※この作品はR-18です。

ブレイブストーリーでエロパロ   作:PEOK

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サーカワからボグ地区へ入り、ミーナの故郷である首都、ランカへ向う。


ミーナの故郷へ

その上を歩いてても丘とも気付かない凹凸が、地平線に目を向けることで小丘であると確認できる、ただそれだけの、広大な平地が広がる場所を僕らは車輪に揺られ進んでいる。

 

その、うっすら草原が茂る大地には、丁度ダルババ車の横幅くらいの、まるでバリカンに刈られたかのような一本の道筋の上が伸びていて、それはサーカワからランカへ向かう行商人らが何世代もそこを往復し、地を固め、自然が磨耗することで最短コースの道筋であるんだという事をキキーマが教えてくれた。

 

 

ヒトの歩みという小さな積み重ねだけで、意図せずともこんな道が出来ている事実を前にして、アスファルト上で生活していた僕には、そんな些細なことでも感動しちゃうな……。

 

鋭角に差し込む夕日に目を細め、僕はそんな事を思う。

 

 

「日暮れも近いな」 とキキーマも目を細め、同じ様に遠望を見つめていた。

 

この道筋を辿れば、サーカワ領の沿岸に建てられている高台からも望めるという大河、グランデラ川に架かる大橋に丁度あたることが出来るのだそうだが、今日はあっという間に日暮れを迎えようとしている。

 

まぁ、昨晩に大分《だいぶ》お酒を飲んでいたキキーマも流石に今朝は起きるの遅かったし、僕が提案した後で急いで準備をしてくれた時には、既に日光がてっぺんから少し下がりはじめていたので、色々と慌しい出発となってしまったんだ。

 

だからサーカワの皆さんにきちんとしたお礼も出来なかったかもって、ちょっと心残りだ。

 

 

しだいに辺りがほの暗くなってきたので、その人々の歩みで作られたという道も、暗がりの中では判別し辛くなってきていた。

 

「今日中に橋を越えられると思ったが、まいったな~。 まぁ、基本一方通行だからこのまま行けば河に当たるだろうから心配ないが」

 

そう言ってキキーマはた手綱を強めに動かす。

 

 

*****************************

 

 

コトコト……

 

道端にまばらに点在してる真っ白で長細い木の枝を車輪が踏みつけ音を鳴らす、過去にここまで流れてきてた流木の枝だろうか?

 

 

「ほれミーナ。 あそこに見えるだろ、グランデラ川だよ」

 

ランカ出身なら見覚えあるだろうとキキーマが指差すその先は、もう真っ暗だから僕にはさっぱり見えないけれど、

 

「えっ、ドコドコ?」

 

とミーナはヒョイと首を上げ、得意の夜目を利かすように遠方を望んでいた。

 

「――あッ! 見えたよ見えたっ、ちっちゃい頃ね、お魚釣りに連れてってもらった記憶があるんだ」

 

と声を躍らせるミーナ。

 

そのとても嬉しそうに言う様子を見て僕は、幼い頃のミーナが両親に連れられて川遊びしている光景が目に浮かぶようだった。

 

 

 

「――うおっ、とっと」

 

不意にガタンゴトンと途中から車輪に伝わる振動も変わりダルババの蹄のテンポもどことなく不調な感じになってきて、キキーマは手綱を少し引きながらヒョイと地面に目を落とす。

 

「もうここらで河川の地質になってらぁ」

 

その一帯の空気はどこと無く潮風が混じっているようで、北側には今日ずっと遠方に見えていた浜辺が一望できた。

 

そして僕たちの進行方向である東側には、目的の大きく横たわる大河がそびえて、その浜辺への合流を果たしているのがようやく僕にも視認できた。

 

「えっ~と、やっぱりコースを逸てれたようだな」

 

多分星座か何かで方角をみてるだろう、首の後ろを掻きながら宙を仰ぎみてキキーマはそう呟く。

 

「俺達がいる場所は今向かってる大橋よりもちょっと下流の方だな。 ほら、多分あれがそうじゃないかな?」

 

とキキーマが川の上流を指差している方向、僕もその川沿いの南の方に目をやると、夜月の逆光でその大橋の影を写している様が僅かに見えた。

 

「ってことで、よし! ここらで泊まるか、もう本格的に暗くなっちまったからなぁ」

 

