有名人2人が出てきます。
次号 史実路線フラグ
3月27日 中島飛行機本社
3月25日に横須賀に帰還した第四艦隊。
修理・点検が完了した加賀・土佐と入れ替わりに被雷した山城が点検と鹵獲したMk14魚雷引き渡しの為に呉へと向かった。
レナータとエーディットはレポートの作成と提出に向かい、松島宮・滝崎の2人はと言うと……
「東ティモールの件、お疲れ様でしたな、御二方」
「お久しぶりです、中島社長。本日はよろしくお願いします」
中島飛行機本社工場に視察へ来ていた。
「生産の件は大丈夫ですか?」
「戦争開始前に新旧アメリカ製製造機械や機材を大量に買い込みましたからね。今のところは大丈夫です」
「それは良かった。只でさえ、生産能力に差がある以上、少しでも生産数と質の維持・向上は必須な話だからな」
「えぇ…ささ、これで中に入りましょう」
中島社長自ら安全ヘルメットを2人に渡して、案内を始めた。
本社工場内
「ほう…あれは鍾馗だな?」
「はい、陸軍に納入する物です。台湾空襲、並びに殿下の第四艦隊での活躍で、陸海軍にあった重戦に対する苦言も減ったそうです」
本社工場の生産ラインを見た松島宮の呟きに中島社長が答える。
「ふん、そんな苦言は言わせておけ。どうせ、これからその有用性を散々見せる事になるのだしな」
「確かに…殿下達が東ティモールに行っている間に、日本本土空襲が繰り上がり実施されるのではないか、と内心ヒヤヒヤしておりましたよ」
「その恐れは滝崎も抱いていたがな。流石のアメリカも、プロを揃えて作戦を実施するのには時間が掛かる、と言う事だな」
チラリと滝崎を見ながら返す松島宮、それに苦笑いをうかべる滝崎、納得する中島社長。
「まあ…そうなったとしても、此方にも『それをやる手段』がある訳なのですが」
ニヤリと悪い笑顔の中島社長。
「では、中島社長、本日の『本題』の方を」
「えぇ、行きましょうか」
滝崎の言葉に中島社長は答えた。
工場区画に隣接した滑走路と格納庫の区画。
その中でも大型機が納まる大型格納庫へと歩み…ではなく、車で向かう3人。(車の運転は運転手)
その大型格納庫の前に海軍の第三軍装を着た士官が待っていた。
「お初に御目に掛かります。特別陸上攻撃機隊『神雷』部隊部隊長の野中五郎少佐であります」
松島宮と滝崎が降りると間髪入れずに士官…野中少佐が敬礼と共に挨拶をする。
「うむ、御苦労。ところで、野中少佐。野暮な質問で済まないが、本日の視察の案内は中島社長と私は聞いているのだが?」
「はっ、自分も本来は配備機の受け取り調整で参りましたが、偶然にも殿下の視察があると聞きまして、急遽案内役の1人となりました」
「なるほど(ふ〜ん、『偶然』…な)」
(間違いなく、堀長官と山本総長、中島社長が図ったね)
2人が横目で中島社長に視察を送ると、気付いたのか、知らん顔をする中島社長。
「それと少佐、気を悪くするかもしれないが、『野中五郎』となると、兄上殿は…」
「お察しの通り、高砂族遊撃隊の野中四郎中尉です」
滝崎は言わずもがな、松島宮は何処か聞いた事のある苗字と見た事のある顔であるが故の問いはピタリと当たった。
「やはりか…兄上殿は壮健か?」
「はい、フィリピン陥落後に現地で再会致しました。兄から、『感謝をしております』と」
「私は当然の事を言ったまでなのだがな…おっと、色々と横道に逸れていたな。すまない、野中少佐。貴官も忙しいだろうに、引き留めてしまったな」
「いいえ、兄の伝言を伝えられただけでも僥倖です。では、案内の方を」
そう言って野中少佐は格納庫の人員出入り口を開け、先に入る。
続いて3人が入ると、一機の4発機が鎮座していた。
