本年も宜しくお願いします。
ようやく、海戦の決着がつきます。
次号 後始末
ウェーク島沖 海中 伊26
「うむ、あっちの連中も上手くやってるみたいだな」
副長から第六水雷戦隊からの報告を聞いた横田稔中佐(伊26艦長)はニヤリと笑う。
お気付きの方もおられるだろうが、第四艦隊は戦力差を『潜水艦を活用して埋める』方針を取ったのだ。
「では、我々もそろそろ…」
「あぁ、目標ペンシルベニア級戦艦。向こうはまだ此方に気付いておらん。訓練標的みたいなもんだ」
自ら潜望鏡を覗き、目標の指示を出す横田艦長。
「水雷長、我らドン亀ら唯一の晴れ舞台になるかもしれん。頼むぞ」
「お任せ下さい。しかも、松島宮殿下が誘ってくださり、舞台まで整えてくださったのですから、ここでへまをやったら、末代までの恥ですよ」
横田艦長の言葉に水雷長が答える。
伊26は11月に完成したばかりであり、乗組員個々の技量はともかく、訓練未了な事も多く、艦全体の錬度と成熟度ではこの海域に展開する味方潜水艦の中では一番下と言っていいレベルである。
だが、そんな状況で伊26が参加出来たのは『主戦力ではない戦力』で行動秘匿性が高い潜水艦である事と、横田艦長が艦長拝命前に潜水学校副官兼務でトラックの特設潜水戦隊で『研修』を受けていた事だった。
よって、醍醐少将経由での松島宮の『参集指示』に集まった潜水艦艦長達は史実で活躍した人間も多く、更に『晴れ舞台の真打ち』を任されたのだから、乗組員達の士気は高い…と言うか、天元突破してたりする。
「全門一斉発射だ…用意……てぇ!」
横田艦長の指示に伊26から魚雷が発射される。
なお、付近の僚艦も前後して雷撃を開始した。
ウェストバージニア艦橋
「快速部隊は被雷と空爆により苦戦中!」
「被雷はともかく敵の艦爆は退避した空母からかと…」
「そんな解りきった事はどうでもいい。それより、問題は現状をどう打破するかだ」
快速部隊からの報告に幕僚の1人が発言するが、キンメル大将は問題解決を促す。
なお、どうやら、アメリカ側は未だに神鷹の正体は解っていないようだ。
「日本側のやり方は此方の有利を活かさない様にしてから、数を削りにきている。このまま現状が続けば、この撃ち合いも押し負ける可能性がある……待て、これが日本側の作ったシナリオなら、快速部隊の被雷は……しまった…もう、我々は奴らの掌の内か…」
状況の整理と方針の確定の為に話していたキンメル大将は途中で違和感を感じ、その正体に気付いた時、キンメルは絶望顔で頭を抱えた。
「長官、いったい…」
参謀の1人がキンメル大将に何に気付いたのかを問おうとした時、爆発音と水柱と共にウェストバージニアが揺れた。
「ぎょ、魚雷だ! 右舷に被雷!!」
一挙に騒がしくなるウェストバージニアの艦内。
ダメージコントロールの為に乗員が走り回る。
だが、キンメル大将と幕僚・参謀達は更なる報告が入っていた。
「テネシー、カリフォルニア、ペンシルベニア、アリゾナも複数被雷!!」
「特にアリゾナは第二砲塔付近で火災発生! 戦列より落伍しつつあり!!」
「他3隻も速力低下! 戦列乱れます!!」
「くそ! 潜水艦がいたのか!! 快速部隊の被雷も奴らの仕業か!?」
「だが、余りにも状況が都合良すぎる…まさか、長官!?」
とある幕僚が気付いてキンメル大将の方に顔を向ける。
「……間違いない。アドミラル・プリンス・マツシマノミヤは自らを囮にし、この『狩場』に我らを誘い込んだ…潜水艦の襲撃も空母からの航空支援も敵艦隊の動きも、全てここで我々を撃滅する為に組んだショーの台本だったんだろう」
一気に老け込んだかの様なキンメル大将の言葉に幕僚・参謀達が絶句する。
ここへ更に追い討ちが入る。
「オクラホマ、更に被弾! 第4砲塔が貫通損傷により使用不能! ダメージ拡がりつつあり!!」
「なっ、貫通!? 敵の14インチ砲にか!?」
余りの事に幕僚の1人が聞き返すが、その『答え』も追い討ちになった。
