二回の性行為が終わり、プレイルームには汗と性の匂いが充満しているように感じられた。換気機能は正常に作動していたのだが、カイトの脳裏には二人の甘い顔と女体の感触が焼き付いていて、それが残り香のようなものになって彼を錯覚させたのだ。
至福の感情が陶酔となって、まるで酔った酒飲みのようにカイトの頭をくらくらとさせた。とんでもないことをしているのだ。三人の、カイトにとっては女神に等しい女たち。その処女を、今二つも貰っている。そしてこれから、その最後の一つがカイトに捧げられるのだ。強制でも陵辱でもなく、その女性自らの意志を持って。
「お待たせ、カイトさん」
最後の一人、八神はやて。彼女は黒い革ベルトのボンデージを身に纏い、首には赤く鍵の付いた、犬が付けるような首輪をつけていた。その衣装が示している通り、これから起こるのは、なのはやフェイトにしたような甘い初体験ではない。もっと鮮烈で甘い、苦痛に満ちた物だ。はやての中にあるマゾの心が、愛するものに犯されたい、乱暴な愛で傷つけられたいという欲望がそれを望んでいるのだ。
「似合ってるぞ、はやて」
「ありがとなぁ、ご主人様。今日という日が来るのを、わたしは待ち望んでたんや」
「俺に犯されて処女を棄てる事をか」
「はい。本当にご主人様の物として、死ぬまで飼って頂ける。女の子の一番大事な所を、ご主人様専用に躾けてもらう。それが、雌奴隷としての、ううん、八神はやてとしての一番の幸せや」
はやてが首を傾げて笑うと、鈴代わりの南京錠が金属部分と触れ合ってチン、と音を立てた。
「それじゃあ、始めるぞ。こういうことにこいつを使うのはアルフ以来だな」
「いつでもええよ。目はじぃっと見つめてるから」
カイトの目の中に、藍色の魔法陣が展開された。レアスキル『意識操作』だ。今回、カイトははやてに精神的な枷をかけて、嗜虐しようというのだ。勿論、半年前のように決定的な歪みを生み出さぬため、あくまで一時的な精神操作に留めていた。だから、はやてが怪しくカイトの目を見つめ、意識を飛ばしてぼやけた顔をしていたのは10秒にも満たぬ間だった。
「これで終わった。どうだ、今の感じは」
「んー、あんまし変わったようには思えないんやけど」
「それはそうだ。何も人格そのものを変えたわけではないしな。効果の程は、これから実感するだろうさ」
「楽しみやぁ」
その言葉から一瞬経って、互いにこれから起こる痴態と快楽を想像し、怪しげな笑みを浮かべる。こと好色という点において、カイトとはやての気は完璧に合致していた。二人の間に通いあうこの空気は、恋人や主従というより、気のおけない悪友同士といったものだった。
「じゃあ、いくぞ、はやて」
「うん、来てぇ、ご主人様」
しかし、そんなどことなく明るい雰囲気も、次の瞬間には甘ったるい恋人の空気と、背徳感に溢れた主人と奴隷との空気に早変わりしていた。
まずは、天井から降りてきたロープを、拘束衣の各部につなげて、はやての体を持ち上げる。大股開きになった下半身は、まだ幼い縦筋の女陰をくっきりと露出させていた。周囲に配置されたカメラのレンズが、その痴態をばっちり捉えていた。
「あはぁ、丸見えや。やっぱしちょう恥ずかしぃなぁ」
「そうか? あの時のお前は、自分から見せつけてきたんだろうが」
「あぁん、でも、その時は私……」
「戯言を言うな」
カイトがパシン、と一回尻を叩けば、はやては甘美な鳴き声を上げてあっさり意見を覆した。自分は変態だ、見られて感じる変態だと声が響く度に、ほんのりと濡れていた女陰が、さらに水気を増し始める。
「はぁんっ、ごめんなさいぃ」
「嘘をつくんじゃない。現に今も、濡れてるじゃないか。見られて、叩かれて、感じているとはなっ」
「あひぃん! もう許してぇ、はやては変態です、お尻叩かれて、エッチになっちゃうぅぅ……」
二回、三回。力強く桃尻が叩かれる度に、二人の気持ちも高ぶっていく。ただいたぶるだけでなく、そこには確かに愛がある。苦痛を与える側、それを全身で受け止める側。二つの間には、普通のセックス以上に気持ちの通い合いがあるのだ。
「はやて……今日は、これで愉しもうか」
カイトが部屋の倉庫から取り出したのは、ボールギャグとピンクローター、目隠し、そしてガムテープ。まずは目隠しを取り付けて、はやての視界を奪う。何も見えない、カイトの姿すら見えないというのは、はやてにとってかなり不安感を煽るものだった。
