次号 『もう一つの海戦』の行方。
悪夢ちゃん出るよ!(いや、他にも出るけど)
長門艦橋
「敵戦艦回頭! 同航戦に入ります!」
「まあ、逃げる訳にもいかんからな…我々としてはやりやすいが」
報告を聞いた古賀中将は頷きながら呟く。
T字戦法から始まった砲戦は少しでも有利になりたいアメリカ側が舵を切り、同航による砲戦へと移行する。
これでイーブン…とはならない。
「敵戦艦は2隻共に完成・配備されてから1年経っていない。ようやく乗組員達も『慣れ』はしたが、『成熟』まではいってはいないだろう…ならば、質でも勝ち目はある」
ノースカロライナ型の情報は日本も入手している…滝崎が話してくれた部分を含めて…が、カタログスペックでは長門・伊勢型より上である。
が、数以外の優位点は『装備への成熟』である。
既に配備されてから十数年、来るアメリカとの艦隊決戦に備えて訓練と改装を重ねた4隻、特に長門・陸奥は加賀・土佐に並ぶ41センチ砲搭載艦で世界に比類した証でもある。
対して、ノースカロライナ型は今年の4月と5月に就役した新品であり、『扱いには慣れた』かもしれないが、こちらの4隻の乗組員とは『質』が違う。
そこに勝機を見出している古賀中将からすれば、敵が同航戦で戦ってくれるのは都合が良かった。
「長門と陸奥はもちろん、伊勢や日向も先に当てさえすれば勝ち目はある。ならば、艦隊決戦の為に月月火水木金金の猛訓練で鍛えた我らにも勝機はある…その成果を発揮するのはこの場しかない」
敵の2隻を睨みながら、古賀中将は呟いた。
その頃 ノースカロライナ艦橋
「回頭完了! 砲戦用意よし!」
「目標、敵旗艦の1番艦! 撃て!!」
士官の報告にノースカロライナの艦長は冷静に指示を出す。
そして、ノースカロライナの砲撃に合わせて、後続のワシントンも砲撃を開始する。
暫くして、2隻の砲撃は先頭を進む1番艦と2番艦(長門と陸奥)の手前で水柱を上げる。
「先ずはナガトクラスからだ。あの2隻を潰せば此方に勝ち目はある」
太平洋艦隊同様、驚異度が高い長門型から全力で先に潰し、伊勢型は後回しにするゴームレー中将。
数で不利な以上、新型艦である事を活かし、手早く長門型を片付け、伊勢型を潰したい…のではあるのだが……。
(にしても、何故だ!? 敵艦艇から、この間のフィリップス大将から感じた以上の威圧感を感じるんだが!?)
表面的には冷静を演じるゴームレー中将だが、何故か感じる敵からの威圧感に内心慌てている。
まさか、敵が『殿下』効果で士気と戦意が天元突破してる…なんて事を知る訳がないのだが。
「提督、此方の観測機は…」
「出しても無駄だ。ウェークで日本の観測機に撃ち落とされたのを忘れたか? 既に敵は飛んでいるんだぞ?」
観測機自体の性能が良いのか、パイロットの腕が良いのか、あるいはその両方か…今更出したところで意味はない。
「それより、今は敵のナガトクラスだ。性能は此方が上、素早く倒して…」
ゴームレー中将の言葉を遮ったのはノースカロライナが揺れたからだ。
しかも、少し間を開けてもう一度、2度も揺れた。
「ひ、被弾! 1発…いや、2発命中! 更に2発命中!!」
長門の砲撃が先に命中、そこに陸奥の砲撃も命中した。
「く、くそ…日本側に先手を取られたか…」
辛うじて転倒を避けたゴームレー中将が苦々しく呟く。
だが、更に報告が入る。
「わ、ワシントンも被弾! 敵イセクラスの砲撃命中!!」
伊勢型36センチ連装砲6基12門、伊勢・日向2隻から1度の砲撃で24発の砲弾がワシントンに降り注ぐ…1隻に集中すれば紛れ当たりとは言え、当たる確率は上がる。
「た、大変です! 先程の被弾で電路途絶! 統制砲撃出来ません!!」
「わ、ワシントンより! 命中弾3発! 内1発が水中弾となり浸水発生! 今のところ、影響はありませんが…長引きますと…」
「……バカな…都合が良すぎる……こんなバカな事が…」
状況の悪化具合にゴームレー中将の絶望と悲観視が加速する。
長門艦橋
「勝負は決した…と言ったところだな」
満足そうに古賀中将は呟く。
視線の先には艦上構造物や船体、砲塔に損傷や貫通孔が目立つノースカロライナ、後ろに滅多打ちにされ、傾いている廃艦同然のワシントンが浮かんでいる。
最初の被弾からノースカロライナとワシントンは粘り強く応戦、約2時間の激闘となった。
それはノースカロライナは各砲塔での個別砲撃で、ワシントンも途中から多数の被弾で電路を切断されながらも交戦した結果だった。
だが、勢いにのった日本側を止めるのは無理があり、悪化する状況を押し留めるのが精一杯だった。
故にアメリカ新鋭戦艦2隻は日本の古参戦艦4隻の前に屈するしかなかった。
「救助作業は?」
「名取ら第五水雷戦隊も加わり、実施中です。これも殿下がなされていた事ですから」
「うむ…後始末が終わったら、南雲中将達の方に向かう。我々が行かなくても大丈夫だろうが…あちらも気になる」
そう言いながら、背後の海図台に拡げられたフィリピン近海の海図を気にする古賀中将だった。
ノースカロライナ艦橋
「………」
現状を黙って見つめるゴームレー中将。
ある意味予想された結果ではあるのだが、結局は日本側の手の内で動いていた形でしかなかった。
「提督、ノースカロライナ・ワシントン両艦からの総員退艦はほぼ完了しました。ノースカロライナに関しては我々と艦長らのみです」
「そうか……うむ、わかった…」
幕僚の報告にそう返事をすると窶れ顔のゴームレー中将はトボトボと艦橋から出て行った。
その後、ノースカロライナもワシントンも海中へと没した。
これはフィリピン救援の失敗と同時にフィリピンの運命と『もう一つの海戦』の結果すら決める事になった。
次号へ
ご意見ご感想をお待ちしております。
本作品ヒロイン(3人)とのR18シーンの有無
-
有り
-
無し