※この作品はR-18です。

~ほんとはただ寝たいだけ~18禁部分抜き取り版   作:真暇 日間

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リリなのワッフル 01 ヴィヴィオ夜襲編

 

 

 

 平穏な日々。ミッドチルダで喫茶翠屋を営む織斑なのは(21)は、いつもの通りに翠屋の厨房で腕を振るっていた。

 眠らないで良いと言う分身体の特性を利用し、毎日非常に美味しいお菓子を作る。それと同時に引き取ってから暫く経つヴィヴィオや融合騎アギト、同居人であるシュテル、レヴィ、ディアーチェ達の食事の準備や店の掃除、仕入れに買い物に修行にと、どうやればそんなにできるのか聞きたくなるほどの手際で喫茶翠屋を切り盛りしている。

 同時に彼女はいい母親であろうと努力した。一時期とはいえ家族の中で必要とされず、孤独感を味わい続けた彼女にとって孤独感は敵である。故に家にいる時ヴィヴィオにはアギトが大概共に居たし、外出中も連絡用の端末くらいは持たせていた。そして毎朝どれだけ忙しくともヴィヴィオと顔を会わせるようにしていた。

 その成果かどうかはわからないがヴィヴィオは健やかに成長し、そして家族仲は良好である。

 

 しかし、全てが上手く行っているわけではない。管理局はなのはをどうにかして入局させようと手を尽くしているし、一部の犯罪者は恨みをもっていたりもする。あるいはそれ以外の目的をもって近付いてくる者もいる。この男もその一人だ。

 ニヤリと笑いながらその男は一人家へと歩くヴィヴィオに近付いていく。友人と別れ、後はちょっと歩くだけと言う道ではあったが、この男は事前にそれを調べあげて網を張ったのである。

 男は音もなくヴィヴィオに近づき、後ろから声をかけた。

 

「もしもし、そこのお嬢さん」

 

 呼ばれて振り向いたヴィヴィオ。左右の色が違う綺麗な瞳に写ったものは────

 

「やあ」

「あ!スカリ博士。また脱獄してきたの?」

 

 ダメだよー、等とヴィヴィオは軽く言ってはいるが、この男は数年前にミッドチルダを崩壊させかねない大事件を起こし、それ以前にもいくつもの犯罪を犯し続けてきた超有名な大犯罪者である。その名をジェイル・スカリエッティと言う。

 彼はミッドチルダを崩壊させようとした割には気持ち悪いほどに捜査やロストロギア等の鑑定に協力的であり、本来ならばそのほぼ全ての犯行をかつて管理局を動かしていた最高評議会の命令と言うことにしてそれなりにすぐ釈放されるはずだったのだが……今のように何度も脱獄を繰り返してはなのはやヴィヴィオのいる翠屋に来たり、自分の娘である戦闘機人であるナンバーズの元へ様子を見に行くことを繰り返すので、初めは大して長くもなかった収容期間がどんどんと伸びていき、結局今だに釈放されていないのである。

 ちなみに、本来は間違いなく終身刑だったものが捜査協力や本局の膿出しに協力したり情報を提供したり犯罪の内容が割と便利で実際に役に立つものだったり最高評議会に罪が持っていかれたりした結果、たったの二年と六カ月で釈放されるはずだったのが今ではもう二十年分以上も溜まっていたりする。本当に懲りない変態である。

 そしてスカリエッティは、また自分の計画のためにヴィヴィオを利用しようと近付いてきているのだった。

 ヴィヴィオを言葉巧みにだまくらかし、計画を進めていくスカリエッティはヴィヴィオがいなくなってから喉の奥で笑いを噛み殺す。これで計画は最終段階に移行した……と。

 

 

 

 

 

「ママー、どうしてあの人はあんなところで笑ってるの? なんにもないのに」

「しっ!見ちゃだめよ。変なものが移ったら大変だからね」

「はーい」

 

 

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

 

 

 草木も眠る丑三つ時。何時ものように布団に入ってうつらうつらとしていたなのはは、ふと違和感に気づいた。

 いつもならば聞こえてくる筈の幾つもの規則正しい寝息の中に、ヴィヴィオの物が無かったのだ。

 その代わりに聞こえてくるのは妙に荒い息遣いと粘りのある水音、それに自分の部屋に近付いてくるヴィヴィオの泣きそうな声だった。

 

(……また何か怖い夢でも見たのかな?)

 

 少しだけ苦笑いを浮かべ、なのはは起き上がる。転移魔法で冷蔵庫からミルクを、戸棚から砂糖とコップを呼び出して並べる。

 空中に浮かべた物理障壁に加熱術式を加えてフライパンの代わりにして砂糖からキャラメルを作り、そこにミルクを入れて温める。ヴィヴィオの好きなキャラメルミルクを作りながらまたヴィヴィオの方に意識を向けて……再び違和感。ソナーの精度を上げてみればすぐわかることだったが、ヴィヴィオはなぜか大人モードになっていた。

 どうしてそんな風になっているのかはわからない。わからないけれど少なくとも尋常な事ではなさそうだという事を理解する。

 とりあえず始めにやることは、一夏をアンダーグラウンドサーチライトの内部に退避させること。もしも厄介事になり、それが騒がしくなって一夏が起きてしまったならば……折角救われたばかりのミッドチルダが文字通りに宇宙に無数漂う塵にされてしまう。

 その事を経験からしっかりと理解しているなのはは、まずそうなる可能性を極力小さくするために一夏の入ったアンダーグラウンドサーチライトの入り口に魔法で結界を張った。正直なところなのはは結界魔法の類いは得意ではないのだが、結界型の防御魔法ならばそれなりには扱えるのだ。

