そして、唐突にネームドが出ると言う…。
次号 その頃、アメリカは…(リメイクオリジナル)
1時間後
「…いや…予想通りだった。うん、ここまで予想通り過ぎて笑えない…」
視線の先には出来上がった神鷹隊・艶鶴の直衛隊の面々とその真ん中で彼らに囲まれながら同じ様に騒いで飲んでいるレナータを見て滝崎は呟いた。
なにせ、『伊(イタリア)軍女性水観乗り』『加賀のエース』『空飛ぶ勝利の女神』…等々、第二機動艦隊になってから、彼女の渾名は増え続けるばかりであり、特にパイロット達は加賀乗組員以外で彼女に(無線越しとは言え)直接話せるのだから、余計にである。
「レナータ大尉は今や有名人だからな。おい、松、幾ら女好きとは言え、下手に大尉に手を出したら、エラい目に遭うぞ」
「勘弁して下さいよ、中佐! そんな事をしたら、他の連中から袋叩きにあいますよ!」
小園中佐の声に赤松飛曹長が頭を掻きながら反論し、周りが大笑いする。
「いや、だが、レナータ大尉の腕は凄い! 水観でも零戦でも、どれに乗っても機体の持ち味を出して飛びますからな!」
「まったくだ。一航戦が鍛えた小僧共を零観で次々と返り討ちにしますからな! いや、小僧共4機編隊を苦もなく捻り潰したのは凄かった!」
酔った勢いもあってか、磯崎飛曹長の言葉に望月特務少尉が賛同し、周りも同調する。
実際、レナータは『異種機戦闘訓練』の敵対役(アグレッサー)として、特に若手パイロットを相手にし…尽くボコボコにしていた。
そんな様子を苦笑いを浮かべながら眺めていた滝崎はふとっ、外に視線を向け、それに気付いたレナータが声を掛ける。
「ん? どうしたの、マサロウ?」
「あっ、いや…なんか、外が騒がしくないかな、と」
確かに耳に意識を集中すれば『一杯飲もう』の喧騒とは違う『騒がしさ』が聞こえる。
「おい、誰か様子を見てこい」
小園中佐の指示に1人が出て行き…一分程して慌てた様子で戻ってきた。
「中佐! 近場の酒場で豊鶴と耀鶴の紫電改隊のパイロット達が喧嘩を始めた様です!」
それを聞いて滝崎は立ち上がる。
「すみません、私も見て来ます」
そう言って店から出て行った。
「あっ、マサロウ〜、私も行く〜」
「やれやれ…まあ、身内ですからな。行くとしますか」
追い掛けるレナータ、それを見て立ち上がる小園中佐、そして、神鷹隊と艶鶴の直衛隊達が続く。
「確か、近くって…あっ、あれ…えっ!?」
件の店を探していた滝崎は入り口に人集りがある店を見付けた。
が、次の瞬間、その人集りは崩れ、その店の入り口から何かが飛び出して…いや、『投げ出された人』が出てきた。
「…えっ、あっ、憲兵!? 憲兵がもう来て…放り出された??」
「くそ、やっぱり遅かったか…あっ、滝崎大佐?」
再び出来上がった人集りの中から志賀大尉が出て来た。
「お疲れ様です、志賀大尉。艶鶴の航空隊の監視で?」
「えぇ、直衛隊が何時もの店だと思って足を向けましたら、別の連中が喧嘩をしていると聞きましたので、此方に」
「はぁ、誰だか知らんが、派手にやってるな…志賀大尉か。貴官もかね?」
「お疲れ様です、小園中佐。と言う事は…あぁ、望月特務少尉も」
レナータと小園中佐が現れ、神鷹隊や望月特務少尉ら艶鶴の直衛隊も現れる。
「憲兵が10人程中に居る筈ですが…これでは…」
「だな。さて、止めて来るか」
そう言って小園中佐、志賀大尉、望月特務少尉らを先頭に店の中に入って行った。
翌日 11月27日 横須賀鎮守府内
「それで、昨日の馬鹿騒ぎをおこした連中が気になった、と」
翌日の横須賀鎮守府にある、第二機動艦隊の臨時司令部。
滝崎と昨日の夜に誘って貰えずに若干不機嫌な松島宮が角田中将の元に来ていた。
「まったく…私も誘ってほしかったぞ」
「いや…君が来ちゃうと…街中自体が大騒ぎになるから…」
「あはは、なるほど…と言っても、殿下も行きたい様だからな…『お忍び』の努力はしてみような」
それはそれでどうなんだ、と言いたくなる角田中将の言葉の後、角田中将が報告書らしい紙を見る。
「先ずはおさらいだ。豊鶴の紫電改隊のパイロット2人と、耀鶴の紫電改隊のパイロット達による喧嘩は最終的に止めに入った憲兵隊10人も全滅させ、そこに小園中佐と志賀大尉、望月特務少尉らが一喝して終了。協議の結果、元気が有り余っている様だから、訓練時間倍増が処分結果になりそうだ。なお、憲兵隊からは全滅させた豊鶴のパイロット2人を引き渡せと言ってきたらしいが…小園中佐らで上手く納めたらしい」
「訓練時間倍増、ですか」
軽い印象にしか聞こえないが、『元気だから倍増』なのである…つまり、厳しさも割り増しなのは確実だ。
「ちなみに…耀鶴のパイロット達と憲兵隊を返り討ちにした豊鶴のパイロットの名前は?」
「うむ、紫電改隊のペアだ。菅野直(かんのなおし)少尉と杉田庄一(すぎたしょういち)一飛曹だ」
「………えっ、それは…ホントですか?」
まさかのビックリな名前の出現である。
「ん? 何かあったか?」
滝崎の反応に松島宮が訊いてきた。
「あっ、いや…2人共、大戦後期にエースになるパイロットですから…杉田一飛曹は史実で山本長官戦死時の護衛機パイロットの1人、菅野少尉は訓練機を何度も壊すので『菅野デストロイヤー』と呼ばれていましたが…素は文学青年で…史実でも後期にはペアを組んでおり、憲兵隊をボコボコにしていたとか…ただ、終戦間近に2人共…」
「そうか……君が居るからかな? 有名人が集まるのは?」
「まさか…私は磁石か何かですか?」
角田中将の言葉に滝崎は苦笑いを浮かべて否定するだけだった。
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