キキーマはダルババを停めると、さぁ、夕食の準備だ! と腕を捲くって意気込んでいた。

 

 

**************************

 

 

キキーマは荷台の中へ窮屈そうに入って材料を吟味してる。

 

それはというのも、普段は幾らかスペースがあるダルババの荷台だが、サーカワの郷を立つ前に人々からの手厚い送迎と共に、魚類を中心とした食材を頂いてて、今ではそれが荷台の大半を占拠していたからだ。

 

だからここまでの旅路は、荷車の積荷に押し出されそうな程前側の縁で足を投げ出していた僕とミーナに並んで、壁に吊り下げられていたギョロ目のお魚達が僕らをずっと凝視していた。

もちろん生きてないけれど、ずっと視線を感じちゃってて何だか今日は肩が凝る一日だった。

 

「うん、コレにするかな、いたみが早そうだし」

 

とそんなギョロ目のお魚達の一群を掴んでは、キキーマが戻って来る。

 

「今日はオレがご馳走するからな」というキキーマ。

 

キキーマが張り切ってるのも、普段はミーナ中心で僕とキキーマが手伝い役だからだ。

 

これはガサラを発った時から、ミーナの料理番の時が一番おいしいという事が次第に判明してきて、キキーマからミーナへと徐々にシフトしていったからなのだけど、今日はキキーマの得意料理を振舞ってくれるらしい。

 

 

 

「ごちそうさま~、美味しかったよキキーマ!」

 

「へへへっ、そうだろ、そうだろ!」 とキキーマは自慢げに胸をそらす。

 

 

その手馴れた感じで仕上げてくれた料理は、本当に美味しかったけど、素材に余す部分など無いサーカワ御当地料理の「魚の目玉部分」だけはさすがにお断りしちゃった。

 

「ああもったいない、頭良くなるんだよ」って言われても、あの形はちょっとね……

 

 

******************

 

 

夕食を終え、文字通り「川の字」になって眠りについた僕たち。

 

 

河原で野宿なんて、夏のバーベキュー以来だな~なんて、僕はつい気楽なことを考えてしまうのだけど、それは今の生活が平和な証拠でなによりだと思う。

 

 

それに荷台に詰まれてた新調したての寝具はとてもあたたかかったく快適だ。

 

内側がファーで外側がなめし革みたいな手触りのこの毛布は風にも強く、保温性が高い。

ここら一帯の気候に適してるものを選んでくれてあったのだと知ると、さすがキキーマだって思う。

 

 

その毛布と日用品が詰まったリュックをちょっとした枕代わりに、僕は仰向けに、星空をながめていた。

 

 

……旅慣れてはきているけどこうやって星空を見ながら過ごすのは、いつも新鮮だ。

 

PRGを実写化するとこんな感じなんだろうな~、なんて事も思ったりもして……

 

 

「……」

 

 

 

何だか寝付けなくって、寝返りを打つと、火の側へ近い僕はしばらく、そのパチッパチッと燻りだした焚き木を見つめた。

 

 

真っ赤になった木炭や、その周囲のコブシ大の石組みが、ほんのりと赤くなって、いつまでも熱く、炎が出てないのに不思議だな、と僕は思う。

 

お父さんと、キャンプ行ったときに、このやり方教わったのに……

 

なんでだろう、思い出せないや……

 

 

そんなことを思うと、ぼくは不意に込み上がるものを知る。

 

 

怒りなのか、悲しいのか分からない、けど、いやな気分がした。

 

だからもう、それ以上そんな気持ちが入ってこないようにと、ぼくは皮製の毛布を頭まで被せ眠りに着こうとする。

 

 

(もう寝よう今日は)

 

(……もう、寝よう)

 

目をつむり、小さくそう呟いた。

 

 

 

 

もぞもぞ……

 

 

もぞもぞ……と毛布の擦れる音がして、しばらくすると僕の毛布の上にポスンと小動物が乗っかっているような感触がしだす。

 

焚き木の方へ向いてた僕は「川の字寝」の真ん中で寝てるミーナの方へ寝返りを打つと、やっぱりミーナの尻尾だった。

 

器用に僕の毛布へ潜り込もうとその先っちょをヒョコヒョコ動かしてる。

 

「起きてたの、ミーナ。 何かさがしもの?」

 

「うん。 ワタルの手」

 