 それからレイジングハートを手に取り、周囲を警戒して耳を澄ませる。アギトはよく眠っているし、同居人達はとっくにアンダーグラウンドサーチライトの中。一応守護用の結界を張り終えれば、すぐに部屋の扉が控え目に叩かれた。

 

「開いてるから入っておいで、ヴィヴィオ」

 

 その言葉の響きが消えた頃、部屋の扉がゆっくりと開かれていく。

 扉の隙間からヴィヴィオの指先が覗き、少しずつヴィヴィオの全身が見え始めるが……なのははその格好を見て溜め息をつきたくなった。

 大人モードのヴィヴィオは実のところなのはよりも少しだけ背が高い。人種の違いか胸や腰周りの肉付きもいいし、そのくせウエストはなのはとほぼ同じ程度という……はやて辺りからすれば反則だチートだと騒ぎたくなっても仕方ないと納得してしまいそうになるほどの体つきをしているのである。

 そんな本職のモデルも羨むような肉体が、今は小さな子供用のパジャマを内側から圧迫している。ズボンの腰周りのゴムは無惨に延びきってしまっているし、突然肥大しすぎたと言っても過言ではない胸は薄い水色のパジャマのボタンを弾き飛ばそうとしていた。

 それだけでなく袖や裾は全体的に短くなっていてすらりとした腕と脚が窮屈そうに飛び出しているし、小さくなりすぎた服は可愛らしいお臍を隠すことができずにさらけ出してしまっている。

 ……要するに、今日で使い収めとなるだろうパジャマの代わりを買ってこなければいけないね、などとなぜか冷静になってしまった頭で考えていたのである。

 しかし、今はそれよりもどうしてヴィヴィオが大人モードになってしまっているのかを聞いて、その解決策を実行するのが先だと考えを改めてから顔を上げる。すると俯いたまま荒い息をつき続けるヴィヴィオはまだ俯いたまま、ベッドの傍らに立つなのはにふらふらとした足取りで近付いて行く。

 

「……それで、どうしたの? ヴィヴィ―――――ッ!?」

 

 呼びかけた瞬間、なのはに飛びつくようにして抱きついてくるヴィヴィオに面食らい、そのまま抱きしめられる。やはり息は荒いままで、ヴィヴィオの心臓の鼓動がバクバクと伝わって来るほどに激しく脈打っている。ここまで異常な心音だと何らかの病気である可能性が濃厚で、なのはは自分の腕の中の大きくて小さな娘の頭を優しく撫でながら自分の心音を媒体にしての精査魔法でヴィヴィオの体内の異常を調べていく。

 

「……ママ」

「……なあに? ヴィヴィオ」

 

 呼ばれて返事を返すと、身体に回されているヴィヴィオの腕の力が強くなる。なのはは人外と言われても反論できないほどに鍛えているために被害は無いが、あまり強くし過ぎると少し苦しくはなって来る。しかしそれでもなのはは何も言わず、ヴィヴィオの次の言葉が出てくるまでヴィヴィオを撫で続ける。

 作っておいたキャラメルミルクの湯気が殆ど見えなくなる程度の時間が過ぎ、月が作る影がさっきよりほんの少しだけ伸びた頃。ずっと重なり合っていた影がようやく僅かに離れる。

 

「…………ママ」

「……なあに? ヴィヴィオ」

 

 さっきよりほんの少しだけ空白の伸びたヴィヴィオからの呼びかけに、なのははさっきと同じように返事を返す。その声にようやく俯いたままだったヴィヴィオが顔を上げるが、その顔に浮かぶ表情は今までになのはが見たことのあるヴィヴィオのそれとは大幅に異なっていた。

 そして、ヴィヴィオは掠れた声で小さくなのはに言った。

 

「…………ごめんなさい、なのはママ」

 

 その言葉の直後、ヴィヴィオはなのはの身体を抱きしめたままベッドへと倒れこんだ。突然のことではあったがこの程度のことでなのはが慌てるわけもなく、一瞬だけ衝撃を吸収する魔法を使って自分とヴィヴィオの体重を受け止めた。何が起きているのかはまだ正確には分かっているわけではないが、それでも何かに操られていたりする訳でもなければ誰かに脅迫されてこういうことをしているわけではないと言うのもなんとなく脳波を読み取ることで理解できたのでヴィヴィオのしたいようにさせていた。

 だが、なのはがヴィヴィオの顔に浮かぶそれがどういったものかを理解した瞬間に、なのはの頭のどこかが一気に醒めた。その紅玉と翠玉から削り出されたような瞳には、明らかな情欲が浮かび上がっていたからだ。

 

「……ヴィヴィオ?」

「ご……ごめん、なさい……。で、でも……でもぉ…………ッ!」

 

 頬を朱に染め、息を荒げたままのヴィヴィオが腰をくねらせる。その瞳には涙の粒が浮かんでおり、押し倒した形のままのなのはの頬に滴が落ちる。

 なのははレイジングハートにスリープモードに入るように頼み、その願いをすぐさま叶えた付き合いの長い相棒を一瞬でベッドの脇の小さなテーブルに転移させる。ついでにその上のキャラメルミルクの入ったカップには軽く蓋をしておいて、後で飲む時に埃が入っていないようにという小さな気配りまでしてみせた。

 頭の両隣りに突かれた手と、自分に覆い被さるようにしているヴィヴィオ本人とを眺めてなのはは今度こそ溜息をつく。それは小さいものではあったが、ヴィヴィオの荒い息使いの中でも確かにそこにあったことを主張した。

 

「それで、ヴィヴィオはな、んんっ!?」

「はむ、ん、んんぅ……」

 

