と言う事で、アメリカに救い……ないな、これ。
まあ…アメリカ側の関係者(特に海軍)は『色々』あって大変ですね……読者感想で皆様が胃薬に言及するくらいに。
次号 アメリカの『暗い』事(え? 出てるから、もういい? まあ、内容を見てくれ)
9月4日 午前5時頃 ビスマルク諸島(内 ニューブリテン島)近辺 艶鶴艦橋
夜明け前の薄明るい中、第二機動艦隊の各空母部隊から攻撃隊が発進する。
四航戦・七航戦(豊鶴)はポートモレスビー、六航戦はラエを攻撃目標に定めていた。
「各攻撃隊発艦完了…今日は忙しくなりそうですね」
「うむ…だが、この朝駆けが成功すれば、脅威や負担は減る」
発進した攻撃隊を見送りながら、小田切中佐と角田中将が話していた。
不透明な事の多かった米豪遮断作戦が誰の目にも見て解るぐらい動く…それが今日だった。
「攻撃後のポートモレスビー、ラエの飛行場監視は厳重に頼む。送り狼などされて、組織的に残存機が襲ってくるのが厄介だからな」
腐っても基礎技術が高く数を出せる格上の大国だ…警戒し過ぎて困る事は無いのだ。
1時間半後 ニューカレドニア島 ヌーメア 南太平洋艦隊司令部
「大変です!! ポートモレスビー、並びにラエが空襲されました! 被害は確認中ですが、両地の飛行場の被害は甚大です!!」
別の件で報告を受けていた所に、血相を変えた士官が飛び込んできた。
「やれやれ…先程、この3日間で累計26隻の輸送船舶がやられたと聞いたところだったんだがね」
部屋の主、レイモンド・エイムズ・スプルーアンス中将はそう苦笑いをしながら他人事の様に溢す。
親友ハルゼーが捕虜になった為、後を託されたスプルーアンスは帝都空襲失敗の責任を問われていたが、その後の珊瑚海・ミッドウェーの敗戦でそんな事を悠長にしている暇が無くなり、ニミッツ大将は状況的に杜撰な『ウォッチタワー作戦』を補完すべく、スプルーアンス中将を司令官に据えていた。
だが、状況はニミッツ大将の想定以上に加速的に悪化、スプルーアンス中将として出来るのは、ほぼ報告を聞くぐらいしかなかった。
「輸送船は量産出来る…だが、それが出来た頃には更に状況が悪化している…やれやれ、穴の空いたバケツに水道で水を追加しているみたいだ…まあ、水圧でバケツの穴が広がっているがね」
そんな冗談を言うぐらい、輸送船の件はヤバかった。
ソロモン海夜戦での損失に加え、それまでの通商補給路破壊による被害もあり、オーストラリア周辺のアメリカ軍補給体勢は壊滅していた。
しかも、シドニー港襲撃(115・116話参照)の様に護衛船団を組んでいる状態でのこの被害であり、ソロモン海夜戦での損失を差し引いても、既に100隻を越える輸送船が荷物と共に海へ沈んでいた。
「はぁ…さて、ウォッチタワー作戦が失敗するのが先か、ヌーメアの海へボストンみたいに投げ込まれるの先か…どちらだろうね?」
副官達を前にそんな冗談めいた事を言うスプルーアンス中将と、顔を真っ青にする副官達。
何故なら、ヌーメアを含めたニューカレドニアの在地フランス人達は駐留しているアメリカ軍を『土足で踏み込んで来たならず者達』と見ており、アメリカ軍に『何も』協力していない。
それこそ、湾港の管理権をたてに行政府はアメリカ軍の船舶入港を妨害し、フランス憲兵隊はアメリカ兵絡みのトラブルでは平気でアメリカ兵を拘束し、在地フランス人は敵意マシマシな目でアメリカ兵を睨んでいる。
