なお、東ティモール侵攻を含めた作中のネタ元は『白い人が仕掛けた黒い罠 アジアを解放した日本兵は偉かった』(WAC株式会社出版)より抜粋したものです。
次号 フラグが立つ
3月10日 モルッカ海 山城艦内長官公室
「…と、史実の『東ティモール侵攻』はオーストラリア軍とオランダ軍の『保護占領』の名目で実行されています。まあ、オランダ軍は余り動いておらず、実際に動いていたのはオーストラリア軍ですが…我が方の逆侵攻でオーストラリア軍はオランダ領寄りの山岳地帯でのゲリラ戦を展開、米豪遮断作戦もあり、東ティモールの重要性が増し、守備隊の常駐・増派が決定、終戦まで駐屯する事になりました」
3月7日に交代部隊が到着し、引き継ぎを終えた後、第四艦隊は日本に向かっていた。
そんな中、滝崎は長官公室で松島宮、神中佐に今回の『東ティモール侵攻『事件』』の『史実』との違いを説明していた。
(なお、室内には3人用のコーヒーor紅茶入りミニティーポット2つが神鷹によって置かれている)
「じゃいが(ですが)、こっちの世界ではアメリカの仕業、と?」
「無論、オーストラリアも1枚噛んでいる事は間違いないでしょう。問題は『利用された』のか、『協力した』のか、ですが」
「イギリスからの中間報告だけなら、『オーストラリア軍は動いていない』そうだからな。まあ、故に『軍が動いていない=オーストラリアが関わっていない』の図式にならないのが、イギリスに同情すべき点だがな」
神中佐の問いに滝崎が答え、それに松島宮が捕捉を入れなる。
前号の安田大佐との会話でもそうだが、この時、日本側には『実行犯がオーストラリア軍である線は薄いのではないか?』と言う疑いがあった。
実は第四艦隊が東ティモールへ向かう途中、パラオで給油した際に本土から『イギリス側からの中間報告』を聞いていた。
現状、イギリスの連邦国であるオーストラリアは『戦時統帥権』の関係でオーストラリア軍正規軍戦力は全てイギリスの指揮統括下にあり、イギリスはその動向を掌握出来る立場にあった。
故に今回の騒動が発生直後にイギリス軍は全オーストラリア軍の動向を洗い直したのである。
その結果、『中間報告』の形で出された『洗い出し』は『オーストラリア本土を含めたオーストラリア軍の動向に異常は見られない』であった。
無論、これは発生直後の初期調査であり、時系列的経過が判明した以上、詳細的な洗い直しが実施されるのだが。
(なお、この『中間報告』はイギリス軍の動向把握に繋がる為、特にエーディットの前では下手に公言していない)
「エーディット中尉の『好事家の指摘』が事実だったとき(場合)、アメリカが何を狙ったか…ですな」
「まあ、真の意図は解らんが、表面的な意図としては『現状の打開』だろうな。後で諸々解ったら、更に追い詰められる事になりそうだが…でだ、その様子だと、何か言いたそうだが、とっとと吐け、滝崎」
「うん、なんで尋問されてる犯罪者役になるのかな? まあ、事実だからいいけど…先程言った『守備隊の常駐・増派』によって駐屯した守備隊の『痛快話』があってね…」
……史実の日本軍はポルトガル側と交渉し、幾つかの交換条件(現地の人頭税減額等)を出した後に駐屯する事になる。
そんな中でおきたのが『ティモール逆無線』と言う駐屯部隊が連合軍を終戦まで騙し続けた『痛快話』だ。
きっかけは駐屯部隊が原住民と友好的な関係にあった事による、『告発』だった。
ある時、ある原住民の村の住人達から『夜中に彷徨いている連中がいる』との内容の通報が入り、彼らは『もちろん、住人でもないし、日本兵でもない。日本兵なら一声掛けて通る筈だ』と言って『侵入者』がいると駐屯部隊に言い出した。
これに駐屯部隊司令官は部隊を動員し、村人達と共に周辺の捜索を開始した結果、現地兵2名を含むオーストラリア軍潜入員らの一団を発見、全員を捕縛拘束し、通信機と暗号表を確保する事に成功する。
その後、駐屯部隊は終戦まで『潜入員』と偽って連合軍を騙し続け、足りない物質を提供させたり、600人程の駐屯部隊を25倍に膨らませ、更に要塞化も完成していると『虚報』を流し続け、見事に連合軍を出し抜き、終戦まで持ち堪えたのであった。
「…なるほど、確かにそれは痛快な話だ。で、どんな『悪さ』をする気だ?」
「いやいや、悪さって…東ティモールがどうなるかは解らないが、可能であれば現地に『通信傍受隊』を置きたい。そうすれば、今後オーストラリアとアメリカの動きを監視出来る筈だ」
「ふむ、私は『面白い悪さ』だと思うが…神中佐、年長者としての意見は?」
「今しゅ(今回)の件で、オーストラリアがアメリカとあんちゃく(密かに)手をくん(手を組んで)いた以上、こっちも聞っ耳(きっみん)たっぺる(立てる)のは当然かと…かいっ(帰っ)て、堀長官達にもす(申す)べきじゃっ」
「うむ、決まりだな。私は要望書を書くから、滝崎は神中佐と詰めれるところまで詳細を詰めておけ。アメリカとオーストラリアが要らん事をしたんだ、出来る限り早く置いて、再び悪さをしても対処出来る様にすべきだから…いっその事、計画書自体作って、堀長官や山本総長に投げてしまえ」
「松島宮、君、何気にエゲツい事言ってない?」
「アホか、完全に我々の手から離れるし、手に負えん話を『計画は作りますから、そっちでやって下さい』と託すだけだ。やるだけの事はやってるぞ」
松島宮の返答に苦笑する滝崎と神中佐だった。
その頃 エーディットの部屋
「う〜〜〜ん…よし、出来た」
書き終えたと同時に伸びをするエーディット。
机には『東ティモール事件 概要報告書』と題名が書かれている報告書があった。
「さて、後はこれを本国がどう受け取るかだが…まあ、流石に今回の一件がイギリスに不味いのは確実だな」
そう呟きつて苦笑いを浮かべながら、椅子に背を預ける。
「お疲れ様です。紅茶になさいますか? それともコーヒーで?」
「あぁ、すまない。紅茶を貰う」
そう言って神鷹から仕事終わりの一杯を頂く。
「ふぅ…やはり、シャルの紅茶は美味いな。だが、あのマッチャは…どうも…」
「そうですか? まあ、確かに最初は飲み慣れないですけど…慣れたら美味しいですよ?」
「そ、そうか、ふむ…やはり、慣れか…日本人だから、慣れてるわな…滝崎だし」
「……あの、エーディットさん、つかぬ事を伺います…が?」
「ん、なんだ?」
「そのー…滝崎大佐の事、好きなんですか?」
「………………へぇ??」
神鷹の問いに間抜けな声を出すエーディット。
「あぁ、やっぱり…気付いていらっしゃらない様ですが、事ある事に滝崎大佐の御名前が出てますよ。特に最近は」
「✦¥※✳✙∞〒√§∴¥〆ほ、本当か!!?」
声にならない驚きの後、漸く言葉を紡ぐ。
「はい。先日、ディリで滝崎大佐をバイクに乗せて走った事を嬉しそうに話しておりましたよ? 数日前には御茶菓子のお話を滝崎大佐としておりましたね。更に前は…」
「あっ、いや、もういい…わかった…」
神鷹の言葉に顔を真っ赤にさせながら考え込むエーディットだった。
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