 なのはの溜息が消えた直後、何かを言おうとしたなのはにヴィヴィオが素早く口付けた。僅かに開いていた歯の隙間から舌を潜り込ませ、ぬるぬるとなのはの舌を絡め取る。ほんの僅かとは言え予想はしていたが、その衝撃になのははなぜか抵抗することを忘れてむしろ味わうように積極的に舌を絡めにいってしまう。

 ただし、(ああよかった、あの時さくらさんを襲って初キス捧げといて本当によかった)などという思考が頭のどこかに居座っていたことは確かなのだが。

 

「は、んむ、ん、んぅ、ん……はむ」

「ん……んく……はぁ……」

 

 暫くの間濃厚なキスを続けていたなのはとヴィヴィオだったが、呼吸が苦しくなったのかどちらともなく一度離れていく。そしてヴィヴィオがもう一度口付けようとしたところで、ようやくなのはがヴィヴィオの両頬を抑えるようにしてその行動を止めさせる。

 ヴィヴィオは泣きそうな表情を浮かべるが、なのはは黙ったままじっくりとヴィヴィオの顔を見つめる。

 

「……どうしたの? ヴィヴィオ」

 

 その表情はまさに母親の浮かべる笑顔であった。自らの子に向ける無償にして無限にも等しいような純粋な愛情の籠ったその笑みは、今まさに情欲に狂いそうになったヴィヴィオに理性を取り戻させるほどにただ美しくあった。

 瞬間的に正気に戻ろうとしたヴィヴィオだったが、理性が戻っていても身体の方はいまだに火がついたままで。身体は自らの意思に反して動こうとせず、むしろ今まで以上になのはにすり寄ろうとしてしまう。

 その衝動を必死に抑えながら、ヴィヴィオは自分が今どんな風になっているのかを何とか伝えようとするが、どうしてもただの繋がりのない単語の羅列になってしまう。

 

「まま、わたし、おなかあつくて……きゅうってして、おなかのおくで、なにもかんがえられなくて……からだ、あついのぉ……」

 

 どろりと蕩けた瞳に僅かに戻った理性の光は、あっという間に情欲の中に埋もれて消えていこうとしている。なのはの胸に押し付けられた柔らかな双丘の頂点がつんと立ち上がり、こりこりとパジャマの内側からはだけられたなのはの肌をシャツごと擦り上げ、女として最も大切な部分は暫く前から多量の蜜を吐き出している。

 既にヴィヴィオの着ているパジャマのズボンはかなりの湿り気を持ち、一部では雫として滴り落ちそうな程になっていた。

 

「……はぁ……しょうがないなぁ」

 

 小さく呟いたなのはは素早くヴィヴィオを抱き寄せると、僅かに驚愕の表情を浮かべるヴィヴィオの唇を奪う。舌を入れることもない、本当に唇を触れあわせるだけのキスはヴィヴィオの思考になのはの魔力光と同じピンク色の靄をかける。

 ほんの数瞬の後になのははヴィヴィオの首に軽く回した腕をそのままに、互いに吐息を感じられそうな程の近さを保って笑顔を浮かべて言った。

 

「……おいで、ヴィヴィオ。ヴィヴィオの全部を、ママが受け止めてあげる」

 

 優しく笑みを浮かべるなのは。その笑みに心を奪われたヴィヴィオは、再びなのはの唇を奪う。深く口付けながら互いの胸を擦り合わせ、じっとりと濡れた秘所を太股に押し付ける。ヴィヴィオの蜜がなのはのパジャマに染み込んで行き、ひやりと冷たい感触がなのはに伝わった。

 しゅ、じゅくっ、と湿った布が擦り合わされる音が僅かに聞こえるが、それよりも遥かに大きく吐息と舌の絡まる音が響く。なのはの口内は寸前に作ったキャラメルミルクの味見のせいかほんのりと甘い香りがして、ヴィヴィオはさらに母と呼ぶ女性との背徳的な行為にのめり込んでいく。何度も何度も唇を合わせ、離れても一呼吸の時間すら措かずにまた唇を重ねる。

 太股の間に挟まれたなのはの脚はぬるりとした蜜が塗りつけられており、濃厚な女の匂いがそこから発されている。

 突然、ヴィヴィオの着ているパジャマの上が弾け飛んだ。ただでさえ内側から圧迫されていたパジャマが何度も擦り付けられることでボタンが限界を迎えて千切れ飛び、窮屈そうにしていたヴィヴィオの胸が外気に曝される。

 小さなパジャマという檻から解放された双丘は自由を喜ぶように揺れ、今までは二枚の布越しだったなのはとの距離を半分に減らしたまま今まで以上に自由に動いている。

 それを身体で感じるなのはは、自分の身体もヴィヴィオにつられて僅かずつ熱くなっているのを自覚しながら頭にあらかじめ分けていた冷静な部分を使って魔法を使う。キスが外れた瞬間に初歩の初歩である物体移動魔法を使ってヴィヴィオの身体を浮かせ、さらに自分のパジャマのボタンを外してしまう。

 瞬間的にふわりと浮いたヴィヴィオが慌ててなのはをしっかりと抱き締め直した時にはもうなのはの服のボタンはすべて外し終えており、ふにりとヴィヴィオの胸に当たる感触の一部が布ではなく肌のものとなっている。

 それにヴィヴィオが気付かぬわけもなく、キスを続けようとしていたヴィヴィオが一度身体を起こして焦点の外れかけた瞳でなのはのはだけられた胸をじっくりと舐め回すように見つめる。

 ずっとキスを続けていて少し息が苦しくなっていたなのははその間に息を整え、そしてヴィヴィオに着いていくように身体を起こした。

 そして今度はなのはが動き始める。ヴィヴィオの十倍近い人生経験(現在ヴィヴィオは約二歳)と、更に自身を分身させることで得た様々な経験がここで役に立った。

 

