※この作品はR-18です。

仮)好色平凡な中年オヤジがガンダムワールドを行く   作:触手スライム

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今回の3連投稿はこれがラストでござる。


第5話 連邦のモビルスーツ

 サイド3を出立して、2日。

 通常の航路とは異なる、日の光が月に遮られ暗闇の只中を行く”初雪”、”べんてんまる”は、大きく見え始めた月に向かい進路を変えようとしていた。

 

「船長。

 あと2時間で、グラナダへの進入コースに乗ります」

 

 操舵員からの報告に、船長席にいるタズサはPDAを操作しながら予定航路の到達時間を確認した。

 当初の遅れを取り戻すために、加速時間を長くとった事が功を奏したのか本来の予定時刻に間に合いそうであった。

 

「そうか、船の操船にはなれたか?」

「ええ、もう手足のように動かせますよ」

 船長として僅かな休憩以外、船長席に留まるタズサに、通信員の口も軽くなっていた。

 

「それは何よりだ、それにしても何事も無く到着できそうでよかった」

 軽い気持ちでタズサがそう言った時、警報が鳴り響いた。

 

「どうした!」

「左舷客席から微弱ではありますが、何かが発信されています。

 ・・・・・・いえ、補足されました。

 識別信号ありませんが、船影から連邦所属のレパント級ミサイルフリゲート艦、その後方にコロンブス級を確認」

 増えた電子装備の為に、同様に増やさざるを得なかった3人のレーダー担当が、報告をしながらメインパネルに相対位置を映し出す。

(なんでこのタイミングで、信号が出てかつ識別信号なしの連邦艦艇に出会う?

  普通はパトロールあたりだろうに・・・・・・)

 

「急ぎ、客席に副長と武装した人員を向かわせろ。

 ”べんてんまる”にも通達しとけ、総員戦闘配備。

 隔壁閉鎖、宇宙服[ノーマルスーツ]着用、相手の位置報告を急げ」

 タズサの指示に、慌ただしく動き始めるなか宇宙服[ノーマルスーツ]が配られていく。

 

 月が陰になった暗闇の中、姿勢制御の青白いスラスターが、”初雪”と”べんてんまる”を照らす。 

 

「相手側、進路が正面にて交差します。

 直線距離およそ20キロ」

 レーダー担当からの呼びかけに、タズサは宙図をみる。

 報告のない、あるべき情報を得る為、通信員に呼びかける。

「メリダ。

 相手からの呼びかけは?」

「ありません」

 通信員のメリダは操作盤を弄りながら、返事を返すのみで僅かな異変も聞き逃さないようにしていた。

 

(まちぶせか?

  本気で戦闘になるのかよ。

  まだ、船同士の戦いなんて演習すらしていないんだぞ)

 タズサは船橋にいる面々や、この数ヶ月生活してきたスラムの仲間のことで頭がいっぱいになりかけていた。

 

「レーダー反応途絶!

 レーザー走査に切り替えます」

「電子装置、感落ちます。

 強力な電子妨害または、ミノフスキー粒子が散布された模様です!」

 

 それでも、船橋に詰めている航海士、レーダー員、通信員、機関員は2ヶ月という中で、できる限りの知識を与えられており、それが今いかされていた。

 一瞬の間があり、それは船長からの指示を待っているかにも思えた。

 

(くっそ、ままよ!)

 

「有視界戦闘!

 船外カメラと赤外線、レーザー照準を組み合わせろ、訓練どおりにやればいい」

 タズサはそう言い終えると、船長席の右操作パネルから僚船への秘匿回線を開く。

 ノイズが走りながら、指示を出している様子のコロロが、船長席のパネルに映し出された。

 しばらくすると、コロロの音声が聞こえてくる。

『待たせたね。ボス』

 タズサはその声を聞いて、落ち着いているように思え不思議に思ったが、先に片付けるべき問題を口にした。

「この時期に、問答無用で戦闘態勢に入り、ミノフスキー粒子の散布が疑われる。

 ・・・・・・これはプレイヤーがいると思うか?」

『間違いなくいるね。

 ”初雪”からの警告を受けてすぐに確認したんだけど、電子機器が異常を訴える直前、PDAに戦域警告がでたよ』

 タズサは忘れていたと、慌ててPDAを見れば、あまり流れないログに相手戦域に突入したと出ていた。

「ゲームじゃないのに、戦域作成ができんのかよ」

 呆れとも、信じたくないという思いも含んだ声が漏れ出る。

『あたし達は、動かなかった時間がながいからね。

 あるいはコロニー内なら、掲示板がみられたんだけど』

 タズサの呟きに、コロロが同意するような言葉を投げかける。

 

「となれば、戦いは避けられんな」

『うし、先手必勝!

