いや〜…アメリカも大変だな〜…。
wiki等で色々と確認しながら書いたから…おかしいところは少ない…筈……。
次号 豊鶴さ〜ん、(航空隊が)出番ですよ〜。
9月5日 ラバウル沖
この日、扶桑から飛び立った甲木一等飛行兵の零式水観はラバウル周辺哨戒の為に周辺を飛んでいた。
ラバウル飛行場が再使用出来るまで、並びに第二機動艦隊がそれまでラバウルの守備も兼ねる為、それ故の哨戒飛行だった。
そして、ソロモン海上空まで周回して来た時、彼はガダルカナル島方向から飛んで来る機影に気付いた。
「10時方向から機影…飛行艇の様です。確認出来ますか?」
『…あぁ、確認出来た。飛行艇だな』
後席のペア(階級上位 二等兵曹)と伝声管でやり取りし、飛行艇を確認する。
無論、ここは敵地付近で、アメリカ軍も飛行艇を持っているのだから、飛行艇がいるのはおかしくない。
ただ、この日は少し状況が違った。
「…あれ、軍用ですかね?」
『いや、そうは見えん…少し近付け、97大艇だって民間仕様があるからな』
「了解」
後席と相談し、甲木一等飛行兵は零観を件の飛行艇に寄せる。
「…あっ、見えますか! アメリカの白星に…何かのマークがあります!」
『見えた! 多分、マークは所属航空会社の物だ…操縦室へ寄せろ! こっちは艦隊に報せる!」
「はい!」
パンアメリカン航空 シコルスキーS42飛行艇 操縦室
「くそ! 複葉機だと油断したが、日本の水上機だったか!」
パンアメリカン航空所属のシコルスキーS42を操縦する機長は真横に付いた零式水観を見て悪態を吐く。
彼らは軍人ではなく、民間航空会社の従業員であり、そもそもこれは所属会社が陸軍との契約で飛んでいるに過ぎない。
そして、彼らはニューカレドニアからガダルカナル島を経由し、ポートモレスビーに寄り、更にオーストラリア本土に向かう予定で飛んでいたのだが、天候や雲やら何やらを回避している内にラバウル近辺を飛んでいた。
そして、彼らが零式水観を認識しながらも、ここまで接近に無頓着だったのは、『複葉機』の見た目で注意をはらっておらず、日の丸を見て漸く『日本軍機』だと認識したからだった。
「どうします、キャプテン(機長)? とりあえず、全速で逃げますか?」
「…フライトエンジニア(航空機関士)、エンジン故障覚悟で限界運転して、逃げれるか?」
「…無理でしょう…あの水上機から逃げれても、近くに空母が居たら終わりですよ」
副機長の問いに機長は航空機関士に相談するも、航空機関士は首を振る。
そんな操縦室のやり取りの中、1人の将校が入って来た。
「おい! なんで日本軍機に捕捉されている!?」
MPの腕章を着けた憲兵将校が怒鳴り込んできた。
「当たり前でしょう…ラバウルが陥落したのは昨日ですよ? その近くを飛んでたら、哨戒に引っ掛かるのは当然でしょうに」
「くそ! ガダルカナル島に寄る必要がなければこんな事に…客室の事もある、一刻も早くここから離れろ!」
そう言って憲兵将校は操縦室から出て行った。
ラバウル沖 艶鶴艦橋
「周辺哨戒の水観より入電! 『民間機と思われるアメリカ飛行艇を発見。現在接触中』以上です」
通信士官の報告に角田中将や小田切中佐、奥宮少佐は疑問符を浮かべる。
「どう言う事だ? 偵察の飛行艇ではないのか?」
「なら、『民間機』と言わんでしょう。多分、非武装で、民間航空会社の標章でもあったのでは?」
小田切中佐の問いに奥宮少佐が答える。
「だが、こんな戦場の隣を飛ぶ真似は必要は無いだろう?」
「…とりあえず、交代待機のウチの鍾馗小隊を出そう。水観には接触を続けさせてな」
小田切中佐の疑問を聞きつつ、角田中将は指示を出した。
水観 甲木機
艶鶴の指示もあり、甲木一等飛行兵は飛行艇との接触を続けていた。
ふと、彼は飛行艇の操縦室から後ろ、客室部分に目を向ける。
無論、旅客機である為、かなり大きめの丸窓が設置されていた。
故に…彼は気付いた…その丸窓から此方を見ている客室の『乗客』が。
「…兵曹! 客室! 日本人です! 客室に居るのは同胞ですよ!!」
『なに!?』
伝声管を通じての指摘に後席の二等兵曹は慌て客室を確認する。
『…ハッキリ日本人とは言えん…だが、間違いなく、白人ではないな…艦隊に伝える。そろそろ、艦隊からも増援が来る筈だ』
飛行艇内 客室
