また、新たな歴史が1ページ。
(某銀河モノか)
9月6日 帝都 皇居
この日、皇居では御前会議が行われていた。
もちろん、議題は緊張状態下にある日米関係についてである。
なお、主要出席者は……
首 相 永田鉄山
陸 相 東條英機
海 相 米内光政
外 相 東郷重徳
商 相 岸信介
軍令部総長 山本五十六
参謀 総長 前田利為
侍 従 長 鈴木貫太郎
(その他閣僚は省略)
昭和天皇の簡単な挨拶の後、早速議題に入る。
「アメリカとの外交交渉ですが…残念ながら、平行線です」
東郷外相の報告を聞いた面々は予想通りとは言え、空気が重くなる。
「此方の事情を説明しても、か?」
「同じ説明を何度も致しましたが、『日本の事情は知らん。そうでないと言うなら、証拠として満州から撤兵しろ』と言う態度を崩しません」
前田侯爵の問いにうんざりしたように東郷外相が答える。
もし、血の気が多い者なら、この時点で『開戦だ!』と言っていてもおかしくない。
「無理難題を言う。それこそ、満州からの撤兵は満州帝国との安全保障すら揺るがす大事だ。いくらソ連がドイツと戦っている最中とは言え、あの姑息なスターリンを前に撤兵など、泥棒に入って下さい、と言うに等しい」
腕を組み、憤慨しながら東條陸相が言った。
「更に言うなら、その勢いで朝鮮半島にまでアカが浸透する可能性がある。そうなれば、日本海の安全すら揺るがす事になる。海軍としても、満州からの撤兵は承認出来ませんな」
米内海相が落ち着いた口調で言った。
「…情勢は様変わりしている。だが、アメリカにその意思がある以上、『歴史』は対米戦は避けてはくれない様ですな」
沈痛な面持ちで永田首相が呟く。
それにつられた様に場の空気が更に重くなる。
「ですが、首相の言う通り『情勢は様変わり』しております。『歴史』では孤立無援。ですが、今はドイツ・イタリア以外のヨーロッパ諸国も我々の主張を支持し、逆にアメリカが孤立している状況。更にアメリカ世論も決して一枚岩ではない。そうではありませんか、外相?」
そんな空気の中、比較的冷静であった山本総長が鋭く指摘する。
「はい、実際、大使館からはアメリカ世論の大半は『対日政策はおかしい』と主張するものが多い様です。在米ユダヤ人から始まり、資本家や企業人、商人など日本に関係するところから徐々に政策方針批判と反戦運動が広まりつつある、と」
東郷外相の返答に山本総長は静かに頷く。
「…世界情勢は我々の味方である。故に朕は出来る限り限界まで戦争は避けたい」
今まで沈黙していた昭和天皇が口を開いた。
「もちろんです。このまま交渉を続ける事で諸外国を味方に付けつつ、アメリカ側の焦りを誘う予定です」
「内閣としても、出来る限りは妥協出来る様に致します」
東郷外相と永田首相が答える。
「お恐れながら陛下、もし、交渉中にアメリカ側が仕掛けた場合はどう致しますかな?」
「……その時はやむを得ない。だが、決して此方から先に手を出すな。自衛の範囲を越える事も控える様に」
「御意」
米内海相の質問に昭和天皇が答える。
米内海相が一礼すると、山本総長が発言する。
「既に海軍は12月の開戦を想定し、動いております。アメリカとの交渉過程次第ですが、ハル・ノートの類いが出れば、それはアメリカ側が開戦意思。それに合わせて動ける様に準備しております」
「我が陸軍も海軍と共同連携出来る様に準備しております。もし、12月8日前に開戦となっても動ける様、海軍と協議し、準備を進めていく方針です」
山本総長に続けて、前田侯爵が発言する。
「ちなみに、いざ戦争となった場合、資源や物品、各種備蓄等は大丈夫かね?」
「石油はイギリスの仲介により、オランダから購入出来ています。その他の資源やアメリカ製の製造機器などの物品もイギリスやその仲介や協力により入手可能です。備蓄については順次量を増やしておりますが、配給制への移行は避けられないかと…代替品への切り替えも視野に入れております」
侍従長である鈴木貫太郎の問いに岸商相が答える。
「古巣として聞きたいのだが、資源や購入物品の海上輸送、並びに通商路の安全は?」
「はい、近々訓練しておりました護衛戦隊を護衛総隊に格上げし、通商・輸送船団護衛と通商路の安全確保に努める予定です」
退役海軍大将である鈴木侍従長の問いは米内海相が答える。
「滝崎君の話の様になってはいかん。護衛総隊には朕が励む様に言っていた、と伝えてほしい」
「わかりました」
昭和天皇からの言葉に一礼しながら返事をする米内海相。
「では、国策要領についてですが…」
永田首相の言葉に御前会議は続き、日本はアメリカが特別な行動に出ない限り、史実通り12月1日まで外交交渉を続け、12月8日に開戦する事が決められた。
9月24日 夕刊
『レニングラード ドイツ軍により陥落』
9月8日に包囲されたレニングラードは本日24日昼頃にドイツ軍に降伏・陥落した。
直接的な理由は前日23日にレニングラード軍港にて支援を行っていた戦艦マラート(旧ペトロパヴロフスク)がドイツ空軍の集中攻撃により大破・着低した事が大きいとされている。
しかし、情報筋によると、一番大きな理由は先の冬戦争における空爆被害が大きかったとの指摘もある。
北欧の要であるレニングラードは冬戦争終結後に復旧作業が行われいたが、併合・占領・新国境地域への優先順位変更、並びに現地の役人の不正、サボタージュなどで作業が遅延しており、更に先の空爆から2年も経過していない状況でのドイツ空軍による攻撃、戦艦マラートの大破・着低が精神的打撃となり、抵抗力を損失した、と見る者も居る。
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