冒頭のハワイの描写は今作リメイク版オリジナルです。
(アメリカ側の絶望感増し増しの為)
この為、文字数約1.7倍になっております。(3500字越え)
なお、オリジナルをご存知の方限定になりますが、名前の漢字を変更しております。(遠→艶)
次号 海戦の閉幕(作戦の閉幕ではない)
その頃 ハワイ 真珠湾 太平洋艦隊司令部 作戦会議室
「最後のドーントレス隊より入電! 敵のアマギ・タイプ1隻に命中弾! 火災発生との事です!」
ノックも無しに入って来た通信士官の報告に集まっていた参謀らの面々が『よし!』と喜びの表情をうかべる。
だが、そんな中、ニミッツ大将だけは冷静に質問した。
「戦果はそれだけか? 敵のオザワ機動艦隊には未だ3隻の空母がいる筈だぞ?」
「残念ながら…更に言えば、第四艦隊が合流していた上、ドーントレス隊の大半がカガに向かってしまったとの事で…また、第四艦隊にショウカク・タイプ1隻が居たとの事です」
苦い表情で答える通信士官。
それどころか、ある種の『爆弾』的な報告まで口にした事により、場がざわめき出す。
「第四艦隊までオザワ艦隊に合流していたか」
「なら、ミッドウェーからの攻撃隊を含めた波状攻撃も跳ね返せる訳だ」
「それより、ヨークタウンのドーントレス隊は何をしている!? なんでカガではなく、空母を狙わなかった!!」
「そのヨークタウンの大半がルーキーだぞ? 頭に血が上って、カガを狙ったんだろう」
「それより、ショウカク・タイプが居るだと? そんな予定あったか!?」
「第四艦隊に臨時編入したんだろう。元々、参加予定だったからな」
そんなざわめきと議論の中、ニミッツ大将はロシュフォート・レイトン両中佐と話していた。
「無事だったズイカクを第四艦隊に、か…第四艦隊も先の珊瑚海海戦に参加していたから、そのまま編入されたのかもしれません」
「だが、被弾したアマギ・タイプが離脱すれば4対3、更に此方はミッドウェー基地があります。まだ何とか挽回出来る可能性はあります」
「うむ、そうだな…そうではあるが…(だが、どうもおかしい。なら、何故ショウカク・タイプの事が『隠れていた』んだ? しかも、わざわざ第四艦隊の中に入れて)」
両中佐の言葉に納得しつも、何処かに今までの疑問を含めた『モヤモヤ』を感じているニミッツ大将。
そんな時、別の通信士官が慌てて入って来た。
「アリューシャン方面から緊急電です!!」
「なんだ? まさか、奴らダッチハーバーに上陸してきたのか!?」
「待て、なら、『アリューシャン方面』とは言わんだろう?」
「…とりあえず、落ち着いて報告してくれ」
通信士官の開口に参謀の1人が反応するも、別の参謀が否定し、その後にニミッツ大将が報告を促す。
「は、はい。ダッチハーバーのカタリナ飛行艇が敵空母からと思われる誘導電波をキャッチ。その誘導電波を辿ったところ、空母は居らず、艦型不明の物を含んだ数隻の巡洋艦と護衛の艦隊を発見した、との事です」
この報告に参謀達は『索敵に出した奴を誘導する為だろう?』や『空母は近場に居て、偶々見つからないだけだろう』等の声を上げる。
が、その報告を聞いたニミッツ大将は自らのモヤモヤが晴れると同時に微妙だった最後のピースがピッタリと嵌った気がした。
「フレッチャー少将に緊急電! 直ちにミッドウェー島の防衛を放棄し、緊急離脱しろ! 撤退命令だ!!」
「お待ち下さい、長官。幾らアリューシャン方面担当の第二機動艦隊が見つからないとは言え、アリューシャンからミッドウェーへの距離を…」
ニミッツ大将の指示にロシュフォート中佐が口を挟む。
が、自分なりの確信を得たニミッツ大将は反論した。
「違うぞ、ロシュフォート中佐! 日本海軍の狙いはミッドウェー島の攻略ではない! いま稼働出来る我が海軍の空母の殲滅だ! ミッドウェー島など、そのオマケに過ぎん! 先のダッチハーバー空襲もその為の囮だ! 既に第二機動艦隊はミッドウェー近辺に近付いている! 我々はギャンブラー・ヤマモトのブラフに騙されていたんだ!!」
「ですが、それなら例の浄水器の電文に反応したりする必要はありません。それこそ、我々に作戦行動やその意図、スケジュールを解読させず、徹底的に通信自体を制限・秘匿すれば…」
「レイトン中佐、それこそヤマモトとホリが考えた『ブラフ』の方法だ。敵は我々が暗号を解読してる事を知っていて、わざと素知らぬ顔をしているんだ! 我々はショーの内容を事前に台本を盗み見て内容を知っているが、敵は裏の台本を用意し、我々を騙し続けていたんだ! その方が我々をコントロールでき、なおかつ、目的を達成するのに楽だからだ!!」
