アメリカ輸送船団の運命は……決まっちゃってるよな……。
えっ? 加古の件? あぁ、それがありましたね…。
次号 アメリカ涙目+泣きっ面に蜂
同時刻 輸送船団旗艦マーコレー船内
輸送船団の旗艦であるマーコレーの中は日本海軍の襲撃で大騒ぎになっていた。
前話で出た通り、『トラック諸島へ退いた』と(勝手に)思っていた中での日本艦隊の襲撃であり、最初は誤報と思われていた。
皮肉なのはこの時、アメリカ艦隊の全体的な指揮官であるリッチモンド・ケリー・ターナー少将が海兵隊のブァンデグリフト少将、ヘンダーソン飛行場航空隊司令のマケイン少将と揚陸作業打ち合わせの為にマーコレーに居た事だった。
故に情報が集まり、状況の把握は出来た…だが、その頃には対処可能な部隊が日本側に捕捉され、バラバラに対処・戦闘を行っており、とてもではないが、全体的連携を取るのは不可能であった。
この為、時間の経過と共に味方が撃ち減らされ、ますます対応出来る手札が減らされていく負のループと化していた。
こうなれば、敵の手が届かぬ内に輸送船団を逃がすのが『次善の策』なのだが、これがまた上手くいっていなかった。
何せ50隻どころか、60隻もいる輸送船団を停泊状態から統括して動かすのすら時間が掛かる。
しかも、日本艦隊の襲撃で情報が錯綜、それに伴い混乱している状況で『何処が安全で、何処が危ないか』を把握し、退避場所を決め、事故らない様に順次動かす……戦闘が近場でおきてる状況下ではハードルの高い事である。
「ちくしょう! 来るならもう2、3日早く来てればいいものを!!」
船内の右往左往ぶりを横目にそう悪態を吐きながらターナー少将は舷窓から外を見た。
次の瞬間、砲撃とおぼしき発砲光が見えた。
「バカな!? 奴ら、もうここまできたのか!!」
信じられない、とばかりに叫ぶが、近場への着弾で揺れるマーコレーが現実である事を知らしめていた。
少し前 大仙艦橋
「まったく、あの小部隊が逃げてくれたお陰で、お目当ての輸送船団を発見出来るとはな」
スコット少将部隊を追撃していた第十一戦隊(一隻欠)は追撃している内に輸送船団を発見、嘉瀬と九頭竜に追撃と抑えを任せ、単艦で輸送船団に艦首を向けた。
「古村艦長、輸送船団相手で腐るかもしれんが、アメリカからすれば物資やら何やらを詰め込んだ『宝船』だ。すまんが、ここは堪えてくれ」
「やれやれ、海賊の真似事で我慢してくれ、と…まあ、軍人である以上、指示に従いますよ」
小畑少将の言葉に古村艦長は苦笑いを浮かべる。
そして、表情を変えると指示を出す。
「目標、敵輸送船団! 本艦のみで突入し、輸送船団を掻き乱す! 手近な船舶から砲撃始め!」
…この指示による砲撃で真っ先に狙われたのが船団旗艦のマーコレーであるとは、大仙の誰も知る由もなかった。
再びマーコレー船内
この砲撃と大仙の突入により、輸送船団は大混乱に陥った。
只でさえ、日本艦隊が襲ってきたと言うだけでも混乱していたのに、実際に乗り込んできたのだから、更にそれが助長されるのは当然である。
更に砲撃されたのが偶然とは言え、船団旗艦のマーコレーだった事が混乱に拍車を掛けた。
逃げようとする船、指示を請おうとする船、とりあえず機関を始動させる船、あたふたするだけで動こうとする船…誰もが自分勝手な判断で動こうとする為に輸送船同士で衝突し、更に混乱が増す結果になる。
「ええい、クソ!! このままでは嬲り殺しだ!!」
ターナー少将がそう悪態を吐いた時、マーコレーが激しく揺れ、
突然の事にターナー少将は壁に打ち付けられた後、余波で顔から床へ転倒する。
「だ、大丈夫ですか!?」
近くにいた若い陸軍士官がターナーの転倒に気付き、慌て声を掛ける。
「ちっ、被弾したか…状況は!?」
「大穴があいた! 沈むぞ!!」
「火災発生!! 早く脱出しろ!!」
痛みに耐えながら舌打ちし、状況を確認しようとすると、マーコレーの乗組員がそう叫んで船内を走り回っていた。
暫くして 最上艦橋
「大仙があばるって(暴れて)おりもすな」
「あぁ、まるで獲物の羊の群に突っ込んだ狼の様だな」
神中佐の言葉に西村少将が頷く。
