(予想通りの方々も居られるかと思いますが)
オリジナルより文字数が約2倍になりました。
(4000字越え)
次号(一部変更) 大統領やらかす(予定外) 敵発見(予定通り)
7月14日 アメリカ ワシントンDC ホワイトハウス
『即時停戦講和!』
『無駄な戦争を止めろ!』
『大統領の喧嘩に国民を巻き込むな!』
『嘘付き大統領は即刻辞任せよ!』
『大統領は海軍に責任を被せるな!』
『不法逮捕・不法拘束・強制収容を許すな!』
『家族を! 仲間を! 同胞を返せ!』
ホワイトハウスの周囲に居るデモ隊からのスプラッシュコールが鳴り響き、掲げられる数々のプラカードの帯が幾度も幾度も渦の様に回り続ける。
そんな光景を大統領執務室から見聞するルーズベルトはと言うと…
「SHIT!! 毎日毎日飽きもせずにうるさい連中だ!! お前らのせいで戦争に負けているんだ!!!」
そう怒鳴り、執務机を憂さ晴らしに拳で叩く。
これを1日中、毎日毎日見聞きする為、ストレスがマッハの上に数多い頭痛の種の1つとなっていた。
「海軍将兵の家族を含め、日に日にデモ参加者も増えており、州によってはデモや暴動がおきてるとの事です。更に各州議会では貴方への非難決議もあるとかで…」
「その活力を戦争に回せ! それに海軍への責任追及は当然ではないか! それをホイホイと外に洩らしおって!!」
ハル国務長官の言葉にルーズベルトが吠える。
キンメル長官解任後からの今までの敗戦にミッドウェー海戦後、ルーズベルトは海軍に対して、ニミッツ大将自身を含めた太平洋艦隊スタッフの総入れ替えを行う様に命令を出した。
だが、この命令は『普通(当然の如く)』に新聞で報道され、ワシントンタイムズが『ルーズベルト大統領は敗戦の責任を海軍に押し付け、一番の原因である本人は知らん顔をしようとしている』と書かれてしまい、結果的に一部スタッフの入れ替え等で収まったものの、反戦・反大統領熱を加熱させるきっかけになってしまった。
「それに何が『不法逮捕・不法拘束・強制収容を許すな』だ? 『家族を。仲間を。同胞を返せ』だ? ふざけるな! そいつらはスパイだ! そのスパイが彼方此方で活動しているとわからんのか! その活動に踊らせ、反戦運動をやっているから負けているんだぞ!? そのスパイや疑いがある者を拘束するなど当然だろう! そんな事も考え付かん愚民に成り下がりおって、民衆共が!!」
「………」
そのルーズベルトの吠え声にハル長官は内心は『うわ…』と思いながら押し黙る。
この『家族を! 仲間を! 同胞を返せ!』の文面は軍人だけでなく、また、『不法逮捕・不法拘束・強制収容を許すな!』の文言からも解る通り、史実でも行われた日系人の強制収容に対する非難である。
また、開戦直後にカナダ・支那で副領事を努め、『暗黒大陸中国の真実』の著者で親日家であった元外交官ラルフ・タウンゼント氏を『スパイ容疑』で逮捕(史実でも逮捕されている)したのだが、これへの批判・非難も入っている。
これに関しては『空の英雄』チャールズ・オーガスタス・リンドバーグが『タウンゼント氏がスパイ容疑なら、ゲーリング元帥から勲章を授与された私は確実にスパイではないか! 私を逮捕してから、タウンゼント氏を逮捕すべきだ!』と発言、『ドイツとは戦争をしていない』と反論するも、『ジャパンのスパイ・ゾルゲ事件を忘れたのか! メディアや著名人を第三国経由で使う事を政府は想定していないのか!?』と『交戦国の事例』でリンドバーグに再反論され、『変化球的スパイ対策が成されていない』事が露顕し、それで更にルーズベルト政権は炎上していた。
「まったく! 民衆どころか、経済人も政治家もマスコミも、どいつもこいつも反対と文句ばかりだ!! 白人が猿に負けてる事より、戦争が嫌いだと? 愚かな連中め!!」
苛つきながら悪態を吐くルーズベルト。
しかし、史実と違い、日本は出来る限り『見える形』でのアピールを続けてきた結果であった。
これは日本がドイツの戦争行為に否定的であり、フィンランド出兵などで『弱者を守る為に強者に立ち向かうヒーロー』と言うアメリカ人が好きそうな印象を持たれ、友好外交に徹してきた。
更に付け加えるならば、アメリカに亡命した・或いはそんな知人がいるユダヤ人、日本との取り引きがあったアメリカ国内企業が日系人を雇用しており、この『日系人の強制収容』で何の証拠も無しに『スパイの疑いがある』と従業員を逮捕・連行された事が尾を引いていた。
これは社会的『信頼・信用』に関する重要な話であり、更には会社・企業イメージを損ない、更には今後の営業運営にも影響する案件だった。
更にここでルーズベルトとアメリカ政府の『計算違い』が発生していた
極東の緊張化による悪影響(第90話等参照)はアメリカ経済界には更に手痛い『しっぺ返し』をしていた。
何故なら『在米日本資産凍結』の中には『アメリカ企業への支払金』も当然ながら入っており、ルーズベルトら関係者は『レンドリース法、並びに戦時需要拡大もあるから、影響は小さい筈だ』と楽観視していた。
だが、蓋を開けてみれば関係企業はその『戦時需要拡大』に対応する為の設備・人員を揃える『投資金』『元手資金』として、日本企業からの支払金をあてにしていたのだ。
