今回はお仕事モードです。
次号 飲みに行くんだよ〜!!(はあ?)
11月24日 横須賀鎮守府 会議室
6日間の休暇を終え、松島宮や滝崎らは職務と雑務をこなしていた。
そして、この日、第二機動艦隊首脳陣が召集され、横須賀鎮守府の会議室に集まっていた。
「皆、集まったな? さて、開店休業状態だが、情勢確認と情報共有も兼ねて集まってもらった。まだ、次の作戦については何もきていないが、必要な事だからな。先ずは…滝崎大佐、情勢の方を頼む」
角田中将の挨拶から始まり、そのまま滝崎に話が振られた。
「わかりました。まず、欧州方面ですが、独ソ戦線以外はイギリス側がドイツの工業地帯に夜間爆撃を実施している事とドイツのUボートによる通商破壊以外の動きはありません。しかも、夜間爆撃は航続距離の関係で護衛の随伴が途中までしか出来ず、ほぼ様子見爆撃の様な状態であります。また、Uボートの通商破壊もイタチごっこ状態ですが…ジリジリとその活動が抑えられている様ですね」
史実と違い、アメリカ海軍がドイツに対して宣戦布告していない為、B17による昼間爆撃などが行われておらず、また、そうであるが故に航空戦力を含んだアメリカ陸軍戦力の精練化が進んでいないのが現状だ。
とは言え、Uボート対策にはアメリカから護衛空母や駆逐艦、護衛艦がレンドリースされおり、更に自国や連邦各国で建造された護衛艦艇も動員している事もあり、少しづつながら、Uボートの活動にも陰りが見えはじめていた。
「続けて、独ソ戦線ですが…現在、ドイツ側が攻略中であったスターリングラード周辺でソ連側の大規模反攻作戦が実施されているようです。ですが、ドイツ側の抵抗もあり、ソ連軍側の思惑通り進んでいない模様です」
これまた史実であればこの時点でほぼ成功していた反攻作戦であるウラヌス(天王星)作戦だが…日本との日ソ中立条約がなく、シベリア方面からの戦力引き抜きが出来なかった事、日米開戦で史実なら使えたウラジオストクからのシベリアルートによるレンドリースが受けられなかった事、それに伴う戦力不足の中での作戦開始、ドイツ側の抵抗と妨害…特に『ウクライナの狐』ことロンメル将軍率いる『ウクライナ軍団』とマンシュタイン元帥の指揮…により、鈍化どころか止まっている箇所すらある程だった。
「滝崎大佐、君はどう思うかね?」
「スターリングラード攻略担当部隊を含めた現場は疲弊しております。しかも、現段階時点の攻勢限界に達しております。ここは勢力圏固持より、敵の反攻を利用して戦線整理も兼ねて撤退すべきでしょう。まあ、あくまで外部からの意見ですが」
西村少将からの問いに滝崎が答える。
まあ、それをヒトラーが承認するかは五分五分である。
「続けて、アメリカ国内情勢ですが…まず、チェスター・ニミッツ大将が太平洋艦隊司令長官を解任されました。『ウォッチタワー作戦失敗、並びに先のミッドウェー島失陥の責任を問われて』の形ですが…間違いなく、トカゲの尻尾切りかと」
その言葉に角田中将以下この場に居る全員の顔が苦くなる。
確かに敵の艦隊司令長官解任は歓迎すべきかもしれないが、理由と現状に眉を顰める。
「確かに理由は解りますな。ですが、幾ら我が方の戦力的優位があったとは言え、そもそも無理な作戦を実施したのは大統領でしょう? ニューカレドニアの占拠を含めて」
本来なら参加者ではないものの、ある意味参謀枠で参加している木曾の川井艦長の言葉に部屋の空気が更に重くなる。
「はい。故に此度の敗戦による『ハワイ・西海岸方面の危機』についての大統領発言は国内では支持されています。ですが、今までの件から『発言への支持』=『大統領支持率』とはいかない訳で…しかも、現在、ワシントンD.Cでは開戦緒戦の軍事裁判の公聴会が行われておりますが…『結論有りき』な軍事裁判を公聴者が大統領批判と合わせて抗議する場になっております」
誰彼も表情が微妙になる。『現場に敗戦の責任』を押し付けたい政府側と『そもそも不必要な戦争を始めて、あまつさえ負けてる政府・大統領』を批判する国民…本来なら、戦争継続すら考慮する筈だが……まあ、状況はお察しである。
「こんな事を言うのは何だが…こんなに弱かったか、アメリカは?」
城島少将の言葉がこの場に居る全員の代弁だった。確かにイギリスを含めた連合国を中心に出来る限り中立的外交政策を進め、ユダヤ人や亡命政権を保護し、アメリカ世論を好意傾向に寄せた…結果、大統領の暴走もあり、アメリカは弱体化している。
「うむ…その、『勝って兜の緒を締めよ』と言われるが…敵は内部分裂をおかしているからな…政府と軍・国民が分断状態と言う、詰みな状況で」
森少将の言葉に何人かが頷く。
油断してはならないとは解ってはいる。備えなければならないと理解はしている…が、敵のアメリカがぐちゃぐちゃなのだ。
「んん…だがだ、東京空襲をやろうとしたのがアメリカだ。自棄糞な博打的作戦を打たんとも限らんからな」
角田中将の咳払いと言葉が響く。東京空襲の様な『空母から片道切符の双発爆撃機を飛ばす』は流石に無いだろうが…博打的作戦はあり得る。
「さて、話題を変えよう。航空隊関係者は航空要員の機種転換を知っているだろうが、第二機動艦隊にも追加の艦艇配備が決定している」
角田中将からのこの言葉に空気が変わる。自分達にとっては嬉しい話題だ。
「まず、第一防空戦隊は残りの1個駆逐隊秋月型4隻。空母は元ヨークタウンの耀鶴(ようかく)が豊鶴と組んで第七航空戦隊となる。そして、特設防空航空戦隊には神鷹のペアとなる空母と、先のニューカレドニア沖海戦で鹵獲した防空巡洋艦アトランタと駆逐艦フレッチャーが直衛艦として組み込まれる予定だ」
第一防空航空戦隊には対潜遊撃戦力も兼ねて直衛艦として、広戸風と那岐颪の2隻がいる。そこにアトランタとフレッチャーが加わる。随分と豪華豪勢な編成だ。
「そうなりますと…次の作戦は年を越して直ぐとはいかん様ですな」
木村少将の言葉に誰もが神妙な顔になった。航空要員は機種転換、新しく複数の艦艇が配備される…年末新年まで1ヶ月ちょいと考えると、年越し直ぐに作戦とはいかない。まあ、そもそも、次の作戦の話など、まだ何処からも出ていないのだが。
「とにもかくにも、だ。それらを踏まえ、こうして集まったのだ。訓練予定も決めようではないか」
角田中将のこの言葉により、訓練日程の調整が始まった。
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