「『二式大型陸上攻撃機『連山』』です。一応、魚雷2本を搭載し、対艦攻撃にも使用出来ますので『陸上攻撃機』になっております」
史実であれば試作機4機の製造で終わった『十八試陸上攻撃機』がそこにあった。
「『新型陸攻を開発している』との噂は聞いていたが、4発機とは恐れいったな」
既に知ってはいたが、野中少佐に悟られない様にあえて知らなかった風に演じて話を進める松島宮。
「確かに大馬力発動機の開発には四苦八苦しましたが、各社の協力と開発陣の頑張り、更にユダヤ人科学者達のお陰でなんとか漕ぎ着けました」
「ほう…アメリカはB-17を自慢していたが、我が方にも匹敵する物があるとなれば、流石に馬鹿には出来んだろうな…野中少佐、もちろん、アメリカの鼻を明かせるな?」
「はい。時が来ましたら、存分にお見せ致します」
「うむ…それまでは存分に訓練に励むよう、隊員に伝えておいてほしい」
「わかりました。殿下のお言葉、皆が聞きましたら、奮起間違いなしでしょう」
暫くして 社長室
その後、暫く連山を見回った後、本来の用件の為に野中少佐を解放し、2人は中島社長の案内で社長室へとやって来た。
「さて、御二人には今回の件で、更にはこれからも色々と『お世話』になっている御方に会ってもらいますよ」
そんな含み有りまくりな言葉の後に社長室のドアを開ける中島社長。
中に居たのは…誰もが一度は名前を聞く世界的権威である科学者。
「殿下、アルバート・アインシュタイン博士です。我が社では博士はエンジン開発を主に担ってもらっています」
「どうも、博士。ご高名は耳にしております」
「初めまして、殿下。殿下の事はハルピンでのユダヤ人大会の件以降、色々と聞き及んでおります」
中島社長の紹介に松島宮とアインシュタイン博士が握手をする。
「侍従の滝崎です。お見知りおきを」
「はい、どうも…不躾で申し訳ないが、半世紀以上先の私は何と言われておりますかな?」
あくまで普通に…と思った矢先に、その本人から話を振ってきた。
故に滝崎は中島社長へ顔を向ける。
「済まない、滝崎君。此方に引き込む時に君の事を話していたんだ。故にアインシュタイン博士は一通りの事は知っているんだよ」
「なるほど…私は文系ですので、相対性理論等が幅広く活用され、貴方が後世からも『偉大なる天才』と言われている、としか言えません。また、貴方が気にしているであろう原爆開発の件ですが…アメリカ政府への提言は仕方無いでしょう。私も同じ立場であれば、ナチスドイツが持つ事とその先を考えれば、同じ事する可能性が高い。そもそも、直接的に開発へ関わっている訳でもありませんし、使用決定を下したは科学者の貴方ではなく、ルーズベルト大統領をはじめとしたアメリカ政府です。貴方を責めるのは御門違い…と私は思っています」
……そもそも、アインシュタイン博士は原爆使用を批判した側の人間であり、滝崎としては『世紀の科学者』の高名と貢献以外に思う事はあまりない。
「アインシュタイン博士、滝崎はそこについての分別はついている。『坊主憎ければ、袈裟まで憎い』な人間でない事は保証する。まあ、そうだったら、私自身が絞めてるしな」
「うん、そうだね。漫才のツッコミみたいに締めてきてるね…まあ、原因私だけど」
……場を和ませたい為か、松島宮がそんな事を言い、滝崎が苦笑いを浮かべながらツッコミを入れる。
「あはは…おっと、殿下、良い時間ですし、お昼でもどうですかな? 昼食を食べながら、アインシュタイン博士に連山のターボプロップエンジンの簡単な解説でも」
「何処まで理解出来るかわからんが…まあ、せっかくの機会だしな」
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