結果、突然の資産凍結と楽観視故の無補填により、アメリカ政府が遅ればせながら実態を掴んだ時には『ブラックマンデー並みの取り付け騒ぎ』『支払い・補填問い合わせで銀行窓口がパンク状態』であった。
しかも、実態を掴んでも初動が大きく遅れた事から対応は後手後手に回り、何とか補填をしたものの、この件により、ルーズベルト政権はアメリカ国内の経済関係者から大いに嫌われていた。
そんな状態で開戦した上の敗戦続きにより、経済界は『大統領は我々から金も利益も人員も、何もかも奪っていく気か!!』と嫌悪され、反ルーズベルト風潮が加速していた。
(無論、アメリカ各業界は何処もほぼ似たりよったりである)
「だがだ…幾ら勢いのある日本とて、所詮は猿の小国。本土から遠いオーストラリア近辺で消耗戦に引き摺り込めば、大国である我々が粘り勝つ! しかも、奴等は都合良く『米豪遮断作戦』を再実施する…フッフッフッ…猿を南太平洋で皆殺しにしてやる!!」
……そんな自信満々なルーズベルトもまさか『ほぼ史実の流れ』故に、1人の人間に全て読まれ、対策をされてるとは思っていなかった。
同じ頃 ハワイ 太平洋艦隊司令部 長官公室
「どうだね、HYPOを含めた情報部の様子は?」
部屋の主であるニミッツ大将は明らかに自分より疲弊しているロシュフォート・レイトン両中佐に『訊かなくても察せれる』事を訊いてみる。
「敵が暗号を変え、更に動いていない為に全体的に低調です」
「更に組織はガタガタ、内情はボロボロ、士気はドン底です」
眼の下の隈が目立つ両中佐は遠慮無しに言い、ニミッツ大将は予想通り過ぎて内心頭を抱える。
現在、アメリカ海軍太平洋艦隊の情報関係部署は組織崩壊寸前であった。
なにせ、ミッドウェー海戦後にロシュフォート・レイトン両中佐が辞表を提出し、ニミッツ大将が『いま2人が辞めたら、間違い無く、情報部門の立て直しも不可能であり、太平洋艦隊が終わる』等と言って説得した程だった。
両中佐が折れる程にミッドウェーの敗戦は情報関係部署には衝撃だった。
なにせ、特に暗号解読部門は(戦争の大義は別として)勝利の為に全知全能全力を駆使し、解読作業を行っていた。
それがまさか『敵は暗号を解読されていると知ってた上、それを利用されていた』と『敵に勝たせる為に全力を出していた』と言う(結果論的でもあるが)事が解り、暗号解読部門を中心に士気は崩壊、辞職・離職・休職者が大量発生し、両中佐はその対応に追われる事になった。
そして、それが一段落し、情報部門の再編成に取り掛かったが、それも一向に進んではいなかった。
特に人員の補充に関しては各種学者・学生・専門家達に声を掛けまくったが『それ程の能力はない』『そんな重責は担えない』と言う返答ならまだしも、『こんな大義も意義もない戦争に協力する気はない』と露骨な返答までくるので全く進んではいなかった。
故に少ない補充で少ない人員を回しているのだが、特に既存で居残った人員達が暗号解読で疑心暗鬼に陥り、解読方法やらを巡って争いに発展する事態にまでなっていた。
結果、暗号解読部門は空中分解スレスレの運用を余儀なくされている状況だった。
「…ニミッツ大将、例の作戦、取り止め中止には出来ませんか?」
「無理だ。大統領曰く『日本が米豪遮断作戦を再開する以上、此方も動かなければならない』と言っている。本心は別だろうが、日本の動きが動きだけに反論も出来ない」
ロシュフォート中佐の問いに苦い顔で答えるニミッツ大将。
既に『ウォッチタワー作戦』は始動しており、戦力の展開も行われていた。
「ですが…敵情解析部門の解析報告は耳に入っているのでは? このままでは我々が自壊します」
「止めたまえ、レイトン中佐。既に我ら海軍と政府に『方針の違い』が出ているんだ。私だって本音を言えば停戦してほしいが、休戦すら大統領が拒んでいる以上、我々は従うしか無いのだよ」
レイトン中佐の指摘に更に露骨な苦い(嫌悪な)顔をするニミッツ大将。
『戦争を続けるなら、一度休戦し、戦力の整備・回復と日本側の情報の再収集・再分析を行いたい』とキング海軍作戦部長を通じて大統領に上申したが、それすら拒否されていた。
また『次に折れる情報部門』と密かに言われている敵情解析部門の報告も説得材料として送付したが、一蹴されていた。
敵情解析部門がミッドウェー海戦後に出した解析結果は唯一の戦果である空母の撃破すら『先の珊瑚海、今回のミッドウェーで2空母を撃破したが、正面戦力に影響は無く、むしろ、敵の後継育成の余裕を与え、将来的な戦力増に手を貸した様なものだ』と『全く敵にダメージが無い』と結論付ける程だった。
更に付け加えで米豪遮断作戦の事に言及し、『日本側の通商・補給路破壊を何とかしなければ、最終的に補給で負ける』と結論付けていた。
(『ウォッチタワー(時計塔)作戦』か…さて、その時計が刻む時刻は何の時間だ? 頼むから『破滅へのタイムリミット』でない事を祈りたいが…島の名前も何か嫌な気がする…)
詳細を知るニミッツ大将は内心呟く。
場所はガダルカナル島……『日本が苦しむ島』となる筈の場所だった。
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