「えっ、うん僕のでよければ……」

 

「というか、それじゃなきゃイヤ。 な~んてね」

 

僕は毛布の外へと手を差し伸べた……腕に触れる河原の風が冷たい。

 

と、焚き木の発するオレンジ色に染まるその尻尾がそっと手に巻きついて、ミーナの羽織っている毛布の中へ招かれていった。

 

バトンタッチみたいに不意にキュッと握られるミーナの手はいつも、僕を暖かかく迎えてくれる。

 

「ワタル、大丈夫? なんか目が赤いよ?」

 

「ううん、あくびしたからかな」

 

とっさに大口をあけて誤魔化す僕に「そう?」と、それでも何だかミーナは心配そうに僕を覗きこんでて、でもそれ以上の詮索はせず、

 

「私、久しぶりの野宿だよ、ワタルは?」

 

って話題を替えてくれた。

 

「うん。 僕もいろんな人に助けてもらっちゃって、なんとか野宿せずに過ごせたよ。 ミーナも久しぶりの屋外で眠れなくなってる?」

 

「ぅん、そうかも……でも、明日の事で寝付けないのもあるかな」

 

「そっか……」

 

 

……。

 

 

ふふふっとミーナが何か思い出したのか、くすぐるような小さな笑い声をたてる。

 

「ちょっと前まで、私たちこうやって手を繋ぐのも恥ずかしくって、ワタシなんかそれだけで顔を真っ赤にしちゃってたね」

 

「僕は、今でもちょっと恥ずかしいよ」

 

「そお? それってちょっとうれしいかも」

 

眼を細めてミーナが僕の指をやさしくなでる。

 

ミーナが崩れゆく洞窟から助けてくれたあの時。

 

いつまでも手を握って離さなかった僕らは、カッツさんにからかわれて慌てて手を離したんだっけな……

 

僕は思い出す。 あのときの事を……

 

ミーナもその事を懐かしんでいるのだろうか、感触を確かめるようにその手にきゅっと力を込めていた。

 

 

 

「ふぅ。 やっと暖まったね、ワタルの手」

 

その想い出をなぞる絡ませていた指は、しっくりくる形でおさまり、呟くとそのまま「オヤスミ」といった感じに安心そうに静かに目を閉じた。

 

右手だけ暖かいそんな状態で僕は、今日は寝返り打てそうも無いな~なんて思いながらも、ミーナの温もりが嬉しい。

 

そうだ、今の僕には寂しい時、支えてくれるヒトがこんなにもすぐそばに居てくれるんだって。

 

 

僕も握られた手の親指で、ミーナの手の甲をなでながら目をつむる……

 

 

ミーナの手……いつもあったかいな。

 

 

……いつの間にか心が休まってる。 

 

ミーナのおかげだよ。

 

 

ありがと。 ミーナ……

 

 

時たま、ぱちりと聴こえる焚き木の音がいつの間にか子守唄になってきて

僕はそのままスッと眠りに入って行った……

 

 

*****************************

 

 

次の日、「この周辺は俺の庭みたいなもんさ」と支度を終えキキーマは言う。

 

 

「ほら上流にあるあれ、昨日は暗くて見えづらかったが、あれが大橋だ。 見る限りは災害にも遭ってなさそうだし、大丈夫そうだろ」

 

キキーマのガイドで(まぁ、今までもそうだったけど)川沿いの平坦な場所を選んでダルババを走らせているとその途中で僕たちの行く先に、ふとなにやら荷車で押す人影が見えた。

 

獣人の男のヒトと、寄り添うように歩く女のヒトそして、子供までいる。

 

遠いので良く見えないが、長旅をするにはあまりにも大変であろうそんな手押し車で積んでいるのは家財道具や食料か?

 

少なくともキキーマのような行商人には見えないその人達は川に平行して内陸へ進んでいる。

その先に在る土地といえば確か、ルルドだ。

 

(もしかして……)ふと、僕はスンシさんに教えてもらったハルネラの事がよぎった。

 

ハルネラ、人柱、それが終わるまで、逃げ隠れるために旅しているのだろうか。

 

僕の知らされた情報だって僕が一番最初ってわけじゃないし、御触れかなにかが出回っていたのだろう。

 

サーカワでも近いうちその様な内容の集会があってもおかしくないし、ひょっとしたらすれ違いだったのかも知れない。

 

そうだ、今いる二人にも伝える機会がなかった事だ。

 

「んん? 何しに行くんだろうな」

「キキーマ、多分僕が知っている事だと思うんだ」と普段見掛けないであろうその光景を訝しげに眺めているキキーマとミーナに僕は申し訳なさそうに成り行きを話したのだった。

 

 

************************

 

 

「そうか、だったら仮定だけども説明が付くよ。 あそこには天文台があるからなぁ!