「はぁ……は……ままぁ……ふぁぁんっ!」

 

 するりとなのはとヴィヴィオの間に左手が滑り込み、露になった胸を優しく弄ぶ。ふわりと下から双丘を持ち上げられただけでヴィヴィオの胸は形を変え、ぴりりとした刺激を送りつけてくる。

 左手でヴィヴィオの胸を弄りながら、右手で腰を引き寄せる。突然擦り上げられた秘所からそれまで以上の刺激が背骨を伝って這い上がり、ヴィヴィオは喉から嬌声を絞り出される。

 

「あら、大丈夫?」

「は、はぁ……うん……大丈夫、だからぁ……」

「だから?」

 

 ヴィヴィオがなにを求めているかなど理解しているだろうに、なのははただ笑顔を浮かべてその言葉の続きを待つ。当然左手はいまだにゆるゆるとヴィヴィオの胸を嬲り続けているが、妙に加減の上手いなのはの手技ではいつまで待っても先ほどのような大きな快感は得られないだろうということがわかってしまう。

 それをなのはの態度から理解してしまったヴィヴィオは、その両眼に涙を浮かべながらなのはに続きを強請る。その表情になのはが少しぞくっとするものを感じ、外には出さないまでも少し慌ててその感情を抑えようとしていることにも気付かずに。

 

「だ、だからぁ……もっと、ヴィヴィオをきもちよくして………ください」

 

 その言葉を言ってしまってから少し羞恥心が戻ったのか、ヴィヴィオはそれまでも赤かった顔をさらに濃い赤に染め変えて俯いてしまった。

 

 

 

 

 ここで少し離れるが、なのはは実は可愛い物が大好きだ。どこかの世界にいるかもしれないワーカーホリックで休日に何をしていいかも分からずただ家の中でゴロゴロしてしまうなのはや、日々を自分を鍛えることだけに費やしてひたすら闘い続けている脳筋ななのはとは違い、休みの日には家族サービスをしたり古くからの友人と一緒に遊びに行ったり、新しいお菓子のネタを集めに小旅行に行ってみたりもしてしまうアグレッシブでとても普通な20代女性らしい趣味を持っている。

 可愛らしいぬいぐるみのことでついに分身を覚えていつでも仕事とプライベートを両立できるようになったアリサやすずかと語り合ったり、むしろ自分が可愛いと思うぬいぐるみを自作してしまったりするくらいには仕事以外に気楽に打ち込めるものを持っている。

 そんななのはだが、少しだけ困った癖がある。なのはは、実はレズっ気が僅かにあったりするのだ。それも、どちらかと言うと攻めに回りたいタイプのレズっ気である。

 普段はそれが表に出てくることはまずない。だがそれは相手に対して気安い関係になればなるほどに表に出てきやすくなり、ふとした拍子にゆらりと影を出して行くのである。

 たとえば、昔はその被害を受けるのは主にフェイトであった。天然で可愛らしく、お人好しで純粋で一度信じてしまった相手にはどこまでも自分のことを預けてしまう。そんなフェイトは実に簡単になのはの毒牙にかかってしまったのだ。

 とは言えその牙はとても小さなものであり、精々が挨拶の時に抱き合ってほっぺに軽くキスをしたり、アースラの中で二人きりになった時に可愛いからという理由で抱きしめてしまったり、そのまま首筋にゆっくりと舌を這わせてしまったり、間違えて『母さん』と呼んでしまったフェイトの頭を撫でて『お母さんですよー♪』とか言ってみたり、膝枕をしてそのまま眠ってしまった時の寝顔を写真に収めていたりする程度のことだ。ちなみにいくつかのことはアリサやすずかも体験しており、今では殆どの行為が単なるスキンシップより以上の意味は持っていないと認識されてしまっている。

 そんな可愛い物好きでちょっと相手をからかうのが好きであるなのはが、もしも大切にしている娘の「半泣きで自分を襲ってほしいと懇願している姿」などを見せられてしまった場合、いったいどうなるかは予想できるようなものではない。そして本来ならば、そんなことは起きるわけもなく無数の確率で埋め尽くされた世界に消えてしまう物だった。

 しかし、今まさにその通りのことが起きてしまっている。ヴィヴィオはなのはに襲ってほしいと強請り、なのははなのはでその願いを優しげに見える笑顔でききいれた。その笑顔は相手から言質を得た悪魔の浮かべるような笑みであったかもしれないし、神が愛し子である人間に向けるような笑顔であったかもしれないが、今この場でそれを確認できるものは既にほとんどの理性を頭の外に追いやってしまったヴィヴィオしかおらず、またそのことを確認するだけの余裕はその時のヴィヴィオには到底ありはしなかったのだ。

 

 

 

 

「わかったよ、ヴィヴィオ。それじゃあお望み通りにしてあげる」

「!」

 

 そう言うが早いか、なのははそれまでとは逆にヴィヴィオをベッドに押し倒し返した。ただヴィヴィオの体勢はさっきまでのなのはのそれとは大幅に異なり、上に乗る者から攻められやすい状態に固定されてしまっている。

 はだけられた上衣は袖だけでヴィヴィオの身体に引っ掛かっているような状態で、ヴィヴィオの行動をまるで枷であるかのように阻害する。ズボンはズボンで大きくなったお尻やふくらはぎの肉に食い込んでいているし、それがなくともなのはの膝で太股を押さえられていて脚をしっかりと閉じることができないようになっていた。

 その状態のまま、なのははヴィヴィオを優しく攻め立てる。強請られた通りにヴィヴィオを気持ちよくさせるため、胸を弄る左手は先程よりもかなり激しく這い回り、その果実全体からヴィヴィオに快楽の波を送り続けていた。

