SMプレイになってます、苦手な方はご了承ください。
――図書館での出会いからおよそ一ヶ月。『パラディース』でのはやての生活は、今までより遥かに楽しく、豊かなものだった。あてがわれた客室のベッドから起きて、車椅子で大広間に向かうと、そこにはカイトとフェイト、アルフがいる。それだけでも、はやてにとっては革命的な出来事だった。今までは一人きりで起きて、顔を洗い、テレビを見て、自分以外に誰もいないテーブルでご飯を食べていた。それが、どんな時でも隣に人がいて、他愛のないことで笑い合い、じゃれあい、しかもみんなで食卓を囲うことが出来るのだ。
初めてみんなで「いただきます」と言った時など、はやては大泣きに泣いた。今まで人前で泣いたことのなかったはやてだったが、真っ当に他人と触れ合えるという幸福が感動を呼び、自分を救ってくれたカイトが側にいるから、つい涙腺が緩くなってしまったのだ。しゃくりあげるはやてを優しく抱きしめたのは、意外なことにカイトではなく、フェイトだった。
「分かる、分かるよ、はやての気持ち。誰かに優しくしてもらえて、嬉しいんだね」
フェイトも、初めてカイトと会って、優しくしてもらった時には思わず涙を流していた。だから、はやての心にこみ上げた想いを理解できたのだ。はやては、フェイトにすがりつくように抱きしめ返す。少女二人が抱き合う風景を、カイトは暖かく見守っていた。そして、二人の仲はこれから更に盤石なものになるだろうと安心していた。いくら三人を自分のものにしようと、その中で諍いがあっては無意味なのだ。こうして少女たちが交流する機会を、カイトは重視していた。
【ねえ、カイト。はやてのこと、『操作』しないのかい? 今なら効くと、思うんだけど……】
【今はいい。今はその時ではないんだ】
だから、カイトはアルフの指摘にやんわりと反論するのである。確かに、あの時のフェイトと同じく、今のはやてはカイトに心を開いている。『意識操作』をすれば、一気に彼女を堕とす事が出来るだろう。しかし、こんな所で水を差すのは無粋というものだ。二人が泣き止み、それでもぬくもりを分かち合うかのようにぎゅっと絆を結ぶ光景は、一流の芸術品のように美しく見えた。
――そのためらいが、後にとんでもない出来事を生み出す事になるとは、今はまだ誰も知らない。
朝食が終わった後も、はやての生活には新鮮さが満ち溢れていた。船内の娯楽は数多く、車椅子のはやてにも楽しめるものが多数あった。医務室でのリハビリは辛いものだったが、今までの糠に釘を打つような治療と違って、着実に成果が現れ始める有意義なものだった。それに、友達と一緒に船内を自分の足で歩きたい、という強い意志がはやてに味方してくれていた。まだ車椅子を使わなければいけないが、後半年もすれば自由に歩けるというのが、コンピュータの診断結果だった。
昼食の時間から少し過ぎた時、週に一度なのはも『パラディース』にやって来る。魔導の腕前も近頃はめきめきと成長し、カイトとフェイトが教えることはすっかり無くなってしまった。流石に空戦ではフェイトに敵わないが、一部の分野では勝っている所もあるほどだ。だから、三人と一匹でいる時間の大半は遊びに費やされた。時にはカイトも交えて盛り上がり、遊戯室やロビーは毎週お祭り騒ぎだった。
「あははは、これでカイトさん九連敗や! 後一回で、新しい包丁買ってもらうの忘れんといてな!」
一人の間、手慰みに遊んでいたからだろうか。ゲームに関しては、はやてが一方的だった。カイトが参加する時は、いつも何かを賭けられて、そしてボコボコに負かされてしまうのだ。
「なあ、カイト。大丈夫? ずるになるけど、あたし変身魔法で手伝おうか」
「……アルフ、真剣勝負に手出しは無用だ。問題ないさ、ここから十連勝すればいい話だ。そうだろうなのは、フェイト」