「さて、後はかたっ(敵)さんの兵糧弾薬の方もすが…」
「あぁ、そっちも心配せんでもいい様だな」
神中佐の言葉に答える様に西村少将がそちらに視線を向ける。
すると、ツラギの対岸にあるルンガ岬に照明弾が煌めいた。
「水偵が見付けてくれた様だ。第七戦隊と木曾、第二十一駆逐隊は揚陸された敵物資を焼きに行くぞ。木津と第二十七駆逐隊は大仙と合流し、輸送船団を叩け」
西村少将の指示に夜襲隊は再び動き始めた。
「くそ!! ジャップの奴らめ!!」
マーコレーから海に飛び込み、偶々流れて来た木の板に掴まり、漂いながら、ターナー少将は輸送船団とルンガ岬に攻撃する日本艦隊に何度目か解らない悪態を吐く。
「…あれは揚陸した物資もダメだな」
赤く染まるルンガ岬を見ながら、ターナー少将を助けた陸軍士官がドラム缶に掴まりながら呟いた。
「…飛行場が無事なら、航空隊がやってくれるのでは?」
「日本艦隊がそんな事も考えずに襲撃するとは思えん…くそ! また黒星が増えやがった!」
陸軍士官の問いにそう答えるターナー少将だった。
夜明け前 ガダルカナル島 ヘンダーソン飛行場
「急げ、急げ! あと少しで日が昇る! 昇ったと同時に発進だ!!」
「敵艦隊はまだ近くにいる筈だ! 見付けたら、艦隊と輸送船団の仇を取るぞ!」
整備長や航空隊の隊長がそう叫んで発破を掛ける。
昨夜〜今朝の襲撃で味方が大損害を被った為、夜で手が出せなかった航空隊は仇を討つ為に急いで準備にあたっていた。
だが、日の光が僅かに見せた時、整備兵がある事に気付いた。
「ん? おい、日の光の中に何か見えないか?」
「えっ? 眩しいから見辛くて解らんが…」
同僚の問い掛けに整備兵は手で遮光し、片目を瞑り、顔を出した朝日の中を見る。
すると、小さな黒点が見えた…数を増やしながら、此方に向かってくる。
「あ、あれは…敵だ! ゼロが来た!!」
「ジークだ! 敵の襲撃だ!!」
慌てて叫ぶ整備兵達。
だが、時既に遅く、防空の直衛機が上がっていない事を確認すると、滑走路や待機場の敵機と対空火器に向け降下する。
刹那、制空隊の零戦の主翼から煙が出る…それは今回初投入された『二式12.7糎噴進(ロケット)弾』、グリーン諸島での空襲後の給油で『実戦で使ってみてくれ』と渡された新兵器だった。
忽ちの内に地上の敵機や対空火器が破壊・損傷し、続けて制空隊は無傷な機体や対空火器に手当たり次第に銃撃を加える。
そうこうする内に艦爆・艦攻隊が到着、アメリカ製爆弾をヘンダーソン飛行場の滑走路を始めとした各種施設に叩き込んだ。
少しして 艶鶴艦橋
「六航戦による第一次攻撃成功! 損失無く、全機帰還中です!」
攻撃隊からの報告に奥宮少佐が嬉しそうに叫ぶ。
「うむ…だが、敵も急いで滑走路の修繕に入るだろう…ウチ(四航戦)の準備は?」
「既に完了しており、何時でも発進可能です」
角田中将の問いに小田切中佐が答える。
「そうか…10 分後に一番機発艦始め。編隊を組んでから、飛行場の修繕中を攻撃せよ。滑走路を機材共々使用不可能にする」
角田中将の指示に奥宮少佐と小田切中佐は敬礼で応えた。
その頃 最上艦橋
夜襲部隊は第二機動艦隊と合流すべく、サンタイザベル島とマリタイ島との間を抜ける形で北上していた。
「ふむ…重巡洋艦5、『推定』で戦艦1、輸送船は20隻以上撃沈か…控え目に見ても敵戦力は壊滅、輸送船団は半壊…まあ、正確な損害は無線傍受班に頑張ってもらおうか」
戦果を集計していた参謀の報告を聞いて西村少将は頷きながら言った。
「そうもすな。それより、おい達は『土産』を無事持って帰る事に専念ばいな(しましょう)」
神中佐はそう言いながら視線を移す。
視線の先には夜襲隊に囲まれる形で航行する輸送船が6隻…この輸送船は大仙の攻撃で輸送船団が混乱する中、近くにいた木津を味方の巡洋艦と誤認(鹵獲艦だから仕方無いが)し、その後ろを付いて来た為に再集合・合流した夜襲隊に鹵獲された輸送船だった。
「2隻はからい(空っぽ)もすが、残りの4隻は揚陸前の物資がいっぺ積んであるそうじゃ…西村少将、対潜警戒の方は?」
