仮)好色平凡な中年オヤジがガンダムワールドを行く 作:触手スライム
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2016.12.3 報告して頂いた誤記を修正しました。
左官→佐官
第1話 ログイン
うだるような暑さのなか、クーラーを効かせた部屋で真新しいバイザーを頭からかぶると、せんべえ布団に横になる。
(やっと始まるんだな。ガンダムオンライン楽しみだ!
安達達は連邦だろうか?
でも俺は、ジオンだな。そしてザクを駆って序盤イベント戦で昇格を目指そう。
いや自分が艦長を務めるというのも良いな……むぅ、いざとなれば両方してみるか!)
そんな事を考えている間に時間が経過し、午前10時を迎える。
それにあわせて、手に持っているコントローラーをONにすると、それまでの闇から明るい白い空間へと視覚が切り替わる。
『<System Standby……>』
目の前に広がる何処までも続く白い空間に、システム表示が浮かんでは消えていく。
『これから貴方は宇宙世紀に生まれ出でます。
まずはこの世界で生きる体を作ることになりますが、
説明をお聞きになりますか?』
声からすると知的な若い女性だと思われるが、そんな声が聞こえてくるとガイドカーソルと選択肢が表示されていた。
(ここは、YESっと)
『それでは、説明を始めます。
皆様を宇宙世紀へと転生させるジェネレーションシステムでは、皆様に一律50,000C[キャピタル]と成長ボーナス1,500pt[ポイント]が提供されますが、肉体構築、初期能力によりそのptあるいは所持金を差し引かせていただきます。
タイプ選択によっては、ステータス、能力あるいは資金の加減算が行われます。
また、能力初期選択をしなくとも、後天的に取得することが可能ですので、ご安心ください。
それでは、肉体構築をはじめます』
一通りの説明が終わると、性別を決める選択肢が現れる。
(なんで肉体って言葉にこだわる?
まあいいや、やっぱ男だろ)
性別を決めると、いくつかの肉体パターンだと思われるものが現れ、若々しく見た目の良い顔立ちをした肉体は、最低1000ptと消費が大きく、中年ないし初老のガデムやランバ・ラル、アサクラのようなタイプはピンキリだが平均500ptとお得になっている。
そして、容姿をいじる事を試すと10pt~100ptの消費で、Cで支払うと1,000C~10,000Cだった。
(いざとなれば、作り直せばいいか。
ここはお金とポイントを温存で)
そんな、打算の基に選んだのは、450ptのガデムタイプの中年男性で、そこに手を加えると残りのポイントは950ptになっていた。
(髭[ひげ]変えて、髪をふさふさにしただけでこれは無いだろ……)
時間をかけて作り上げたのは、ジオン公国のノイエン・ビッターを髣髴[ほうふつ]させる様な男だった。
最後に、肉体決定をガイドカーソルで選択する。
『本当によろしいですね?』
(Yes)
『本当の本当によろしいですね?』
(しつこいな……。Yes)
繰り返し確認してくるシステムメニューに辟易としながらも、あとでクレームが出ないようにという計らいかなと考えて、了承のYesを連打する。
『肉体構成……20%……60%………90%…Complete。
記憶、知識のコピーを開始……50%……80%……Complete。
初期身体能力、スキル選択をしてください』
(なになに、身体能力はわかりやすいな)
表示されている身体能力は、射撃、格闘、反応、守備、回避、覚醒、指揮、魅力、それとアビリティ、年齢だが、作ったばかりの自分の身体能力は、射撃(2)、格闘(1)、反応(1)、守備(2)、回避(5)、覚醒(-)、指揮(8)、魅力(12)、スキルなし、年齢(37)となっていた。
(いや、ちょっとまて!
たしか、各身体能力上限は100だったはずだから、これは低いだろう。
やり直しのコンソールはないから、作り直しは直ぐには無理か!
運営め……仕方ない、スキルをリストから選んで能力を増やそう)
スキルには不運とかいうのが存在し、成長ボーナス加算+1,000ptなんていうのもあったが、身体能力を1ポイント上げるのに50ptも必要になる事もあり、4時間近く迷ったあげく次のような能力になった。
身体能力
射撃(2)、格闘(1+1)、反応(1+3)、守備(2+1)、回避(5)、覚醒(-)、指揮(15)、魅力(12)
スキル
肉体加齢防止(-750pt)、女難(+100pt)、女たらし(-50pt)
(なんか、プレイする前から疲れたのだが……。
まあ……考えるのは止そう、せめて女たらしと女難スキルで女性NPC限定でも、出会いと士気が向上してくれれば!)