二回り以上年の離れた女の子にからかわれると、カイトもついついムキになり、結局品物を――といっても、おもちゃではなく調理用具や本なのだが――貢がされてしまうのである。毎度その光景を目にしているなのはたち外野組は、頑張って止めようとしているが、どうにも効果なく終わってしまうのだ。
「に、にゃははっ……」
「……う、うん、父さん、頑張ってねっ」
若干引き気味で応援する二人を尻目に、対決は始まり、そして結局カイトの財布が薄くなる結果に終わるのだった。
その後、夜もみんなでご飯を食べて、なのはを高町家に送り、お風呂に入ってベッドにもぐる。暮らしている場所さえ無視すれば、ごく普通の生活と言い換えてもおかしくはないだろう。しかし、はやてにはそれが何よりも素敵なものに感じられて、最高に幸せだった。しかし、その心の奥底では、図書館での出会いの時に芽吹いた種が、黒く歪んだ花実をつけようとしていた――
***
はやては時々、なのはとフェイト、カイトの三人が自分の所からいなくなっていることを知覚していた。離れていくのは二人だけ、そして三人同時の時もあった。彼らは巧妙にはやてに気づかれぬよう去るのだが、鋭敏なはやての直感がそれを逃さなかったのだ。一度だけ、付いて行こうと思ったことがある。しかし、戻ってくる時の幸せそうな顔を見ると、その暖かさを壊したくないはやては追っていくことに躊躇するのだった。
……みんなは、私に隠れて何をしとるんやろうか……
夜、ベッドに潜り込んではやては思いにふける。カイトたちが自分を害するような事をしているとは、一分たりとも考えていない。彼らの笑顔は本物で、現に自分も最高に幸せな毎日を送ることができているのだから。
……なのはちゃんもフェイトちゃんも、カイトさんのこと好きやろからなぁ。カイトさんだって二人を好いとるんやから、もしかして、隠れてラブラブなことでもしとるんかな……
かつて読んだ恋愛小説と重ねあわせて、はやては想像した。カイトと二人が、仲睦まじくキスしたり、抱き合って愛を語り合う。その間には彼らだけの世界が広がっている――そこまで考えると、何故か心にちくり、と針が刺さるのだ。
……なんやろ、この気持ち。私、なのはちゃんとフェイトちゃんを羨ましく思うとるのかな……二人がカイトさんとラブラブしてるのを、嫉妬してるんやろうか……
ここまで考えが至った時、はやては初めて、自分の中にある仄かな恋心を認識した。自分がカイトを想っていて、だから、カイトたちの秘め事に小さく不満を感じるのだと納得ができた。しかし、いざ自分がそうされる場合を想像した時に、おかしなことが起こり始めたのだ。
……あれ? おかしい。私はカイトさんと愛し合いたいはずなのに、どうしてこんなことばかり、思い浮かぶんやろ……
カイトと自分が二人きりで、愛しあう。そんな甘く楽しい光景を想像したはずなのに、はやての心に投影されるのは、カイトに傷めつけられ、苦痛に顔を歪ませる自分の姿だった。しかも、その想像ははやてを不快にさせることなく、それどころかむしろ高揚させるのだ。
異常だった。好きな相手に虐げられるのを望み、それに喜ぶというのは。しかし、恋人と添い遂げる至福を想像すればするほどに、苦痛に悶え、のたうちまわる自分が現れるのだ。はやては、自分の正気を疑った。
……私、カイトさんに痛めつけられたいはずじゃないやろ? もっとこう、優しく、暖かく、幸せになりたいはずじゃ……
幸せ。その言葉が、はやてにとって自分の気持ちに気づく大事な鍵となった。はやてが初めて幸せになれたのは、図書館でカイトにリンカーコアを破壊された瞬間である。『闇の書』の呪いは外れ、監視というしがらみもなくなったあの時、はやては自由になり、
何度も何度も身体を引き裂かれるような、余りにも大きな苦痛は、はやての心に強烈に刷り込まれていた。それが、幸せになることと壊されること、この相反する二つを結びつけたのだ。何かを傷つけられ、壊されるということが、はやてにとって幸せになるということだった。この、とてつもなく大きな精神的矛盾は、はやての理解を完全に超えていた。