 

「はぁう……んぅあ、ぁんっ!?」

「さてと、ヴィヴィオはどこが弱いのかなぁ~?」

 

 にこにこと笑いながらもなのははヴィヴィオの弱点を片端から探し、そして探り当てていく。

 一つ見つける。そこは耳。耳朶を裏側から優しく撫で上げると、ヴィヴィオの喉から嬌声が漏れる。

 一つ見つける。そこは首筋。舌先で舐め上げていくと、ヴィヴィオは快感とくすぐったさから身をよじる。

 一つ見つける。そこは足裏。指の又をやや強めに撫でると、ぎゅうっと足先に力が入る。

 一つ見つける。そこは腰。腰椎を挟んで指の腹で撫で上げれば、ぞくぞくとした感覚に襲われたヴィヴィオがその刺激から逃げるかのように身体をそらす。

 次々と見つけられていく新たな性感帯から送られてくる快楽に、ヴィヴィオはその身をカタカタと震わせている。

 

「ふぁ、んぅ、ひぁぁっ!あ、あ、ああっ、あ――――ッ!!?」

「ふぅん、ここもなんだ? ヴィヴィオは敏感なんだね」

 

 当然のことながら、普段のヴィヴィオであればこれほどまでに感じることも乱れることもない。しかし今のヴィヴィオの身体は本人の意志ではどうにもならないほどに発情させられており、なのはの手練手管に踊らされ続けている。

 凄まじい快楽に溺れさせられ、ヴィヴィオはもう意味のある言葉を口にすることすらできていない。その口から溢れ返るように吐き出されるのは快楽に染まった喘ぎ声のみで、それをBGMになのははクスクスと笑いながら漸く本番へと移ろうとしていた。

 今までのように間接的な……本来の性感帯ではない場所への愛撫ではなく、もっと直接的な本来の性感帯により近い場所へその魔手を伸ばしていく。

 そしてその手がヴィヴィオの秘所の僅かに上……最も敏感だと言って間違いない肉豆へと到達し、親指と人差し指の二本の指で痛くない程度に加減しつつ摘まみあげた。

 

「ッぁあぁあぁああぁぁぁぁっ!!?」

「わっと、びっくりした」

 

 ヴィヴィオの身体が勢いよく跳ね、絶叫としか取れないような悲鳴を聞いたなのはだったが、それでもそんな薄い反応を返してすぐに手の動きを再開させる。初めての感覚に翻弄されることしかできない娘(二歳)にやるようなことではないが、そんなの知ったことではないと言うかのような徹底的な行為であった。

 がくがくと震えるヴィヴィオの身体を巧みに押さえ込み、なのはの攻勢はまだ続く。声を上げるヴィヴィオの口を唇で塞ぎ、逃げようとする手足を快楽の糸で絡め取る。何に固められているわけでもないのに手足を思うように動かせず、ヴィヴィオはなのはの手で悦楽を奏でる楽器と化した。

 しかし、それでもなのはの手は止まらない。いつの間にかヴィヴィオの服は脱がされていて触れられる面積は初めのそれに比べてかなり増えているし、それに比例するかのようにヴィヴィオに与えられる快感は濃度と量を増していく。きつい下穿きから解放されたヴィヴィオの秘所は蜜をだくだくと垂れ流させ、その蜜は太腿を伝ってお尻の方までぐっしょりと濡らしていた。

 

「あ、ぁあっ!? や、ひゃめぇっ!ママ、ダメだよぉっ!!」

「大丈夫だよヴィヴィオ。意味のある言葉を話せるうちはまだまだ余裕があるってことだからね」

「そ、そんな……っ!? ひぁっ!? や、やぁぁぁっ!!?」

 

 ヴィヴィオの泣き事をにっこり笑顔のまま切り捨て、なのはの指がついにヴィヴィオの秘所に潜り込む。すでにかなりの量の蜜を吐き出していたヴィヴィオの秘所だったが、今までに一度も物を受け入れたことのないそこは未だに硬い芯を内部に残していた。

 そんなヴィヴィオの膣を優しく巧みに広げ、柔らかくしていくのはなのはの指先。気味が悪いほどに自在に動き回り、少しずつその姿をヴィヴィオの奥へ奥へと隠していく。

 ……が、しかし。その侵攻も途中で止まることになる。なのはの指先にヴィヴィオの初めての証……処女膜が触れたからだ。流石のなのはでも母親の指が初めての相手となるとヴィヴィオにトラウマを植えつけかねないと思ったのか、それ以上奥へと進もうとすることは無くなった。それでもなのはの手は止まらず、それ以上奥へと進むことができないのならばと処女膜よりも手前の膣内を執拗なまでに掻き回す。

 じゅくじゅくと水音を立てるたび、ヴィヴィオの身体に電流が走っているかのように跳ねる。すでに何度も意識が完全に白く染まりきる感覚を体験しているヴィヴィオはそれを感じる度に体力を奪われていくのを理解するが……それでも肉欲に溺れかけている身体は更に貪欲に快楽を求め続ける。

 

「ひあぅっ!あーッ!ひあぁぁぁっ!?」

「うんうん、漸くなんとかできそうな条件が整ったね」

 

 ちゅっ、と首筋に唇を落として呟いた後、すぐに仰向けのまま押し倒していたヴィヴィオの身体を裏返す。突然の浮遊感となのはの姿が視界から消えたことでヴィヴィオは一瞬パニックを起こしかけるが、直後に背後から抱き締められ、耳元で声をかけられたことで落ち着きを取り戻す。

 

