(不可能ではないが…)
8月11日 トラック諸島
この日、護衛訓練も兼ねてか、護衛戦隊と共に一隻の輸送船が到着する。
そして、その輸送船からぞろぞろと降りてくる一癖二癖ありそうな面々。
それを少し遠目で隠れた様に見守る松島宮と滝崎。
そして、その面々の最後に降りた士官が先に降りた面々に指示を出し、待機していたトラックや乗用車に面々が分乗・発進した、2人の方に近付いて来た。
「お初にお目にかかります。空母神鷹に配備されます、『特設防空航空隊』部隊長の小園安名(こぞのやすな)中佐です」
甲冑を着せたら戦国武将とも言える風貌の小園中佐の敬礼に2人は返礼する。
無論、滝崎は彼の事を知っている。史実でも有名な御仁だからだ。
「まさか、自分の『要望』に小園た…失礼、小園中佐が関わりとは思いませんでした」
「はっはっは、まさか、小官にこの様な任を拝命されるとは思っておりませんでしたが…ですが、故に面白く、また、搭乗員もそれにつられた猛者ばかりです」
滝崎と小園中佐の会話に松島宮が加わる。
「ところで、小園中佐。『特設防空航空隊』の概要は?」
「はい、『とりあえず』の設立目的は『殿下の護衛』です」
「………はぁ??」
「そんなん知らん」と言わんばかりに滝崎の顔を見る松島宮。
無論、滝崎は『要望』こそ出したが、『設立理由』には口を出してないので知る筈はない。
せ
「あくまで『周りへの説明』ですので。『今後の空母航空戦下における航空防空の確立』と露骨に言う訳にはいきませんので」
「…つまり、私を理由に使っただけ、と?」
「ただ、これは山本総長や堀長官が絡んでの話ですので…どこまでが本当で、どこまでが名目か、と訊かれますと何とも」
小園中佐の言葉に呆れる松島宮、苦笑いな滝崎。
「はぁ…いくら名目とは言え、皇族だが大佐風情を守る為に防空戦闘機隊を設立するか? 仰々しくて逆に怪しく思われるぞ」
「…まあ、殿下は有名な方になってしまいましたので…それはそれで、話は通ってしまうところもあります」
何かを察したのか一瞬、話の間が空くも、小園中佐は『仕方ない』と言わんばかりに言う。
「とりあえず、小園中佐。明日、其方にお伺いしますので、中佐も隊の面々と合流し、明日に向けて休息して下さい」
「わかりました。ここは滝崎くんのお言葉に甘えさせていただきます」
そう言って小園中佐が敬礼すると、松島宮と滝崎は返礼し、別れた。
……観艦式が終わって暫くし、零戦での錬成が完了した頃、指名され、個別で呼び出された。
呼び出された会議室に入ってみると、久々の再会となった、顔見知りの小園中佐が1人で居た。
顔見知り故に単刀直入に切り出した小園中佐の話は、曰く『腕があり、鼻っ柱も強く、零戦に満足していないパイロットを探している』との事であり、その候補として、自分が『差し出された』そうだ。
確かに零戦に対する不満はあったが、こんな形になるとは『口は災いのもと』と言う諺に納得するしかない。
そして、小園中佐は言った。『もし、興味が沸いたのなら、話を聞いてくれ。但し、聞いた以上は逃げられんよ?』と。
そう言われては興味は沸くし、そもそも、腕を買われたとなれば話は別だ。
故に…話を聞いて、二つ返事で志願した訳なのだが……。
8月12日 トラック諸島 竹島飛行場
「で、あれが有名な『殿下様』と」
居並ぶ『特設防空航空隊』の面々の中に居る赤松貞明(あかまつさだあき)飛曹長が来訪した松島宮達を見てボソリと呟いた。
昨日、愛機と共にやって来た自分達を『殿下様』の松島宮が滝崎と外国人2人(レナータとエーディット)を伴ってやって来た。