 先に行かせて貰うよ!!』

「ちょっとまて!」

 先程までの落ち着いた雰囲気は何だったのかと問い詰めたい位に、瞳を輝かせ勢いに乗せた声が耳に響くと、2本の指を額の前で綺麗に揃えたコロロは映像を最後に通信を切る。

 

(あの馬鹿。

  俺らはともかく、他の連中は死ぬって事、理解してんのか?)

 そう考えながら、前を見たときだった。

 

 光の柱が、船の脇を通り過ぎるのを見てしまった。

 その光は船体右コンテナから余裕を持って通り過ぎたが、船の異常を知らせる警告が鳴り響く。

 それが、メガ粒子砲であると理解するのに時間は掛からなかった。

 

(モビルスーツはまだ出てこないはず、敵船を沈めるのが先、次の優先目標は戦闘機か)

 乾ききった唇を潤す間に、そう考えると次の言葉は自然と出ていた。

 

「パイロットに出撃指示、敵船を確実にしとめるように。

 それと遠距離からの視認妨害に、煙幕を断続的に打ち出せ。

 回避運動!左下方60度、機関最大」

 

 タズサからの指示に、操舵士は舵を左下方へと60度傾ける。

 傍ら、通信士が伝達事項を伝える声と、役に立たないレーダー員が空席の戦闘指揮席へと滑り込む。

 

 船が重たげに沈みこむなか、再びメガ粒子砲が船体上部を通り過ぎ。

 その後から、ミサイルが迫り来る。

 

「対空迎撃開始します」

 光に比べればはるかに遅いミサイル群に、レーザー索敵が反応した様子で数こそ少ないが火線がそれらを捕らえて迎撃していた。

「よし!

 対デブリランチャーも迎撃に使え、あと追加されたロケットランチャーからも煙幕弾を投射しろ」

「はい」

 勢い使えるものは何でもつかえとばかりに、タズサから指示が出ると戦闘指揮席から威勢のいい声が返る。

 

「”べんてんまる”増速、フラッグを掲げました。

 旗はジオン国旗に弁天髑髏の海賊旗。

 突撃戦のようです」

(あいつらー!

  初戦闘とはいえ、浮かれているんじゃないか!?)

 通り過ぎるメガ粒子砲の位置から、感覚にしたがって回避指示を出す合間に聞こえてきたそれに、タズサは怒りを覚える。

 

「続けて、MS発[はつ]を確認。

 数4、本船左舷側を掠めます」

 少なからず武装していた”初雪”が盾となりつつ船と船の距離を開けていたはずが、1キロ以内にまで接近する行為に、タズサは肘掛に拳を打ち付ける。

 その合間にも、船が元いた場所にメガ粒子砲とミサイルが降り注ぎ、船橋は常に迎撃の光に照らされていた。

「あのっ馬鹿野郎!

 向こうのMS隊に、自船の直援に1機残せと伝えろ。

 念のため、シーマにも伝えとけよ」

 怒りに任せた言葉に続けて、指示を出すが、直後レーダー員からの悲鳴があがる。

 

「敵機、本船上方30度に人型3を確認。

 後方下方左60度から同じく人型、数不明。

 正面0度、推定ボールタイプ12!」

 

(冗談じゃない!

  この状況で、なんでMSが出て来るんだよ)

 

「優先目標変更!

 本船MS隊は、敵人型迎撃に向かわせろ」

 レーダー員の報告から次のタズサの指示が出るまでに、時間は掛からなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 少し時間を遡る。

 MSコンテナでは、数多くの整備員が蜂の巣を突いた様に飛び回っており、各ハッチにパイロットが搭乗すると、計器チェックが行われていた。

 しかし、赤紫に機体の一部を塗り替えたMS-05Bザクは静かだった。

 

「外部電力による反応炉機動を確認。

 反応炉、出力安定。

 機体チェックプログラム正常。

 レコーダー正常。

 ・・・・・・模擬戦以来か、本当に連邦とドンパチやるなんてね」

「シーマ姉さん、どうです?」

 その声と共に開いたままのコックピットの外から、整備士が顔を覗かせる。

 

「問題ない、やっとくれ」

「わかりました」

 シーマは呟きを聞かれたかとそっけなく整備員に答えたが、相手は何事も無かったようにコクピットのハッチを閉じ、すぐに機体に繋がれたままのケーブル接続を解除に向かった。

 