ニミッツ大将の反論に両中佐を含めた参謀ら幕僚陣が押し黙る。
「で、では、何故、戦力を隠したり、分散させたのですか? それこそ、各個撃破される可能性が…」
「わからんかね? ミッドウェー島攻略を含めて、空母を出させる為の策だ! 下手に圧倒的戦力を見せつければ、我々が虎の子の空母を出さず、ミッドウェー島の防衛を最初から諦める可能性があった。だから、わざとスケジュールを教えたり、戦力を分散したり、隙を見せたんだ! 今の日本海軍は巧妙だ。真理的なところまで我々を騙す気でいるんだからな…それより、早くフレッチャーに…」
参謀の1人の質問に回答しつつ、再度撤退命令の念押しをしようとするニミッツ大将の所へ血相を変えた3人目の通信士官が飛び込んで来た。
「フレッチャー少将からです! 西のオザワ機動艦隊の他に北と南から、敵攻撃隊が飛来中との事!!」
「…しまった…遅かったか…」
その報告にニミッツ大将は苦々しく呟いた。
少し前 ヨークタウン艦橋
「北と南!? 北と南からも敵が来てるだと!?」
「は、はい! レーダーがゴーストを捉えて無い限りは…」
その報告に思わずフレッチャー少将は聞き返した。
西から来る第一機動艦隊からの攻撃隊だけでなく、まさか北と南が加わった三方から半包囲の形で攻撃隊が来るとは思っていなかったからだ。
「北はアリューシャン方面の第二機動艦隊…だとしても、奴等はダッチハーバーに居る筈だ! いつの間にこの付近に来ていたんだ!?」
「司令、それより、敵攻撃隊の対処は?」
「…南の攻撃隊は少数だったな? いま居る直衛機は北から来る奴に回せ! 南は対空砲火と追加で上げる機体で対処する!」
それでもフレッチャーは『妥当』な選択をした…本来ならば。
「南からの攻撃隊襲来! 敵の構成は……えっ?」
「ゼロ!? ゼロだけだと!!」
南から飛来した攻撃隊、軽空母祥鳳から送り出された誘導の星雲と零戦20機の『制空隊』。
追加で上げた、又は上がろうとするF4Fワイルドキャットを文字通り瞬殺し、米機動艦隊上空を『制圧』する。
「北に出した直衛隊を呼び戻せ! このままでは、日本の好き放題に…」
「ダメです、提督! その直衛隊が北の攻撃隊と接触しました!!」
「…なんて事だ…我々は…神に見放されたのか…」
絶望のあまり、フレッチャー少将はそう口にするしかなかった。
その頃 米機動艦隊北方上空
「ほう、どうやら、時期が良かったらしいな。敵の迎撃隊が混乱している」
護衛隊を率いる第二機動艦隊旗艦艶鶴(えんかく 旧エンタープライズ)の志賀淑雄(しがよしお)大尉は迎撃しに来たワイルドキャット隊の動揺を見て、ニヤリと笑いながら呟いた。
「護衛隊全機押し込め! 敵は祥鳳の制空隊の飛来で動揺してる! このまま狩り尽くしてしまえ!」
その指示に護衛の零戦隊は混乱・動揺するワイルドキャット隊を圧倒し、艦爆・艦攻隊は妨害を受けずに米機動艦隊へ殺到した。
ヨークタウン艦橋
「敵艦爆隊、急降下!!」
上空を祥鳳隊に制圧され、第二機動艦隊からの攻撃隊93機(護衛隊含む)が飛来し、アメリカ機動艦隊に艦爆隊が襲い掛かる。
ベテランの龍驤隊に続き、次々と急降下爆撃に入る艦爆隊へ向け、対空砲火が迎え討とうとする…が、艦隊の一部は唐突に射撃を止める。
「何をしている! 何故射撃を止めるんだ!?」
「て、提督! あれを!!」
味方の失態に声を荒げるフレッチャー少将に副官が慌て急降下してくる敵機を指差す。
『その光景』に納得よりも驚愕が勝った。
「SBD!? 奴ら、ドーントレスを使ってるだと!!」
識別の為に塗装を変えているとは言え、見紛う無き『味方』の筈のドーントレスが急降下し、更に投弾していく。
投弾で漸く再開された対空砲火を尻目にヨークタウンは回避運動に入り、その甲斐あってか、ヨークタウンは1発の被弾で事無きをえる。
「どうやら、敵は慣れていない様ですね」
「Val(ヴァル 99式艦爆)と違うから、機体に慣れていなかったのだろうが…クソ」
乗艦のヨークタウンの被弾に悪態を吐くフレッチャー少将。
だが、この時フレッチャー少将らは知る由もなかったのだが、ヨークタウンとワスプには元々自分達の物である500ポンド爆弾を使用されており、ワスプを攻撃した隼鷹の99式艦爆隊は2発を命中させ、ワスプを中破させていた。
艦爆隊の攻撃後、艦攻隊が突入、最終的にワスプ1本、サラトガに3本命中させ、第二機動艦隊・祥鳳隊の攻撃は終了する。
が、息吐く暇を与えず、淵田中佐率いる第一機動艦隊の攻撃隊が到着した。
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