最後はこの世界の『MO作戦』の裏話的な駄弁り。
次号 ☆珊☆瑚☆海☆(複数話編成)
4月22日 横須賀鎮守府内 とある一室
この日、帝都から山本総長もやって来て、堀長官と共に待ち時間を利用して話していた。
「な? 滝崎君に任せてよかっただろう?」
「あぁ、そうだな。此方の被害はゼロの一方的な結果になった」
「これでミッドウェーへの心理的負担が減ったのは確実だ。後は敵戦力削減に集中できる」
「それは前々から決まっていた方針だからな。で、鹵獲艦の方は?」
「あぁ、艦政が文句言ってる以外は問題はない。特に新型ガトー級潜水艦の鹵獲は護衛総隊を含めて興味があるそうだ。まあ、その件を含めて『労働過多で殺す気か!?』と言っているんだがな」
「やれやれ…で、ミッドウェーに出す気なのか?」
「とりあえず、エンタープライズは舵機の修理だから早く終わる。修理出来次第、臨時でも航空隊を編成し、作戦に組み込む。余裕があるとは言え、出せる物は出すつもりだ」
「ふむ……わかった。戻ったら、その方向で調整・立案する」
そう堀長官が言った直後、ノックの後に士官が入って来た。
「堀長官、山本総長。ハルゼー中将をお連れしました」
「うむ、丁重にな」
「はい」
そして、士官と陸戦隊員数名と共にハルゼー中将が入って来た。
士官と陸戦隊員は敬礼後、退出する。
「日本海軍のトップ2人が何の用だ? 尋問なら、俺は不利な事を話すつもりはないぞ」
「いやいや、尋問なんてする気はないさ…まあ、こんな雰囲気では説得力もないな。空気を変えようか」
そう言って山本総長は手近にあったラジオに手を伸ばす。
すると、ラジオから陽気にジャズが流れてきた。
(なお、史実でジャズ等が禁止されたのは昭和18年になってから)
「……おい、どう言う事だ?」
「ん? ジャズを日本で流してはならない、なんて法律はない筈だが?」
「戦争中の敵対国の音楽をよく流せるな?」
「別に我々はアメリカを滅ぼす気も、永遠な敵にする気もないからね。それに、戦争中とは言え、娯楽は必要だろう? ちなみに、いまの時間は日本放送協会の『外国の音楽を聴こう』だ」
「………」
山本総長の問いにハルゼー中将が呆気にとられる。
「さて、本題に入ろうか。ハルゼー中将、一発逆転を狙った博打作戦を実行しようとしたのは称賛するが、残念だったね」
「ふん…問題はそこだ…俺達を誘い込むかの様に哨戒網は意図的に下げられ、更に艦隊が待ち伏せされていた。まるで作戦を知っていたかの様にだ。いったいどう言う事だ?」
「そんな此方の諜報能力を曝す様な事は喋れないよ。だがね、敢えて言える事があるとすれば、貴国政府は潜在的な『敵』を作り過ぎたんだよ。国外だけでなく、国内にもね」
山本総長の言葉にハルゼー中将は疑問を問う。
その問いに堀長官は本筋を避けながら答える。
「…くそ、まさか、作戦を承認した政府のせいで足を引っ張られたなんてな…で、俺はどうなる? まあ、どうせ、戦争が終わるまで捕虜生活だろう?」
「残念ながら、そうはならんよ。と言うか、君らには帰ってもらう」
「…………はあ? ちょ、ちょっと待て!? 帰ってもらう、だと? アメリカに帰ってもらうだと!?」
「仕方無い話だ。経済封鎖が原因で戦争になった日本に、3万以上の捕虜を長期間食べさせる余裕は無いのでね。捕虜は一時的に収容するが、治療・療養等を除いて、順次帰国してもらう」
「先日、漸くゴネていた貴国との捕虜帰国協議が完了してね。シンガポール、或いはイギリス本土経由でアメリカへ帰国していただくよ」
「………帰国させてみろ、俺は再び日本に噛み付くぞ」
山本総長と堀長官の話に呆気にとられながら、何とか反論するハルゼー中将。
「さて、そう上手い事いくのかね? アメリカの人事制度を我々が知らない訳ないだろう?」
「まあ、そう簡単に前線復帰は難しいだろうね」
「けっ、そう言われちまうと、反論出来んな」
不機嫌そうにハルゼー中将は言って不貞腐れた。
ハルゼーとの会見が終わった後、山本総長と堀長官はこの後の事に話題を変えた。
「『オーストラリアの『アメリカ軍拠点化』を防ぐ為、動かせる現有戦力をもって先制し、ポートモレスビーを奪取、オーストラリアへ圧力を加え、後の対応への足掛かりとする』、今回の『米豪遮断作戦 即応対応段階』の『目的』か…ある意味、無理矢理な性急感があるな」
「『形が違うとは言え、『MO作戦・珊瑚海海戦』の流れが出来た以上、『史実に近い動き』にした方が対応しやすい』と言うのが滝崎君の意見だ。まあ、『ポートモレスビーの奪取』を謳ってはいるが、実際は『米海軍戦力、特に空母戦力の削減』が目的なんだがな」
「『ポートモレスビーを占領しても、補給線の維持が出来ません。ですが、『誘い』には使えます』と滝崎君の言(げん)だからな。しかし、『米空母が既にオーストラリアにいる』と言う推察は史実を知っているとはいえ流石だな」
「『飛んで来た『オーストラリア軍機』が単発機だった事』、『オーストラリア正規軍以外の駆逐艦がいた事』、『そこから、『アメリカの謀略』だった場合、空母機動部隊が事前に派遣され、事にあたった可能性がある』か…あれは中々説得力があったな」
山本総長と堀長官は互いに頷きながら、話を続ける。
「……やはり、滝崎君と第四艦隊を付けたのは正解だったな」
「最低限、滝崎君は『史実を知っている』からと驕る人間ではないよ。逆に『土壇場でひっくり返る』可能性とその恐ろしさを認識してるから、慎重・堅実・確実に事を進めるからな……まあ、後は彼らに任せるしかないよ」
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