「ふう。

 あれは、エレカの整備していた子だったか。

 大丈夫なんだろうね。

 ・・・・・・なんというか、独り言が増えた、か」

 機体の準備ができたところで、整備員が飛び交うなか動かす訳にもいかず、格納庫に備え付けられた、管制室からの指示を待つしかなかった。

 管制室といっても、鉄骨を溶接し通信ケーブルを伸ばした上で、外部をカメラで見られるようにしただけの場所で若い整備士が詰める不人気な1人席である。

 

 薄暗いコクピット内で、シーマは暇を持て余しパイロットスーツでない宇宙服を着ているために、操作パネルまで手が届くかを何度も確認していた。

 

 やがてぐぐもった耳障りな音が、シーマの宇宙服のヘルメット内に湧き出る。

『シーマ姉さん。

 武装は、ハイパーライフル、ヒートホークだけですが、装着後、コンテナ前面に機体を移動してください』

 

 通信の強制入力の後、シーマがカメラをチェックすると、メイン、サブ共に人影はなくなっていた。

「あいよ」

 短く答えると、何度もシミュレータで行った手順に従い武装を機体に装着する。

 

「予備弾倉は、なしか」

 本来おいてあるべき場所に、予備弾倉が見当たらず、ミスなのかそういう判断なのか分からなかったが、今回は従うことにした。

 

 所定の位置についた所で、通信パネルに映像が入る。

『状況を説明します。

 現在、本来とるべき航路上に、ミサイルフリゲート艦1隻、コロンブス級1隻を確認しています。

 敵はミノフスキー粒子を散布、メガ粒子砲とミサイルにて攻撃をしかけていますので、優先目標はミサイルフリゲート、コロンブスとなります』

 何度も顔を合わせたことがある船橋員となったメリダの説明がひと段落する。

 

「やれやれ、寝起きを襲うなんてなんて礼儀しらずだぃ?」

『『まったくだ』』

 シーマの軽口に、他の機体からも笑い声が出る。

 

『姉さん。船長が怒ってるんですよ。

 ”べんてんまる”が先走って敵艦に突撃をしていて、MSも護衛なしの全力出撃したようです。

 それも、ジオン国旗に髑髏[どくろ]みたいな旗を出したんですよ』

 

 メリダの呆れた表情と声に、シーマの顔は含み笑いを浮かべる。

 

「僚船が先走ったんじゃ仕方が無いさ。

 それよりも、態々[わざわざ]出撃を教えてやるなんて馬鹿は、あとでなし付けに行かなきゃね。

 ところで、いつまで待機なんだい?」

 

 シーマの問いに答えはなく、メリダが振り向いているのが通信パネルで確認できた。

 

『・・・・・・すみません。

 新しい指示がでました。

 本船上方に推定MSと思われる人型が3つ。下方に1つ。

 敵艦周囲に、ボールが確認されました。

 本船MS隊は、人型の相手を優先しろということです』

 先程とは異なり、メリダは真面目な顔に戻っていた。

 

「おや、おいしい獲物はあたし達の物か」

 シーマはその舌を唇に這わせ、獲物を狩る獣へと変わっていく。

『武運を』

「あいよ!

 シーマ・ガラハウ。ザク出るよ」

 

 コンテナ正面ハッチが上下に開放されるのと、ロケットランチャーの一斉射は同時であった。

 しばらくすると、ミサイルと衝突したのか花火が暗闇にきらめく。

 

「煙幕弾も利用しているのか。

 ・・・・・・いいね」

 

 シーマはペダルを踏み込むと、ザクのスラスターから青白い噴出が爆発的に始まり、貨物コンテナから機体が踊りだす。

 すぐにシーマは、ペダルの踏み込みを小刻みなものに変えて船の上方へと向かう。

 

「ベルトの締め付けが、いちいち煩[うるさ]いね」

 パイロット用ではない宇宙服に、食い込んだままになるベルトが煩わしいのか、体を僅かにゆすりながら呟いた。

 カメラの映像を確認しながら、機体を旋回させていると貨物コンテナから続けざまに3機が出てくるのを見る。

「本当に、アーチェ隊は全員で向かったのかい」

 シーマは、時折やってくる光の柱に映し出された”べんてんまる”を遠目に、呆れた様に呟いた。

 ”べんてんまる”は、相手の集中砲火を浴びているようで、その姿を衆目にさらし続け、対して牽制としか思えないミサイルのみ”初雪”に来ているように見えていた。

 

 また、徐々に航路から外れているらしく太陽が見え初めていた。

 

『姉さん』

 突然入った通信に振り向くと後続のトップ、レイホウ、サクラのザクが自分の周囲で編隊を組み始めているのに気がついた。

 うち、1機だけ黄色ベースに縞模様がついていて、機体にこれでもかと偽装が施されていた。

 

