(歩兵関連がメイン)
次号 イタリア娘と……ロマンティックス(R18)。
(超絶ブラックか、激辛料理の用意を…無理はしない様に)
1月9日 フィリピン スービック近郊
マッカーサーの方針に合わせる形で、バターン半島へのアメリカ・フィリピン軍封じ込めを画策する日本軍はバターン半島以北のアメリカ・フィリピン軍防衛線の後退と封鎖線接合の為に各地で陣地攻撃を開始していた。
「用意よし!」
「撃て!!」
班長の指示で射撃を開始し、先行部隊の前進を妨害していた防衛陣地に間接射撃を実施する。
歩兵大隊大隊砲小隊に所属する彼らは、本来なら九二式歩兵砲を使うところなのだが、今の主装備は緒戦で鹵獲したM3 75ミリ対戦車自走砲(M3 MGC)を使用している。
元が野砲であり、最大8キロの曲射射程を有するだけに、歩兵支援には程よく、鹵獲した部隊が持て余したのを大隊砲小隊が譲り受けて運用していた。
「班長、敵陣地沈黙。味方が確保したそうです」
「そうか、よし、うちらも前進だ。久々の仕事だし、まだまだ撃ち足りん!」
「榴弾の残数を気にして下さいよ…無限にあるわけじゃないんですから」
班長の言葉に砲班員は困惑気味に返す。
実のところ、ノモンハン・フィンランド戦以降、無反動砲の配備が進み、演習等で各部隊で運用されはじめると、ある疑念が漂い始めた。
それは『九二式歩兵砲が中途半端化、又は陳腐化しつつある』と言うものだ。
実際、装甲目標や直射ならば無反動砲を使えばいいし、(今のところ)1人でも扱えるので小回りが利く。
反対に曲射ならば八九式重擲弾筒や迫撃砲、連隊砲の四一・九四式山砲を使えば事は足りてしまう。
そうなると装甲目標に脆弱で代替手段が別で数多に存在する九二式歩兵砲は『中途半端』で『陳腐化』してしまっていた。
これにより、九二式歩兵砲も一部部隊以外では使われなくなり、大隊砲小隊も他の装備や鹵獲品を活用するなどして、歩兵大隊の支援を行っていた。
……フィリピン戦後、この戦訓から大隊砲小隊の装備装換・再編成が大々的に行われる事になるのだが、それは別の話である。
同時刻 バターン半島北部 サン・パブロ付近
マニラ方面から西進し、スービック近郊に居るであろう南下部隊との封鎖線接続路を確保すべく前進する部隊の前に、当然の如くこれを妨害する防衛陣地が現れた。
「現状は!?」
「あっ、小隊長殿!!」
実に嫌らしい場所にある防衛陣地に苦慮していたところに小隊長である少尉がやって来た。
「見ての通りですよ。それほど高くないが見晴らしのいい場所から機関銃をバカスカ撃ってきてますよ。しかも、あそこ」
説明していた古参の軍曹がそう言って指差す先には土嚢と天蓋で出来た砲座があった。
「彼処に30ミリぐらいの火砲が据えられて、時折撃ってきてます。しかも、散弾ですから、下手に攻めたらこっちが大怪我しますよ」
「ちっ、なら、ウチにあるドイツの軽装甲車(Sd Kfz222)に援護して貰うのは危ないか」
「私も考えたんですがね…火砲があるなら、下手に前に出す訳にもいかんでしょう。砲兵隊からの支援射撃は?」
「ダメだ。あちこちの要請に応えてて、何処も順番待ちだ。それに、下手に撃って同士討ちも勘弁だしな。だが、あれじゃあ、歩兵砲でも難しいだろう」
「なら、戦車が来るまで待ちますか? それなら、あの火砲も黙らせる事が出来ますが…?」
「…いや、それはそれでなんだか癪に障る。それにだ…『あれ』まだ使って無いだろう?」
小隊長の言葉に件の軍曹の顔がバツの悪そうに歪む。
「…なら、外して…」
「何を言ってるんだ? 『そのまま』持ってこい。と言うか、誰かさんが『重いの持ちたくない』と言って、同期の整備に袖の下掴ましたんじゃあなかったか?」
小隊長の言葉に軍曹は露骨に嫌な顔をしながら、指揮下の兵士を伝令に走らせる。
そして、暫くして、伝令の兵士と共に『あれ』はやって来た。
「頼むぞ、軍曹。お前さんの腕次第だから」
「はいはい…やれやれ、同い年の親戚で立場が上とはやり難いな」
ブツブツと愚痴りながら、表情は真剣に照準器を覗き込む。