どうしてそんなことになったのか。自分の精神が悪意で壊されてしまったのかと考え、暗い気持ちにもなった。しかし、それがカイトの手によって為されたものだと思えば、急に満足感が湧いてきて、むしろそれでよかったかのように感じられてしまうのだ。
そんなはやての感情を、冷静な理性は客観的に捉えていた。まるで無茶苦茶だ。表裏一体のはずの苦痛と幸福が、カイトという触媒を通じて同一になってしまったのだ。自分を壊したカイトに憎しみを抱こうとしても、恋という熱情がそのベクトルを容易に変えてしまう。しかもさらに痛め付けられたいなんて、一体自分はどうなってしまったのか。
……でも、幸せになっちゃうんや。カイトさんに傷つけられて、悲鳴を上げる。そんなことを考えると、身体が熱くなって、なんだかお腹の奥がもやもやしてくる……
しかもそれが、はやての性感情をも隆起させていた。まだぴっちり閉じている秘所へと、布越しにそっと手が伸びる。そして生じる幼く僅かな快感が、はやての思考をさらに性的な方向に加速させていった。
……暗くって、二人きりの部屋。カイトさんはきっと私を叩いて、蹴って。そんなことで興奮してる変態さんな私を罵って。それで、私はとても、とても激しく
「あっ……ふぁ、やぁん……っく!」
カイトに壊される想像と、秘裂からの性感は、知らず知らずにはやてにとって初めての自慰となっていた。その手は最初から激しく動き、特に勃起した乳首をつねり上げる力は強かった。それによって生まれる痛覚が、はやての陶酔の度合いをさらに引き上げていくのだ。
……せやなぁ、かえって甘々にされるのもいいかもなぁ。壊されたいって私の気持ちを知っていて、いけずなカイトさんは敢えて優しくしてくれる。そうやって意地悪してくれるのも、すごく幸せな気分かも……
すっかり夜が更けて、もう眠る時間になっても、はやての暗い興奮は収まらず、愛液が寝間着と布団を汚していった。
今、カイトははやてを堕とすつもりは毛頭なかった。いつか機を見て、なのはやフェイトのように『意識操作』をかけて思考を操ろうと思っていた。自分とともに、甘い爛れた行為をしてやろうと思っていた。しかし、はやてはカイトの全く予想していない方向に心を歪ませ始めた。『意識操作』を介さずに、はやてはカイトに依存しようとしていた――。
***
6月4日。はやての誕生日パーティは『パラディース』船内にて盛大に行われた。この日はなのはの家族や、アリサとすずかも乗船し、大広間はたくさんの料理とプレゼントで賑わった。なのはも、フェイトも、そしてパーティの主役であるはやても、みんな笑顔になっていて、カイトはこの上なく満足していた。
そんな宴が終了し、なのはを含めた賓客が転送されると、船内は急に静かになった。今やカイトの耳には、はしゃぎすぎた疲れで眠ってしまったフェイトとアルフの寝息と、散らかったゴミを清掃するガジェットの駆動音しか聞こえてこない。
ふと、ポケットから一枚の封筒を取り出す。ハートマークのシールで閉じられたそれは、紛うことなきラブレターだった。宴の途中で、こっそり忍ばされたものだ。送り主はおそらくフェイトだと、カイトは予測していた。夜は二人きりで盛り上がろうとか、おおよそそんなことが書いてあるのだろう。
……全く、こんな関係にラブレターも何も無いだろうに……大体、誘う側が疲れてもう寝てしまっているじゃないか……
そんなフェイトに呆れて笑いながら、カイトは封を開ける。すると、驚くべきことに、送り主はフェイトではなかった。八神はやてと銘打たれている。予想外の事態に意表をつかれたカイトは、そのまま手紙を読み進めていく。その中には、驚愕の言葉が書かれていた。
『カイトさんへ。始めて会った時、カイトさんは私のことを「好き」と言ってくれましたね。今もその気持が変わっていないなら、一階の「秘密の部屋」に来てください。そこで私は待ってます』
……なに……? あの部屋を、見つけたのか、はやては?……
