カイトが高町なのはに接触して、およそ三週間が経った。今のところ、カイトらと高町家との関係は良好そのものだ。フェイトがたまに翠屋でお手伝いをしているし、なのはも張り切って魔法の訓練に励んでいる。訓練といっても、戦闘用の訓練ではなく、現時点では基礎魔法や飛行魔法の学習に終始していた。
なのはの学び具合は、順調そのものだった。流石に、魔法と出会って10年経たずにエース・オブ・エースと言われた人材だ。スポンジで水を吸うように、次々と新しい知識や経験を手に入れていく。カイトはこの時のために魔導の教師としての資格を取っていて、魔導師ランクもB+に至っている。しかしもう半年訓練を続けたら、あっという間に追い抜かれてしまうかもしれない。
訓練は『パラディース』内部の運動場で行われている。マンツーマンで行うのではなく、フェイトやアルフも一緒だ。だから、カイトが教えるのはほんの基礎的な事項に留まり、手取り足取り教えるのは専らフェイトの役目だった。半ばフェイトと仲良くなるために魔法を習うなのはにとっては、その方が喜ばしいことであるだろう。
「だからなのは、高速旋回する時は、もっとこう体を動かして」
「えぇー、それ疲れない? 魔力で無理やりぐいっ、て方向転換出来ないの?」
「それをやると、Gのせいで体に負担が掛かるの。だから、体を動かした勢いを利用して、姿勢を制御するんだ」
「うぅ、なのは運動苦手だから大変かも」
「運動神経はそこまで必要ないよ。ただ、こう飛びたい時はこう動く! って覚えさせるだけだから」
空を飛びながら、仲睦まじく話すなのはとフェイト。その姿はまるで、綺麗で珍しい蝶が虫かごの中を飛び回っているようだ。『パラディース』という名の虫かごの所有者であるカイトは、この光景に感慨ひとしおだった。ただ彼女たちを集めるだけなら、虫を針で固定して標本箱に飾るような揃え方でも良かった。しかしあえて自由意思を残し、生きた笑顔を見るのがカイトにとって至上の目的なのだ。勿論、虫カゴの扉は厳重に閉じておくのが前提だが。
【二人共、そろそろ休憩しないか?】
一時間ほど経って、頃合いと見たカイトは二人に念話で呼びかけた。二人共素直に答え、同時にカイトの座っている椅子に向かって降りてくる。安全のために、二人共バリアジャケットを装着していた。なのはは制服をモチーフにし、フェイトは黒ベースに赤黒のマントという出で立ちだ。そして、なのはの左手には――赤い宝石を装飾した、魔法の杖『レイジングハート』が握られていた。
これは、カイトがスクライア族の集落に赴き、ユーノ・スクライア当人から高値で買い取った物である。時の庭園から『バルディッシュ』のデータを盗み出したのと同じく、この『レイジングハート』も、高町なのはという人物に不可欠な要素の一つだと、カイトは考えていたのだ。ちなみに『バルディッシュ』の設計データはジェイル・スカリエッティに送られ、現在彼のラボにおいて現物が完成目前だ。カイトは「無駄な機能を付けるな」と念を押したが、ジェイルがかなりやる気を出しているので、その望みは叶えられそうに無かった。
「なのはも大分飛行がこなれて来たな。デバイス無しとはいえ、フェイトについて行けるんだから大したものだよ」
「ありがとうございますっ!」
今のところ、なのはとカイトの関係はあくまで生徒と教師のそれに留まっている。カイトにはそれはそれで心地の良いものだったが、まだ「意識操作」が効くほどでは無い。そこまで仲を深めるには、もう一つ段階を踏む必要があった。そのための策は、カイトの脳内にある。
フェイトたちを休憩室に連れて行った後、カイトは中央制御室に入っていく。この世界から程近い次元空間で定点観測をさせている、偵察用ガジェットからの情報を確認するためだ。コンソールを叩き、観測情報をモニタに映し出す。今から六時間ほど前までデータを巻き戻すと、煙を吐き出しながらよろよろと蛇行する次元航行艦が映し出された。
……ビンゴ、といったところか……
ジュエルシードを積んだ輸送船が事故にあっている、その光景だった。カイトは輸送船の航行コースから、この世界の近くを通る箇所だけを抜き出し警戒していた。そうすれば、ジュエルシードは無造作にばら撒かれる前に、水際で確保する事が出来ると踏んだのだ。事実、輸送船を補足することには成功した。後は、ジュエルシードを確保する、実行班の手際次第だが――