星読みもたくさんいるし、どうやったらヒト柱に選ばれずに済むかなんてアドバイスを授けてもらえるかもしれないってところか」

 

「じゃぁ、僕たちもルルドへ行く? 僕だって、キキーマやミーナが人柱になるなんて耐えられないよ」

 

「そんなこといいんだワタル、それよりも、本当なのか? その……旅人も人柱になるって話は」

 

「そうよっ、何いってるのよワタル! 自分だけ助かれば安心だなんて思ってないし、それにっ、それにワタルが、二分の一だなんて……私、怖いよ。 信じたくないよそんな話」

 

ミーナの目は半分泣きそうになりながらも、ぶんぶんと頭に浮かぶそれを振り落とすように首を振った。

 

「とにかく急ごっ! 何が何でも宝玉みつけなきゃダメッ!」

 

「おっ、オイ! ミーナ」

 

言うより先にキキーマの持つ手綱を奪おうとするミーナを僕は「危ないからっ!」と慌てて抑えていた。

 

そういうやり取りがあって、しばらく僕はミーナをなだめる役に徹していた。

 

ミーナだってここで怒っていても理不尽な態度と分かっているのだろう。 その湧き出た感情をどこに当てていいのか分からず、ただ熱くなっていて普段引っ込んでいる鋭い爪が出っ放しだった。

 

 

そして再びランカに向かう、その道のりも陰鬱な旅になっていった。

 

人柱なんて話題の、しかも自分の身に起こるかも知れないソレに対抗出来る明るい話題なんて、あるはずもなく、ミーナも落ち着いてくれたのはいいが不安げな眼差しで僕に視線を投げかけているのを感じる。

 

それにすら自分の無力感と結び付けてしまう僕に出来る事は、泣かない様に必死に俯いて目をそらして、考えないようにする事だった。

 

僕はもの凄く後悔している。限界のヒトがハルネラで選ばれる事だけ伝えればよかったのにと。

 

僕だけの、旅人だけの問題である2人目の人柱の件なんて話すから…。

 

いや、違う。

 

僕は後者の事を知って欲しかったんじゃないか!

話して少しでも楽になりたかった、知って欲しかったんだ。

 

知って同情とか、慰めとか、欲しかったんだと気づく。

 

(今まで、精一杯頑張ってきたじゃんか。やるべき事はやっている、大丈夫さ絶対)って、そう言って欲しかったんだ。

 

僕は、弱い……

 

 

だから僕は自ら言う。

「……大丈夫!」

 

「ごめん、ミーナ、キキーマ! 嫌な心配させちゃって、楽になりたくって言っちゃったけど、さっき話せて大分気持ちが落ち着いたから、大丈夫!」

 

 

あえて明るい顔をしてみせて淀んだ空気に、その二人に宣言みたいに言った。

 

「おう。 ワタル、オレも付いてる!」

 

と振り返ったキキーマが答えてくれて、

 

「ワタル、もっと頑張って急いで、ミツルってヒトに大差つけなきゃ……承知しないんだからッ!」

 

荷台の上のいつものポジションにいたミーナが怒った時のような声色でそう言い放つと、ギュッと僕にしがみ付いてはじわりと僕の胸元の衣服を湿らせはじめて、未《いま》だ引っ込んでいない爪が背中の衣服に引っかかっていた。

 

ミーナ……。 涙を堪えていたのは僕だけじゃなかったんだ。

 

 

「そうさ、ヴィション分の1を気にするよりも俺らは、2分の1をサポートするに決まってるだろっ」

 

 

「キキーマ、ミーナ、ありがとう」

 

 

僕は、涙を抑える事が出来なかった。

 

 

 

 

*******ボグ地区へ**********

 

 

「あ~、なんだか懐かしいな」

 

林と草原を足して2で割ったくらいの避け易い木々の間を縫って走っていた時、今のところ変化の無いそんな景色にミーナは目を細めつぶやいた。

 