自分の領地たる『パラディース』の中で、カイトは恐怖に慄いた。油断していて、フェイトやなのはとともに入り込む所を見られたのか。はやてが何を考えて、あのプレイルームで待っているからは分からないが、とにかく、事態がカイトの手の内を超えてしまったことは確かだった。
……不味いな。どうする? 捕まえて、強制的に従わせるなど反吐が出るが……最悪の場合、はやてが私を完璧に拒絶した場合は、それもやむを得ないか……
騒ぐ心を必死で鎮めながら、カイトは階段を降りて、一階の隠された部屋の前へと訪れた。普段は壁になっているはずの扉は開かれて、そこから差す明かりがカイトを照らす。はやての言うとおり、この部屋で彼女が待っているのだ。いざというときは魔法を使い束縛しようと、意を決して踏み出したカイトの眼前に広がったのは、彼の予想を遥かに超えた光景だった。
装飾を施されていない部屋の中は、銀色の無機質な壁に覆われている。その真中で立ち尽くすはやては、全裸で、必死になって自分を慰めていた。その姿はとても官能的だったが、二つの乳首を洗濯バサミが痛め付け、その顔はよく見ると少しだけ赤く腫れ上がっていた。
「ああっ……あひぃ! カイトさん、やっと来てくれたぁ」
「はやてっ……!?」
「あは、カイトさん、どう思う? ラブレター出して、それでこんな所で裸になって、いやらしいもの見せてる私、どう思うん?」
いきなりそう言われても、カイトには何が何だか分からなかった。珍しいことに、彼ははやての行動に完全に機先を征されていた。そもそも、知識以外は凡人であるカイトが、今まで才覚ある彼女らの上を取ることが出来たこと自体が驚くべきことなのだ。彼の注意深い立ち回りがそうさせたのだが、今回ばかりは運が悪かった。
「ねえ、カイトさん。私のこと、好き?」
「……それは、勿論だ。だから助けたし、ここに招きもした」
「じゃあ、今の私は? この部屋でカイトさんに痛め付けられること考えて、興奮して
痛め付けられる。どうしてそんなことで興奮できるのか。カイトにマゾヒズムの感覚はないし、サディストでも無かったから、到底理解が及ばなかった。ぞくりとした寒気が背中を冷やす。はやては一体どうなってしまったのか。この変化が自然のものとは思えなかったから、カイト自身がが引き起こした因果が返ってきたことだけは分かっていた。
「私な? カイトさんが好きで好きで、どうしようもなくなってしまったみたいなんよ。愛されたいのに、傷つけられたいって、すっごいドロドロした、おかしい気持ちが心に溢れて」
「……」
「カイトさんのせいなんよ? あの日私を
その一言で、ようやくカイトは事情を理解できた。リンカーコア破壊の凄まじい苦痛に、はやての精神が耐え切れず、何処かがねじ曲がってしまったのだ。カイトは自分の不手際を心底呪った。この程度のことが何故予測できないのか、自分の愛するものをねじ曲げてしまったのだと激しく後悔した。それと同時に、無傷ではやてを解き放ったはずが、こうも根の深い呪いがあったとはと驚いた。彼女を縛る呪いは、まだ完全には解かれていないのか。
……しかし、嘆くのは後でも出来る。後悔するよりも先に、やるべきことがあるはずだ……
そう思い直し、カイトはもう一度覚悟を決めた。八神はやての歪んだ愛情を受け止める。そして、『意識操作』を使用してそれを修復し、元の優しい少女に戻してやる。なのはやフェイトの変化とは違い、はやてのこの変化はカイトに強制されたものだ。だから、本人の望むものではないのだ。戻してやって、改めてカイトのものにして、それからはやての意志にまかせてやらなければいけない。だから、カイトははやての屈折した欲望を満たしてやることにした。
「はやて。そんなお前も、俺は好きだ。俺は、どんな風に変わった八神はやても大好きだ」
「カイトさん……じゃあ、私をいじめてくれるんか? いたぶってくれるんか?」
「ああ。途中で泣いても喚いても止めない。やるなら、徹底的にしてやろうじゃないか」