「それじゃあ、これからが本番だよ。……落ち着いて、ちゃんと受け入れてね?」

「……ふぇ?」

 

 何の話をしているのか理解できない。そんなヴィヴィオの感情を置き去りにしたままなのはの行動は続く。ヴィヴィオの身体を上から覆い被さるように押さえ込み、そして……ヴィヴィオのリンカーコアに自分の魔力を使って干渉し始めた。

 

「ふぁんっ!?」

 

 その途端にヴィヴィオは悲鳴を上げる。なのはの魔力が自分に触れた瞬間から、まるで全身をなのはに触れられ、撫で回されているかのような感覚に襲われたからだ。

 それだけでも十分悲鳴を上げる理由になるが、それだけでは済まない。じわじわと皮膚に触れ、ゆっくりと撫でられていたような感覚は、しばらくするとほんの僅かずつではあるが皮膚から染み込んで体内までも撫でられるような感覚に変化していったからだ。

 

「ふぁ、あうぅ……なのはママが……ママが私に入ってくるよぉ……」

「うん、そうだよヴィヴィオ。私は今、ヴィヴィオの中に入っていっているんだ」

 

 熱に浮かされているように自分の身体に起きていることを呟くヴィヴィオの耳元で、なのはは囁く。ヴィヴィオの耳朶を唇で甘噛みし、舌先で擽るように舐める。四つ這いから腕を曲げ、背後にお尻を突き出している体勢のヴィヴィオは僅かに身を捩るが、その程度の抵抗で抜けられるほどなのはの拘束は弱くない。僅かに身を捩る行為はヴィヴィオの望んだ結果をもたらす事なく、なのはの下で終息した。

 ……いや、そもそも今のヴィヴィオになのはの拘束から逃れようと言う意思があったかどうか定かではない。よしんばあったとしてもそれは頭でそう思っているだけで、ヴィヴィオの身体はすでになのはの淫技に屈伏していた。

 じわじわと染み入るなのはの魔力。自由の効かない身体。頭の天辺から足先までに感じるなのはの存在に、いまだに続いているなのはの手や唇による愛撫。それらの感覚に融かされ、きゅんきゅんと寂しげに泣いている子宮の疼き。それら全てに逆らえるほど、ヴィヴィオは強くも大人でもない。

 ただでさえ突然身体だけが大人になり、性感を受ける神経のみが過剰に発達させられているのだ。そんな状態で求めているものを与えられ、我慢できるはずもない。

 じわじわと全身をゆっくりと侵されて行く中で、なのはの身体が実際に触れている場所では特に魔力の浸透が早い。なのはが手を変え品を変えながら触れ続けた胸と、全身を撫で回す際に多少の遠回りをしてでも中継地として繰り返し触れていた下腹部。そしてその奥にある心臓と子宮にはなのはの魔力が満たされ、心臓に重なるように存在するリンカーコアもなのはの魔力に包まれていて暖かい感覚にヴィヴィオの心も身体も満たされている。

 

「は……ぁあ……ま……ママぁ……からだ、あったかくて……とけちゃうよぉ……」

 

 先程までのような暴力的な快感の嵐ではなく、まるで体温より僅かに高いだけのぬるま湯に浸かるような快感に包まれてヴィヴィオは少しずつ自分の意識が正常な状態に戻っていくのがわかる。何度も何度も意識を白桜色の閃光の彼方に持っていかれるような激しい快感は得られないが、それでもさっきまでの行為では覚えることなど無かっただろう満足感に身体が包まれていく。

 

「……は、あぁぁぁぁ……」

 

 深く、ゆっくりと息を吐き出すヴィヴィオをその背後から眺めるなのはは、漸く自分の技が成功を納めた事を理解する。最初からじわりじわりとヴィヴィオを侵食し、そして無理矢理絶頂を迎えさせて意識の隙間を作り上げてまで実行したものが失敗していなくてよかったと思うなのはであったが……まあ、なんと言うことはない。元々ヴィヴィオ自身が心の中ではあまり望んでいなかったと言うことと、身体が初めての快楽に動きが鈍くなっていたということ。そしてそんな状態で、ある意味百戦錬磨の経験を持つなのはに勝つなど、稲葉の白兎が皮を剥ごうとして来た鰐を返り討ちにするよりも難しいことだ。

 

「……落ち着いた? ヴィヴィオ」

「……うん」

 

 全身からぐったりと力を抜き、疲労していることを隠そうともしていないヴィヴィオに、まだまだ余裕そうななのはが問いかける。ヴィヴィオは絶頂に登り詰める際に叫びすぎたのか喉が少し嗄れており、なのはのベッドの上に小さな洪水を作ってしまっていたが、それに気付くこともなくヴィヴィオはなのはの布団に伏せていた。

 

「……お風呂、入ろうか。ね?」

「…………うん」

 

 くたっと身体を伏せたままのヴィヴィオは、なのはの言葉に逆らうことなく頷いた。ヴィヴィオの身体の奥ではいまだに情欲が燻っているが、それはもう消えかけた蝋燭の炎のようなもの。ヴィヴィオの理性を振り切れるだけの勢いも熱量も持たず、ただ身体の奥底で未練がましく僅かな熱と光を放つのみ。

 そしてその僅かな熱も、なのはの魔力に飲まれてその姿を消した。

 

 

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

 

 

「ほらヴィヴィオ、腕出して」

「うん」

 

 数分後。なのはに横抱きにされながら風呂場につれてこられたヴィヴィオは、何故か大きくなったまま戻らない身体をなのはの手で洗ってもらっていた。これはなのはの魔力が身体に残っている事と、何度も絶頂を迎えさせられた事で身体が思うように動かなかったからという理由もあるのだが、恐らく最も大きな理由はヴィヴィオ自身がなのはとあまり離れたくないと言ったからだと思われる。