「何が?」と僕はミーナを覗いたら、ミーナは目を閉じて顔に当たるそよ風に深呼吸していた。

 

「――うん、空気がね。 懐かしいかんじするの」

 

暗い過去があるとしても、故郷は故郷だ。 たまに顔を持ち上げて木々の間からキラキラ注ぐその光を浴びているような仕草で想い出を感じている今は、きっと、楽しい想い出に違いない。

 

「そっか。」

 

邪魔しちゃ悪いなと思い、僕も外に目をやる。

 

囁きともとれる葉の揺れ擦れる音たちが速度に合せて後ろへと流れて行く、荷台に揺られながら僕も、いつの日か山道をドライブに連れてってくれた時の感覚をかんじていた。

 

「ミーナ、そろそろだよな。」

 

「うん、だいぶ近いよ。」

 

キキーマの土地勘と、ミーナの故郷を感じる嗅覚で、どうやら迷う心配も無さそうだ。

 

 

ダルババ車に揺られ、僕らは順調に目的地へと歩みを進めた。

 

 

 

*********ランカ検問所にて**************

 

 

 

僕らが着いたのは昼と夕方が移り変わりそうな時間だった。

頭上の青空を見上げ、そのまま視線を下ろすと遠い景色が紺色に染まってきている事が分かる。

数分前、まきばの風景にありがちな「ようこそ、ここからランカの町です」と申し訳程度の丸太の枠で区切られていた柵沿いに進むと、これまた素朴な造りの門があった。

 

一応門番のヒトが立っていたが、簡単な検門を済ませるとあっさり入れてくれる。

別に怪しい者じゃないけど、今のご時世にしてはちょっと拍子抜けした。

 

でも、それだけここの治安が安定している証拠なんだろうな。

 

軽装備の皮製の兜から覗く青炭色の瞳、唯一防具から露出している縞模様の尻尾の滑らかな毛並みは、隣にいるミーナととてもよく似ていた。

 

その声色からして男の成人のヒトだったが、ほかの獣人さんよりもおおよそ2周りも小さい感じ。

 

だから、なんだか新鮮な気分だ。この門番さんが僕が知る限り出会った2人目のネ族という事になるのかも。

 

いや、ヴィジョンの街中でも少しはすれ違ったかもしれないけど、年上でも見た目僕と同年代か、トローンさん系なヒトと比べちゃって、まだ子供の獣人さんなんだって勘違いしてたかも知れないな。

 

なんて言うか、トラの赤ちゃんが成猫に見えるみたいな感じかな?

 

ふと、ミーナと旅の途中何気なく交わした会話を思い出した。

 

 

「獣人さんって一括りになってるけど何ていうかミーナみたいなコ、少ないね」

 

ガサラで散策したとき、何気なく雑踏を見渡しながら、そう尋ねる僕に、目を細め寂しそうに、

 

「うん、私たちネ族ってほとんどが北大陸の移民だしさ…… ランカに移り住んでの歴史は浅いって聞いてるし、

ちょっとした部族みたいな少数派の私たちってあまり理由無く旅立ったりしないんだ……。 だから」

 

「……だから?」

 

 

『めちゃくちゃ“レア”なんだから私っ!』

 

 

って両手を腰に当てて、エヘン!と冗談っぽく言ってたっけ。

 

 

でも本当、ヒトは見た目によっても判断されやすい。 背の低い獣人であるネ族は数の多さで権力をかちえたアンカ族はもちろんの事、トローンさんのような体格の良さで圧倒する事もないと思うし、別にそのヒト達を非難してる訳じゃないけど、立場上、権力というものには恵まれていない印象をもってると思う。

 

現世だってそんな感じの事は起こっている。 僕の知る範囲だけども男性と女性の違いとか、社会科で習ったことのある人種差別なんかとか……そんな歴史と同じ空気がある気がするんだ。

 

でもここへ来てホッとしちゃったな。

 

争いもなさそうな、人柄が出てるってかんじの町だし。

 

そんな安堵している僕の横に座っているミーナが

 

「着いちゃった……」

 

と、ガタゴトと宿を探す荷車に揺られ、僕の肩に寄り添うのだった。

 

 

 

*******宿を探して*********

 

 