「で、あれが神鷹の搭載機か?」
「あぁ、そうだ」
「ふむ…若干、Fw190に似ているかな?」
組み立て作業が終わった2機が鎮座する前で滝崎達(3人)が話す。
「戦闘機の方は艦上機に改修した陸軍の戦闘機『鍾馗』、偵察機は艦爆として採用予定の機体を先行量産の形で偵察機にした高速偵察機です。本来なら、名前はなかったのですが、ウチの連中が艦爆になった際の名前をもじって『星雲』と名付けたところ、それが名前になりまして」
隣にいる小園中佐は2機の事を説明する。
エーディットが『Fw190と似てる』と言う機首の大口径エンジンに対して、尾翼に至る迄に段々と機体を絞った形状になっている戦闘機『鍾馗』と、機首の液冷エンジンと空気取り入れ口が特徴的な、いかにも高速そうな偵察機『星雲』。
「ん? 偵察機は置いといて、陸軍に『鍾馗』の名を持つ戦闘機なんてあったか?」
「あー、実はね…鍾馗も星雲も制式採用は『来年』の予定なんだ」
「「はぁ??」」
滝崎の返答に松島宮だけでなく、エーディットも反応する。
「い、いや、鍾馗は本来陸軍の管轄だし、星雲も艦爆として採用する事も含めてで…」
「……ちなみに小園中佐、この私より事情を知ってるバカの代わりに答えてほしいのだが、制式採用された際のそれぞれの制式名は?」
「はい、『鍾馗』は『二式単座戦闘機 鍾馗』、『星雲』は『二式艦上偵察機 星雲11型』と書類上でも記載される予定です。なお、星雲は偵察機材を追加燃料タンクと共に本来の爆弾倉に内蔵しております。なお、鍾馗は最大250キロ、星雲は3番、又は6番(30・60キロ)爆弾2発を主翼に爆装可能です」
「ふむふむ、何とも頼もしい機体だな…滝崎、お前、知っていたな?」
「い、いや、前も言ったが、要望を出したから、その返答で聞いただけだし、星雲こと二式艦偵は名前がついて…」
「そんな事は聞いておらん。前も言ったが、そう言った事は話せと言ってるだろう? うん?」
「ちょ、まっ、こ、公共面前ん~~」
そう言って松島宮が滝崎を絞めはじめ、事情を知る小園中佐以外の防空航空隊の強者達はそれをポカーンと見守るしかない。
「ねえねえねえねえ! トクマサ! マサロウ! 私、我慢出来ない! ちょっと模擬戦させて!」
「おい、レナータ! お前はバカか!?」
「「あっ、小園中佐、いきなりですが、大丈夫ですか?」」
「ちょっと! 止めなさいよ!!」
レナータの言葉に止めるエーディットを他所に絞めを止めて、松島宮と滝崎が小園中佐に訊き、エーディットはツッコミを入れる。
「あぁ、聞いていたからいいですよ。おい、松(まつ)、ちょっとレナータ中尉の相手をしてやれ」
「…えっ!?」
突然の指名に赤松飛曹長が驚く。
「腕や頭の回転なら、この中で一番を自負してただろう? なら、相手してやれ」
「わ、わかりましたよ。やりますよ」
「おう、他の連中も一戦やりたいなら、申し出ろ。他国のパイロットとやるいい機会だぞ?」
小園中佐の言葉に早速手を挙げるパイロットの面々。
……楽しい事になりそうなのは確実だった。
「……なあ、松島宮、滝崎、ちょっといいか?」
「ん? なんだ?」
絞めを終わらせたタイミングでエーディットが松島宮と滝崎に声をかける。
「あの爆撃機になる予定の偵察機…ちょっと本土に紹介していいか?」
「上に申し出て、許可が出たなら、別段構わんが…それでいいか?」
「すまないが、頼む」
次号へ
ご意見ご感想をお待ちしております。
本作品ヒロイン(3人)とのR18シーンの有無
-
有り
-
無し