「ねぇ、ご主人様、どこですかぁ? ……何、するんですか?」
「……」
心細さに弱々しげなはやての声を、カイトは敢えて無視して準備にとりかかった。「これから何をされるのか」という怯えと緊張で、はやての吐息が熱くなっていることは分かっているのだ。
ボールギャグをはやての口に付け、まともに喋れないようにする。そして、ローターにガムテープを貼り、乳首にそれぞれ一つ、そして淫核へもう一つ取り付けた。それから、リモコンをつかって部屋のシステムを操作。すると、壁のそこかしこから、黒い触手状のケーブルが飛び出した。プレイルームは、カイトと三人のいかなるプレイにも対応できるよう設計してある。その中の一つが、この冗談のようなギミックだった。
「さあ、はやて。目一杯気持ちよくなるんだ」
カイトがそう宣言し、リモコンのスイッチを押すと、三個のローターが振動を始めた。最大の振動速度。手加減も何もないその刺激に、はやては腰を浮かし、半年で自由に動くようになった足をピンと伸ばした。身悶える度に、拘束衣が体を締め付ける。きついリハビリを経て、五体満足になった体を再び縛られるのは、中々に苦しく、辛い。
「むむぐっ! むぐ、う、んんんんんっ!」
声を出そうとすると、唾液の分泌は止まらない。はやての顔は涎の垂れ流しで汚れていった。
目隠しと羞恥心による極度の興奮と、性感帯を三箇所同時に責められる快感によって、はやてにはもう限界が訪れつつあった。
……クリトリスと、乳首、両方いっぺんに責められてるぅ。もう我慢できへんっ、もういっちゃ……あ……
しかし、はやてが快楽の波に身を任せて、達しようとしたその瞬間。見えない壁がぶち当たったかのように、興奮が止まった。はやての性感、その高揚は、限界の寸前で立ち止まってしまったのだ。
……あぁ、やっぱり。イケへん。気持ちいいのがギリギリで止まってまう。もう少し、あともう少しやのに……
『八神はやては、膣内に男性器を受け入れなければ、決して絶頂する事ができない』。これが、カイトがはやてにかけた『意識操作』その中身だった。はやての心が、その縛りによって後一歩の所で快感を抑えているのだ。それは、痒い所に手が届かないような、もどかしい感情として現れる。はやてはそのもどかしさにグイグイと体を動かし、拘束衣の苦しい感覚すら絶頂の助けにしようとするが、しかしやはり絶頂には至らなかった。
「んーっ! んんっ、むぐぅ、むぐぅっ」
「そうか。イケないで苦しいのか? 安心しろ、もっと『気持ちよく』してやるからな」
「んんんんーーー!」
はやては首をフルフルと動かし、違う、違うと泣きながら訴えた。『気持ちいい』だけでは駄目なのだ。それだけでは絶頂する事ができず、際限のない快楽地獄に陥ってしまう。しかし、カイトは容赦をせずにリモコンのスイッチを押し、手持ち部沙汰に止まっていたケーブルたちへと命令を繰り出した。
ケーブルたちが水を得た魚のように素早く動き、雁字搦めに絡んでいった。ラバー状の外装からは粘液が染みだして、はやての体はヌメヌメとした液体で濡れていく。それが潤滑液になって、仕切りに動くケーブルが全身を擦り、快楽を与えるのだ。
「んうぅぅぅうぅ~~~~っ、んんうっ、んっ、ん、んぐっ」
太腿を舐めるように動くケーブル。脇の下、耳、陰唇などの敏感な部分にも、ケーブルの先端から展開した細いケーブルが接触し、細かく動きながら刺激を与えていった。
……あぁぁ、体全部気持ちいい、頭から足まで全部いいのに……なんでや、なんでイケへんのぉ………
意識が飛びそうなほどの快楽を与えられながら、『意識操作』で絶頂出来ないがために意識を保たなければいけない。それは、『闇の書』の呪いを破壊した時、激痛に晒されながら意識を失えなかった時と、何処か似ているのかも知れなかった。但し、とてつもなく激しいながら限りのあった痛みと違って、今回与えられる快楽は底なしだ。カイトが止めない限り、果てしなく高まり、止まらない。
……気持よすぎて、苦しい……はよ処女奪って、子宮の中にせーえきぶち撒けて、イカせてぇ……
「駄目だ。お前みたいな淫乱は、もっともっと快楽責めしていかないと」
