(何気にカオス化する…かも?)
次号 顔合わせ
6月23日 横須賀鎮守府
ミッドウェー島陥落後、捕虜と残存資材の収容、復旧・再利用を防ぐ為の施設跡の徹底的破壊等の後始末を終え、11日にミッドウェーを離れ、21日に横須賀へ到着した。
横須賀到着後、第四艦隊は延び延びになっていた所属艦艇の整備の為、各艦ドックに入渠し、人員も久々の休息・休暇に入っていた。
また、鹵獲・曳航していたヨークタウンもドックへ入渠している。
そんな開店休業状態の第四艦隊の幹部である、松島宮・滝崎・神中佐は横須賀鎮守府の会議室へ呼ばれて来ていた。
「ドーリットル空襲から先のミッドウェーまで休みなく働かせてすまなかった。殿下には昨日、一緒に御所へ参上した時に申し上げたが、改めて3人には礼を言う」
そう言って堀長官と山本総長が頭を下げる。
「私個人としましては、翔鶴に続き、赤城が被弾した…痛っ」
「お、ま、え、は余計な事を言うな。黙っておけ」
「…とまあ、めにっ(毎日)みと(夫婦)漫才の如く、楽しん過ごしてもす」
滝崎が赤城の件を蒸し返そうとするのを後頭部に拳骨を打ち込んで止める松島宮、その光景をニヤニヤしながら神中佐が話を纏める。
「赤城の件は、そもそも敵を誘き出す為、戦力分散の危険性を承知の上での話だ。それに被弾・損傷したとは言え、その損傷も最小限に抑えられているんだ。気に病む事ではないよ」
「それこそ、君の世界の二の舞になっていたかもしれなかったしな。まあ、それどころか、ヨークタウンを鹵獲して、ヨークタウン級3隻を揃え、戦力上昇までやってくれたんだ。艦政が『殺す気だな!?』と怒鳴り込みに来る事を心配した方がいいぞ」
滝崎の言葉に堀長官と山本総長がフォロー(艦政の件は別)を入れる。
「ゴホッ、ゴホッ…それで、山本総長、堀長官。昨日答えしか聞いていない、アメリカの反応の件ですが」
「あぁ、そうだな。滝崎君や神中佐も予想出来ているかもしれないが、我が国からの停戦講和、或いは休戦提案、双方共に拒否された。イギリス、更に非公式ながらバチカンの仲介・打診があったが、アメリカ政府…と言うより、ルーズベルト大統領が蹴っているな」
わざとらしい咳の後に本来の話に戻そうとする松島宮、それに応え、アメリカとの交渉の件を話す堀長官。
「もへ(もはや)ここまできびがむ(追い詰め)られた現状で、へんこっ(頑固)にかんぐい(考え)を変えんとは」
「此方が勝ち過ぎたが故とも言えるが…アメリカ相手に手を抜くのは別の意味で問題だからな」
「ですが、その言い方ですと、『一枚岩で固まってる』様子では無さそうですね」
神中佐の言葉に山本総長が考察を述べ、それらから滝崎は『それ以外』の部分に注目する。
「うむ、今回を含めた今までの敗戦、前に話した捕虜返還の件、それらの不信不安の結果、政権・大統領支持率は2割を切り、1割台後半の維持すら危うい状況だ。首都のワシントンDCでは反戦・反政府デモが連日行われ、各州でもそれに関連した集会やデモが実施されている。まだ許可されている物だから良いが、場合によっては暴動すらあり得る、と緊急事態宣言が出される寸前とすら言われる程だ」
「やはり、内情は史実通りとはいきませんね。なにせ、一時の大統領支持率が96%だった事を考えますと、完全に状況が反転しておりますし」
「まったくだ。故に向こうの戦果報道は盛られ、アッサリとそれを看破される位だ。知ってるかね? 戦艦加賀は既に3回撃沈されているぞ。第四艦隊は2回壊滅した事になっている。他にも艦名がトンチンカンな戦艦や巡洋艦が撃沈破されている事になっているぞ」
山本総長の可笑しいからなのか、苦笑いなのか解らない微妙な表情に滝崎以外の面々は苦笑を浮かべ、史実を知る滝崎はその内容を察せれるので、乾いた笑いを浮かべる。
「まあ、そんなアメリカ国内の内情を含め、今後のアメリカと我が国の方針を政府や陸軍と協議した結果、『史実通り』オーストラリア、並びにソロモン諸島海域での戦う事が確実になった」
堀長官の言葉に松島宮らの表情が真剣な物に変わる。
「形の上では、ミッドウェー作戦の実施で一時棚上げ状態だった米豪遮断作戦を再継続化する事になる。これに伴い、南方方面担当の第四艦隊は現状規模的に力不足と判断し、再編成を行う事に決定した」
「再編成…となりますと、第四艦隊は解隊・解散と…」
堀長官の言葉に何処か寂しげに呟く松島宮。
「あぁ、再編成と言っているが、第四艦隊はそのままだ。そこは心配しなくても大丈夫だ」
「「「……はい??」」」
再編成するなら無くなる筈なのに、第四艦隊はそのまま…なぞなぞの様な言い様に神中佐も頭に?マークを浮かべる。
そして、そのタイミングでドアがノックされた。
「ちょうど役者が揃った様ですね。どうぞ、入ってくれ」
堀長官の返答に入って来たのは先の戦勝の立役者の1人である角田少将、第四水雷戦隊司令官の西村少将(なお、2人は海兵学校同期)だった。
「お久しぶりです、殿下。しかし、これはいったい?」
「お初にお目に掛かります、殿下。西村祥治少将です。私も第七戦隊への異動通知と共に此方へ来たのですが…?」
「私もなんとも…その話の途中ではあるのですが…」
角田少将・西村少将も加わり、視線は堀長官・山本総長に向けられる。
そして、当の2人はニヤニヤと笑っていた。
「よく来てくれた。さて、主要な人間が揃ったところで話を進めよう。知っての通り、第一機動艦隊は先のミッドウェー海戦で軽微とは言え、損害を受けた。先の珊瑚海海戦を含め、所属空母の三分の一が動けない、更に航空機・航空要員の損耗もある以上、第一機動艦隊は当分動けなくなる」
「そこでだ、第一機動艦隊が壊滅する可能性も考え、事前に艦隊の再編成計画を立案、ミッドウェー海戦後に実施する予定だった。それを今から実施するに辺り、それに伴う主要人物に集まってもらった。そう言う訳だ」
山本総長と堀長官の言葉に『理由は解ったけど、じゃあ、その『主要人物』の意味合いってなに?』と言いたげな、角田・西村少将と松島宮。
「おもして(もしかして)、第二機動艦隊と第四艦隊を統合する、と言う事じゃっとな?」
「更に言うなら、第四艦隊に配属されていない重巡洋艦が主体の第七戦隊を加え、それらを組み合わせる形で再編成し、臨時編成の様な形だった第二機動艦隊を常設化する…と言う事ですか?」
「うむ、神君や滝崎君の言う通りだ」
「アメリカ軍が何時再び動くか解らない以上、下手な解隊・再編成より、既存隊の組み合わせによる再編成なら時間は掛からんし、後は揃いさえすれば、訓練も可能だからな」
「あっ、だから、『第四艦隊はそのまま』なのか」
神中佐・滝崎の回答に堀長官・山本総長は満足し、漸く言葉の意味が解った松島宮は納得した。
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