感覚的な微調整を行い、件の軍曹は実地試験目的で配備された先行量産型の『七糎半無反動砲』を台座ごとユニバーサルキャリアーに載せた『運搬用車』から75ミリ榴弾を敵の砲座に撃ち込む。
少ししてから、土嚢と天蓋の間に入り込んだ榴弾が炸裂し、敵の砲座が沈黙した。
と同時に敵の機関銃座に八九式重擲弾筒から擲弾が発射され、煩く撃ちまくっていた銃座も黙らせる。
「今だ! 制圧射撃!!」
小隊長の命令に指揮下の兵士達は手元の武器…三八式小銃・九六式軽機関銃・九二式重機関銃、少数ながら百式短機関銃や九八式騎(兵)銃…を乱射し、更に八九式重擲弾筒がこれに加わり防衛陣地を圧迫する。
「よし、落としに行くぞ! 続け!!」
着剣した九八式騎銃を持って、少尉自ら防衛陣地に向かった。
……なお、この戦闘後、この小隊を激励しに来た所属中隊長に例の『無反動砲運搬用車』はバレてしまい(小隊長がバラした)、バッチリ写真まで撮られた挙げ句、中隊長が上に『とある軍曹が考案した物です』と写真付きで提出、それが大隊長→連隊長→師団長→フィリピン攻略軍司令部まで届き、そこから更に『装備改良案』として陸軍省に提出され、後々に世界で真似される『自走無反動砲』の始祖になるなんて話も別な話である。
1月10日 コレヒドール島 アメリカ軍司令部
「…日本軍の進撃が止まった?」
「はい。南下部隊と西進部隊が接続され、封鎖線が打通された為と思われます」
それを聞いたマッカーサー大将の表情が歪む。
「日本軍は無理に攻勢に出ず、兵糧攻めに切り替えた、と?」
「封鎖線の強化の為、とも考えられますが…どちらにしろ、我々が追い込まれている事に変わりはないかと」
サザーランド少将の答えにマッカーサーは苦い表情のまま額に手をあてる。
「……兵士の士気はどうかね?」
「…良くはありません。特に例の『ティクバラン』の件がフィリピン人兵士には厄介で…迷信ではありますが、今の状況ではその迷信が徐々に効いています」
『ティクバラン』とはフィリピンに存在する神話上の『半人半馬』の怪物である。(なお、フィリピンに馬が現れるのはスペイン支配時の事である)
この怪物は女性を襲うだけでなく、山や森で旅人を迷わす『悪戯』を好んでいた。
では、何故こんな神話の怪物が出たのか…それは、今までの戦いでフィリピン・アメリカ兵が少なからず『行方不明』になっていたからだ。
無論、マッカーサーらアメリカ軍首脳陣らは神話・迷信の怪物より、現実的に日本軍の仕業と判断していた…が、負け戦状態で、しかも、何の痕跡も残さずに人が消えると言うのはジリジリと心理的にダメージを与え続ける。
更に人数的にはフィリピン軍兵士が多い為、この類いの話は直ぐに伝わり、動揺を招く…本来なら、この神話と関係ないアメリカ兵も影響され、戦いながら、『いつ自分も行方不明になるかもしれない』と言う『心理的不安』は戦意や集中力を奪うのには充分だった。
「食糧の方は? 兵士の他に、特にフィリピン兵の家族がそれなりに混じっているそうだが…?」
「そちらも深刻です。とにかく消費ペースが早い…日本軍がわざと追い立てた訳ではありませんが、日本軍の妨害がなかったのも一因かと」
「心理戦に兵糧攻め、か…日本軍は我々が干上がるか、心理的に参るのを待つ持久戦に切り替えるつもりか」
日本側の狙いにこれまた苦々しい表情で呟くマッカーサーだった。
因みに日本軍は『抵抗・妨害しなければ、特に民間人は危害を加えない』とするビラをマニラを中心に空から蒔いている。
だが、流石にそれで全員が納得出来る筈もなく、特にフィリピン兵の家族が同行した為、食糧消費量が増加、予定よりも戦力が移動出来た事もあり、予想以上に早いペースで在庫が消えていた。
(なお、日本軍各部隊には何かしらの原因で追従出来ずに取り残された民間人は見つけ次第、保護する様に厳命されていた)
「サザーランド君、何時でも脱出出来る様に段取りしておいてくれ。もちろん、ケソン大統領を含めた、フィリピン自治政府の人間もな」
「わかりました」
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