 ザ・ワンの起こした事件と、その始末。

 これからの人類の歩む道のりにその影響は数多あれど、真宏が復活したことで、事件自体は本当に終わった。

 人類は、宇宙への進出を阻む異形との戦いを、ついに一人の犠牲も出さずに勝ち抜いたのだと。

 

 幸せは犠牲なしに得ることはできないのか。

 時代は不幸なしに越えることはできないのか。

 

 その答えが、三人の喜びの中に確かにあった。

 

 

 

 

 人類が手にしたのは、平和と未来。

 

 真宏が手に入れたのは、命と希望。

 

 

 そして簪が手に入れたもの。

 

「……ごめん真宏。そろそろヘリに乗らない? ……立ってるの、辛い」

「お、おう。マジごめん」

 

 一つは、前日最後の日だからと夜通しセックスし続けたことでまともに立てない足腰。真宏の腕を抱いていたように見えて、その実一人では立っていられないから真宏に縋っていたというのが正解だった。

 

「あれ、簪ちゃん? なんだか、少しおっぱい大きくなったような……」

「……」

「…………」

「あっ」

 

 そしてもう一つ、見事2カップほどランクアップ・エクシーズ・チェンジを果たしたバストサイズ。

 その全ては真宏からもらったものであり、簪にとっては全てがかけがえのない宝物。

 

 この別荘に来たとき胸に抱いていたのは、不安と決意。

 しかし今は、幸福と希望を抱いて、二人の門出を歩み出す。

 

 

 簪が真宏からプロポーズを受けるのはこの日から数ヶ月の後。

 その後婚約を友人たちに伝えたとき、「え、子供できたからじゃないの!?」と口を揃えて驚かれるのは、さらにその少し先のことであった。

 

 

◇◆◇

 

 

「……ハッ!?」

 

 簪は、なんか最近たまに感じるやたら幸せな気分のまま目が覚めた。

 即座に時と場所を確認し、状況の理解に努める。

 ここはIS学園寮、いつもの自分の部屋。今日は平日だから普通にIS学園に通い、授業を受けなければならない日。

 記憶と部屋の様子、時計の日時を確認してそこまで把握し、ようやく一息をつく。

 

「はぁ、よかった。……赤ちゃん、できたかと思っちゃった」

 

 夢は、夢だった。

 とても幸せな夢だったし、いつかそうなって欲しいと思うが、なんだか覚えがあるようなないようなシチュエーションだった気もする。

 ともあれ今はそのことを置いておこう。あくまで夢は夢なのだから、今日もスッキリ起きていつものように学校に……。

 

「……妊娠検査薬、使う?」

「ぴぃ!?」

 

 行く前に、悲鳴を上げた。

 ギギギギギ、ときしむように首を回して声のした方を向けば、そこにはルームメイトの姿が。

 そう、IS学園の一年生寮は基本的に二人部屋。簪の部屋もまた、ルームメイトがいるのだ。最近、このテの夢を見ることが増えた簪に生暖かい視線を向けてくれる、ルームメイトが。

 

「あなたが落したのはこの0.02mmの薄いゴムですか? それともこの妊娠検査薬ですか?」

「どっちも違うっ! ていうか、どうしてそんなの持ってるの!?」

「いつか必要になると思って。……というわけで正直なあなたには両方さしあげましょう」

「い、いらないっ!」

「まあまあ、そう言わずに。せめて妊娠検査薬だけでも」

「順番違うよね!?」

 

 その日。

 朝から簪の部屋は元気な声が尽きないのであった。

 

 

◇◆◇

 

 

「今日はどこからともなく飛んで来た電波をそのまま中継してみましたが……なるほど、やりますね。神上真宏にも同時配信すべきでした」

 

 そしてその日その時どこかの場所で、珍しく自分の判断ミスを悔いる女の子がいたというが、それを知る者は誰もいない。

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