「カイト、聞こえる? こちらアルフ、21個ばっちりかっきりゲットしたよ」
どうやら、カイトの心配は要らぬ節介だったようだ。録画された動画には、ガジェットを周りに従わせ、青い宝石を両手でどっさりと抱えて満面の笑みを浮かべるアルフが映っていた。プレシアから預かった頃と比べ、すっかり大きく成長した大人の姿になっている。今頃は封印処置したジュエルシードを倉庫の奥に収め、自室でぐっすり睡眠し疲れを癒していることだろう。
……後で、何か褒美をあげなければな……
カイトは、出来すぎとも言える結果に一人ほくそ笑む。前もって見込んだ通り、アルフの利用価値は高い。使い魔として主を補佐するために備えた、機転の利く性格は、単純作業しか出来ないガジェットどもの指揮官に最適だった。忙しさで手を下せない事柄を、代わりに実行するにはうってつけの人材だ。
アルフの部屋に今後の行動を指示するメッセージを送っておいて、次にカイトが開いたのは 『時の庭園』配置のガジェットを操作するプログラムだ。プレシアは間違いなくジュエルシードに目をつけている。その動向を調べる必要があった。カイトの知る歴史では輸送船の事故に乗じてフェイトを向かわせたのだが、それが水際で防がれた今回はどうなるのか。
プロジェクトFのデータを盗んだ時と同じように、『時の庭園』のメインシステムをハッキングする。監視カメラから玉座の間を覗くと、苛立たしげに机を叩いているプレシアを見つけることが出来た。憤怒の形相には正に鬼気迫るものがあり、口からはうっすらと血の筋が見えた。どうやら唯一無二のチャンスが防がれたことを認識し、カイトに対して激怒しているようだ。
カイトにとっては、しかしこれも予測の内だった。むしろ、プレシアがこちらに対して敵意を持ってくれなければ、後々面倒なことになるのだ。ジュエルシードのモンスターを無理やり作り出すよりは、プレシアの方がまだ御しやすいのである。
プレシアがこちらに対して仕掛けてくるのは、もうしばらく後のことになるだろう。ガジェット・ドローンを廃棄するか否かの選択に迫られるからである。敵の所有物であったガジェットを、信用できるはずはない。 しかしガジェット無しで『パラディース』を落とせるかといえば、それはまず間違いなく不可能なのである。魔力で動く傀儡兵は、ガジェットのAMF相手だと手も足も出ないからだ。切り札の次元跳躍魔法『サンダーレイジO.D.J』も、『パラディース』のバリアには通じない。しかも、プレシアが何時何処で仕掛けるのか。何処まで闘う事が出来るのか。それは全てカイトの手の内だった。細工は流々。ならばこの大掛かりな舞台の準備を、出来る限り早く整えなければいけない。
主演女優高町なのは、主演男優カイト・フォレスターの、恋愛劇場。 その敵役が、哀れな大魔導師が最後に演じる役割となるのだ。
***
レイジングハートのメモリに、緊急メッセージが転送された。なのはが学校から帰り、転送魔法を使って『パラディース』に移ろうとした時だった。フェイトから送られてきたもので、文面の短さが焦りと必死さを表している。
「『パラディース』は襲撃を受けているから、今日は家で待機していて」
襲撃。誰が、どんな理由で襲ってきたのかは分からない。それでもなのはは居ても立っても居られなくなって、転送魔法を作動させた。未だ非力な自分が行った所で、事態が動くことはないだろう。むしろ、余計な危険を背負わせてしまうのかもしれない。なのはの冷静な部分が止まれと促し、レイジングハートも止めている。しかし、なのはは躊躇わなかった。フェイトという、大切な友達が危険に晒されているのだ。ここで踏み込まないようでは、それはもはや高町なのはではない。自分が自分であるためにも、行かなければならなかった。
「どんな事になってるのか分からないけど……待っててフェイトちゃん、アルフさん、カイトさん。高町なのは、行きます!」
その言葉で自身に気合を入れて、レイジングハートを起動。バリアジャケットに身を包み、転送ポートを抜け出たその先は、煙と魔力光に包まれた鉄火場の真っ只中だった。慌てて全周囲防御の『プロテクション』を発動する。魔力の多さに任せて分厚く展開させたので、大抵の攻撃は跳ね返せるはずだった。
