11月18日……表敬艦隊プリマス軍港を出港。
なお、艦隊到着後に到着した陸軍部隊を載せた輸送船団を伴って出港。
11月20~24日……ドイツ海軍監視下でキール運河並びにバルト海を通過。輸送船団に関しては『大戦開始で受けとれなくなったスウェーデン企業への発注品を取りに行く為だ』と言って通過させてもらった。
11月25日……スウェーデンの首都ストックホルムに入港。
11月26日……カレリア地峡付近にて、死傷者13名を出す『マイニラ砲撃事件』が発生。ソ連政府はフィンランドの仕業だとフィンランド政府を非難。(もちろん、自作自演) 同日に不可侵条約破棄を通告。
翌日(11月27日) ノルウェー首都クリスチャニア(現オスロ) ノルウェー王宮内
「……緊張するな」
「今更それを言うか? いったい、何人の有名人に会ってると思っているんだ?」
「それとこれとは別なの」
こんな会話をノルウェー王宮内の一室でしている2人。
もちろん、これは仕事である。
先日発生した『マイニラ砲撃事件』により、『艦隊は緊急事態に備えて臨戦態勢待機』となり、『ノルウェー訪問が取り止めになりそうな為、その事情説明と釈明』に『身分的に相応しい』2人に白羽の矢が立った訳である。
「陛下が参られました」
入って来た係官の後ろから、現ノルウェー王国国王ホーコン7世が現れ、2人がお辞儀する。
その後、人払いをすると、ホーコン7世が口を開く。
「君達の事は日本大使館、そして、事情に関してはエリザベス殿下の手紙で知っている。また、今回の『名目』に隠れた役目もだ。さあ、話してくれたまえ」
単刀直入な言葉に滝崎は逆に安心し、手短にこれからの事、特にノルウェーをメインに話す。
「…と言ったところです。最終的にノルウェーは連合軍勝利で独立を回復しました。ですが、その後の冷戦により、ヨーロッパの緊張状態は相変わらずとなり、バルト海の要として、ノルウェーは引き続き、ソ連・ロシアと対峙する事になります」
「ふむ……ソ連、いや、ロシアと事構えるのは伝統とも言えるレベルだから良いが……問題は、ナチスドイツの軍門に下る事だな」
その言葉に滝崎は複雑な表情になる。
実際のところ、ノルウェーのナチス党である『国民連合』のメンバーを一網打尽にすれば多少マシなのではあるが、ノルウェー軍の軍備やドイツの準備具合と距離、連合国の動きを見る限り、ノルウェー陥落を引き延ばす事は出来ても、ドイツ軍を追い返す事は無理難題としか言い様がない。
「うむ……まあ、今から大事が控えているにも関わらず、他国の心配を出来る君は肝が据わっているな。大丈夫だ、君達から話を聞けただけでも充分だ。上手くやってみるさ」
滝崎の表情を見てホーコン7世はそう言った。
「陛下、確かに日本は直接的には助ける事は出来ません。ですが、要請があれば各国の日本大使館が協力いたします。これは政府も認めている事ですので」
滝崎に代わり、松島宮が『日本が出来る事』を話す。
「それが聞けただけでも、日本の誠意が解る。さて、そうなると、我々はその誠意にどう応えたら良いかね?」
「今は何も…先程も申しました通り、どうなるかは未知数になりますので」
ホーコン7世の問いに滝崎はそう答えた。
暫くして 帰りの機内にて
「……心此処に有らずな表情で機外を眺めるな」
スウェーデンへ帰る機内で憂鬱そうな表情で窓から機外の光景を眺める滝崎に松島宮は呆れながら言った。
「いや、まあ………うん、すまない」
「どうせ、『中途半端に介入するだけで、後の事を当事者に押し付けてる自分はいったいなんだろう?』とか考えていたのであろう? あぁ、なんで解ったかは、長年の付き合いだからこそ、解るからな」
「……ぐうの音も出ない程のお見通しぶりで」
松島宮の言葉に滝崎は苦笑いを浮かべながら言った。
「まったく…大体だ、お前は何でもかんでも1人で背負い過ぎなんだ。今回の一件だって、何時までも我が国が介入出来る訳ではない。それをホーコン陛下も解っておられる。逆にあそこまで他国人が心配している事に、更には七難八苦の末に祖国を取り戻せたと言う未来と希望が聞けたのだ。今はそれだけでも充分だったのだ。お前は立派にいま出来る役割を果たした。ここはそこで一区切りつけようではないか」
「……あぁ、そうだね」
松島宮の言葉に溜め息を吐きながら滝崎は答えた。
11月29日……ソ連政府、フィンランド政府に対し、国交断絶を発表。
同日深夜 ストックホルム港 朝顔艦橋
「……ま! だ! か!?」
「ごめん、まだなんだ」
露天の艦橋で防寒服で着膨れしている乗組員達の中で、湯気が出そうな程に怒気をかもしながら訊く松島宮と冷静に答える滝崎。
「まったく! もう確実なのだから、天下御免でよかろうに!」
「落ち着いて、落ち着いて…いや、その憤慨は理解するが…」
「艦長、旗艦の比叡より、ようやく出港の指示が出ました」
同じく着膨れした運用長が通信室からやって来た。
「漸くか。よし、直ぐに出港だ!」
「あっ、忘れてるかも知れないけど、出港しても、フィンランド近海で一旦待機だからね」
「また待つのか! もう、我慢は飽きたぞ!!」
「抑えて、抑えて」
ノリノリに出港指示を出す松島宮に滝崎は忘れてるであろう事を言うと、忘れていた松島宮は憤慨し、滝崎が再び諌める。
「艦長は御冠ですな……まあ、あの憤慨も解りますが」
「あはは……御迷惑お掛けします」
「いえいえ、事が事ですから……副長や私を含めた皆も同じ気持ちですよ。ああして本音を素直に出せるのは…若者の特権ってやつですよ」
ニヤリと笑う副長に滝崎も微笑んだ。
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