客室窓から水上機を見ていた日本人・日系人達が水上機のパイロット達が此方を見て自分達に気付いた事で騒ぎ始める。
「外を見るな! 見るんじゃない!!」
「騒ぐな! 静かにしろ!!」
監視役を兼ねて同乗していた憲兵達が怒鳴りながら彼らを抑えようとする。中にはホルスターの拳銃を抜ける様にボタンすら外している者もいる。
「…そりゃあ、無理だろう…」
偶々ガダルカナル島から乗り合わせ、場の空気から疎外されていた陸軍大尉が皮肉そうに呟く。
憲兵達に混じり、パンアメリカン航空職員で、簡単な日本語が出来たから今回のフライトに乗員として乗り組んだ青年客室係が必死に落ち着かせようと声を掛けるも、落ち着く様子はない。
「…だから、最低限、足枷ぐらいは外してはどうかと言ったのに…やれやれ…」
ニューカレドニアから彼らと乗り合わせ、大尉の隣の席に座っていた従軍神父が呆れ気味に同意するかの様に呟く。
実際、日本人や日系人は全員手錠と足枷をされて客席に座っていた。
「どうですかな、大尉? 日本軍はこの機を撃ちますかね?」
「非武装の民間機をいきなり撃たんでしょう。ただ、変な事をすれば撃つかもしれない…まあ、水上機が彼らに気付いた以上、慎重な対応をしてくるとは思いますが…」
そう従軍神父に答えていた大尉は視線を操縦室に向ける。
「…あのMPの隊長が変な事をパイロットに要求しそうで嫌ですな」
「…同感です」
操縦室
「で、どうだ!? 逃げれそうか!?」
「無茶を言わないでくれ! 今だって、あの水上機の方が速いのは確実なんだよ!!」
操縦室では憲兵将校(隊長)と操縦クルー(メインは機長)とのやり取りが再開された。
「それより、ポートモレスビーから戦闘機の援護とか受けれないんですか!?」
「滑走路が復旧出来ていない! そもそも、航続距離の関係があるんだ!!」
副機長の問いに憲兵将校が怒鳴り返す。
「…待った! 横から機影!!」
何かが横をすり抜けるのを見た航空機関士が叫ぶ。
見ると、単発の戦闘機が自分達の前に陣取った。
「クソ! 例のジークか!!」
「…機長として申しますと、これ、諦めて、日本側に従う方がいいと思うんですが?」
憲兵将校の悪態に機長はとりあえずお伺いを立てる。
「何を言ってるんだ!! ニューカレドニアに居た日本人や日系人が乗ってるとわかってみろ!? 八つ裂きにされる恐れがあるんだぞ!!」
「…裏切り者を始末するマフィアじゃあないんですから」
「それより、客室の方が騒がしいですよ? 大丈夫ですかね?」
副機長がボヤき、航空機関士はドア越しに聞こえる喧騒に客室を心配していた。
客室
隣に別の単発機(鍾馗)が両側に並んだ為、ますます客室内の日本人や日系人が騒ぐ。
「黙れ! それ以上騒ぐな!」
「静かにしろ! 撃つぞ!」
遂に憲兵の1人がホルスターに手を伸ばそうとするのを大尉が思わず立ち上がり止める。
「止めろ! 機内で撃ってみろ! 下手したら、全員死ぬ事になるぞ!!」
「大尉! 我々の業務を口に挟まないで頂きたい!!」
「そっちこそ黙れ、素人共が! 下手に撃ってみろ! 操縦系統が壊れるかも知れんのだぞ! 窓に当たれば、気圧の差で吸い出される恐れがある上に、下手したら墜落だ! しかも、これは民間機だ! 軍用機じゃない!!」
憲兵達と席を離れた大尉が言い争いを始め、皮肉にもそれが日本人・日系人の騒ぎの沈静化に繋がる。
隣席の従軍神父が『やれやれ』と思っていると、客室後部に配置されていた若くガタイの良い黒人憲兵が神父に近付く。
「神父さま、宗派は違う(黒人はプロテスタント系が多い。神父はカトリック系)けど…俺の今の任務を神様は許してくれるでしょうか?」
「ふむ…普通の移送任務とは違うからね…だが、君は心優しい若者だ。神は決して、君を見放さないし、君を許し導くだろう。その為に神は居られるからね」
……カオスな状況になりつつある客室だった。
鍾馗小隊 一番機
『特務少尉! 間違いありません! 客室に居るのは日本人です!』
艶鶴の鍾馗隊隊長である望月勇特務(この場合、兵隊からの叩き上げを意味する)少尉は僚機からの報告に困惑する。
なにせ、現場から叩き上げの人間に政治やらが絡んできそうなこの状況に対処するのは荷が重い気がしてきたからだ。
(どうする? 同胞を助けるにしても、この機を撃つのは本末転倒だ…だが、どう対処する?)