はやてが心の中で乞うた願いは、カイトの無反応によって虚しく否定された。ケーブルはひっきりなしに動き、はやては更なる快楽地獄を見る。いくら体をよじらせようとも、いくら快楽に身を任せようとも。カイトの剛直を膣内に受け入れない限りは、絶頂にはたどり着けないのだ。
「むぐぅぅぅぅぅううっ! ん゛! ん゛! んんぅぅぅぅぅ!」
「もうダメ」「止めて」と言葉に出そうとも、ボールギャグを咥えながらまともに言葉を発することは出来ない。リンカーコアのないはやてには、念話も不可能だ。ただ、目隠し越しに涙を流し、まともでない呻き声を上げるしかなかった。その無力感と、カイトの非情な仕打ちがはやてに更なる性的興奮を与えるが、しかし尚絶頂出来ない。
……おねがいぃ、おねがいやぁ……なんでもします、ご主人様の雌奴隷でも、肉便器でもええですから……イカせて……
悶え苦しむはやてをしばらく見つめていたカイトだったが、突然わざとらしい大声を上げながら、ぐっすり眠り込むなのはとフェイトを脇に抱えた。
「そうだ。すっかり忘れていた。なのはとフェイトを、寝室に送り届けてやらないとな」
「………! むぐっ、むむぐぅっ! んんんんっ」
カイトが、自分の元から離れる。それは、目の前が真っ暗で、身動きの取れないはやてにとっては、正に絶望であった。快楽に狂いそうなはやてが、すがれるのはカイトの存在だけだった。ほんの気まぐれでも良い、自分の処女穴に肉棒を挿れてくれさえすれば、それで全ては解決するのだ。
……止めてぇ、わたしを一人にしないでぇ……ご主人様ぁ……
「なんて、冗談だ。先ず、お前に『挿れて』やらないとな」
「んんっ! むぐっ! むぐぐぅ……」
先程とは一転した柔らかい声。それと同時に、はやての体を縦横無尽に這っていたケーブルは一つ残らず元に戻り、はやてを吊り下げたロープも緩み、その身はゆっくりと降ろされた。あとに残ったのは、茹でダコみたいに真っ赤になりながら、荒い息で喘いでいる女の子一人。
目隠しと、ボールギャグが外された。眩しく光る照明を逆光にして、はやての目に映るのは、ギンギンに反り立った図太い肉棒だ。自分を開放してくれる救世主を目の当たりにして、はやては苦しみから解放されたような笑みを浮かべた。
「いいか? 今から『挿れる』ぞ。お前の一番好きな体勢になるんだ」
「はいぃ」
いそいそと、はやては自分の桃尻をカイトの前に向ける。いつかはやてが夢見ていた、後背位での処女喪失。犬のように犯されながら、カイトのものになり、最高の絶頂を迎えるのがはやての夢だった。長く苦しい快楽責めの果てに、ようやく理想通りのセックスが出来る――はずだった。
カイトは両手ではやての揺れる腰を掴み、ひくひくと震えている『肛門に』深く肉棒を挿し入れた。
「ひゃひぃぃぃいぃん!? そこちが、あ、あ、あああああああっ!」
そこではないと訴える前に、唐突な快感と、激しい痛みがはやてを襲った。実のところ、アナルについては、三人ともある程度開発されていた。だがはやてのアナルは、フェイトほどほぐれてはいない。内蔵を損傷することはなかったが、かなりの痛みが伴う挿入になった。
「あぁぁぁ、だめ、だめ、そこじゃない、おそそ、おそそやのにぃ」
「黙れ。望みどおり挿れてやったんだぞ」
「ちがうぅぅぅ、おしりちがうぅぅぅぅぅ」
はやてにとって、確かにアナルセックスも腰の抜けるほど気持ちいい。しかし、やはり膣内へ挿れてもらわなければ、絶頂する事はできないのだ。今度は肛門を貫かれながら、苦痛と快楽の両方が責める。幸福の最中から、再び絶望のどん底へと追いやられた気分だった。
……イケへん、それじゃイケへんのにぃ、なんでおしりおかすのぉ。おそそ、おそそにちんぽぉ……
「はやて、はやてのアナル、きつきつで気持ちいいぞ。すぐ射精してしまいそうだ」
「!! それだけは、それだけは嫌やぁ、あぅん、やめてぇ、ちんぽやめてぇ」
実際、快楽漬けのせいでとろけながらも、キツく肉棒を締め付けるアナルは、すぐにでも射精出来そうな名器だった。しかし、はやては、子宮の中に精液が欲しいのだ。いくら虐げられても、いくら嬲られても、それだけは。二人の愛の印として、果たして欲しかったのだ。
だが、カイトは容赦なく突きを早めていく。はやての精神が抵抗しようとも、快楽に負けた肉体は言うことを聞かず、その菊門はカイトの精液を絞りださんとさらに狭くなっていった。
