いや…史実だと、この次期、互いにそれぞれの対応戦線の対応してるから、顔合わせる機会がないと言う…。
次号 ノンビリ回
11月30日 ワシントンD.C
今年も残り1ヶ月となったこの日、アメリカ合衆国の首都は相変わらず反戦デモが練り歩き、新聞やラジオはルーズベルト政権を批判し、『公聴会』は荒れていた。
そんな中、イギリス経由でアメリカに帰国したダグラス・マッカーサーは比較的ノンビリと過ごしていた。今や『公聴会』は荒れに荒れている海軍への責任追及を諦め、フィリピン戦で指揮を執っていたマッカーサーを召喚し、マッカーサーの責任を追及する気でいたが、マッカーサー自身は既に反論の材料をしこたま溜め込んでいる為、『何時でもこい』であったのは…皮肉としか言いようがない。
そんな中、そのマッカーサーの所に公聴会とは関係なく、やって来る人間がいた……訓練センター長のパットン少将が『戦訓を得る為』とここ最近、足繁く通っていた。カリフォルニアの訓練センターの仕事は…まあ、部下に任せていたりする。
「なるほど…つまり、日本軍は台湾の在住民族主体の部隊を編成し、在フィリピン軍とフィリピン軍を翻弄した、と?」
「うむ…実際、日本軍の上陸部隊を迎撃する為に前進した部隊が何度も待ち伏せに遭い、しかも、将兵が何人も行方不明になった。フィリピンには『ティクバラン』と呼ばれる半人半馬の伝説の怪物がいるのだが、フィリピン兵達は『ティクバランの悪戯』と噂していたが…捕虜になった後に知ったが、台湾在住民族『タカサゴ族』の部隊が地元のジャングルに慣れているフィリピン軍を翻弄し、将兵を捕えて情報を集めていたそうだ……これでは勝てる訳がない」
苦笑いを浮かべながら語るマッカーサーにパットンは熱心にメモをとっていた。まあ、彼の癖のある文字の為に何を書いているか、いまいち読めないメモになっているが…本人がわかればよいのである。
「更に…ノモンハン事件や冬戦争で使われた無反動砲も、口径を拡大した新型を、また、戦車に随伴して、タンクデストロイヤーも保有している」
「うむ、M3軽戦車だけでなく、M3中戦車が日本軍に何の打撃も与えられずに撃破された事を考えると…ドイツの様にアハトアハトの様な対空砲を引っ張り出して来たか、対戦車自走砲でスナイプしたか、だろうな」
なお、この空間の奇妙な所はマッカーサーもパットンもそれなりの『名家』である点だ。
マッカーサー家は曾祖父母の代にアメリカへ移民した『移民組』ではあるが、その血脈はスコットランド貴族の名門家に繋がっている。
対して、パットン家は祖先が独立戦争に従軍したと言う『家系の歴史=アメリカ合衆国の歴史』とも言える『建国組』であり、しかも裕福な農場主でもあった。
更に皮肉なのは、双方が南北戦争の関係者(マッカーサーは父親16歳で参加、パットンは祖父が南軍士官として従軍)であり、根っからの軍人器質だった父親を見ていた為か、比較的パットンとの会話は口が軽かった。
「やはり、日本軍は独ソ戦の双方の戦訓を取り入れてますな。強力な戦車には強力な火砲や無反動砲を持つ歩兵で対峙しつつ、改良した戦車を順次戦場に送り出す。しかも、ソ連を相手にする前提だったから、そのやり方を我々に対して使ってきている」
「だな…張鼓峰、ノモンハン、冬戦争…ソ連との戦いで『経験』のアドバンテージがある。対して、我々は一歩も二歩も遅れている。しかも、その差は縮まるどころか、僅かづつ更なる開きが拡がっている状況だ」
「まったくです…やはり、我が国が日本を相手に戦争をやるなど馬鹿げた事だったのですよ。これではアカを助ける様なものだ」
パットンの吐き捨てる様な言い様にマッカーサーは頷いて同意した。そもそも、日本の態度はアメリカとの戦争を避けていた…のを踏み込んだのはアメリカ側だった。しかも、それをやったのがライバルのルーズベルトと言うのは笑えない。
「パットン君、君は中々、日本軍について調べているね。君がフィリピンに居たら、もっと粘れたかもしれない」
「それは…何とも言えませんな。まあ、個人的に冬戦争終結後にソ連軍の動向に主眼を置いた私的レポートで日本軍の事を書きましたので」
「ほう…なんで出さなかったのかね?」
「えぇ、いや…まだあの頃は大佐でしたからな。友人達から『佐官が出すには過ぎてる』と」
「なるほど…すまないが、パットン君。その『私的レポート』とやらを見せてくれないかね? 明日でもよいから」
「えぇ、まあ…配る様に印刷した物がありますので」
…こうして、『昨今の紛争から見たソ連軍の動向』こと『パットン・レポート』(第63 話参照)がマッカーサーの手に渡る事になる。
2日後 12月2日 ワシントンD.C 陸軍省付近 夜
「やあ、久し振りだね。アイゼンハワー君」
自宅に帰宅しようとしていたアイゼンハワーを建物の陰から巧みに姿を現したマッカーサーが声を掛ける。
なお、2人はかつて『上司と部下』の関係にあり、優秀なアイゼンハワーをマッカーサーがパワハラで潰しかけた事もあり、正直に言えば…仲は良くない。
「……マッカーサー元帥、明日、公聴会に被告人として出席予定では?」
マッカーサーの姿を認めたアイゼンハワーの言葉には『棘』を隠す気もない。
「あぁ、そうだ。で、『これ』をパットン君に出さない様にしたのは…君だな?」
昨日受け取った『パットン・レポート』をチラリと見せる。
それを見たアイゼンハワーの顔が…歪む。
「…ジョーシが最近、元帥の所に通っているのは知ってましたが…」
「あぁ…で、彼の口からこれの存在を聞いて、見せてほしい、と言ったのさ」
「……それで、それが何か?」
「いや、この頃には、君とパットン君の親友のブラットレー君がマーシャル参謀長の下に就いていた頃だろう? つまり…その時から陸軍省の『空気』が怪しかったのだろう?」
マッカーサーの言葉にアイゼンハワーの顔は…明らかに苦い表情を見せる。
「……なるほどな。まあ、その反応だけ見れたら充分だ」
「明日の公聴会、何をする気ですか、マッカーサー元帥?」
立ち去ろうとするマッカーサーにアイゼンハワーは思わず訊いた。
「別に…ただ、パットン君のレポートを出すだけだよ」
ニヤリと笑いながら答えるマッカーサーにアイゼンハワーは固まった。
……翌日、公聴会に出席したマッカーサーが『パットン・レポート』を出した事により…更に公聴会が荒れ、政府と関係者への批判が更に加速し、パットン少将と『パットン・レポート』の事が拡がる事になる。
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