彼女は思い出の薫るその町で、道を違えた男と再び出会った。
つよきす(無印)姫ルートアフター。
――「再会」のあらすじより。
※この話は「再会」で省略せざるを得なかった部分のお話です。単独では流れがわからないと思うので、まずは拙作「再会」からご覧頂ければと思います。
性的な描写があるので、苦手な方はご覧にならないようお願いします。
ベッドルームは、濃厚なバラの香りに満ちていた。
その中へ、とどまることなく歩みを進めるエリカ。続いてレオが足を踏み入れ後ろ手に扉を閉めたところで、強引に顔を寄せていくと――。
「――ンむぅ」
「ン……」
あっけなく唇は重なる。
サイドランプの薄明かりの下でも、眼前にある互いの顔を確認できる程度には明るい。丸くなった黒眼を覗き込みながら逸る気持ちを宥めすかし、まずは合わせるだけの軽いものから。久しぶりの感触を存分に楽しむ。
されるがままにキスを受けているレオ。押し付けられる口唇の柔らかさと立ち込めるバラの香りよりもよっぽど甘い彼女の匂いにあてられ、見張った瞳も次第に緩んでいく。むにむにと唇を擦られると、痺れたような鼻息とアルコールの混じった吐息が漏れ出した。
吹きかかる鼻息のこそばゆさと吐息の心地好さに、エリカは唇を離さないまま微笑を零すと、レオの首に腕を巻きつけながら舌を挿し込んでいった。
「ぷひゅ……」
「――んん? んあぅ、ちゅ、ふ……」
受けるばかりだったレオも、しつこいほどに口内を舐られていれば、負けじと応戦を始める。エリカの細腰に腕を回し、深くまで入り込んでいる彼女の舌を歯で捉えて丹念にしゃぶった。
張り合うようにして互いを求め合う二人、強く抱き合ったままよたよたと部屋の奥へ進んでいく。その僅かばかりの時間でさえ、押し付けあった唇も絡めあった舌も、離れることはない。
広やかな寝室の3分の1ほどを占拠する絢爛豪華に設えられたキングダブルのベッドは、その造りも申し分なく。倒れこんだ二人をやさしく受け止める。仰向けに寝転んだレオにエリカが乗っかる格好となり、それでもキスは続いていた。
舌伝いにとろとろと自分のにおいを注ぎ込んでいると、ふと密着している下腹に当たる出っ張りに気づく。
キスだけで反応し、硬化を始めている彼の滾り。
その熱に、身体の奥深くで疼きを覚え。そんな自分を宥めるように、エリカの手はレオの背中を彷徨った。
ようやく唇が離れたときには彼の瞳はトロンと蕩け、脱力しきった身体はエリカの柔らかな肢体を支えるのみ。それを見下ろす彼女の双眸にも同じ色が宿っている。
互いの唾液が混じった濃粘なエキスが、未練がましく二人を繋いだ。
「ふぅ……ふぅ……」
「はぁ……はぁ――ん、ほら……脱がせてよ」
乱れた呼吸を整える時間すらもどかしい。火照った体に邪魔な上着を脱ぎ、挑発がてらにボタンを二つほど緩めてみせるみせるエリカ。すると従順に、性急に、腰に回されていた腕が胸元に伸びてくる。
おろしたての水色シャツを剥かれれば、現れたのは地味目なスーツとは対照的に艶やかな――ふんだんにレースがあしらわれ、カップが大胆にカットされている赤色のブラ。捲くれ上がったグレーのタイトスカートの裾から覗くショーツと揃いのそれは、ハーフ特有のミルク色の肌とコントラストを描き、エリカを淫靡に彩っている。シャワーのあと何気なく選ばれたはずのその下着は、この展開への彼女の期待を如実に表していた。
レオはその蟲惑的な光景をひとしきり眺めてから、さらにその中身を暴きにかかった。
先ほどシャツのボタンにしたのと同様、巧みに動く右手が背中の留め具をいとも簡単に外すと、何度も彼に愛され、さらなる成長を遂げたまろやかなふくらみが弾け出る。レオを魅了してやまない魅惑の果実が。
「手慣れてるわね。腕に不自由があるなんて思えないわよ」
「ん……必死にリハビリしたからね」
「…………こういうリハビリなら精も出るわよね。どれだけリハビリを重ねたらこんなスムーズにできるようになるのかしら」
つい口を衝いて出た嫌味にエリカはハッとなるが、レオはそれに気づかず顔をしかめると、締め付けから開放されあらわになった双乳の、すでに自己主張を始めている頂にかぶりついてきた。
