なお、駆逐艦2隻はリメイク版オリジナルです。
次号 敵の潜水艦を発見! (ダメダ! ダメダ! ダメダ!)
2月15日 呉軍港 大和艦内
「申し訳ありませんでした! 東ティモールの件は史実でもあった事例に関わらず、忘れていた自分のミスです!」
連合艦隊旗艦となっていた大和艦内の連合艦隊長官室で開口一番にそう言って滝崎は謝罪した。
「いや、『本来なら敵に回っていた宗主国イギリスの意向から離れる事を自治領のオーストラリアが取る』と言う事を予想しろ、と言うのが無茶な話だ。これは勝利に驕った我々全員の責任だ。それよりも、今は問題への対応だ」
滝崎の謝罪にそう言って堀長官は話を終わらせる。
「東ティモールは我々第四艦隊の担当範囲です。もちろん、行かせて頂きます」
滝崎の横に居た松島宮が答える。
だが、滝崎は神妙な顔になる。
「何か疑念があるかね?」
「あっ、いえ…帝都空襲の件が気掛かりでして…」
それに気付いた堀長官の問いに滝崎は正直に答えた。
「ドーリットル空襲が『史実』では4月18日ですが、今月の頭にはB25による空母からの発艦を成功させております。無論、機材の用意・改造や空母の回航など準備がありますが…その日程が繰り上がる可能性もありますので」
「いや、お前の言いたい事は解るが…パイロットの訓練はどうする? 幾ら国力のあるアメリカとは言え、そんな特殊な状況をやり遂げるパイロットを訓練し、揃えるのは難しいだろう? まさか、精神主義と神の御加護に全てを任すのか? それはそれで無茶苦茶だろう」
「史実以上に不利な状況でアメリカが焦るのは解るが、一発逆転を狙っている以上、慎重にならざるをえない部分はある。そこまで急激に変わる事は無いだろうな」
滝崎の不安に松島宮と堀長官が諌める。
「それにだ、小澤中将の第一機動艦隊が本土に居る。もし、早まったとしても、事前哨戒がしっかり仕事していれば、まず取り逃す事は無い筈だ」
今まで黙っていた宇垣参謀長が言った。
「それと、流石に第四艦隊ばかり任せるのも考えものだ。よって、五航戦も支援として同行させる」
「五航戦もですか? 支援はともかく、第一機動艦隊の方は大丈夫なんですか?」
堀長官の言葉に滝崎が質問する。
「あぁ、一航戦は散水機の取り付け作業が完了し、同じく散水機を設置していた二航戦も一足先に所属部隊に戻ったから、復帰可能だ。それに、今回の件がアメリカの謀略の場合、対応しに来た君らに対して罠を張っている可能性もある。念の為だが…戦力は多いに越した事は無いだろう?」
「まあ、確かにそうですが…」
「それにだ…本来なら、こんな時になってしまって申し訳ないが、第四艦隊へ新たに艦艇を配備する。既に横須賀へ回航しているから、五航戦と陸戦隊が揃い次第、向こうに向かってくれ」
堀長官がそう言うと、宇垣参謀長が松島宮と滝崎に『配備辞令書』を手渡す。
「…軽巡2隻と駆逐艦2隻、計4隻を第四艦隊に?」
「あぁ、と言っても軽巡はウェーク島で鹵獲した物で、駆逐艦は新造艦だ。両方とも艦政から『現場に出して使ってくれ』と要望が出ていたんだが、この類を受け入れてくれそうなのが第四艦隊しかない、と言う事で君達に預ける事にした」
「なるほど…便利屋ではない、と言いたいところですが、第四艦隊の艦艇が少ないのも事実。ここはありがたくお受け致します」
「是非そうしてくれ。それと、済まないが…東ティモールの件、頼んだぞ」
堀長官の言葉に松島宮と滝崎は敬礼で返した。
「あの方々が松島宮殿下と滝崎大佐、ですか?」
2人が退出した後、長官室には堀長官と宇垣参謀長が残っていた。
そして、そこに戦艦大和の艦魂である大和がそう言いながらか現れた。