ひとまずの安全を得たなのはは、大急ぎで二階のロビーに向かう。カイトとの待ち合わせ場所はいつもその場所で、しかもそこは中央制御室の近くなのである。攻めこまれた時、籠城するなら先ずそこを確保するはずだ。
なのはの考えていた通り、カイトとフェイトはそこにいた。テーブルを並べてバリケードを張り、ロビー外部にたむろするロボットのような敵――傀儡兵やガジェット・ドローンを射撃魔法で追い払っている。アルフも防衛用のガジェットを引き連れ、懸命に侵入者を迎撃していた。合流すると、フェイトとアルフは驚愕したが、カイトは何故か納得顔をしていた。
「やっぱり来たのか、なのは」
「え、やっぱりって」
「元から、こういうことを見過ごせないとは思っていた。フェイトがもう少し気を利かせてくれれば、巻き込まずにすんだが……仕方ないな」
そう言って頭を振ったカイトは、一旦制御室に入ってトランクケースを持ちだした。その中には、金色に光る三角形の金属片が入っている。つい昨日送られてきたばかりの、ジェイル・スカリエッティ作『バルディッシュ』の試作品第一号である。完成には程遠かったが、デバイスとして最低限の働きはすると、ジェイルは確約していた。
「こいつは試作品だが、既にお前好みのチューニングをしているそうだ。存分にやれ」
「はい、父さん」
元気よく頷くフェイトだったが、最後に小声で、
「全部やっつけたら、『ご褒美』……欲しいな」
と、艶かしい声でこっそり付け加えることは忘れなかった。
それからの戦いは、終始圧倒的だった。元よりフェイトはAAAランクの魔導師で、それが未完成とはいえ優秀なデバイスのサポートを得たのだ。ガジェットのAMFで弱体化した傀儡兵と、機能を掌握され単純行動しかとれないプレシア側のガジェット如きに、負けるはずがない。
『パラディース』の広い通路や広間は、今やフェイトのために用意されたステージだった。雷光が走ると鉄塊が爆散し、そのきらめきが華麗に舞い踊る金色の魔導師を照らす。その光景に、なのははすっかり見惚れてしまっていた。
……なんて、綺麗に飛ぶんだろう……
元よりフェイトに憧れを抱いていたなのはだったが、この大立ち回りを見てさらにそれが強くなっていった。一人の女として、あそこまで輝けるフェイトが羨ましかった。彼女と同じように飛びたい、彼女のようになりたい。そんな感情が、熱になってなのはの体を駆け抜けていくのだ。それは、フェイトという心の中の英雄に対する、同化願望とも言えるものだった。
……フェイトちゃんはどうして、あんなに強くなれるんだろう……
そんな考えがふと、頭の中によぎる。自分とフェイトとは、何が違うのか。
……目標があるから? そうじゃない。フェイトちゃんは、何を目指してる訳でもない……
では、どうしてフェイトは強いのか? その答えを、なのはは傍らに立つカイトに見出した。縦横無尽に駆け巡るフェイトの目は、目の前にいる敵ではなく、いつも一人の男だけに向けられている。その目線は、親と子の間で交わされるものではなく、愛しあう男と女が作り出すものだ。士郎と桃子や、兄である士郎とその彼女に触れ合っていたなのはには、それが良く理解できた。
……そうだったんだ。フェイトちゃんは、カイトさんの事が好きで、カイトさんが見ているから、あんなに強くて、綺麗になれるんだ……
大切な人のために、己を磨き、鍛える。それが、フェイトにとって至高の目標であり、為すべきことなのだとなのはは理解した。そして、自分にとって『好きな人』とは誰か。その人のためになら、フェイトのように綺麗になれるのか、と考え始めたのである――
***
30分も経たずに、艦内の敵はほぼ一掃された。客室や大広間は滅茶苦茶にされてしまったが、船体に深刻な被害は無い。カイトが機能を制限させ、重要箇所を占拠させなかったからだ。
プレシアの計画は、今や完全な失敗に終わった。初弾の次元跳躍魔法は完全に防がれ、カイトが敢えて開けた隙間から入り込んだ傀儡兵・ガジェットの軍団もこの有様だ。今頃プレシアは玉座に座り、血を吐きながらカイトを呪っているだろう。しかしそもそもあの時、カイトの取引を受けた時点で、プレシアには破滅の道しか残っていなかったのだ。
もはや万策尽き果てたプレシアは、次に何をしてくるのか。カイトも流石にそこまでは予測できていなかった。だが、どういう行動を取ろうにしても、現状の戦力で二十分に対応できる。それでも念の為として、カイトは『時の庭園』の制御装置を操作した。これで30分後には動力炉が停止し、プレシアは娘の死体ともども、果てなき次元の海の中でひっそりと朽ち果てていくことだろう。
