※甘めな話なのでブラックコーヒー、或いはビターチョコの用意を。
次号 仕事始め! 東洋艦隊来航
昭和17年1月1日 午後4時頃 帝都東京 高松宮邸
「う〜〜〜ん…ふぅ〜、疲れた〜…」
「宮中行事お疲れさま」
延びをする松島宮に滝崎はそう言って麦茶を渡す。
「なに、これも皇族の責務だ。戦の中とは言え、臣民の安栄を願うのは当然だ。お前は屋敷の掃除を手伝ってくれたのだろう?」
「余り居ないとは言え、居候の身なんでね。こうした時には手伝わないと」
「まったく、律儀な奴だ。ところで、だ」
そう言って松島宮は視線を襖の向こう、正確には隣部屋に向ける。
「…レナータとエーディットは何をしてるんだ?」
「さあ? 何も知らな〜い…だって、お昼頃から女中さん達とごそごそやってるからね。今は静かだけど」
「そうか。まあ、迷惑になってなければよいが」
滝崎の答えに松島宮はこれ以上気にするのをやめた。
「…そう言えば、ほぼ無理な相談だが…」
「ん、なんだ?」
「…君の着物姿を見たい…なんて、無理だよね〜」
「無理を言うな。正月寝惚け頭は他所でやってくれ」
「あはは…痛い痛い痛い、露骨に弁慶の泣き所を蹴らないで」
「ふん、知らんな(……バカ…)」
……こんな夫婦漫才みたいなやり取りは次の瞬間、お開きとなった。
「パンパカパ~ン! 着物を着てみました〜!」
先程までごそごそしていた隣の部屋の襖が開き、着物姿のレナータとエーディット、更に着付けを手伝った女中さん達が現れた。
「「……何をしていたんだよ?」」
「だって〜、せっかく日本で新年を迎えてるなら、着物着ようってなるじゃな〜い」
「…私は無理矢理付き合わされただけだからな! 本当に巻き込まれただけだからな!!」
御満悦なレナータ、顔を真っ赤にして否定するエーディット。
「……ツッコミはやめとくか」
「そうだな…レナータには効かんし、エーディットは可哀想だしな」
苦笑いを浮かべながら、ツッコミはやめとく2人だった。
暫くして……
「ふう…なんだかんだで漸く食べれた…」
「うん、なんか、久々に日本で食べたね、御雑煮」
「うぅ…モチが中々食べ辛い…」
「う〜ん、これがお米で出来てる不思議〜」
……4人はそれぞれ御雑煮を堪能していた。
「オセチも美味しいよね〜…あっ、はい、マサロウ、あ~ん…」
「え、あっ、うん…(パクッ)…確かに美味しいな」
御節の中に入っていたハムの1つを器用に箸で取り、滝崎に『はい、あ~ん』をかますレナータ。
これを横で見ていた松島宮とエーディットは一瞬唖然としたが、直ぐに再起動した。
「お、お前は!! 何をしている!?」
「えっ? ただ、オスソワケしただけなんだけど…?」
「あってる様で使い方が違う!! それと松島宮殿下! 貴方は何をしている!?」
「はっ! 私は何をしていた!?」
盛大にツッコミをかますエーディット、何故か自分の御雑煮から餅を摘んでタイミングを計っていた松島宮。
「はぁ、はぁ…新年早々マンザイとツッコミをやらすな…」
「の割にはノリノリじゃない?」
「誰のせいだ、誰の…はぁ…」
レナータの言葉に呆れながら返しつつ、近場のコップを取り一気に飲み干す…滝崎のコップを。
「あっ、エーディット、それ、私の」
「えっ、あっ…ほへ〜〜、天井グルグル〜…」
……そう言って目を回してぶっ倒れるエーディット。
「……あれ? エーディットってお酒弱かった?」
「いや、そんな筈は…普通に試飲してた筈だが? さっき間違って飲んだのも、それ程強い物でない筈」
そんな状態に顔を見合わせる滝崎と松島宮。
「あぁー、実はエーディットって、『お酒』って認識した状態なら普通に飲めるんだけど、認識してないで飲むとダメなのよ…それこそ、ワインもビールも一口飲んだらダウンするのよ」
「「お、おう」」
『それはそれで先に言ってくれ』と言いたいが、今更な話だし、短くは無い付き合いなのでやめておく。
「はぁ、仕方無い。ちょっと部屋に放り込んでくる」
そう言って滝崎は『お姫様抱っこ』で部屋へと運んで行った。
エーディットの部屋
「…よいしょっと…やれやれ、幸せそうな寝顔で」
予め敷かれていた布団にエーディットを寝かし、寝顔を見て呟く滝崎。
「…う〜ん…ふにゃ〜…」
「…クスッ、普段と寝言のギャップが凄いわ」
そう呟いて部屋を出ようとした時、寝惚けたエーディットが腕を伸ばしてきて、顔をガッチリ掴まれる。
そのまま顔が近付いてきて……唇同士が触れる。
そして、本人は手を離すと可愛い寝顔で眠り続ける。
「……これ、寝惚けてたから、事故…でいいんだよな? ノーカンでいいんだよな?」
キスしてしまった唇に触れつつ、そんな事を呟いていた。
その頃……
「ねぇねぇ、松島宮〜、1つ聞きたいんだけど〜?」
「ん、なんだ?」
未だに御節と試飲酒を楽しんでいる中、レナータが松島宮に話し掛ける。
「マサロウと松島宮って、付き合ってる?」
「んぐっ!? んーー…はぁ…いや、待て、何故そうなる? 私に男色の趣味はないぞ」
聞いた瞬間、口の中の物を喉に詰まらせそうになるが、一端落ちつき、飲み込みながら質問の意味を理解し、スッキリしてから否定する。
「あら、私は『男同士』なんて言ってないわよ?」
「あのな、私と滝崎は主と御付き、ただその関係で…」
「惚け〜な〜い〜、隣に堅物生真面目なエーディットがいる私に、正真正銘な男か、男装した御令嬢かを見抜けない訳ないでしょう? あと、ついでに質問の件もはぐらかそうとしないの〜」
そう言いながら、勢いを得たとばかりにレナータが松島宮に迫る。
「はぁ、ただいま〜……なにしてんの?」
そして、ちょうど良く、滝崎が帰って来て、場の情景を問う。
「滝崎、例の件だ」
「あぁ、はいはい、レナータ、その件は前に否定した筈だが?」
「あはは、冗談よ、冗談〜」
不味いと思ったレナータが笑って誤魔化しながら身を引いた。
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