「あぁ、大丈夫だ。そろそろ、大仙がカ号観測機を上げるし、七水戦にも警戒を呼び掛けているよ。せっかくの勝利に瑕を付けるわけにはいかんからな」
海中 潜水艦S44艦内
「敵水上艦艇群、今のところ、目立った動きありません」
「よし、もう少し近付いて攻撃する。魚雷発射準備」
史実で第一次ソロモン海戦を終えて帰投中の加古を撃沈した潜水艦S44は当初、トラック諸島近辺での通商・補給路破壊を実施する予定で向かっていたが、ラバウル・ブイン空襲を受け反転、日本艦隊襲撃の報を聞き、待ち構えていたところ、夜襲隊が現れた。
そして、艦長ブラウン少佐は潜望鏡を上げず、音響探知による観測での魚雷発射を狙っていた。
だが……
S44近辺上空 カ号観測機
「くそ…夜襲のせいで眠れんかった」
「集中しろ。一応、ここは敵海域だからな」
大仙から発進した4機のカ号観測機の内1機のペアがそんな事を話していた。
「ふぁ〜……ん? おい、下だ! 下に何かいるぞ!」
「なに……間違いない! 潜水艦だ! 潜望鏡を出して無いとは言え、こんな近くに…信号弾! 信号弾を早く撃て!!」
「わかってるよ! よーし…見えてくれよ!!」
そう祈りながら、後席の通信手は『潜水艦発見』の信号弾を撃った。
S44艦内
「…艦長!! 敵水上艦艇群に動きあり…くそ、増速! 増速しています!!」
「なに!? 気付かれただと!?」
ソナー手からの報告にブラウン艦長は驚く。
実はこの時点でS44は上手い事近付き、夜襲隊まであと700メートル程のところまで近付いていた。
「くそ! 魚雷発射用意! まだ増速し始めたばかりなら、加速しきれて…」
「敵水上艦艇群より、高速スクリュー音複数! デストロイヤーです!!」
「ちっ! 慌てるな! まだ、距離が…」
「えっ? あ、あぁ!? 着水音!! 着水音2つ!! 爆雷です!!」
「なっ…しょ、衝撃に備えろ!! どう言う事だ!? 何がどうなっているんだ!?」
ブラウン艦長が疑問に思うのは仕方無い。
実はカ号観測機は周囲哨戒用の4機の他に大仙上空で待機する爆雷を搭載したカ号観測機(操縦者のみ)2機が居た。
信号弾を見た2機は素早く見付けたカ号観測機へと向かい、上空から丸見えなS44に爆雷を投下する。
無論、潜望鏡を上げていない以上、S44やブラウン艦長がそれを知る筈はない。
そして、先手を取られる形での航空爆雷攻撃でS44は激しく揺さぶられる。
「くそ!! 被害報告!!」
「船体後部より浸水発生! 現在対処中!!」
「落ち着いて対処しろ! まだ致命的では…」
「艦長! 敵デストロイヤーが二手に分かれ、本艦を左右から挟む形で接近!! 直ぐそこに居ます!!」
ソナー手からの悲鳴の様な報告にブラウン艦長は青ざめる。
訳が解らない内に発見され、爆雷攻撃を受け、駆逐艦が挟み討ちしようとしている…いつの間にか駆逐艦でさえ、此方をほぼ正確に把握しているのだ。
そして、次の瞬間、対処の為にやって来た白露と時雨のY砲による爆雷攻撃が始まった。
……結果から言えば、白露と時雨は撃沈では無く、足止めを狙った爆雷攻撃であった為、一過性の攻撃に終わり、S44は生き延びた。
しかし、足止めとは言え、上空のカ号観測機から誘導される形での爆雷攻撃だった為、相当数の爆雷が投下され、安全が確認され、浮上した時にはS44の外見はボロボロであり、中も機材の故障だらけで、浸水はギリギリ止めたと言う状態だった。
結局、S44はマライタ島沖合いでまで来て力尽き、乗組員は総員退艦し、救命ボートでガダルカナル島の味方と合流する事になった。
なお、その後、夜襲隊は何の妨害も受けずに本隊の第二機動艦隊と合流、ヘンダーソン飛行場に対する第二次攻撃隊も修復作業中の機材や無事な施設への爆撃を成功させ、飛行場復旧の遅延に成功したのであった。
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本作品ヒロイン(3人)とのR18シーンの有無
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