「ほんとか? 嬉しいなぁ。ここにはいっぱい道具があったから、それを使ってたくさんいじめて、エッチな私を、おしおきしてえ」
パーティで浮かべた笑顔と同じような表情ではしゃぐはやて。自分が今から虐げられるというのに、苦しみの感情一つすら無い。そんなはやてを受け止めて、身を挺して治そうとするカイトの行動は、もしかすると正当に評価すべきなのかもしれない。しかし、予想外とはいえ、はやての歪みはカイト自身が為したことだ。
……それに……一度だけ、こういったこともやってみたかったんだ……
しかも、自分の行動を悔やむ最中、こんなことまで考えているのだから、やはりこの男は下衆の極みというべきだろう。
***
数分経って、はやてはカイトに着けられた自分の服装を鏡で見ることになった。それはまさしく、「カイト・フォレスターに隷従する雌奴隷」そのものの姿だった。上半身は黒いベルト、荒縄、そしてバインドで完全に拘束されている。両腕が縛り付けられている背中からは一本のロープが垂れ下がり、未だ自分の足で立つことの出来ないはやてを屋上から吊り下げていた。そんなはやてでさえも、美しいと思えるのが今のカイトだったし、はやてもまたこの体勢こそが、自分のあるべき姿であると信じているのだ。
「はやて、どうだ? 今のお前はどうなっている?」
「はい……おそそもおっぱいも、恥ずかしい所全部、カイトさんに丸見えになってます。自分で身動きがとれへんので、カイトさんに好き勝手にされてしまいそうで」
「『されてしまいそう』じゃない。『する』んだ。これから、タップリとな。興奮したか、この、変態が」
「はいぃ、興奮して、おそそ濡れてますぅ」
「まだ九つの女の子が、そうやって男を誘う淫売になるとはな。全くいやらしくて、反吐が出る。たっぷり躾をしてやらないとな」
カイトが罵る度に、はやては身体をビクン、と震わせ、その陰部からは締まりなく愛液を垂れ流す。その顔は喜悦に満ちあふれていた。カイトからの罵倒の言葉は、はやてにとっては自分を骨抜きにする甘い愛のささやきと同じであった。対するカイトは、そこまで興奮してはいなかった。確かにはやてを思う存分、好き勝手にするのは魅力的であるが、どうにも自分の柄ではないのだ。しかし、そのある種冷めた態度こそが、カイトの冷徹ぶりを引き立たせ、はやてをくらくらさせるのだ。
「どうした。何故喜んでいる」
「それはぁ、私、カイトさんに罵られるのも、叩かれるのも好きな変態さんやから」
「開き直るんじゃない。それがいけないことだと言っているんだ。このままではお前は一生、縛られていなければいけないぞ。そんな情けない姿を、フェイトやなのはに見せたいのか?」
「あは、それも、ええかもなぁ」
「……全く、救いようがないな。どうしようもなく変態だ」
今の言葉は、半分本音が入っていた。もはやはやてに羞恥心はほとんど残っていなかったのだ。
「こんなだらしなく醜い女を、人扱いするわけにもいかない。これを着けろ」
「あ、それって……」
「首輪だ。今からお前は、俺の所有物。人ではなく、ただの理性ない動物であるということだな」
カイトが持ってきたのは、はやての首にピッタリはまる、赤い皮の首輪だった。外れないように、立派な南京錠までかかっている。その銀色のネームプレートには既に「はやて」と銘されていた。プレイのために用意したものだったが、まさかこんなに本気で使うことになるとは予想していなかった。カチャリ、と金具を閉じ、カギをかける。すると、はやては首を撫でられた犬のように喜びに呻くのだ。
「はやて。お前はこれから俺を、何と呼ぶべきなのか、分かるな」
「はい、『ご主人様』。私、八神はやては、ご主人様の奴隷です」
「いい子だ。ご褒美は、何がほしいか」
「嬲ってください。私を思い切り