件の民間機をチラリと見ながら考える。
その時、甲木機から無線が入る。
『望月特務少尉! 艶鶴から『対象機をラバウル湾まで誘導せよ』と命令が来ました…飛行艇なので、そちらで対処するそうです』
「わかった。全機聞いたな、これより…」
艦隊が対応してくれる事にホッとしつつ、小隊に指示を出そうとした時…飛行艇が急降下を始めた。
少し前 操縦室
「…構わん、全速力で逃げろ!」
「はぁ!? 旅客飛行艇と戦闘機4機で競争しろってか!? 命が幾つあっても足りるか!!」
「黙れ! これは契約に基づいた指示だ! やれ! やらんと撃つぞ!!」
「『基づいた指示』? 戦闘機と追いかけっこしろとも、憲兵から銃向けられるとも、そんなん契約にある訳無いだろう!! ふざけてんのか!?」
憲兵隊長の指示に機長がキレながら反論し、口論となる。
「なら、貴様を機長から外すまでだ!」
「そんな権限もねえよ! 逆に機長権限として、アンタに降りて貰いたいね! 乗機の安全確保の為に!!」
「我々は任務中だ! そんな事出来るか!!」
「はん! 会社になんて言って誤魔化したか知らないが、もう我慢できん! そもそも、人攫いの片棒を担ぐ気はねえんだよ!!」
「なに!? 我々は移送任務中で…」
「あんたらの名目なんて知るか! 機体トラブル発生! 急降下するぞ!」
機長の発言にペアを組んでいた副機長と航空機関士は察する。
次の瞬間、機長は急降下を開始する。
「なっ! やめ…」
突然の事に憲兵隊長はバランスを崩し、風防に激突し、風防のガラスが割れる。
それすら気にせず、機長は急降下を続け、水面から100メートル程のところで機体を水平に直した。
「よし…フライトエンジニア、野郎を拘束しとけ…副長、客室の確認だ…くそったれ、クビ確定だな」
……の割にはスッキリした表情でボヤく機長だった。
客室
「うぉぉ!?」
突然の急降下に口論をしていた大尉がそう叫びながらバランスを崩し、顔面から床に倒れ込む。
口論相手の憲兵達は背中から倒れ、転がった挙句、操縦室の壁に激突する。
件の大尉もそうなってもおかしくなかったが、うつ伏せに倒れた事と、気付いた日本人・日系人の一部が慌て動かせる範囲で大尉の身体を掴んだ事で、床を少し滑っただけですんだ。
「大丈夫かね、大尉!?」
「いつっっ…鼻、折れてませんよね、神父?」
「パッと見て鼻血が出ているだけだ、心配するな…だが、憲兵達は貴方より神に見放されていたようだかね…」
唯一憲兵の中で無事だった、あの黒人憲兵が仲間の元に駆け寄るも、身体を激しくぶつけた為が、うめき声をあげならがら、起き上がれないでいる様子に、従軍神父は皮肉そうに言う。
なお、青年客室係は日本人・日系人の無事を確かめていた。
「確かに…神父は大丈夫で?」
「迷える憲兵と話していたからね…貴方の席に座って話していたから、神は彼もお救いする事を選んだ様だ」
「そりゃあ、よかった…にしても、なんでいきなり…」
「あの憲兵隊長が無茶をしたんじゃないかな…まあ、もう、我々がどうのこうのと言える事態では無いがね」
「まったくだ…日本軍でも良いから、医者に診てもらいたいよ」
苦笑いを浮かべながら、大尉は言った。
……後に『パンアメリカン航空 アメリカ軍憲兵日本人・日系人移送事件』と言われる(日本国内ではパンアメリカンに配慮し『米軍憲兵日本・日系人移送事件』と記される)は、この後、機長が『機体トラブルが発生し、日本軍機に保護を求めた』と言う体でラバウル湾に着水、待機していたラバウル占領の海軍陸戦隊が乗員乗客を収容、憲兵隊並びに大尉と従軍神父は捕虜として拘束(従軍神父は身分確認後抑留に変更)、機長を含めたパンアメリカン航空職員は抑留、シコルスキーS42飛行艇は一時預かり、拘束されていた日本人・日系人は解放された。
但し、機内から押収した憲兵隊の命令書等々の証拠物によって、この事件が『様々な要素で全体的』に解決するのは日米講和後の話となる程、根深い物となり、更に『ある国』の決断を促す結果となった。
なお、別件となるが、この事件は後々に映画化され、これに発想を得た映画も製作されるなど、別の意味で名を残す事件となった。
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