……ある意味、ギャグ会枠。
5月12日 呉軍港内 ドック
リベット音と溶接音、更にそれらを扱う工員の声(ドイツ語が混じっている)が響く中を松島宮と滝崎、そして、レナータが歩いていた。
「あの船台に載ってるのがシャルンホルスト号?」
「あぁ、今はドイツ海軍から造船関係者を中心とした見学団も来て、実際に作業に従事してる」
レナータの質問に滝崎が答える。
「えーと、アマギ、アカギ、ソーリュウ、ヒリュウ…同じ小型のホーショー、リュージョー…イタリアが持ってない空母を6隻も持ってるのに、まだ造るの?」
少し音は違うものの、名前を言いながら指折りで数え、本当に『え、なんで?』と言いたげに訊くレナータ。
「日本だと空母は2隻で一個航空戦隊なんだ。その一個航空戦隊を交代して運用している、それに、アメリカは大型空母を6隻保有しているから、別に過大ではないぞ」
「それって、つまり、アメリカとやり合う事前提な訳?」
「アメリカの言い分は『太平洋と大西洋で使うから』だからね。此方は此方で『取り回しがいいから』軽空母を配備・整備している。ただ、それだけさ」
「…まあ、イタリアから見たら贅沢な話ね」
滝崎と松島宮の答えに『ふーん…』ととりあえず納得した様子のレナータ。
そして、改装中のシャルンホルストをよく見る為に其方へ近付いていく。
「……で、周辺に居そうか?」
「…とりあえず、正面視界内にはいない」
周囲をキョロキョロと見ながら確認する2人。
もちろん、理由は例のドイツ海軍士官。
「あんな風に言われると、直接的に何も無くても警戒するよな」
「うむ、まあ、面倒になる前に帰れたらいいが、まあ、バルロッティ中尉の研修の件もあるし…やれやれだな」
そんな事を話していたのがまずかったのか、背後が疎かになってしまい…。
「背後から申し訳ない。ちょっとよろしいだろうか?」
「「うわっ!!」」
背後から『例の人物』に声を掛けられ、驚く事になる。
「…いや、ホントに申し訳ない、驚かすつもりはなかったのだが…あ、えーと、ドイツから派遣されたエーディト・アウエンミュラー中尉なんだが…えーと…」
滝崎と松島宮に驚かれたのが尾を引いているのか、どう話を続けてよいかと困惑気味である。
「あー、えっと…こちらこそすまない。その…」
何とか取り繕うと口を開いた滝崎。
しかし、そこに同行者が来てしまう。
「滝崎、松島宮、ちょっと、どうした…あれ?」
「…はぁ? いや、待て。はぁ!? なんで、お前がここに居る!?」
滝崎と松島宮の背後から現れたレナータにエーディトは明らかに動揺しながら訊く。
「えっ、もちろん、仕事よ。まあ、仕事と言っても研修だけど…それより、エーディト、貴方こそ、なんでここに居るの? しかも、海軍の制服よね? 確か前の手紙にはSSって…」
「ば、バカ! 人の事をベラベラ喋るな!」
2人の会話にもはや蚊帳の外に置かれた滝崎と松島宮だか、内容的に2人が顔見知りだとはわかった。
「で、どうする?」
「まあ、迷惑にもなるし、一旦2人を引き離してだな…」
松島宮の問いに滝崎が対応を話しているとワイワイしていた2人に変化がおこる。
「それよりも、少し気になるんだけど…」
「なっ! や、やめろ!!」
そう言いながらレナータは素早くエーディトの背後に回り、何をされるか気付いたエーディトが叫ぶ。
そして……
モミモミ……
「う~ん、いや~、今回も残念賞ね~」
「「……はぁ!?!?」」
慣れた手つきでエーディトの胸を揉み感想を呟くレナータ、その行動に思わずすっとんきょうな叫びをあげる滝崎と松島宮、そして、思いっきり顔を真っ赤にさせるエーディト。
「や、や、や、止めなさい!! この胸デカ娘!! 何時も何時も、なんで胸を揉むのよ!?」
「いや~、やっぱり身内としては気になるじゃない。下手に身体を縛ると、毒になって身体壊すよ?」
「微妙に回答になってない! そもそも、何を食べたらそんな胸になるのよ!?」
「マンマが作る料理! パスタとオリーブ、トマトと牛乳! 栄養が揃ってバランス良く食べればなります!」
「嘘を吐くな! それで解決するなら、この世の女性はイタリアに行くに決まってんでしょう!! と言うか、揉むのを止めなさい!!」
怒りやら羞恥心やら何やらが混ざり、真っ赤になって叫ぶエーディトと(加害者?故に)冷静に答えるレナータ。
そして、微妙に自らの胸に視線を落とす松島宮、横目でそれに気付きつつ、今は気にしない事にする滝崎。
「…そろそろ止めないと、殺傷沙汰になるし、国際問題化しそうだし、それより、迷惑になるな」
「…まったくだ。やれやれ、なぜこうなった?」
既にこの騒ぎでドック内の注目の的になっていて、誰彼なしに視線が此方に向いている。
「ええい! やめろ!」
「はいはいはい、止めるわよ~。これ以上やったら、生真面目堅物の堅苦しい説教だし」
「私的な場ならいざ知らず、公共面前でやってる挙げ句、既に遅いわ!! 今日と言う今日は本気で説教よ!! 日本には『正座で説教』って言葉があるから、正座で受けてもらう!!」
そう言いながらエーディトが腰のホルスターに手を伸ばすのを見て、流石に不味いと思ったレナータ。
「あー、ちょっと用事を思い出したわ。ごめん、滝崎、松島宮、一足先に帰るわね」
「待て!! 帰るな!!」
脱兎の如く走り出して逃げるレナータ、虎かライオンの如く追い掛けるエーディト。
「…追い掛けるか」
「あぁ…やれやれ、後始末で残り1日が終わりそうだな」
もう遅いが、この後の処理に頭痛を感じる滝崎と松島宮。
結局、暫く巻き起こす追い駆けっこと、その処理、堀長官への報告で1日はほぼ潰れた。
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