農園だろうか。

遠くの町を背景に背たけの統一されている小振りな植物が区画され、僕らの走る車道の両脇に広がりを見せている。

 

「そういやぁ、グランデラ川を境に、もうここはボグ国に入ってたんだなっ!」とキキーマ。

 

「えっと、商業が盛んなんだっけか? で、ボグの首都がランカだったよね確か。 でも今のところ、首都ってイメージからは程遠い景色だけど」

 

っていうか、どこかしら凛とした声になってるキキーマは、商業の町ってことで商売っ気の血が騒いでるのかな。

 

 

「そうそう。……あれ?ワタル詳しいね、何で?」

 

と隣に座ってるミーナが僕の発言が意外だったらしく口ヒゲをピンと立たせ反応していた。

 

「いや、ミーナから話してくれたじゃん」

 

「ありゃ、そうだっけ?」

 

ミーナは指で銀色のヒゲをつまんで、荷車の天井を見上げて回想する。

 

「ほら、ひいお祖父さんが、農産物で成功した事とか……いろいろ」

 

「あぁ身の上話、したね~」

と思い出して小恥ずかしいそうにうんうんと頷いていた。

 

そんなミーナ越しの背景が変わりはじめ、少しずつ民家や商業用テントを僕らの乗せたダルババ車が行き過ぎる。

 

農園地帯から抜けたのだ。

 

ふと、さっき通り過ぎた農園の幾つかも、ミーナの家系のモノだったりするんだろうなとか思ったり。

 

「そういえば ……お嬢さんだったんだよね、ミーナは」

 

「だったって言わないでよ~! 女の子はみんないつでもお嬢さんとして見て欲しいものなんだよ~!」

 

(わかってないな~ワタルは、ホントにがっかりだよ)とばかりに肩を落とす仕草をする。

 

「あっ……ごめん!」

 

何気なくで言ってしまったその言葉が凄く失礼なことだったと反省した。 それに、今のミーナの状況ならば尚更だったのに何言ってるんだ僕は。

 

「えへへ~ わかったら、よし。」

 

とミーナは逆に、失言にアタフタする僕の頭にポンッと手をのっけた。

 

配慮のなかった言葉にも感情的にならずに明るく対処するミーナのやさしさというか、なんだか僕より大人だなってそのとき感じた。

 

「お嬢様~そろそろ着きますよ」 と、二人の様子を見てたキキーマはニタリとして、割って入った。

 

「キキーマ、わざとらしいのも嫌われるよ~!」

 

そんな冗談を言うキキーマに「もうっ!」ってミーナは頬を膨らましていた。

 

 

***********************

 

 

夕日が山に落ちて行くと、頭上の青空は紺色からみるみる黒へと移り変わっていく。

 

建物が増えてきても、行過ぎる景色は飲食以外の商店は閉まっていて何だか味気ない。

 

 

「閉まるの早いなぁ」とキキーマも辺りを見回してぼやく。

 

「そう?……あっでも確かに寝るの早かったかも! ほらさ、農業してる人多いから多分、日中は凄くにぎわってる筈だよ。 たのしみ~!」

 

とミーナは久々のランカの地にテンションが高まってきたらしく

「あっ、そうだ!」と身を乗り出すと、

以前話した父方の親戚の家に一緒にお世話になろうと提案した。

 

「きっとワタルもキキーマも泊めさせてくれるって、とっても広いんだから!」

 

「う~んでもなぁ、やっぱり夜遅くに失礼だし、ミーナも挨拶は明日にした方がいいだろ」

 

「あっそっか、そだね。 夜中にバタバタ上がり込んじゃうのもなんだしね」

 

 

――って事で最寄のモーテルに泊まることになったんだけど、なんだかキキーマが変に気を使ってくれていて、「俺のイビキはどうやらうるさいらしいから」なんて言いながら一人だけ個室にしようとする。

 

確かにあの時、ミーナがそう言ってたけど…… それを気にしてくれてるのだろうか?

 

いや多分、というか絶対どちらの場合もイビキの件とは別の意味合いがあるって、そんな空気が嫌でも伝わってくるから僕は慌てて

 

「いいってそんなっ、あっそうだ、節約しなきゃ!」

 

とすかさず3人1室に訂正。

 

なんかちょっと責めるような視線が……痛いんですけど。

 

まぁ、誰とはいいませんが……

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