……後は、最後の仕上げだけ。敵役は既に消えたが、劇のクライマックスはこれからだ……
ガジェットの残骸の中から、一機だけ機能を停止していないガジェット・ドローンが立ち上がる。与えられた命令通りに、魔力を持つ人間を攻撃しようとする。戦闘が終わり、和気あいあいと話している子どもたち。その中からガジェットががターゲットに選んだのは、消耗したフェイトではなく、未だ多くの魔力を残しているなのはの方だった。
戦いが終わって、フェイトにもアルフにも、少しだけ気の緩みがあったのだろう。『それ』がなのはの真後ろまで近づいた時には、もう遅かった。もはやエネルギーの残量も少なく、ボロボロになったガジェットが選んだ攻撃方法は、自爆。残ったマニピュレータ・コードで目標を捕縛し、間違いなく致命傷を与えるのだ。
「きゃあっ!」
「なのはっ!?」
フェイトはそれを射撃魔法で駆逐しようとするも、丁度なのはがガジェットの盾になるような形になり、迂闊に手出しできない。アルフは事後処理にかかっていて、遠くの場所にいる。絶体絶命。なのはが最悪の事態を覚悟した、正にその時であった。
ドンっ、と横から強烈なタックルの音。その衝撃でコードが解かれ、なのはが開放される。そして、倒れこんだガジェットはそのまま自爆処理を続け――爆発した。爆発音に驚き、後ろを振り向いたなのはの目に映ったのは――爆風に吹き飛ばされ空を飛ぶ、カイトの姿。
「先生っ!!」
「父さんっ!」
フェイトは高速移動魔法『ブリッツアクション』を使い、地面に落着する寸前でカイトをキャッチする。しかし、その額からは血が流れており、爆発の衝撃で意識は失われていた。細かい破片が体のそこかしこに刺さって、そこからも血が流れ出ている。
「父さん……父さん、ねえ、返事をしてぇ!」
半狂乱になるフェイト。その一方で、なのはも茫然自失の状態でこの惨事を見つめていた。
……そんな、カイトさんが。私のせいだ、私の……
自分を庇い、傷を負ったカイト。その痛ましい姿を見ている内に、なのはの心の中にどうしようもない虚しさと悲しさが沸き上がってくる。自分がいなければ。自分がこんな所にいなければ、カイトは傷つかなかった。自分への怒りが、さらに悲しみを倍加させる。人の痛みを自分の痛みに感じられるほど優しいなのはも、これほどまでに心を痛めたことは初めてだった。
そして、フェイトも同じように嘆き、同じくらい深く悲しんでいる。その共通点が、なのはの中の密かな同化願望を満たしていった。今の自分は、フェイトと同じであるのだという錯覚が、なのは自身気づかない内に、その心を満足させて行くのだ。そしてそれは、もう一つの『錯覚』をも生み出すことになる。
「おーい、フェイト、そっちは……って、どうしたんだい!?」
呆然とし、ただ動けないなのはとフェイトは、結局、アルフがそちらに向かうまで何も出来なかった。アルフは、混乱している二人に代わって、カイトを『何故か』無傷の医療室に向かって運んでいった。
***
各部裂傷と打ち身、軽度の脳震盪で全治二週間。ナース・ロボットはそう結論した。医務室のベッドは初めて使われる事になり、今まで真新しかった部屋はとたんに薬の匂いに包まれた。体のそこかしこに包帯を巻かれたカイトが目覚めると、担当ロボットを無理やり押しのけ、看病を続けていたなのはの姿が目に入る。
「先生っ!……生きてて、本当に良かったぁ」
「なのはか……心配するな。この程度で死ぬ訳じゃないさ」
「でも……」
なのはは深く悲しみ、その目に涙を浮かべる。しかしカイトは本当に、あれで死ぬつもりは無かったのだ――何故なら、あの爆発は、カイト自身が仕掛けたものなのだから。フェイトに「一機だけ残しておけ」と言いつけ、その一機に「カイトを」目標にした自爆プログラムをセットした。なのはを捕縛はするが、自爆をするのはあくまでカイトがその身代わりになってから、ということだ。なのはが悲しみ、迷い、そしてカイトの元に来たことは、全て筋書き通りの出来事だった。