それこそ、ヌーメアに着任し、関係各所に挨拶に行ったスプルーアンス中将が塩対応され、そこで漸く『不同意の占拠で駐留している』と知って、慌てハワイのニミッツ大将に連絡した程、スプルーアンス中将やニミッツ大将ら海軍関係者は何も知らなかった。
それに加え、日本人、並びに日系人の扱いが更に現地フランス側の態度を悪化させている原因になっている。
これを解消しようとスプルーアンス中将も動いたが、『陸軍上層部、並びに大統領のサイン入り』命令書の前には現場指揮官ではやれる事は皆無だった訳だが。(138話でニミッツ大将がキレてたのは、この件をスプルーアンス中将から報告を受けたから)
「だが…さて、日本軍はラエとポートモレスビーの無力化だけで済むかな? 前回もラバウルとブインの無力化に加え、ガダルカナル島への襲撃だった訳だが…まさか、な」
……このスプルーアンス中将のボヤきと予測は当たっていた。
同日昼頃 ラバウル飛行場
24日の空襲により、航空戦力を損失し、基地施設自体にも被害を受け、修復の為の土木機材も被害を受けているラバウル飛行場。
空襲以後も航空機・機材の補給・補充を受けていない為、開店休業状態であり、午前中のラエ・ポートモレスビーの空襲の報せがあっても何も出来なかった。
そんな中……
「……ん、おい、あれは…」
「ん、どうし…えっ?」
暇を持て余していた整備兵の1人が何かに気付いて北側の海に向かって指差し、同僚がそれを確認し、顔を真っ青にする。
数隻の戦艦が展開し、砲身を此方に向けており、更に小型の艦艇や上陸用舟艇が展開する光景だった。
「じゃ、ジャップだ! ジャップが攻めてきた!!」
「お、おい、どうする!? 防衛兵力は足りるのか!?」
「武器はないぞ! どうすりゃあいいんだ!?」
突如の日本軍の出現に整備兵も地上要員もパイロットも阿鼻叫喚になる。
無論、ラバウル飛行場には守備兵力は居る…1個中隊規模で、火砲や戦車など少数でしかないが。
その守備兵すら、戦艦数隻がその大口径砲を此方に向けている状態では抵抗の意思を砕くには充分過ぎる効果があった。
よって……上陸用舟艇や揚陸艦は何の抵抗も受けずに近場の上陸地点に到達し、兵員と戦車が揚陸された時点でラバウル飛行場の陥落は時間の問題であった。
4時間後 ラバウル飛行場
「呆気無い終わり方だな…補給の無いアメリカ軍はこんなに脆いのか?」
「さてね…まあ、1個中隊規模で戦艦数隻がいる1個連隊止めろ、は難しいかもね」
大田実少将指揮の海軍特別陸戦隊がラバウル飛行場を無血占領した後、同行していた海軍設営隊がラバウル飛行場の滑走路を米軍の残存機材や持ち込んだ排土板付きユニバーサルキャリアー等の機材を使い修復する光景を見ながら、エーディットと滝崎は話していた。
「ラバウル飛行場を復旧し、ラエとポートモレスビー、オーストラリア方面への抑えにする…短期間の使用なのに、修復は本格的だな」
「『抑え』の意味が受け身ではなく、牽制を兼ねた取り身だからね…まあ、米軍へは『判断を迷わす』事も兼ねてるし」
「同じ事をさせたら、私でも判断に迷いそうだ。米軍機は残存機どころか残骸も回収か?」
「あぁ…資源が無い以上、スクラップでも貴重さ。当分使うから、施設資材等の回収は当分先だけど」
「はぁ…燃料も爆弾もスクラップもアメリカか…次は何がアメリカ製になる? 頼むから、食事関係は…調理は日本人のままにしてほしい」
「あはは…それは大丈夫だと思うよ」
エーディットの言葉に滝崎は苦笑いを浮かべた。
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