「ふうぁぁっぁぁん!」
待ち侘びた甘い衝撃に、思わず身体を仰け反らせるエリカ。レオはすかさず身体を入れ替え、彼女を組み敷いてしまう。
「ああ……んあっ、ちょっ――だ、だぁめぇ……こらぁ! ――ぅぅん」
尖端を舐めたり吸ったり、アクセントをつけるように甘噛みしたり。それだけでは飽き足らず、両の手も使って空いている方の乳首を摘んだり乳房全体を揉み込んだり。
そのたびに漏れるいやらしい声を、彼女は抑えることができない。その声を耳にするごとに、レオの愛撫はしつこさを増していく。確実に彼女を頂点へと追い詰めていく。
それでもエリカは官能に流されそうになるのを必死に堪え、残った理性で右手を下に伸ばした。
「ううぅ……」
下着越しからでも熱い、雄々しく反り返っている剛棒をそっと掴むと、執拗に繰り返されていた攻撃もようやく止んだ。その隙にトランクスをずり下げてしまえば、そこを守るものはなにもない。
先端からはすでに劣情の証が滲み出していた。赤く張り出した部位は、テラテラと殊更いやらしく濡れ光っている。
「うぁ……それ、ヤバ――って……くぅ」
漏れ出た液体を広げるように全体を撫でさすれば、その量はさらに増える。くちゅり、くちゅりと淫猥な音が興奮を煽った。
再び体勢を入れ替え、今度はサイドポジションをとったエリカの弱点を知り尽くした的確な攻めに、レオは情けなく喘ぐばかりだ。しがみつくエリカを引き剥がそうとするも、その手もいまや力なく肩に添えられるのみ。
そして弱々しい彼を目の当たりにするほどに、楽しげに――心底うれしそうに頬を緩めるエリカ。彼を導く動きも勢いづいていく。リズミカルに動く右手はそのままに、左手はやわやわと袋の部分を揉みほぐし、時折不意を衝くように乳首へと這わせられた。
「エリカ……もう……」
10分と保たなかった。
レオの掠れがちな呻きと共に、手の中でビク、ビクンと跳ねるペニスが限界を訴える。
「なに、もうイきそうなの?」
「う、うん」
「へぇ……」
ニターッといじめっこの笑みを浮かべるエリカ。かつてを彷彿とさせる意地の悪いサディスティックな笑みを。
途端、肉杭に絡みつくほっそりとした指は、蕩けるような快楽を与えていたその動きを一変させ、
「っ――つぅ!」
乳搾りでもするかのように、根元をぐぐっと締め上げた。
「ダメよ、目的を忘れてもらっちゃ。あなたは私の性欲処理の道具なんだから――」
言いながら残った衣服を脱ぎ落とし、再びレオの上に跨った。へそに付かんばかりに猛り立つ彼のモノを、ちょうど自分の秘処で踏みつけにする形だ。
「――私を……愉しませなさい」
すぅっと目を細めたエリカの一方的な命令。
怒張に手を添え、先端を入り口にあてがう。
触れてもいないそこは、すでに欲望に塗れていた。薄桃色の慎ましい陰唇はぱっくりと口を開き、滾々と溢れる蜜液に滴っている。腰を少し捩らすだけでぬちゃっと卑猥な糸を引くほどだった。
しかし浅ましい自分の反応にも妖しい触感にも、エリカは羞恥よりむしろ興奮を強く覚えてしまう。その場所を見せ付けるよう背を反らせながら、美酒を味わうよう瞳を伏せて、ゆっくり、じっくり、腰を降下させていった。
「んくっ……はぁぁぁああんっ!」
エリカの女がレオの男を激しく迎え入れる。
潤滑油は十分であったが、長く男を受け入れていなかったそこは少し狭くなっており、挿入にはいくらかの痛みを伴った。けれど拡張感も痛みすらも快く、膣が、子宮が。歓喜に打ち震える。
慣れ親しんだ肌は、たちまち蜜月の時を取り戻す。柔らかくほぐれた肉襞が蠢動しながら侵入者を狂おしく締め上げれば、膨れ上がった雁肉が思いがけない反発を起こす。レオは、絡みつく蜜肉の暴力的なまでに甘美な感触に。エリカは、最奥を抉る硬く張り詰めた巨杭の熱さに。すぐにでも達してしまいそうで、身動ぎひとつとることができない。
荒い呼吸音だけが響く室内。
先にひとまずの落ち着きを取り戻したのは、エリカだった。
「んっ……ん、んぁ……ん……っ」
繋がった一点を支柱に、ゆったりとリズムを刻みはじめる。束ねたままの髪がたまらずに波打った。
