旧年中はお世話になりました。
今年も是非ともよろしくお願いします
と言う事で、この世界の第一次ソロモン海戦の続きです。
予告で出した、米軍の『史実にやって無い事』とは…?
そして、日本海軍は……心配しなくても大丈夫か?
なお、次号は書き上がりましたら、新年最初の日曜日に更新予定です。
次号 アメリカ輸送船団の運命は? そして、史実での『完全勝利唯一の汚点』はどうなるか!?
軽巡洋艦サン・ファン艦橋
「急げ! 日本海軍が少数で襲ってくる筈が無い! それなりの数で来ている筈だ!!」
戦闘配置に就き、急いで麾下の部隊をヴィンセンスらの位置へと走らせるスコット少将。
だが、彼らがサボ島に近付いた時、島影から出る形で艦艇が現れた。
「ぜ、前方より艦影複数! せ、先頭はトネ型ヘビー・クルーザー(重巡洋艦)!!」
「な、なに!?」
見張りの水兵の絶叫にスコット少将も驚愕する。
その間にも、トネ型は主砲は此方を向き、更に続いて後続の艦艇も主砲を向ける。
「こ、後続はモガミ型ライト・クルーザーが2隻!!」
「冗談じゃあない!! このままだと嬲り殺しにされるぞ!!」
軽巡洋艦とは言え、『防空巡洋艦』であるアトランタ級サン・ファンと駆逐艦が2隻。
格上の重巡洋艦・軽巡洋艦の3隻に5インチ砲を乱射したところで、そもそもの砲門数が負けている。
そうこうしている内に日本側は20.3・15.5糎砲計24 門が発砲する。
次々立ち上がる水柱があっという間にサン・ファンら3隻を取り囲んで消してしまう。
「反転! 全艦撤退しろ!! 相手が悪過ぎる!!」
助けに向かうどころか、此方が殺されそうになる事態にスコット少将は逃げの一手を取るしかなかった。
大仙艦橋
「敵部隊反転、逃げて行きます」
「どうします、小畑少将?」
士官からの報告に古村艦長が戦隊司令の小畑少将に問う。
「まだ輸送船団の位置も掴めておらん。更に言うなら、再反転して再び襲いにくるかもしれん。索敵ついでに追撃する」
小畑少将の指示に古村艦長は頷くと麾下の九頭竜、嘉瀬、更には最上へ追撃の旨を伝える様に指示を出す。
「儂は久々、皆は初めての戦闘だ。これだけで終わるのは少々物足りんだろう?」
「…まあ、そうですね」
艦長であるが故に冷静でなければならない古村艦長に対して、他の艦橋の面々はニヤリと笑っていた。
木曾艦橋
大仙ら第十一戦隊(1隻欠)がスコット部隊を追撃していた頃、木曾ら第七水雷戦隊(一個駆逐隊欠)はラッセル諸島へと近付いていた。
「状況を考えるに、敵も第七戦隊との交戦を知り、救援に向かっている筈だ。そろそろ接触してもいい筈だが…」
「いました! 前方から駆逐艦2、重巡洋艦3!」
森少将のぼやきに合わせたかの様に見張りの水兵が敵発見を報せる。
「うむ、駆逐艦を前衛に重巡3隻が追従する形だな(…にしても、何か違和感があるな…速度が遅い…?)」
報告に敵部隊を双眼鏡で観察していた森少将は何処がどうとは言えないながらも違和感を感じていた。
その理由が速度が遅い事と何処かしら感じるも、『何故遅いのか?』が解らない。
更に言うなら、敵部隊の『重巡洋艦3隻』にも違和感を覚えはじめていた。
「……最後尾の重巡洋艦…いや、艦艇は果たして『重巡洋艦』か?」
一度抱いた違和感は別の違和感を生み出し、疑問を持ち始める。
軍歴の大半が巡洋艦や駆逐艦への取り組みが多かった中、唯一『長門』水雷長として一度乗り込んでいた経歴が何か警告している様に感じた。
そして、その疑問は川井艦長も感じていたらしく、ジェーン海軍年鑑を部下に持ってこさせ、ページを捲っていた。