そんな淡い願いを込めながら、完了を選択する。
『初期所属陣営とタイプを選択してください。
なお、各陣営のタイプは人口割合により選択を制限することがあります』
(公式サイトに載っていたやつだな。
まあ、余程片寄らなければって!?)
陣営とそこに属する基本タイプ、基地指令や艦長等の戦域指揮官、ガンダムワールドの花形とも言えるパイロット、生産系の技術者の人数と割合を見ると一瞬で余裕が消えた。
連邦の総プレイヤー数は約90,000人、戦域指揮官は1割程度だろうか、パイロットの割合が5割に残りが技術者になっていた。
対して、ジオン公国は約20,000人、戦域指揮官は極僅かで、パイロットが7割、残りは技術者だ。
両陣営共に、総数は増加し続けていた。
(まさかと思うけど……)
陣営は、ジオン公国を選択するが、選択可能なタイプは戦域指揮官を除いて色が反転しており、選択できない状態だった。
(やってくれたな!
しかし、気持ちは分かるし艦長でもモビルスーツに乗れればいいから、タイプを選ぶ手間が省けたと考えるか)
そして、ジオン公国の戦域指揮官を選択し、名前を入力する。
『シン・タズサ……登録完了しました。
タイプ、戦域指揮官。初期資金に100,000Cを加算。
経歴を構築……Complete。
記憶操作……Error』
最後の瞬間に、赤い文字が並んだがすぐに周囲の風景が代わり、ログも追えなくなる。
◇
ゆっくりと、目の前が白から多彩な彩を放つ世界へと変わる。
「さて、ここは何処かな?」
そんな独り言を呟きながら、携帯端末を取り出す。
この携帯端末は、この世界での身分証明等も兼ねたPDA(Personal Digital Assistant)と呼ばれている端末であり、コロニー内であれば何処でも必要な情報が引き出せるスペースノイド、ルナリアン必須のアイテムである。
(PDAはプレイヤーの情報閲覧やコマンド実行端末としても使えるって公式に書いてあったが、こういうことかな?
U.C.0076の1月5日か、さすがに直ぐ開戦って訳じゃないのか?)
時系列を思い出していると、突如PDAからメール着信音が鳴り響き、同じ様に周囲にいる人間たちもPDAの音を止めつつキョロキョロとしていた。
(なんだ? 周りの連中は同輩かな)
そう思い、良く相手を見ていると斜め上にうっすらとPの文字が浮かび上がる。
同じ事をしていたのか周りの様々な服装の人間達も、わかりあった様な愛想[あいそ]笑いを振りまいた後、PDAを見るのを見てタズサは同じようにPDAを操作しメールを読んだ。
『件名:この世界はもう1つの真実
内容: ようこそ、この異世界へ。
まずは諸君らを歓迎しよう。
既に、気が付いているかも知れないが、君達が持っているゲームとしての認識で、ログアウト。つまり、この世界からの脱出は出来ない。
また、この世界の地球人類の消滅を除けば、死も無い。
君達がログアウトするためには、我々の用意した存在などから、地球人類を守り抜く事だ。
君達の世界では、君達の存在は消えているが、君達が勝利条件を満たせば、再び彼方に送り届けよう。
尚、こちらでの地球上の破壊は君達の世界にも影響を及ぼすので是非頑張ってくれたまえ』
タズサは、メールを何度も読み返しPDAのログアウトを探すが、そこはグレーに反転しており、いくら押しても反応はなかった。
やがて周囲は異様な雰囲気となり、鳴き声や叫び声が聞こえはじめるが、そんな中で徐々に集団ができ始めていたのだが、タズサはそれに気がつかず再度PDAのメールをみたまま固まり動けずにいた。
タズサが背中に熱を感じるまでに、それ程時は必要としなかった。
「わりぃな。どうせ死なねぇんだ」
そう聞こえてきた方へと顔を向けると、いくつかの集団が自分と同じように動かずにいた人々へとやり方は異なるが、心臓あるいは頭といった場所を銃で打ち抜いていた。
やがて目の前が、徐々に白くなると風景がきえていった。
◇
どれほど時間がたったのか、タズサが目覚めたのは、先程までの狂乱など嘘の様に中世風の町並みではあるが、いわゆる日常という雰囲気が漂う、大通りに面した細い道だった。
子供を連れて歩く親子に、街を行き交う自動車、見上げれば空を横切る太い柱を中心として雲が広がりその向こうに大地が広がっていた。
(おれ、さっき撃たれたんじゃないのか?