カイトは椅子に座り、自分の膝の上にはやての上半身を置いた。縄とベルトで縛られて、少し赤くなっているはやての柔肌が目に毒だった。カイトははやての尻をぎゅうっと鷲掴み、力を入れて揉みしだく。揉むと言うよりは掴んで皮膚を破こうとするようなもので、うっ血の後が残るほど激しく、苦痛を伴うものだった。しかし、ぎゅっとされる度にはやては嬌声を上げ、涎を垂らしながら秘所を濡らしていく体たらくだった。
「まだ九歳の女の子のくせに、そんなだらしなくよがるな、このド変態の雌豚娘が」
「あはぁ、ごめんなさい、ごめんなさい! はやては雌豚です、お尻ひどくされて、感じちゃう変態ですぅ!」
次に、カイトは平手を作り、勢い良くはやての尻を叩き始めた。スナップを効かせて、パシン、パシンと強く叩いたので、はやての尻はあっという間に溢血の薄紫から赤色に変わっていった。
「豚が、人間の言葉を話す必要は無い。鳴け。お前みたいな雌豚はそれで十分だ」
「ああぁっ、ぶひ、ぶひぃん! も、もっとぉ、叩いてぇ」
「誰がしゃべって良いと言った、鳴けっ」
「あ、い゛っ、はひぃいぃ、ぶひぃ、ぶひ、ぶひぃいいいいいい!」
はやてが
……はやて……綺麗だ。車椅子で本を読んでいるお前も、明るく遊んでいるお前も、こうやって恥辱にまみれているお前も、とても綺麗で美しい……
どうにも食わず嫌いというものがあったらしい。カイトはこの行為に段々と嵌り始めていた。その欲望は、硬くなった男根の形をとって現れる。
「雌豚」
「……ぶひぃ」
「咥えろ」
なのはやフェイトに散々フェラチオをさせてきたが、高圧的に命令するのはこれが始めてだった。その一言だけで、はやては全てを了解したようだ。口で器用にチャックを下ろし、出て来た剛直を口に入れる。初体験だというのに、口の奥深くまでを使って飲み込んでいた。
しかし。はやてが本当に望むのは、こんな『奉仕』ではない。そのことを、カイトはしっかりと知悉していた。舌を動かし、奉仕に入ろうとするはやての頭を掴み、その喉に向かって亀頭を叩きつけるように、掴んだ手を強引に押しこむ。
「むぐっ!? ん、んぐぅ!?」
「どうした。どうせ下手くそなフェラでは射精出来まい。だから、俺の手でお前の口を使ってやってるんだ。感謝しろ」
「ん゛っ! ん゛っんぐっ! ぐ、ぐぶぅ゛!」
イラマチオである。はやてを人としてではなく、ただの性欲処理の道具とみなす。普段のカイトなら絶対に出来ないプレイだ。支配欲、征服欲といった負の欲望をカイトは吐き出し、はやてはそれを受け止める。これも一つの、愛の交歓なのだろうか。
……あぁ、ご主人様のちんぽ。硬くて熱いのが、喉を叩いて。口の中突き破って、直接頭の中ぐちゃぐちゃに犯されてるみたいで、すっごぉい……
奥まで突っ込まれている嘔吐感のせいか、はやての目からは涙が溢れていた。しかし、瞳はどろんととろけたようになっていて、ただ虚空を見上げている。愛するものに痛め付けられ、犯される狂喜の中で、はやては、確かに
「出すぞ、受け止めろ」
単調で、無感情な二分節の後に、長い長い射精が始まった。
「……ぐ、ん゛、ん゛んぅぅぅぅぅぅう! ぐ、ぐぶ、ぐぅぅ!」
……せーえき、出てるぅ……あつぃぃ……ああ、また、イッちゃう……
はやての小さい口内は、あっという間に精液で埋まり、飲みきれなかった分が外に流れだす。数回力を入れて、溜まっていたものを全て出したところで、ようやくカイトははやてを開放した。はやては濃く粘ついた白濁液を全て飲み込もうとしたが、慣れていない彼女には無理なことだった。
「……ん、ごほっ! かはっ! げふっ!」
はやては激しく咳き込み、口から、そして鼻の穴からも精液を吐き出す。カイトはそれを、ひたすらに冷淡な目で見つめていた。
「……俺のを吐き出していいとは、言っていないぞ」
「あ、ご、ごめんなさぃ」
「人の言葉を、使っていいとも、言っていないだろうがっ」
「あっ! が、ぶひ! ぶひぃ!」
「主人の手を煩わせる、変態雌豚が。どうだ、これがいいんだろうっ」
