ちなみに、このリメイク版オリジナルです。
にしても、ウィキペディアで経歴見直しながら書いたので、ちょっと雑かも。
松島宮・滝崎達が日本に向かっていた頃……
同日 アメリカ ワシントンDC とあるバー
「……ジョージ、これはなんなんだ?」
私服代わりのスーツ姿ながら、どこか『その仕草』が出ている男達3人がバーの隅の席で話している。
そして、その中の1人が今回の主催に訊いた。
「見ての通りさ。レポートだよ、レポート」
「ジョージ、アイクが聞きたいのはそこじゃない中身、内容だよ」
主催の問いにもう1人が苦笑いを浮かべながらフォローを入れる。
「おいおい、ブラットレー、お前もか? 字が読めなくなってないよな?」
「いや、レポートと言うのも解るし、題名を読めば解るよ。それでも、筆者の口から聞きたいんだよ。『これは何か?』を」
最初に質問した男が念押しと言わんばかりに言う。
それを聞いた主催の男は自慢気に答えた。
「先々月終わった冬戦争、並びに昨年のハルヒン・ゴール、スペイン内戦に関する私見レポートだ」
それを聞いた2人の男は内心…いや、目に見えて解る様に溜め息を吐いた。
「なんだよ…その反応」
「まあ、題名に『昨今の紛争から見たソ連軍の見解』なんて書いてあるから、内容は察していたけど」
そう言ってブラットレー、続いてアイゼンハワーがテーブルのレポートを手に取る。
このバーに集まった男3人、身のこなしから軍人である。
そして、読者にはお気付きの方も居るだろが、この3人は2人を呼んだ主催のジョージ・パットン大佐、呼ばれた2人はドワイト・D・アイゼンハワー中佐とオマール・ブラットレー中佐。
そう、史実のヨーロッパ方面で活躍するアメリカの未来の3将軍が、このバーに集まっていた。
「最近、君が珍しく静かだと思っていたが、なるほど、これを書いていたからか」
「それにしても、よくもまあ、これ程分厚くなる程書きましたね。情報収集も大変でしたでしょうに」
そう言いながら2人は重要そうな所をピックアップし、ピンポイントで読みながら次々にページを捲っていく。
そうして、暫く読み続け、一通り読み終わったのを見計らい、酒の栓も開けずに静かに待っていたパットンが口を開いた。
「で、どうだ? 出来映えは?」
「……なあ、ジョージ、まさか、このレポートを軍に提出するつもりか?」
パットンの問いにアイゼンハワーが問う。
「あぁ、だから、アイクとブラットレーに先に見せたんだ」
ニコニコ顔の返答にアイゼンハワーとブラットレーは互いに顔を見合わせ、そして、頷き合う。
「悪い事は言わない、ジョージ。提出はやめた方がいい」
「なに!?」
アイクの言葉に驚くパットン。
「先に言いますが、体裁が悪いとか、そう言う事でやめる様に言ってるのではありません。ただ、これは『階級的立ち位置』を逸脱した提言に受け取られかねない」
続く形でブラットレーが言う。
「うむ、ブラットレーの言う通りだ。確かに良く調べて書かれたレポートだ。但し、政治的な事、特に外交関係に踏み込んでいるのが問題だ」
「おいおい、アイク。俺は『ソ連と戦争をしろ!』と言う気はない…確かにアカは大嫌いだが、今回のレポートはそう言う意図はなくてだな…」
「ジョージ、君としてはそれを隠しているつもりだろう。だが、将軍ではない我々佐官が出すレポートにしては政治的過ぎるんだ。しかも、軍が何か意見を求めた訳でもないのに、個人がいくら『分析レポート』と言って出すにしても、色々と厄介な内容の物なんだ、君のは」
アイゼンハワーとブラットレーの言葉にパットンは不満気な顔で腕を組ながら椅子に背を預ける。
「分析レポート一つ出すだけで、まるで俺が戦争を煽っているみたいじゃあねえか」
「人によってはそう捉えかねないんだよ。我がアメリカの方針は『中立』、そして、『戦争はしない』なんだ。例え、ヨーロッパで戦火で焼かれても、だ」
「じゃあ、アカがフィンランドを攻めた時に援助したのはなんなんだよ?」
「君もわかっている筈だ。あくまで『援助』なんだ。義勇兵が出たとしても、それは一個人の行動であって、政府自体は関係ない。ヨーロッパへのレンドリースだって、援助と国家間の売買取り引きだからな」
「けっ、俺だけ騒いで戦争になるわけねーのに」
「ホントにそう思っているか? 冬戦争の時、共和党を中心にソ連への非難決議を出されたのを知らない訳じゃあないだろう?」
「それらの『政治的微妙な事情』を踏まえて『やめろ』と言っているんだ。下手をしたら、降格…いや、不名誉除隊かもしれん」
「わかった、わかった! くそ、外で一本吸ってくる」
そう言ってパットンは立ち上がり、外に出る。
別段店内で吸っても問題はないが、ここまで2人から出すことを止められるとは思っていなかった為、いったん落ち着く為に席を外したのだ。
「……ふう、上手く丸め込めたかな?」
「あぁ….まあ、いま言った事も間違いないが…これはな…」
安心した様に呟いたブラットレーにアイゼンハワーが再びレポートを手に取り、ブラットレーも同じく手に取る。
2人はレポート終末の『総論』に書かれたある一文を気にしていた。
「『もし我がアメリカが対ソ連戦になった場合、大日本帝国政府、並びに同陸海軍と連携する事により、極東アジア方面での優位性を確保すべきである。』…問題はここだ」
「確かに。無論、パットンの言ってる事に間違いはない。まあ、陸軍、しかも、ヨーロッパ方面がメインの我々が言ったら、それはそれで一悶着あるが」
そう言って2人は顔を見合わせる。
今までパットンに色々言って提出を止めた2人がパットンには言わない、『本当に出していけない理由』がこの『日本と連携せよ』と主張する一文。
この一文を抜きにすれば、実はパットンのこのレポートに関する一悶着なんて程度は知れているのである。
「……ブラットレー、最近の様子は?」
「何もない、『異様な静かさ』だ」
「「…………」」
何とも意味がわからない会話を交わし、互いに沈黙するアイゼンハワーとブラットレー。
「日本は軍のゴタゴタとそれに伴う政治不安が解決し、チャイナやイギリスと連携の強化を図って、極東情勢は安定している。更にハルヒン・ゴールや冬戦争でソ連に強硬姿勢で対応している。また、ドイツのポーランド侵攻を批判し、冬戦争の援助ルート妨害を飴と鞭で解決し、絶妙に牽制している。故に日本を敵視する必要はない筈だが…」
「だか、どうも、おかしい。参謀総長は何も言わないが…異様な空気が漂っている。特に日本の話題には敏感なんだが…最近は機嫌が良くはない」
実はこの時、ブラットレーは『マーシャル・プラン』のジョージ・マーシャル参謀総長の部下として1938年から勤務していた。
(マーシャルの参謀総長就任は1939年9月)
「……もし、パットンがこのレポートを出したら…どうなると思う?」
「降格で済んだらいい。だが、それで収まるかと言われたら…解らない」
アイゼンハワーの問いにブラットレーが答える。
そして、その時、一本を吸い終え、落ち着きを取り戻したパットンが帰って来たので、2人はこの話を止めた。
後にこの『パットン・レポート』の存在と内容が判明した時、様々な意味で論争の的となった。
そして、結果論として言えば、未提出に終わった事はパットン自身には吉と出る事になる。
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