その効果は、今この光景に象徴される。ここにいるのがフェイトで無く、なのはであるということ。そして、なのはが涙を浮かべながら一生懸命に看病してくれたということは、なのはがカイトに相当の情を抱いているということだ。ここまでくれば、後は「意識操作」の出番だ。なのはが抱く愛情を、さらに深めてやり、二度とカイトから離れないようにするのだ。
なのはと出会ってからここまで、かなり回りくどい方法ではあった。カイトの持つ力を最大限に使えば、もっと効率よくなのはを手に入れることが出来ただろう。しかし、フェイトの時と同じように、なのはにもあくまで自分の意志でカイトに歩み寄って欲しかった。
それにカイトは、無敵で不屈のエース・オブ・エースを、一度でいいから守りたい、という夢を持っていた。今回の計画は、半ばそれを叶えるための舞台であった。敵は自前で用意して、絶対に傷つかない方法で。という極めて卑怯かつずる賢い方法ではあったが。
「なのは。私の目を、見てくれないか?」
「はい……」
カイトの瞳孔に、青い魔法陣が現れる。その光が、なのはの心を犯していった。
***
それから、数時間後。本を読み耽りながら、高町家からの差し入れである果物をかじっていたカイトの目の前に、二人の美少女ナースが現れた。
「父さんっ、これ、似合うでしょ?」
一人はフェイト。純白のナース服に、鮮やかな金髪が映えている。頬はほんのり上気して、これから起こる嬌態にいささか興奮しているようだ。
「あ、あの、カイト、さん……どうでしょうか、この服」
もう一人は、なのは。慣れないコスチュームに身を包み、耳まで真っ赤にしながらも、決然とした表情をしている。こちらの服はピンク色で、なのはの雰囲気にピタリと合っている。
「ああ、二人共凄く綺麗で、可愛いよ」
嘘のない、本心からの言葉だった。幼いながらも、二人共実に美しい。この狭い病室に、二人の天使が舞い降りたかのようだと、カイトは感動した。
「これから、父さんの『治療』をするからね。なのは、父さんの服、脱がせて」
「ふえっ!? い、いきなりそんなことするの!?」
「だって、服脱がせないと『治療』出来ないよ。ここにはなのはと私、それに父さんしかいないんだから、今更恥ずかしがることも無いよ」
フェイトはいつも通り、積極的に事を進めようとするが、なのはがそれに付いて行けなかった。オドオドと慌てるなのはを、フェイトは更にかき立てる。
「そ、そうだけど……やっぱり順序とか、そういうのが……」
「だあめ。もう私たちは父さんの物なんだから。父さんだって寝たきりで『溜まってる』だろうし、なのはは父さんを満足させてあげなきゃいけないよ」
「満足……させる……」
その言葉で、ようやく踏ん切りが付いたのか。なのははごくり、と唾を飲み、一歩前に出て告げる。胸は高鳴り、心臓は、ドクン、ドクン、と大きい鼓動を続けていた。
「カイトさん、服、ぬ、脱がします!」
「分かった。ゆっくりでいいからな」
先ずは、上半身から。なのはは小さい体を上手く使いながら、カイトの服を脱がしていく。シャツまで脱がし、上半身裸になったカイトを見て、その体温を感じただけでも、なのはの小さな羞恥心は爆発寸前になっていた。所々に包帯や湿布があるその体には痛々しい物があったが、しかし今のなのはは恥ずかしさしか感じられない。
……これが、カイトさんの、裸……私の好きな人の、胸、お腹、背中……あ、体、暖かい……あうぅ、恥ずかしいよぉ……
なのはがあの時感じた『錯覚』。カイトが自身の『好きな人』であるという認識は、本来一過性のもので、時が経つとなのはの中で消化されるはずの、淡く弱い思いだった。しかし、カイトの「意識操作」を受けた今は、何があっても動かない、神聖かつ絶対の想いとして、心の奥に刻み込まれている。
……でも、私、もっと見たい。カイトさんの全てを。そして見せたい。私の全てを……
ついに、なのはの手がズボンに掛かる。一瞬、戸惑うかのように震えた手は、それでも離れることなく、ゆっくりとズボンと、パンツを脱がしていく。なのはの緊張はもう極限を通り越して、少しでも気を抜いたら倒れそうなくらいである。
……フェイトちゃんに聞いた。カイトさんとエッチなことをすると、とっても気持ちがいいんだって……全身が、カイトさんと混ざって、ドロドロに融け合う様な感じがするって……
なのはの目に、顕になったカイトの陰茎が映った。それは、何時かなのはが見た大人のそれではなく、ガチガチに堅い、臨戦態勢の物だった。その大きさに、なのはは息を呑んだ。