カイトは、はやてを吊り下げている縄を左手で持ち上げて、その頬を強くビンタする。その厳しい仕打ちに、はやては頬を腫らしながら、喜色満面の笑みを浮かべて、本物の豚のように浅ましい鳴き声を上げる。正しく退廃と狂乱の宴であった。今や真性マゾ奴隷になっているはやてには、これこそ最高の誕生日プレゼントだった。
「どうした、何故笑う。蔑まれているんだぞ。それすら理解できんとは、やはりお前には、愚鈍な豚がお似合いだ」
「ぶひ、ぶひぃ、ぶひぃいぃん!」
「それでいい。今は、好きなだけ啼け。、もっともっと、
***
日付が変わり、散々虐げられたはやてがやっと飽和状態になり、気絶した後。起きがけに更なるおねだりをしようとしたその瞬間、カイトはようやくはやてに『意識操作』をかけることが出来た。こんがらがっているはやての精神を元に戻してやり、ついでになのはやフェイトのような洗脳処置を付け加えて。そして目覚めたはやては、元の優しく、暖かい八神はやてに戻っていた。
「あ、カイトさん……」
「気がついたか」
はやての身体には、縄もベルトも無いし、吊り下げられてもいない。気絶している間に、シャワーで体液を洗い流し、服を用意し、着替えさせたのだ。はやては視線にカイトを見つけると、にぱっと微笑み、笑顔で告げる。
「あ、すんません、ご主人様、でしたっけ。もう、喋ってもいいんですか?」
「なっ……!?」
その底抜けに明るい隷属宣言に、カイトは唖然とした。まだ狂いを治せていないのか。はやてに残された呪いには、流石の『意識操作』も効き目がないというのか。目の前が真っ白になったかのような失望感を味わい、目に見えて打ちひしがれたカイトを、はやては笑った。
「く、ふふっ、なーんて、冗談やよ。驚いた?」
「……冗談にならないぞ、それは」
カイトは、どうにもはやてとは相性が悪いというか、簡単に出し抜かれてしまうらしい。事実、今までの二人とは違い、はやてにはいつも驚かされてばかりだった。兎も角、はやての精神はまた健やかな状態に戻ってくれた。これで、はやてはようやくカイトのものになったのだ。
「……ごめんな、カイトさん。辛かったやろ。私のわがままに付き合ってもろうて」
「そんなことはない。むしろ、新しい何かに目覚めそうになったかもしれないな」
「やぁん、そんなこと言うなんて、カイトさんのえっちー、すけべー、サディストー」
「何を言う。お前のほうからこっちにやってきたくせに、この超弩級マゾヒストが」
「やぁぁ、また犯されるぅ」
互いに抱き付き合い、じゃれあう二人。しかし、はやての唇がカイトの耳元へと近づけられたその時、微かな囁きがカイトの鼓膜に響いた。
「……せやなぁ。私、本当にマゾになっちゃったかも」
もう一度、カイトの動きが止まる。
「なにっ?」
「だからぁ、二人きりの時は、カイトさんもサディストになってええんやよ?」
「……どういうことだ」
「心が治っても、身体の方が快感を覚えとるみたいなんや。ふつーに、甘々にエッチなことしたいのも確かなんやけど、さっきみたいに激しくされたいって気持ちも、まだちょっとだけ残っとる」
「完全には治ってないと、いうことか?」
「だぁって、私カイトさんに
はやての心は、確かに正常に戻った。しかし、どうやらはやてには元からその素質があったらしく、さっきまでのSMプレイの経験を、激しい熱を持った甘い記憶として受け取っているようなのだ。
「だから、これからも末永くよろしゅう頼みます、ご主人様♡」
はやてはその言葉とともに、カイトの唇をついばんだ。入ってくる舌を舌で絡ませつつ、こういうのも悪くはないなと、カイトは考えた。
……痛みからの歪みではなく、はやてが自分の意志でそれを望むなら。受け入れてやらなければな……
口づけは更に激しくなり、服越しの愛撫が始まる。第二ラウンドは、先程までの恥辱と陶酔に満ちた狂気の宴とは違い、ただ甘く、いたわり合う、情愛の儀式になろうとしていた――
SMって難しい。でも、はやてちゃんには似合うと思うんです。