次号 アメリカ太平洋艦隊来援。
ウェーク島沖 (現地時間8日午前6時頃) 加賀艦橋
「…そろそろ、手交しているよな?」
「時差から考えても…大丈夫な筈だ」
松島宮の言葉に几帳面に腕時計で確認するエーディット。
無論、滝崎や神中佐も腕時計や国際時計を確認する。
「なら、これより作戦を開始する。内容は出撃直前の会議で言った通りで…水上・対空電探に反応は?」
「今のところは…あっ、待って下さい…対空電探に感あり! ウェーク島方向より飛来中!」
その報告に松島宮らの面々がウェーク島方向に視線(双眼鏡)を向ける。
暫くすると、そのウェーク島方向から単発機が現れた。
「偵察かな? まあ、今更な話だが」
「機種はSBDドーントレスですな。どげんすっとな(どうしますか)? 迎撃なんしちょっと(しますか)?」
「いや、開戦した以上、隠密行動中でもないから必要ない。見逃しておけ」
エーディットの呟きに続き、神中佐が松島宮に問うと、松島宮は見逃す選択を取る。
そして、数回旋回し、その単発機がウェーク島方向に戻っていくと、松島宮は指示を出す。
「神鷹の小園中佐に連絡し、防空隊を全機準備させよ。艦隊は対空戦闘用意」
「わかいもした(了解しました)」
「はい。総員戦闘配置! 対空戦闘用意!」
神中佐の返答と松田艦長の指示を聞きながら松島宮は側に控える滝崎の背中を人差し指で軽くつつき、気付いた滝崎とヒソヒソ話す。
(で、史実ではF4Fしかおらん筈だろう? なぜ、ドーントレスがいる?)
(うーん、ハル・ノート公開でキレたルーズベルトの指示か、輸送担当のハルゼー提督の独断か…推測しか出来ん)
(そうか…まあ、仕方ないな)
そう言ってヒソヒソ話は終わった。
1時間後 神鷹飛行甲板
『敵編隊接近! 防空隊発艦せよ!!』
スピーカーから敵の接近が告げられる。
松島宮の指示で発艦準備を終わらせ、発艦に向けて最終確認と発艦に向けて動き回る整備員と甲板員。
そんな中、小園中佐が防空隊の面々の前に立った。
「皆、いよいよ出番となった。まあ、ここに居るのは一騎当千、腕に自信のある連中だから、存分に暴れてくれ」
それを聞いたパイロットの面々がニヤリと笑う。
「だが、だ…無茶をして死ぬんじゃあないぞ。皆の様な猛者を育てるのは年単位を有する。機体を棄ててでも帰還せよ。更に言うなら…殿下が悲しむからな…では、行ってこい!」
「「「「「「「「「「「「「おうっ!!」」」」」」」」」」」」
小園中佐の訓示の後、パイロット達はそれぞれの機体に乗り込み、カタパルトによって発艦していく。
それを小園中佐や整備員・甲板員は敬礼をするか、帽振れで見送っていた。
発艦した鍾馗隊24機に対峙したのはF4Fワイルドキャット12機とSDBドーントレス10機の22機。
鍾馗隊はワイルドキャットとドーントレスを迎撃する為に半数づつに分かれて空戦に入る。
が……
「く、くそ!? これがジャップの戦闘機だと!!」
「固定脚の旧式なんて言ったのは誰だ!? 引き込み脚の上にスピードも運動性も上だぞ!!」
「パイロットもプロの殺し屋だ! こっちの動きを読んで…!!」
…とワイルドキャットに乗る海兵隊パイロットを圧倒し、次々に叩き落としていく鍾馗隊。
一方で……
「く、くそ! 来るな! 来るな!!」
「だ、ダメだ! フルスロットルでも引き剥がせない!!」
「急降下しても追ってくる! もう無理だ!!」
「…神よ、我を護りたまえ…」
…と戦闘機の代わりになるドーントレスを鍾馗隊は次々に撃墜していく。
よって、鍾馗隊と『空戦』(…と言う名の一方的撃墜劇)を開始して10分程で空は静かになった。
加賀艦橋
「敵編隊全機撃墜。鍾馗隊帰還します」
「え、えーと、ガイシュウイッ…ショク? で、いいの…か?」
「うん、間違いないよ(本国へ送るレポートを日本語で書いてないよね?)」
迎撃戦の結果を聞いたエーディットの合致する諺を自信無さげに言うのを間違ってないと肯定しつつ、別な心配をする滝崎。
「第六水雷戦隊に連絡。駆逐艦半数を救助作業に残し、夕張と残り半数は第二戦隊に続け。なお、重傷者対応に神鷹も残すので、終了後、神鷹を護衛しつつ合流せよ、とな」
「はっ」
松島宮の指示に神中佐が伝えに行った。
駆逐艦如月
「10時方向、パラシュートがあるぞ!」
「カッター用意! 救助作業急げ!」
救助隊として居残った神鷹と駆逐艦4隻の内の1隻である如月(他に追風・疾風・睦月が残置)が早速救助活動を開始する。
「ほら、大丈夫か!?」
「受け答えは出来るか? 名前教えてくれ? NAMEだよ、NAMEな」
カッター(短艇)でパイロットを拾い上げ、如月に戻る間に名前と簡単な検診をする。
「えーと、なになに…ヘンリー・タルメージ・エルロット…階級は大尉と…綴り、あ、NAMEあってます?」
…こんな形で撃墜したワイルドキャットやドーントレスのパイロットや搭乗員を救助・回収を行っていく。
暫くして ウェーク島沖
「レナータ機より、『定位置に就いた。何時でもよし』との事」
「うむ…松田艦長、相手に不足だろうが、頼む」
「わかりました。まあ、本番前の調整と言う事でやってやりましょう…目標、敵地上砲台! 撃て!!」
松田艦長の砲撃指示に加賀・土佐・扶桑・山城の4隻がウェーク島への砲撃を開始する。
なお、夕張以下第六水雷戦隊の駆逐艦4隻(朝凪・夕凪・弥生・望月)が周囲警戒にあたっている。
「レナータ機より着弾結果きました。直ちに修正します」
「うむ…まあ、弾薬を節約しなければならんから、別に急ぐ必要もないのだがな」
「だが、向こうからすればキツいぞ? 終わったかと思って顔を出せば次の砲撃だ。何の意図かもわからないから、混乱もするだろうしな」
松島宮の言葉にエーディットが同情的な顔で言う。
その後ろで滝崎と神中佐がウェーク島の地図を拡げ、各艦と各観測機からのやり取りを聞いて、地図上に書き込んでいく。
「…どうやら、敵地上砲台は少数で小口径砲の様ですね。ケースメイト副砲群も射撃に加えますか? 向こうも反撃していませんし」
「届くいなら、そいでよかがと」
そうして調整しながらウェーク島を砲撃していく、
『本番』の為、弾薬消費を抑える為にゆっくり過ぎる艦砲射撃で地上砲台や防御施設に砲撃を加え、ダメージを与えていく。
そして……
「クェゼリン環礁ルオット島からの陸攻隊、接近中です」
「そうか…滝崎、地上砲台の方は?」
「レナータの確認では大部分は破壊している。後は陸攻隊に任せてみよう」
陸攻隊到着の報告に松島宮は滝崎に進捗具合を確認し、滝崎はそれに答える。
「よろしい。松田艦長、効果充分として引き上げる。後は陸攻隊に任せよう。各艦にも通知、一旦引き上げるぞ」
……こうして、第四艦隊の開戦初頭の攻撃は終了した。
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