「うわぁ……」
「なのは、どう? これが、父さんのおちんぽ。こぉんなに腫れてるんだから、私たちで『治療』して、膿を出させてあげないとね」
今度は、フェイトの番だ。不慣れななのはに手本を見せてやるように、ゆっくりと手を伸ばし、そっと亀頭を触り始める。その一触りだけでビクン、と震えるそれは、フェイトにとっては素晴らしく愛しいものであった。そのまま亀頭をなのはの顔に向けさせる。
「ほらなのは、匂い、嗅いでみて……ねぇ、凄くエッチな匂いがする」
「本当だ……臭くて、鼻にツンとくるけど、体の奥がポワポワしてくるよ……」
匂いが癖になったかのように、くんくん、と鼻を嗅ぎながら、なのははカイトのモノを手に取る。そして、前もってフェイトに教わった通り、肉棒を小さく柔らかい手でしごき始めた。
「んっ、なのは……そうだ。それでいいぞ」
「どう、ですか? おちんちん、気持ちいいですか?」
「なのは、手でしごくだけじゃなくって、舌も使うの」
「え、えっと……ん、んちゅ、こうかな」
淡い赤色をした、なのはの舌が亀頭に触れる。まだちろちろと、控えめなフェラチオだ。それだけでも、カイトにとってはかなりの快楽だった。どちらかと言うと、性器への弱い刺激ではなく、一生懸命ななのはの姿が興奮を誘っているのだが。達するにはもう一つ快感が足りないが、しばらくこのままでいるのもいいだろうと思えるくらいに、なのはは頑張っていた。
……もう、なのはったら、何してるの。もっと深く、激しくしないと、父さん気持よくなれないじゃない……
そのたどたどしい奉仕は、フェイトをどうにもやきもきさせた。自分なら、カイトをもっと気持ち良く出来る。そう思うと、じっとしていられないのだ。勿論、なのはがまだ不慣れで、カイトがそれを許容していることは分かっていた。しかし、「父さんを気持ちよくさせてあげたい」という想いが、ある種の嫉妬に近い感情を引き出していた。
「ちろ、れろ……えぇと、こうしてこうで、それとも、こうですか?」
「なのは……そこは少し違うな。そう、そこだ、気持ちいいよ」
「本当ですか? 良かったぁ。私、フェイトちゃんみたいに上手く出来ないけど、いっぱい頑張りますからね」
「そうか。じゃあ、もっと続けてくれ」
……うぅぅ、父さん、優しすぎるよ……中々イケなくて、もどかしいはずなのに……
時にはあらぬ方向に舌や手を走らせるなのはを、優しく見守るカイト。まだ10歳にも届かない幼子に性行為をさせているという背徳的な場面が、これではまるで学校の授業参観だ。情けない光景に、ついに我慢の限界が来たフェイトは、なのはを押しのけて、最大限に勃起した男根を思い切りくわえ込んだ。
「はむ、んぐ、ん、んじゅ、じゅるるる、じゅっぱ、ちゅう、ちゅう……」
「にゃっ!? ふ、フェイトちゃん、おちんちん丸ごと……」
「お、おいフェイト」
強烈な刺激に呻き声を抑えながら、フェイトを制止するカイトだったが、その程度で彼女の暴走は止まらない。
【いいの! 父さん苦しそうだし、早く精液びゅって出してあげたいの! なのは、お手本見せてあげるからね】
「は、はい」
「フェイト、今はなのはの番……くぉぉ!」
勢い良く頭を上下に動かして、バキュームのように棒をすする。モノを引っ張られるような感覚と、舌の柔らかさが相まって、今までにないほどの快感を生み出していた。
「ぢゅぼ、ぢゅぱ、ぢゅ、ぢゅるるるるるるぅ」
【お父さん、気持ちいいよね? 私のおくち、おちんぽ気持よく出来てるよね? 早く精液、口の中にドピュって出してよう】
「フ、フェイト、そんなにがっつくな。なのはが先という約束だろう」
【だって、もう我慢出来ないんだもん! だから、射精して? 私の口の中でも、顔にかけてもいいから、精液、欲しいのぉ】
自分に自信を持ち、なのはから奉仕先を無理やり奪ったにも関わらず、フェイトの声には哀願の響きすら含まれている。それがカイトの興奮を引き出し、より早く、より高い絶頂へと導かれていくのだ。
……そんな、フェイトちゃんがこんなエッチな、ううん、凄いエロくて、いやらしい声を出すなんて……
淫らな言葉たっぷりの念話は、勿論なのはにも聞こえていた。余りの内容に思わず耳を塞いだが、それで念話が防げるはずもない。容赦なく頭の中に飛び込んでくるいやらしい誘い文句は、なのはが持っていたフェイトへの憧れを、少しだけ壊してしまっていた。