「い、いえ…それが、敵のフソウ、ヤマシロは大幅に改装された様で…砲塔数が3基に減った代わりに、16インチ砲を搭載しております…また、砲塔も三連装砲2基と連装砲1基の8門…砲数はナガト・クラスと同等です」
その報告にいよいよ太平洋艦隊司令部は絶望を抱いた。
加賀艦橋
「ほっつほっつ(そろそろ)、かたっ(敵)さんもこっちの策にぎぢっき(気付き)ましたかな?」
「流石に気付いたであろう。だが、もう此方の手中の内だ。後は…」
神中佐の言葉に松島宮が応える。
そして、松島宮の言葉が途切れたのは加賀が揺れたからだ。
「大丈夫?」
「あぁ、すまない…こんな窮鼠の猫噛みが致命的な事にならなければよいだけだ。松田艦長、被害は?」
咄嗟に滝崎が松島宮を支え、松島宮が礼を言いつつ、松田艦長に確認する。
「船体に当たりましたが、戦闘航行に影響ありません」
「うむ、なら、大丈夫だな…潜水艦達は良い仕事をしてくれている。後で戦勝祝いを贈るとしよう」
「あー、横から申し訳ないが、それを言うのは終わった後でよい様な気がするが?」
松田艦長の答えに松島宮が納得し、戦闘後の話をして、それにエーディットが控えめに言う。
「まあ、言う通りでもありますし、ここは…」
滝崎の声を遮ったのは歓声だった。
それは敵戦列後方から別の黒煙が上がったからだった。
「山城より、『敵八番艦撃破セリ。コレヨリ、本艦ハ敵五番艦ニ対処ス』と報告来ました!」
通信室から走って来た士官は興奮しながら報告する。
オクラホマは損傷していた第4砲塔に再び命中弾を受け、未発射状態であった自身の砲弾が合わせて誘爆、第4砲塔付近から火災が発生、急速に拡大し、オクラホマは戦闘を中止するどころか、艦の放棄すら決断しなければならない状態に陥っていた。
「さて、古参艦ばかりにいい格好はさせられません。山城に負けるな! 連合艦隊旗艦の矜持を殿下に見せてやらんか!!」
そう言って松田艦長は発破をかけた。
ウェストバージニア艦橋
「アリゾナ、オクラホマより艦を放棄すると連絡ありました!」
「敵4番艦、ペンシルバニアに砲撃開始! ネバダは敵3番艦に苦戦中!」
「快速部隊より、戦闘継続困難と報告あり!」
「メリーランドに命中弾! 煙突部の不具合により、排煙効率低下! 速度落ちます!」
参謀や幕僚の報告にキンメル大将は敗北を察すると共に、ワシントン軍縮会議の事を思い出す。
それは日本側の主張とそれに伴う動き(第7話参照)にアメリカ側が『決断を誤った』とキンメルは感じ始めた。
「……日英同盟に固執する必要など無かったのだ。同盟なんて、世界情勢次第でどうこう出来たのだ…実際、あの時に固執して撤廃した日英同盟が約20年後に復活してしまった…そして、よりによって残した戦艦が我々最大の脅威になってしまった。本来なら、実体的戦力であるカガとトサを放棄させるべきだったのだ」
自虐的に呟くキンメルに参謀や幕僚は何も答えられない。
「いや、そもそも、あの人が変な事を言い出さなければ、こんな事にはならなかった…私でさえ、戦う意義を見出せずに、こうして指揮を執っていたのだ…自分達の生存に関わるなら、日本側も必死に抵抗するし、知恵も絞る…それに今更気付くとは…ふっ、もう、何もかも遅いがね…」
そう言った時、幕僚の1人が青ざめた顔で報告する。
「カルフォルニアからです…先の敵潜水艦による魚雷攻撃で損傷していた機関が爆発……カルフォルニアは行動不能との事…」
その報告に場が沈黙に包まれる。
が、次の瞬間、ウェストバージニアが再び揺れた。
「2…いえ、4発命中! 第2砲塔は2本とも砲身が根元から折れて使用不能! 更に2発が水中弾となり、浸水発生!!」
そこから続々と上がる被害報告にキンメル大将はすっかり窶れた顔で言い放つ。
「全ての責任は私が取る…快速部隊を中心に撤退せよ…急げ」
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本作品ヒロイン(3人)とのR18シーンの有無
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