――気持ちいい。
男の器官が自分の欠けた処を満たしている。その事実だけにもエリカは、深い法悦に浸ることができた。貪欲に上を目指す本能に従って、腰使いもどんどん激しくなっていく。
「あぅ、ひゃぅ……ふふっ、ふぁ……イイわよ……。ン……そっちも……動いて、よ」
「くぁ……そ、そんなの――ぅくっ」
無理だよ。言おうとするレオであったが、続きを口にすることはできなかった。下半身を襲う甘美な感触はもちろんのこと、勃起しきりの乳首を絶妙な加減で弄ばれ、女神の胸丘がみだりがましく揺れる様さえも見せつけられているのだから、無理もない。
粘っこい水音が喘ぎに混じって広がれば、二人の喜悦を助長する。
「っぁ……はぁん……もっと……」
だけど……。
快楽に溺れる肉体とは裏腹に、エリカの空っぽな心の疼きが治まることはない。
頭の中の醒めた部分は、その原因を理解している。
「エリ……カ……」
自分の名を呼ぶ甘やかな声に誘われ、自然そちらに目を向けると。湧き起こる愉悦を堪えるように、顔を歪ませるレオがいた。
強すぎる快楽に苦悶さえ滲ませるレオに。重なるのは、あの時の――腕の中で鮮血に染まりながら、苦痛に耐える姿。甦るのは、ひたすらの後悔。
(…………っ)
――好きならよかった。
思わなかった日はない。ずっと好きのままであれば、離れることもなかった。きっと今でも変わらず隣にいた、と。
けれどあの日、凶弾に倒れるのを見て。病院のベッドに力なく横たわる姿を目の当たりにして。もう……彼のことを好きではないことを思い知った。
『そこまで私にお熱っていうなら盾になって死ぬ覚悟してもらうわよ』
頭を過るのは、照れ隠しだったはずの自らの台詞。
それでもレオは覚悟していた。
覚悟が足りなかったのは自分のほうだった――。
「……エリカ?」
惑ったような声に、エリカはいまに引き戻された。
いつの間にか卑欲を煽る淫らな踊りは止まっており、レオが訝しげにこちらを窺っている。そこに先ほどまでの情欲に悶える姿はなく、トロンと蕩けた瞳にも幾分か理性の光が戻っていた。
「っ……なんでもないわよ。あなたは私を愉しませることだけ考えてればいいの」
「だけど――っぅ……むっ」
何か言いたげな彼の口には、強引に蓋をした。
口付けを振りほどこうと暴れる頭を抱え込み、がむしゃらに腰を揺り動かす。まるで一時の快楽に縋るように。
けれども先ほどまでの昂ぶりは跡形もなく消え去り。代わりに胸にぽっかりと開いた癒えることのない傷口から、飛沫となって、そのときの記憶と封じ込めたはずの想いが迸る。
幸運にも命を拾った彼は、代償として消えない傷痕と僅かながら右腕に障害を一生背負うこととなった。その現実に直面したとき、彼女は。――もう、側にはいられないと思った。
側にいれば、いつまた同じような事態が起きるとも限らないから。次は命を落とすかもしれないから。……そんなことには耐えられないから。
――だから離れた? 違う。
キリヤカンパニーの総帥としての立場が危険を呼びこむというのなら、それを捨ててもよかった。夢も、地位も、何もかも、投げ出してもいいと。
そう思ったから。そう願ってしまう、霧夜エリカらしくない自分に気づいてしまったから――。
「――ぅぁ、んむぐ……んちゅ」
一方的な蹂躙は、それでもレオを官能の際へ追い詰める。くぐもった呻きがやがて逼迫した喘ぎに変わり、いつしかエリカの動きに合わせるように、突き上げが始まっていた。
ほどよく空調が効いていたはずの室内は熱を帯び、噴きだした汗が滴となって、それぞれの身体を濡らす。それが肌の間で出会い混じるとぬるぬると滑り、卑猥な感触は更なる昂ぶりを呼び起こす。
同期する動き。混じり合う体温。重なる鼓動。すべてが切なく、狂おしく、甘美だった。
けれど至高の時間にも終わりが訪れる。
緻密な襞のぬめらかな感触と抜群の収縮にさらされ続けた肉茎が、欲望を放出しようとピクピクと震えだす。
射精の兆候をダイレクトに感じエリカは。相好を崩すと、自分の奥へと導くよう腰を擦りつけた。その表情には紛れもなく陶酔が浮かんでいる。