「…森少将、最後尾の重巡洋艦…いいえ、艦艇は戦艦、厳密には標的艦ですね」
「…そうか…ん? 標的艦!?」
危うくそのまま流しかけたものの、『標的艦』の言葉に驚きながら慌て訊き返す森少将。
「はい、前衛の駆逐艦2隻の後ろから、重巡シカゴ、大西洋から回されて来たと思われる重巡ウィチタ、そして、最後尾で足(速度)を引っ張っている要因ですが…多分、形状や改装されたマストから見て、元戦艦で標的艦の『ユタ』だと思われます」
川井艦長の考察に森少将ら艦橋の面々は『えっ!?』と言いたげに驚く。
「と言いましても、それは『開戦時』の話です。見る限り、我が方の扶桑・山城を真似したのか、或いは開戦時に戦艦を我が方に沈められたからなのか、『戦艦』として復活させた様ですが」
この川井艦長の考察を証明するかの様に、最後尾の艦艇、『標的艦ユタ』が艦首主砲塔から砲撃を開始する。
砲撃は木曾のかなり前で『3本』の水柱を上げた。
「…はっはっはっ! 重巡洋艦ばかりか『戦艦がいる』? 面白いではないか! これを我々のみで撃沈し、松島宮殿下へ御報告申し上げ、お褒めの御言葉を頂いたとなれば、末代にわたる栄誉となろう! 日本海軍軍人、日本男子には充分過ぎる誉れではないか! そうだろう、皆!?」
『『『『『おう!!』』』』』
森少将の発破に皆がニヤリと笑い、『ヤル気満々』の表情と目を見せる。
そこには予想外でも、『大敵? やってやんよ!!』と恐れるどころか、潰す気満々の日本海軍水雷戦隊員の姿があった。
「よし! 第二十一駆逐隊に下令! 目標は敵大型艦艇! 駆逐艦は放って置け!! 突撃せよ!!」
森少将の指示に艦橋が忙しくなる。
そして、自らも指示を出し終えた川井艦長が近付く。
「心配するまでもありませんでしたな」
「やはり、『殿下』の言葉は効くな。最も殿下も同じ事をフィンランド湾でやっておられる訳だが」
実は自分達もノリノリの川井艦長と森少将がヒソヒソと話していた。
重巡洋艦シカゴ艦橋
「敵駆逐隊、突入して来ます!!」
「クソ! フィンランド湾と言い、ウェークやフィリピンと言い、日本海軍の駆逐艦や駆逐隊はバーサーカー揃いか!? 阻止砲撃始め! 死にたくなければ敵を止めろ!!」
見張りの絶叫にシカゴ艦長のボード大佐は必死に命じる。
これに駆逐艦パターソン、バックレイ、重巡洋艦シカゴ、ウィチタ、既に砲撃を始めている標的艦から復活した戦艦ユタは副砲の射撃を開始する。
だが、第七水雷戦隊はそんな中でも気にする事なく、各艦主砲で応戦しながら突入する。
「全艦取り舵! 各砲フルファイヤー! 全力射撃! 蹴散らすんだ! ユタにも主砲の発射速度を上げさせろ!」
刻々と近付く第七水雷戦隊に対する阻止砲撃はそれへの恐怖も相絡まって文字通りの『乱射』となり、ユタへの過剰要求にも繋がる。
この時、『戦艦ユタ』には史実であればアラスカ級大型巡洋艦に搭載される『12インチ/50口径砲Mk8 三連装砲』が艦首部に1基、艦尾部に2基の計9門搭載されていた。
これは開戦時の緒戦に戦艦を大量損失した穴埋めとして、練習艦や標的艦に艦種変更されていた『元戦艦』を改修改装し、現場復活させようとした事がきっかけだった。
だが、現役時代の砲は再利用、又は処分されており、新規に載せる必要が出てきた事もあり、設計が完了し、試作砲も出来ていた本砲と砲塔を載せる事となった。
(そもそも、ある筋(大統領)から、『元に戻すだけではダメだ! 少しでも強力な艦に生まれ変わらせろ!』との要望が入ったとか何とか)
だが、損失補填故の急遽の現場復帰である事から、『ただ単に新しい砲を新しい砲塔ごと載せた』だけであり、機関等は余り手を加えられていなかった。