「くっ、仕方ない、フェイト、出すぞ! 口の中に出す!」
【いいよ、全部飲むから。父さんの気持ちいい印、いっぱい私に射精して?】
「んぶ、んぐぐ、じゅ、じゅるるるぅぅ}
最後のトドメとばかりに、喉の奥まで使って肉棒全てを飲み込み、その上で思いっきりバキュームする。それがきっかけになり、尿道から堰を切ったかのように精液が溢れだし、直接フェイトの喉へと注ぎ込む。
「く、フェイト!」
「んぐ、んぐ、ごく、んぅ……ちゅぅ、ちゅう」
「うわぁ、フェイトちゃん、凄い……」
「ぢゅるぅぅぅぅぅっ……ぷはっ! はぁ、はぁ」
フェイトの口内奉仕は、正に底なしと言っていいくらいの快楽だった。しかし、なのはを無理やり追い出したことには感心できない。フェイトもあくまで善意でやっていて、使命感と忠実さ、そして大きすぎる愛情が暴走した形なのだろう。だがここは、少しお灸をすえてやらねばいけない。
「フェイト。今のはいけないよ」
「あ、父さん……それは……」
「今日はなのはが優先されるべきだろう? 少し考えれば、分かるはずだが」
カイトは優しく静かに、諭すように話しかける。奉仕を終わらせ一息ついたフェイトは、冷静を取り戻し、自分のやったことの悪さに気づいたようだ。バツの悪い顔をして、しょんぼりと沈んでいる。
「あ、あの、カイトさん。フェイトちゃんには、お手本見せてもらえましたから……」
争い事が嫌いななのはは慌てて止めに行くが、ここで追求を止めると、後々に禍根を残しかねない。確かにフェイトはなのはより先輩だが、カイトにとっては後も先もない。大切で、平等に愛している二人なのだ。だから、こういった一方的な暴走は、早めに止めさせなければならなかった。
「フェイト……」
「ごめんなさい、父さん」
「分かればいいんだ。でも、今回だけは少し罰を与えてやらなければな」
しばらく考えて、カイトは一つ趣向を考え出した。今日はフェイトに手を出さず、フェイトの方からカイトに接触するのも認めない。しかし、この部屋から出ずに、カイトとなのはの情事を余すところ無く見ること。カイトの性器というご褒美を、目の前にぶら下げて、それが他人に触られ、奉仕されるのをただ見ていることしか許されない。フェイトにとって、拷問に近い所業だろう。
「そんな……父さん、いやぁ……」
「言い訳は聞かないよ。さぁ、なのは、こっちにおいで」
「あ、はぁい。でもフェイトちゃん、大丈夫かな?」
「最近、少しはしゃぎすぎてたからな。いい薬だ」
毎日風呂に忍び込んで、ローションを体に垂らしすりついてきたり。時にはベッドに夜這いをかけて、気づいたら布団の中でフェラチオをしていたり。本来なら諸手を上げて迎え入れたい行為だが、何事にも限度というのがある。それにこれからは、なのはともう一人を加えて、四人で暮らさなければいけない。フェイトだけがカイトを独占できる訳ではないのだ。
「それじゃあ、もう一度、ご奉仕させて頂きます。ええと……ちゅ、んぐ、ぢゅぶ、れろ」
もう一度、なのはの拙い口戯が始まった。どうやら、フェイトのそれを真っ赤になりながらもきちんと見ていたらしく、亀頭だけだが口内に含ませ、舌を器用に動かしている。余った棒の部分は、手を使って扱き、裏筋の部分を集中してさすっていた。
「あぁなのは、いいぞ。さっきのを見て学んだみたいだな」
「くぷ、じゅぽ、ちゅぅ、ちゅぅ」
【カイトさんに気持よくなって欲しいのは、私も同じだから。恥ずかしいけど……でも、カイトさんのためなら平気だよ】
なのはは顔を綻ばせながら、口を休ませることなく念話で返答する。優しさと懸命さ、そして誠実さ。最初のフェラと全く変わらないその心に、カイトは深く感動し、興奮していた。
「父さん、ひどいよ、とうさぁん。こんなのないよぉ」
一方のフェイトは、ひっく、ひっくとしゃくりあげ、涙を流しながらも、なのはとカイトの間で高まる雰囲気を感じ、それにつられて更に興奮していった。いつの間にか、その手はスカートやパンティの中から直接秘所に触れて、自分を慰め始めていた。自然と硬くなる乳首を、もう片方の手で弄り、報われない気持ちをせめて発散させようとしている。
「はぁ、あ、やぁん、父さん、なのはぁ……私、わたしぃ」
……父さん。どうして、どうしてなの、なんで私に、ご奉仕させてくれないのぉ……