 なのはは始めに自分の頭から水を被って身体の火照りを取り、それからヴィヴィオの全身を優しく洗う。頭から始まり、背中に続き、腕を通って脚へ。優しく身体を磨かれているヴィヴィオが感じるのは、今はもう僅かなくすぐったさのみ。突然始まり突然終わった行為の最中とは違い、その感覚が性欲に繋がることはない。

 それもそのはず。実はなのはとヴィヴィオのリンカーコアは未だになのはの魔力を介して繋がったままなのだ。なのははその繋がりを利用してヴィヴィオの身体の感覚を一部支配して調整することで、全体の反応を鈍くしていた。そうすることでなのはとヴィヴィオは落ち着いて話をすることができたし、この状態はなのはによってヴィヴィオの身体に更に深く干渉するための下準備の一つでもあった。

 

「……さ、お湯に浸かろうか。私も身体を洗いたいから、ちょっと待っててね」

「……うん」

「いい子だね」

 

 くしゃり、とヴィヴィオの頭を撫でたなのはは、本格的に汗を流すためにもう一度シャワーでお湯を被る。ヴィヴィオは湯船の中で膝を抱えるような体勢のまま、じっとなのはの後ろ姿を見つめていた。

 暫く無言の時間が続く。しかし静寂に包まれていると言う訳ではなく、ただその場に居る二人がどちらも口を開こうとしないだけのすぐに破れてしまいそうな無言の時間。なのはが頭を洗う音と、ヴィヴィオの身体に水面の波がぶつかって砕ける音。そして時々天井から雫として落ちてくる水滴が弾ける音だけが続き、その無言が破られない内になのはの洗髪が終わったらしくシャワーの音がその場を満たす。

 髪の泡を流し終えてシャワーを止めたなのはは髪を適当に丸めて留め、何も言わずにヴィヴィオと背中合わせになるように湯に浸かった。

 

「……ごめんなさい」

 

 ぽつり、とヴィヴィオが囁くように謝罪する。なのはは全く考えることも無くそれを受け入れた。

 

「……それで、どうしてそうなってるのか……そうなる前に何があったのか、ママに教えて?」

「……学校から帰ってくる時に、スカリ博士と会って……その時に貰ったお菓子を食べたら暫くしてこうなったの」

「今度『加減無く容赦無く手心無くえげつなく天地人魔神霊妖鬼一切合切区別無く砲殺する陽光よりも眩き落星(仮)』を撃ち込んでおくよ」

「……死んじゃうよ?」

「変態は気合いで地獄からでも煉獄からでも黄泉帰ってくるから大丈夫だよ」

 

 軽くそんなことを言われたヴィヴィオはきょとんとなのはを見つめ……

 

「……ぷっ……あはははははっ♪」

 漸く、笑みを浮かべた。

 それに安心したなのはも心からの笑みを浮かべ、背中合わせのままだったヴィヴィオに身体を向ける。

 

「……それじゃ、いつもみたいに100まで数えてから出ようか。ゆっくり……私の目を(・・・・)じっと(・・・)見ながら(・・・・)数えるんだよ?」

「はーい!」

 

 なのはの言葉に従ってくるりと振り返ったヴィヴィオは、元気よくゆっくりと数を数えていく。1から始まり、一つずつ増えていく数を数えながら、なのはの瞳をその紅と翠の両目でじっと見つめる。

 

「───31、32、33、34───」

「……数えながら聞いてね、ヴィヴィオ」

 

 そんな中、ある程度ヴィヴィオが数えた所でなのはが口を開く。なのはの普段は蒼穹を思わせる蒼い目はいつの間にか血よりも濃厚な深紅に塗り代わり、僅かに輝いてすらいる。

 しかし、ヴィヴィオはそれを僅かも不思議に思うことなく数を数えながらなのはの言葉に聞き入っていく。まるでそうあることが当たり前であるかのように。

 

「───45、46、47、48───」

「……今日の夜あったことは、ヴィヴィオは覚えていられない。思い出そうにも、今日はいつもと変わらない、とても普通の夜だったから……思い出すような事は、なにもない」

 

 唄うように、言い聞かせるように、ただ台本の台詞を読み上げるように……なのははヴィヴィオにそう言った。ヴィヴィオはその言葉を否定することなく、ただ数を数え続けている。

 

「───58、59、60、61───」

「今日はなにもなく、普通に寝た。スカリ博士とは帰りに会わず、何もなく普通に帰ってきた。スカリ博士からは何も貰ってないし、何ももらってないから貰ったお菓子を食べてもいない」

 

 なのはは何度も言い聞かせる。数を数えているヴィヴィオの瞳からはいつの間にか光が失われ、出来のいい人形がストップウォッチの数字を読み上げているようにも見えてしまうが、それに構うことなく言葉を続けていく。

 

「───84、85、86、87───」

「……100まで数えたら、お休みの時間。100と数えた瞬間に、ヴィヴィオは今晩あったことをみんな忘れて……明日からはまた、いつも通りだよ」

 

 ヴィヴィオのカウントとなのはの声が重なる。97、98、99───

 

「───100」

 

 そこまで数えきったヴィヴィオの身体から力が抜け、なのはの胸に飛び込むようにして倒れ込む。同時にヴィヴィオの身体は成長過程を高速で逆再生しているかのように縮んで行き、ほんの十数秒後には昼までと同じ、肉体年齢で言えば7歳程度の身体に戻っていった。

 なのははすやすやと眠っているヴィヴィオの髪を撫で、深紅に染まる瞳をゆっくりと目蓋で覆い隠す。数秒後に開いたその目蓋の下にはもう紅は無く、生来の深い蒼の瞳が愛しげに腕の中で眠るヴィヴィオを映し込んでいた。