そして淫蕩に微笑むエリカを目前にしたレオが、こみ上げる衝動に抗うすべはない。
「~~~ッ!」
絶頂の吐息はすべて彼女の口内に注がれた。
一際大きく膨らんだ切っ先から情欲のカタマリが迸り、愉悦を極めた肉体が大きく震える。射精を長引かせようと、細かく痙攣する膣肉が拍車を掛けた。
そうして精の奔流を受け、生温かい体液を浴び、エリカは充実の吐息を漏らすのだった。
室内に満ちていたバラの香りは消えうせ、生々しい性の匂いが立ち込めている。
指先ひとつ動かすのも億劫で、荒げた呼吸音を静寂な室内に響かせながらエリカは、レオの鎖骨に額を当てた状態のまま重なり合っていた。
――気持ち良かった。
一時の快楽が欠けた心を完全に満たすことはないけれど。身体だけを繋げても結局空虚さを増しただけで、なにも残らなかったけど。……すべて終わったことだ。
気だるい身体に鞭打って、身体を起こす。それとはなしに、彼の肩辺りを撫でながら。
「フフッ、中々愉しめたわよ。それなりに気持ち良かったしね。だから――」
「……だ」
「は?」
「ダメだ」
そこで気づいた。精を放ち終えたはずの彼のモノが萎えることなく蜜壷に刺さったままであることに。いつの間にかお尻に両手が回されている現状に。
レオは肉たぶに跡が付くくらい強く掴むと、自分のほうへ引き寄せ、同時に腰を送り込む。当然結合が深まり、
「――ッ……!!」
剛根が弛緩した局所を突き刺した。
貫くような快感が頭の中で火花を散らし、悲鳴を上げることもできず、エリカはたまらずに身体をのたうたせる。折れてしまいそうになる上半身は、レオの胸に手を付くことで辛うじて支えられた。
「っ……、ぁっ……、はっ……ちょぉ――」
せっかく整えた呼吸をすっかり乱され、激しく肩を上下させるエリカ。抗議の声を上げようとするが。
「っとぉぉぉっっ、ぁぁあああっ!!」
掴んだ臀丘を揺り動かされ、中身を攪拌されれば、言葉にできない。
今度こそがっくりと倒れ込んだエリカの身体は、逞しい胸板がしっかりと受け止め、そのまま横向きに回転させられる。図らずもリボンが解け、鮮やかな金色がシーツの上に散らばった。
そうしてエリカの上にのしかかり、汗の浮かぶ美脚を抱え上げてレオは、尚も肩を喘がせているエリカに構わず抽送をはじめる。
「エリカ……っ、エリカぁ!」
甘く、切なく、愛しい女性の名を呼びながら、情熱的に腰を振るう。その一突き一突きに、彼女への思慕の念を込めて。
「や……めぇ、ぁ、ああ! な、さひゃあぅぅ!」
押し止めようとするエリカであったが、性感に痺れた肉体はいうことを聞かず、されるがままになるしかない。敏感な尻肉をまさぐられ、絡みつく襞を掻き分けるよう力強く突き上げられ。鼻からは甘いさえずりが、口からは悩ましい嬌声が、代わる代わるに溢れる。せめてもの抗いとして、彼の腕に爪を食い込ませるのが精々だ。
(こ、こんなの……!)
レオとの付き合いは長いし、数え切れないくらい肌を合わせてきた仲だけど……。こうまで強引な彼を見るのは初めてだった。その分エリカの感じ方は、かつてなく深い。
半開きになったままの口から明らかな善がり声が上がり、ぶつかりあう肉同士が乾いた音を打ち、結合部からしどどに垂れる淫液が聞くに堪えない水音を立てる。それらが奏でる淫猥なハーモニーは、立ち込める淫臭と相まって、彼女を恍惚世界へ駆り立てた。
さらにレオは追い討ちを掛けるように、ぴったりと身体を重ね合わせると、
「っ……エリカ……、好きだ……ずっと」
細かく震える耳たぶに熱い吐息を吹き込んでくる。
耳元での囁きは直接心の中へ染み渡り、制御できない官能の波となって彼女を襲った。否応なく昂ぶらされてしまう。
「ゃ……だめっ……。――クッ、ぃくっ……!」
絶頂の予感に痙攣しだす肢体。強烈な一体感に溶け出す理性。
いつしか強攻な彼を受け入れるよう求めるよう震える腕を、脚を、レオの身体に纏わり付かせながらエリカは。レオがもたらす悦びに身を委ねた。
「――――~~~……っ! ゃ……れ――――ぉぉぉ……」
朦朧とする意識の中、確かに彼の名を紡ぎ、喜悦を極めた意識は闇に落ちていった。