(ああ、作業用の偽装を外す時間がなかったか。

  今日の予備機は、レイホウの担当か)

 シーマはとっさに色付の機体を確認すると、日割りを思い出していた。

「よし、レイホウはその機体だから残れ。

 他はついてきな!」

 

 レイホウの返事を待つことなく、シーマは機体を急加速させる。

 ほぼ静止状態からの急加速で、ベルトが食い込み始める。

 シーマのたおやかな胸を上下から絞り出すように挟み込み、肩口から股下に抜ける金具が、宇宙服越しに女の急所を押さえつけ、思わず泣き言を吐きたくなる気持ちに歯を食いしばり抑える。

(固定する為とはいえ、本当に忌々しい・・・・・・)

 

 やがて、既に近くまで来ていたのか光点が大きくなる。

「来たよ!」

 意識したわけではないが、シーマはとっさに相手からずらすように機体を滑らせる。

 その寸秒後、機体脇を飛翔体が抜け、遅れたようにアラームが鳴り響く。

 

「不良品じゃぁないのかい!」

 とっさに回避が間に合ったものの、アラームなど役に立たないと思わせるものだった。

 

(通さないよ)

 まだ距離があったが、シーマはメインパネルから視線をずらし、ハイパーライフルが連射になっているのをちらと見ると、遠慮なくトリガーを引いた。

 ザクはその動きを追従し、機体を相手に対し90度に傾けると105mmハイパーライフを放つ。

 その火線を避けようと大きく動く人型が光にさらされ、その姿があらわになる。

 

 四角くのっぺりとした輪郭が特徴の頭部に、白と濃いオレンジを基本色としていて、四角い箱を組み合わせたようなそれは、確かに人型をしていた。

 それらは事前情報通り、3機編成をしていたが今の回避で大きく編隊が崩れ始めていたところに、トップ、サクラのザクからもハイパーライフルの射撃が行われ、その行き足を失っていた。

 

「ちっ、弾を無駄にしすぎたか」 

 シーマは汚くしたうちすると、単射に切り替える。

 

 トップ機が集結しようとする、白い機体の中央に飛び込むと、反転する相手にサクラが襲い掛かる。

 

「あたしの獲物は、この獅子のエンブレムにしようか」

 サクラ機が、敵の腕部を打ち抜くのを確認しながら、シーマは舌なめずりと共に、ヒートホークに武器を切り替え、動きの良い機体に目をつける。

 

 途端、シーマ機はそれまでの牽制から武器を切り替えながら、獅子のエンブレムをつけた白い気体に襲い掛かるが、獅子の機体はそれを砲身で受け止めた。

 

『貴様!そこをどけ』

 怒り狂った声が、直接回線を開いているのか聞こえてくる。

「おやおや、こんな状態でもそんな口がきけるんだねぇ」

 シーマは、近くの操作盤に手をやりながら、器用にペダルと左手で右操縦桿を倒す。

 それに答えザクが、相手の機体を蹴り上げると、最小の運動で右下から背後に回りこむ。

 

「ふん。一匹目」

 宣言と共に、ザクの手にしていたヒートホークが相手の胴を切り裂き、勢いをつけるために吹かしたスラスター推力に任せて、機体は宙[そら]を駆ける。

 

「今の機体、ジムもどきだね」

(あのシミュレータと酷似した外観、何なんだろうね)

 シーマは頭の片隅でそのようなことを思いながら、周囲に目をやる。

 

「・・・・・・おわりか?」

 カメラからは、他の2機が残りのジムもどきを落とす直前とわかり、”初雪”を探す。

 見失った”初雪”をカメラでしばらく探していると、船体上部ハッチあたりでの爆発が目に入った。

 

「ちっ、抜けられた!」

 その呟きは、火山のように吹き上がり続ける”初雪”の後部対宙機銃の曳光弾が答えだった。

(レーダーが死んでいると、こんなにも状況把握ができないのかい!