指の動きは最初から激しく、フェイトの濡れそぼったそこは、ぐちゅ、ぐちゅ、と水音を響かせる。その音は、なのはの耳にも入っていた。目を横に向けると、口を開き、だらしない顔で自慰をするフェイトが見えた。
……フェイトちゃん、こんなに乱れて、めちゃくちゃになって……カイトさんのこと、大好きなんだね、本当に愛してるんだね……
――だけど。自分だって、その気持ちは負けてない。
その証として、カイトをより気持よくさせるため、なのはは思い切って口全体を使い、カイトの太く熱い剛直を飲み込む。途端に嘔吐感が湧き出てきたが、頑張って我慢し、額を寄せ、汗を流しながらも深い奉仕を続ける。
「ちぅ、ぢゅ、ぢゅううううっ」
「くぅ、なのは、出るぞ、口を離すんだ……」
【ううん、このまま、口に出してください】
自分の汚液に慣れていないなのはを気遣うカイトだったが、なのはは構わず奉仕を続ける。
「なのは……っ!」
「う゛、うむぅううう!? んぐ!んんっ!」
「あ、イク、イクぅ、なのはのフェラ見ながら、イッちゃううぅ!」
二度目の射精が始まり、どく、どくと溢れる精液がなのはの喉を打った。口の中で飲み込み切れなかった精液が、なのはの唇とカイトの肉棒の隙間から溢れていく。その光景を見ながら、フェイトもまた絶頂した。
「ん、げほ、けほっ、うむぐ、んっ……」
「なのは、大丈夫か? ほら、慣れてないと苦いんだから、全部吐き出すんだ」
【大丈夫、です。これは、カイトさんのものですから】
少なからず精液を吐き出したなのはだったが、それでも、口の中にある程度の量を残すことが出来た。それを含んだまま、イッたばかりで顔を弛緩しているフェイトの眼前に、自分の顔を持っていく。精液を少しでも零さないよう、念話を使い、話しかけた。
【フェイトちゃん】
「んぅ? なのはぁ……むぐっ!」
「ん、ちゅぅ、んむ、んぐぅ……」
なのはは、フェイトにキスをした。突然の口付けで意識を覚まされ、驚くフェイトだったが、なのはがフェイトの口に舌をいれて、口移しで『それ』を流し込むと、なのはの意図を理解した。
【なのは、これ、父さんの精液……】
【ふふっ、フェイトちゃん、これ欲しかったんでしょ? カイトさんの、苦くて、ねばっ濃い精液】
そう。なのはは切なく自分を慰めるフェイトを可哀想に思い、カイトの精液を口移しであげたのだ。
【え、でも、なのはだって、父さんの】
【だって、フェイトちゃんがお手本見せてくれたから、私、カイトさんをイかせることが出来たんだよ? だから、二人で半分こ】
フェイトは胸が一杯になった。好きな人への奉仕の機会を奪い取り、勝手に事を進めてしまった自分に、なのははこうも優しくしてくれる。がっついた浅ましさへの反省と、なのはの優しさに対する感謝が、フェイトに再び涙を流させた。
【ごめん、ごめんねなのは。私、父さんを気持ち良く出来なくて、なのはに、父さんを取られると思って、わたし】
【いいよ。私だって、フェイトちゃんと同じようなこと考えてたもん。カイトさんにはフェイトちゃんがいるのに、私なんかが混ざっていいのか。って】
……そうだったんだ。だから父さんは、自信のないなのはを優先させたんだ。そんなことも分からないで、私ったら、なんてバカな……
【勿論だよ、なのは。これから、二人で父さんの物になろう。二人で一緒に、ご奉仕しよう】
【そうだね。私も、フェイトちゃんと一緒にいたい。二人で、
指を絡ませ、舌を絡ませ。激しいキスの最中に、二人は真の友情で結び合った。名前を呼び合い、リボンでなく、互いの体液とカイトの精液を交換し合いながら。
【カイトさん、ごめんなさい。フェイトちゃん放っておけなくて】
「いや、いいよ。むしろ、なのはがこうしてくれて助かった」
出すぎたことをしたかと謝るなのはだったが、カイトは笑ってそれを許す。カイトにとっても、この行動は予想外だった。だが、このままカイトが事を収めるより、間違いなく二人にとって良い結末だろう。
「ん、ちゅ、ぷはっ……なのは」
「フェイトちゃん……」
名残惜しげに唇を放し、乱れた服を整えて。二人は揃ってカイトへ振り向き、にっこり笑って宣言した。
「父さん」
「カイトさん」
「私たち二人のご奉仕で、
うーむ、エロ書くまでが長い、長すぎる……
というかこれ、なのはと言うよりなのフェイ編ですね。申し訳ありません。