だが、『それでも無いよりマシだし。士気の維持向上の為にやむ無く』ウォッチタワー作戦へと投入され……今になっている。
「あっ! 敵駆逐隊、進路変更! 離れていきます!!」
「諦めて逃げた…違う! 魚雷だ!! 魚雷を発射したんだ! 周囲を警戒しろ!! 取り舵いっぱい!!」
見張りの報告に一瞬淡い考えになったが、直ぐに違うと判断し、ボード大佐は周囲を警戒させる。
だが、その判断は遅かった。
進路を変更した時点で第七水雷戦隊は初春らから合わせて24本、木曾から10本、計34本の93式61糎酸素魚雷を発射していた。
そして、雷跡を残さぬ酸素魚雷はシカゴに忍び寄り、揺れと水柱をおこす。
「ダメージコントロール! 見張りは何をしていた!? 警戒しろと言っただろう!!」
「雷跡ありませんでした! 敵魚雷は雷跡を出していないんです!!」
「…馬鹿な!? そんな…そんな筈は…」
見張りからの反論にボード大佐の表情が固まる。
だが、シカゴだけではなかった。
「ウィチタ、ユタも被雷!! 速度低下、傾斜しています!!」
「浸水増大中! 副長より増援要請!!」
僚艦と自艦の被害報告にボード大佐は魚雷の事を呑気に考えている暇などなかった。
最上艦橋
第七戦隊とヴィンセンスらの撃ち合いは続いていた。
途中、駆逐艦ヘルム、ウィルソンが第七戦隊へと突入しようとするも、居残り組の木津と二十七駆逐隊の阻止射撃によって撃退されていた。
そんな中、第七水雷戦隊より報告が入ってきた。
「木曾より、ラッセル諸島からの部隊は損害の為に行き足を止めたとの事です」
「うむ…にしても、まさか、標的艦のユタが戦艦に復帰していたとは」
「緒戦でずんばい(たくさん)沈めましたからな。やってもおかしくは無いもす」
士官からの報告に頷きつつ、西村少将はユタの件を口にする。
なお、神中佐は肯定しつつも、滝崎から色々聞いている為、『これはまた、滝崎君を悩ませるな』と考えていた。
「司令、時間です」
ストップウォッチを持っていた士官が静かに告げた。
ヴィンセンス艦橋
「『雷跡の出ない魚雷』!? いや、バカな…うぉ!?!」
シカゴからの報告を受け取り、否定しようとした瞬間、リーフコール大佐はその『否定』を『否定』されるかの様にヴィンセンスが『下から』揺れた。
「見張りは何をしていた!? 何故、魚雷に気付かん!?」
「無理です! 魚雷本体が見えた時点でどうすればいいんですか!?」
見張りからのキレ気味の反論にリーフコール大佐が押し黙る。
正にシカゴと同じ状態が自分達におきたからだった。
「クインシー、アストリアも被雷! 傾斜増大中!!」
「浸水止まりません! ダメージコントロール困難!!」
悲鳴にも似た報告にリーフコール大佐は苦い表情のまま指示を下す。
「戦闘中断! 総員退艦も視野に入れて準備!! 急げ!!」
この瞬間、この戦闘にも決着はついた。
2月29日 午前2時頃 サボ島沖合い 最上艦橋
「第七水雷戦隊との合流完了。木曾、並びに二十一駆逐隊に損害無し」
「うむ、当面の脅威は排除出来ただろう。これより、敵輸送船団に取り掛かる。再度突入せよ」
分離していた第七水雷戦隊と合流し、損害が無い事を確認すると西村少将は再度の突入を命じた。
(さて、いよいよ、史実では出来なかった『輸送船団の撃滅』か…さてはて、吉凶の何方が出るか?)
その光景を眺めつつ、神中佐はそんな事を考えていた。
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