  生き残ったら、改善を約束させなきゃならないね)

 

「トップ、ここは任せたよ」

『はい。姉さん』

 最後まで聞かずシーマは機体を加速させる。

 目の前で火線と小爆発が起こるのを目にしながら、ハイパーライフルの射撃モードを連射に戻すのと、”初雪”周辺にいる敵機体を捕らえるのは、ほぼ同時だった。

 

「やれやれ、今度はご同輩かい」

 

 船の周囲にいたのは、白と赤で色付けされたザクとジムもどきが各1機であった。

 シーマは、有効距離ギリギリで、ジムもどきにハイパーライフルを向けトリガーを引く。

 それは、必殺の間合いであるはずだった。

 撃墜には至らなくとも当たったと、感じていたそれは瞬間裏切られ、相手は背を向けたまま回避を繰り返す。 

 やがて、ジムもどきから小爆発が起こったかと思えば、相手はシーマ機と対するように向かってくる。

 

「やろうってのかい!」

 ハイパーライフルを連射から3点に切り替えると、相手の機動を読みながら打ち合いが始まる。

 1射毎に回避を繰り返す中で、急所に確実に当てたはずがジムもどきの、腕や肩、脚部といった場所でガードされていた。

 対して、シーマのザクは肩口に数発あたり、徐々に姿勢制御が鈍くなり始めていた。

 

「くっ!なんなんだよこいつは!!」

 パネルにノイズが走るたびに、激しく揺さぶられ、被弾している事を知らせるアラームが鳴り響く。

 

 一瞬だった。

 ほんの少し機体から目が離れた所で、体が大きく揺さぶられ頭から熱いものが滴[したた]り始めていた。

 

 シーマのザクが相手との打ち合いの後、繰り返されたすれ違いの数瞬、ジムもどきの後ろで爆発がおこり、シーマ機は相手を見失う。

 そこを、ジムもどきが後方から手にしていた武器で格闘攻撃を仕掛け、ザクのメインスラスターに直撃を受けていた。

 

「こんちくしょうが!」

 その声と共に、何時失ったのか武器がない状態のまま、マニュアル卓から格闘を操作する。

 

 シーマ機は、MSのAMBACとスラスターを利用し、武器もないまま格闘を仕掛け、その拳を胴体中央に激突させようとするが、ジムもどきはザクの腕をつかみ、そのまま潰す様に圧力を強める。

 それを、ザクの手が抑えようとするが、ジムもどきに腕を押さえられてしまう。

 

 そこに、硬直が生まれた。

 

『きみの操縦技術には賞賛するよ。

 まさか、僕にここまでついてくるとはね』

「なめてんのかい」

 硬直の中、聞こえてきた少年のような声に、シーマは低い声で答えた。

 

『まさか。

 僕は、神宮司。 神宮司ケイだよ。

 今日のところは限界なので退避させて貰うよ、またね』

その声と共に、機体が大きく揺さぶられると、機体状況を知らせるパネルには両腕に欠損の表示がでていた。

 

「遊ばれたのかっ!」

 拳を割れた側面パネルに打ち付ける。

『姉さん』

 雄叫びともいえる声の後に続いたのは、聞きなれた戦友の声だった。

 

「被害は?」

『・・・・・・レイホウがやられた。

 外部装甲でコクピットへの直撃は避けたらしいけど、今は医務室で手術を受けてる』

 機体が揺さぶられるのを感じながら、シーマはその後も報告を聞き続けていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 MSを収容し終えた”初雪”は、まだ戦闘が続いていた。

 

「それで、鹵獲したのは間違いなくザクなんだな?」

『そうよ。

 各部表記がZIONIC社のものではなく、アナハイム・エレクトロニクスになっているけど間違いないわ。

 内部データからみるに、MS-05A相当になるわね』

「わかった。

 引き続きデータを集めてくれ」

 整備長を任せている、のののののからの報告を受け終えると、次の相手を呼び出す。

 

「副長、捕虜と容疑者はどうしている?」

『頭の痛いことに、容疑者はVIPが連れてきた男です。

 尋問には、あの方が立ち会うらしいので普通の方法でやります』

「わかった」

 ひと通り聞き終えると、用意してもらっていたコーヒー味の液体チューブを口に含む。

 

「連邦艦艇に見つかる前に、宙域を離脱する。

 煙幕弾をグラナダ方面に3本放っておけ。

 ”べんてんまる”との連絡は?」

「未だミノフスキー粒子濃度が高く、レーザー通信のみですが回復しています」

「宙域離脱を伝えたうえで、集合後に被害状況報告をほしいと伝えてくれ」

 

(ザク4機中、中破判定1、大破判定1か・・・・・・。

 敵MSはザニー4機、模造ザク1とすればよくやったほうだけど、どうやって回復させるかな?

 パイロットも医療用タンクベッドで全治1ヶ月、シーマは全治1週間。

 これで”べんてんまる”の被害がでかいと、無理じゃね?ってなるんだが)

 

 何も言わずに、船の被弾箇所への指示をパネル操作で出しながら、次々に出てくる被害報告や見積もりを処理するタズサを、船橋員達はちらと頼もしそうに眺めていた。

 

 




誤記修正

 白雪→初雪
 コルベット級フリゲート艦→レパント級フリゲート艦
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