 

「……お休み、ヴィヴィオ。いい夢を」

 

 なのははそう言って、ヴィヴィオの額に優しく口付けた。

 

 

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

 

 

「行ってきまーす!」

「はい、気を付けていってらっしゃい」

 

 翌日。ヴィヴィオは昨日のことなど無かったかのようにいつも通り朝に起き、いつも通りに朝のランニングを終わらせ、いつも通りにシャワーを浴びて、いつも通りに学校へと出掛けていった。

 いつも通りの笑顔を浮かべていたヴィヴィオを見送ったなのはは、ヴィヴィオの後ろ姿が見えなくなったことを確認してようやく少し安心したような表情を浮かべて……誰に言うでもなくぽつりと呟いた。

 

「……すずかちゃんの魔眼、真似してみたけどやっぱり凄いなぁ……流石は中世以前より夜の一族の本家にのみ代々受け継がれる伝統的催眠術。魔力も魔法も無しにこれをやるって言うんだから、やっぱり夜の一族のスペックはぶっ飛んでるよ」

 

 他人に見せるための笑顔の仮面を外し、少し呆れたような疲れたような笑みを浮かべる。昨晩ヴィヴィオと深く繋がったなのはだったが、実のところそれがなのはの体力を相当量奪っていたのだ。

 なのはがやったそれは、学生の頃に発情期が当たってしまったすずかにアリサ共々襲われた時に体で覚えた月村家に代々伝わる房中術の一種であった。正式に習い、覚えたわけではないために無駄が多くはあるものの、それでも最低限の効果として相手の体力を回復させ、体内に取り込まれた異物を浄化し、体調を調える程度の効果は持っているそれを、なのははスカリエッティに一服盛られてしまったヴィヴィオに使った。その甲斐あってヴィヴィオは今日も元気に学校へ行くことができている。

 

「……なあ姐御? なんだか疲れてねえか?」

 

 ふよふよと空を飛びながらアギトが問いかけてくるが、なのははそれに答えずにレイジングハートの手入れを始めた。

 その空気になのはがかなりキレかけていることを把握したアギトはこそこそとその場を離れようとしたが、首元をなのはの指につままれて逃亡に失敗する。

 

「……もうすぐ来るから、ユニゾンお願い」

「……おう」

 

 誰が、とも何が、とも言われなかったが、アギトはそれを問うことなくなのはとユニゾンを開始する。なのはの髪は茶色から淡紅色へと変わり、その背に桜色の炎の羽を背負う。

 IS学園の制服(男物)によく似たバリアジャケットの所々に金色の線が入り、瞳の色が赤紫になった。

 だが、全力のなのははこれだけでは終わらない。手入れを終えたレイジングハートを片手に、更に呟く。

 

「レイジングハート。ジュエルシードシステム、ドライブ。……デュアルユニゾン」

『了解。JSS、ドライブ。……ユニゾン、イン』

『ユニゾン!? レイジングハートってインテリジェントだったよな!?』

 

 アギトのツッコミも虚しく、レイジングハートがなのはの身体に融合していく。金色の線が走るバリアジャケットにさらに一本、その線に沿うように深紅の線が走り、背負う炎翼の光度が増して片翼が淡紅色よりさらに薄い桃白色になる。見た目でわかる通りにその炎の温度は遥かに上昇し、なのはが意識的に押さえていなければこの場に煉獄が顕現していただろうと言うことを理解させられてしまう。

 リミッターを外し、ミッドチルダ全域に満ちる魔力を集束するなのは。溢れる魔力を炎と熱量に変え、熱波と光を集束増幅し続ける。もしもこの場でなのはが制御を手放したら、恐らく衛星軌道上に到達した最高の状態の聖王のゆりかごですら塵一つ残さず蒸発するだろう。

 

「おや、これはこれは高町なのは様、それはもしや私に対するお仕置きのために作り上げたのかい? ならばさあ私に撃ち込んでくれよ頼むよお願いしますくはははは!いったいどれだけの痛みを与えられるのか今からもう楽しみだよなあウーノ?」

「全くです、あああの光量、あの熱量、あの魔力量、どれをとっても最高級……あの光槍が私の体を貫き、飲み込み、体内で炸裂することを想像するだけで…………はあぁ……♪」

 

 しかし、よく調教されたマゾヒストにかかればこの程度のものはご褒美でしかないらしい。アギトはなのはにユニゾンしながら頭を抱えるが、それでも魔力を炎熱変換させていく手は休めない。

 

「ヴィヴィオとの約束だからね。とりあえず……『サンセット・サンライズ』!」

『フォール&ライズ』

『はぁ……炎熱加速、加速加速過加速……と』

「「ヒャッハー!」」

 

 (一応)非殺傷設定で撃ち込まれた圧縮炎弾は、二人の変態を飲み込んで行く。結界が張られていなければかなり広域に渡って焼滅の危機にあったが、スカリエッティの『手加減無しでお仕置きして欲しい!』と言う意思によって張られていた使い捨ての結界によってミッドチルダの平穏は守られたのだった。

 

「……さてと。それじゃあ地上の人に引き渡して……私もいつも通りの仕事に戻ろうかな」

 

 なのははアギトとレイジングハートとのユニゾンを解除し、そして燃え残った変態二つを適当にポリバケツに放り込んでから店に戻る。結界は既に解除され、なのはから地上本部にいつものように連絡が行く。

 

 今日もまた、ミッドチルダの地上は奇妙な平和に包まれていた。

 




 
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だからやるなよ? いいか? 絶対やるなよ? 絶対だからな!?
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