「あぁ、君が指揮下に入る事は今時戦争ではないと思うが、ちょくちょく会う事になるだろう。まあ、今回の件が無ければ、普通に君を紹介出来ていたんだがね」
『まったく、時期が悪い』と言いたげに堀長官が言った。
「…こんな事を言うのは失礼ですが、御二方共に普通の方の様に見えるのですが?」
「あぁ、そうだ。皇族だ、侍従だ、と言ってみても、見た目は普通の若い海軍士官だ。だがね、2人共…いや、松島宮殿下以上に滝崎君の精神的重圧はかなりのものだよ」
大和の言葉に肯定しつつも、諭す様に語る。
「何故ならば、彼は『彼の世界の我々の想い』を背負っている。つまり、背負っている量は単純でも倍だ。そこに彼の世界での悲劇を防がなければならない、自分の間違い1つで悲劇がおきると言う、『知っているが故』の責任感、歴史を変える為に払われる犠牲を背負う覚悟…君は日本海軍の象徴として、いきなり『それ』を背負えるかね?」
堀長官の問いに大和は顔を青くし、何も答えない。
「ゴホン…長官、少し脅し過ぎでは」
わざとらしく宇垣参謀長が咳払いをしながら言った。
「あぁ、すまない…まあ、今は『そう言った人間が居る』と言う認識だけでいい。下手に身構える必要もないよ」
そう言って堀長官はこの話を終わらせる。
そして、大和はこの言葉を少しだけ理解していた。
何故なら…責任を感じていたからこそ、開口一番に滝崎が謝罪をしていた、と言う事がわかっていたからだ。
数時間後 横須賀 山城艦内
「…以上、追加配備艦艇、並びに五航戦と陸戦隊が揃い次第、我々は東ティモールに向かう。既に出来る範囲の準備をしていると思うが、追加を含めた確認を行う様に…木村少将、なにか?」
共有事項の説明も終わり、そう言って締めようとした時、松島宮は木村少将が手を挙げたのを見逃さず、用件を問う。
「はい、五航戦は臨時だからよいとして、追加配備艦艇の配置はどうしますかな? なにせ、4隻が軽巡や駆逐艦となりますと、指揮系統上にウチ(第六水雷戦隊)の下になるかどうかもありますので」
「その件についてですが、今は4隻は神鷹の直衛に就いてもらいます。今回は急ですし、練度確認の合同訓練は時間的に無理ですので」
木村少将の問いに滝崎が答える。
「他に質問は? 無いのであれば、解散とする」
松島宮のその言葉に集まっていた面々はそれぞれの場所に散っていく。
「なあ、滝崎、少し訊きたいのだが?」
「ん? なに?」
そのタイミングを見てか、エーディットが滝崎に話し掛ける。
「その4隻の名前だが…読み方解らないから教えて」
「あぁ、いいよ…えーと、『フェニックス』は『九頭龍(くずりゅう)』、『セントルイス』は『嘉瀬(かせ)』。駆逐艦は『広戸風(ひろと(ど)かぜ)』と『那岐颪(なぎおろし)』だ」
「……あぁ、なるほど…にしても、よく読めるな? このナギ…うん、漢字が独特過ぎて解らなかったけど」
「いや、駆逐艦に関して言うと、この2隻は室蘭で建造してて、この間の視察もこの2隻を見に行ってたからさ。流石に『颪(おろし)』は言われないと解らんよ」
「……ううむ…やはり、日本の漢字は難しい…あっ、すまない、ありがとう」
そう言うとエーディットは眉間に皺を寄せて、艦名をブツブツと言いながら離れていく。
「…なあ、エーディットはホントに日本語でレポート書く気でいるんじゃないか?」
「うーん…どうなんだろうか? いや、それはそれで面白そうだから読んでみたいが…生真面目なドイツ人ゆえか?」
滝崎のボヤキに松島宮はそう言うしかなかった。
なお、第六水雷戦隊の駆逐艦や追加配備艦、並びに五航戦と陸戦隊を率いて第四艦隊が出撃したのは3日後の事だった。
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