File0 強襲
「君に新しいパートナーを紹介しよう」
「パートナー?」
朝早くから叩き起こされ大して頭が起きていない状況で上官に連れてこられたとある一室の前。作戦中は小隊を組んで行動するはずなのに方針でも変わったのだろうか。
「入りたまえ」
促されて入った部屋には、小柄でやけにフリフリが付いたドレスを着ている女の子がちょこんと行儀よく椅子に座っていた。
俺を見るなり椅子から立ちカーテシー(貴婦人の礼)をした。とても育ちが良いどこかの令嬢みたいだがまさかこの子がパートナーとか言われたら反応に困るぞ。
「初めましてご主人様。私はTAR-21タボールのフランシスカと申します、以後よろしくお見知りおきを」
「は…TAR-21タボール?」
思わず聞き返してしまった。タボールと言えば最近ガリルやアメリカのM16に置き換わる次期主力ライフルとして配備が進んでいるブルパップ式のアサルトライフルだが、こいつは寝惚けて言っているのか、本気で言っているのか。
「これはどういうことですか…?」
率直に上官に聞いてみた。さすがに状況が呑み込めないのは寝起きのせいだとは一概に言えざるを得ない。
「あぁ、技術者連中が作ったというか育てたというかタボールの擬人化だそうだ。身体能力は一般兵より数倍上を行くようだ」
「詳しくは分からないのですか?」
「技術者連中しかわからないだろうな、他にもフランシスカのような者がいるらしいが…」
その瞬間足元が大きく揺れ、同時に爆発音がした。非常事態のサイレンが鳴った。近くで装甲車のキャタピラ音が複数と足音が複数した。
「何だ?!」
『基地内に敵が侵入!これは演習ではない!繰り返す…』
「そんなことはわーてる!ちくしょう、一体何が起きた?」
近くで銃声がした。すぐそばで戦闘が始まっているようだ。窓から装甲車と戦車が通るのを見た、うちの物ではない。それに別の方向から複数の足音、少なくとも4人はいる。
「ここに来るようだな…」
上官がジェリコ913を取り出して構えた。俺は丸腰だ、あってもナイフぐらいか。フランシスカは何もせず扉を見ていた。ショットガンで蝶番を壊す音がする。
「全員動くな!武器を捨てて投降しろ」
扉が破られると同時に黒ずくめの連中が押し入ってきた。MP5を構えている、特殊部隊だろうか動きに隙がない。
「ちっ…」
言われる通りにナイフを足元に置き蹴り寄越した。しかし上官はそれには従わなかった。むしろその銃口を俺に向けてきた。
「諸君、ご苦労だ。ヨシュア二等軍曹にはここで死んでもらおうか」
「…あら、私を差し置いてご主人様に死ねと申しますか?ならばあなた方を道連れにしてご主人様と死にますわ」
それまで黙っていたフランシスカはそう言うとスカートの中から、恐らく太股に隠していたと思う手榴弾を取り出した。俺の脇を抱えるように抱き付いてきた。
「さようなら、皆様」
手榴弾のピンを外して投げ込んだ。黒ずくめと裏切った上官は狼狽えたが溶接機の閃光がしただけだった。単なる閃光弾だ。そうと分かればフランシスカと一緒に逃げる。フランシスカを連れてガラスを突き破る。
「…何とか逃げられたようだな」
「そうですわね」
さすがに丸腰で戦えるわけでもなく、とりあえず無我夢中で逃げてきたがまだ戦闘をやっている基地内だ油断は出来ない。
ここは倉庫郡で予備の小銃や弾薬が置いてある。どうやらここらには敵はいないようだ。戦闘をしている場所は兵舎や指令部があるエリアだ、敵の目的は武器弾薬じゃないなら基地そのものかフランシスカを狙っているとしか考えられない。
「ご主人様?」
「ん、何だ」
「何を考えているのですか?」
フランシスカは顔を覗き込んできた。
「これからの事だ」
「どうするのですか?」
「味方と合流しよう、まだ生存者がいるかもしれない。まずは武器を探そう、さすがに丸腰じゃ戦えない」