「はやて、気持ちいい、気持ちいいぞ。今すぐにでも出してしまいそうだ」
「嫌ぁ! そんなん、嫌やぁ! カイトさん、それだけはぁ、あああ゛っ、堪忍してぇ」
はやてがいくら喚こうと嘆こうとも、顔色一つ動かさず、カイトは射精の瞬間に向けて腰を動かしていく。はやての目には再び涙が溢れ、目は見開かれ、全ての希望を失ったような表情だ。
「くぅっ、はやて、精液出るぞ、たっぷり出してやる」
「え、駄目、駄目、だめぇぇぇぇぇぇぇ」
あと一突きで射精、という瞬間。カイトは、アナルから肉棒を引き抜いた。
……はやて、愛してるぞ……
そして、間髪をいれずに女陰を貫き、処女膜を破り、子宮口にぴったり亀頭をくっつけて、思い切り子宮内に精液を吐き出した。
「え、あ、あ、ああ、いく、いく、い、イぎゅうぅぅぅぅぅぅぅぅう♡♡♡」
処女喪失。そして、始めての膣内射精。
「気持ちいいだろう、はやて? お前が望んだ全て、くれてやったぞ」
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛♡」
散々痛め付けられ、切ない希望を裏切られた果てのそれは、文字通り最高の絶頂をはやてにもたらした。処女を強引に奪われた痛み。子宮を精液が満たす喜び。好きな人に抱かれる、幸せ。今のはやてには、それしかなかった。それだけで、よかった。
***
無限に広がる、次元世界。ベルカの昔も、ミッドの今も、戦乱の嵐吹きすさぶ世界。
時空管理局によってもたらされた『新暦の平和』は、たった七十数年で終結した。後に言う、『ジェイル・スカリエッティ事件』。一人の天才科学者が、古代ベルカのロストロギア『夜天の書』を解析し、作り出したプログラム体の軍団。一体でAAAランク魔導師に匹敵する個体が、ざっと十万体以上出現したのだ。アルカンシェルを以てしても、その勢いを抑えることは出来なかった。
あっという間にミッドチルダは占領され、ついに管理局本局の目の前まで雲の軍団が迫ったその時。桃色の砲撃の束と、金色の閃光の帯、そして白色の爆裂の渦がそれを消し去った。旧暦以前より生きていた、伝説の英雄三人が、時空管理局最高評議会としてクローン部隊を製作し、指揮していたのだ。
しかし、これで平和が訪れたわけではなかった。最高評議会はすぐさま管理局の全権を掌握し、管理世界を独裁政治にて管理すると宣言した。その余りにも強制的な宣言に、抵抗した管理局の部隊や管理世界は、容赦なくアルカンシェルとクローンの兵士たちに制圧された。
それから、何十年と続く戦の始まりだ。評議会側もスカリエッティ側も、敵を倒すためには躊躇なく兵員を投入し、ロストロギアを開放して世界を破滅に導いた。スカリエッティは元から混沌を望んでおり、評議会も次第に手段が目的と入れ違って行き、破壊と殺戮は際限なく膨らんでいった。
そんな、この世に現出した、地獄のような世界の中で。一つだけ、希望に満ちたおとぎばなしが語り継がれていた。
『白い方舟』。次元世界を自由に飛び回る、白い巨船のお話だ。その周りには、プログラム体もクローン魔導師も寄り付かず、戦火の中に飛び込んでも傷一つ与えられない。船内には三人の女神が存在し、乗り込んだ者を争いのない『楽園』へと連れて行くという……
戦乱に苦しむ誰もがその船に出会う夢を見て、そして『楽園』での平穏を願った。実際に『方舟』を見た、という噂も多数存在した。しかし、所詮はただの夢、想像力豊かな文学者が、叶わぬ平和をおとぎばなしに託したものだと、誰もが諦めていた。
――でも、『楽園』は確かにあるのだ。三人の女神と一人の男、それから一匹の狼を載せて、爛れた日々を送りながら。『パラディース』は旅を続けているのだ――
拙作『男は楽園を目指す』はこれでひとまず、終了となります。
ここまでご覧になった方々、感想を送ってくださった方、一目でドン引きして去っていった方々にも、このSSを見てくださった御礼を、改めて申し上げます。
もう一つや二つ、書きたいシーンもありますので、何時になるのかは分かりませんが、必ず執筆し更新したいと思いますので、その時はまたご覧になってくだされば、これほど喜ばしいことはございません。
それでは。いつかまたお目にかかることもあるでしょう。