いや、これが死ねないってことなんだろうか)
念のためと、自分のPDAや衣服を見ても狂劇の後はみあたらず、ただ1日が経過していた。
タズサは自分でも意識しないままに、考え事をしながら人の流れにのると、赤レンガ造りの喫茶店らしき店が目に入りそこへと入る。
「いらっしゃいませ」
その声と共に老紳士がカウンター越しに声を掛けてきた店は、クラッシックな雰囲気をかもし出し、棚に置かれている瓶入りのコーヒー豆もその情景に彩を添えていた。
タズサは、店内を見渡し、人気[ひとけ]の少ない奥まった席に座るとメニューを手に取る。
(こんなところは、アナログだな)
妙な関心をしながら、メニューを眺めていると、視界に水の入ったグラスが置かれた。
「ご注文は何になさいますか?」
先程は姿が見えなかった少女が、エプロン姿で注文をとりに来たのだが、タズサは思わず見とれていた。
「お客様?」
「あ、ああ。アイスコーヒーを1つ。
それと、サンドイッチを頼む」
「はい。アイスコーヒーとサンドイッチですね」
タズサは、その短いやり取りではあったが、その光景や漂ってきた僅かな香りに、人が動いたときにできる風を肌に感じて、初めて自分がここにいるのだと感じた。
そして、本当の意味で恐怖を覚えた。
(この戦い、負ければ本当に死ぬかもしれない。
目の前にいる人たちも、いやもしかしたら……)
考え事をしながらPDAの情報を検索し、U.C.0074.1からの新聞記事を斜め読みし始める。
(PDA便利だな。俺らの世界で使っていた携帯と同じだな)
そんな事を考えていると、いくつかの記事で目が止まる。
要約すると次のような内容だった。
0074.08.08 宇宙移民者への扱いに対して、緩やかな行政委譲を目指していた
連邦政府内の穏健派がその政権基盤を失い議席数を大きく失う。
それに伴い、連邦軍部内でも人事異動と部隊移動があった模様で、
ルナツーからレビル中将、ティアンム中将、ワッケイン少将らの
部隊が月面、フォンブラウンへと異動する見込み。
0075.10.24 フォンブラウンに、連邦艦隊が駐留する事となり、大部分の区画が整理され
グラナダへの強制移住が決定されるも、移住先の受け入れ許容人数を、
はるかに超える人数である為、グラナダ行政府はコロニー建造が続く
サイド3のジオン公国に移民受け入れを打診した模様。
0075.12.31 兼ねてから打診のあった、フォンブラウンへの連邦軍駐留に端を発した、
移民者受け入れを、ジオン公国行政府は承諾し、来年の1月中旬から
まだ受け入れに余裕のあるコロニーへと順次移民者を受け入れる事となった。
(ふむ……レビルがフォンブラウンにいると、グラナダ攻略が難しくないか?
それに、ティアンムも来ているとなると各サイドに攻める前にフォンブラウン攻略しないと、何処にも手が出せないぞ、ルナツーの事とか強硬派の動向は載ってないかな)
タズサはそう考えると、大見出し以外の記事を探す。
0074.12.20 連邦軍内の強硬派は、ジーン・コリニー中将をルナツー基地指令として
異動させる見通しで、彼の友人でもあるジャミトフ・ハイマン少将と共に
レビル中将、ティアンム中将らの貴下にない部隊を纏める模様。
(この2人というか、ジャミトフが来ている時点でルナツーとサイド7が他勢力で言うところのティターンズ勢力かな、しかし連邦艦隊って現時点だと方面艦隊やら、各サイドの防衛艦隊集めて、
戦艦50隻、巡洋艦200隻、小型武装艦艇600隻くらいじゃないかな?
だとすると実際にはどれだけの部隊が動くのか、さすがに一般の記事じゃ解らないな)
そこから先を考えているうちに、目の前に影が指した。
「相席いいですか?」
そう声を掛けてきたのは、前髪の一部を白と赤で染めた女性で、スリムな体型ながら出るところは出ている女性だ。
彼女は北欧系を思わせる美女で、髪の色とは裏腹にゴールドマリーのような刺々しさのない華やかさをふりまいている。
その彼女がジオン公国の佐官制服に身を包み、タズサの了解も得ないまま正面の席へと座り、先程の老紳士にダージリンをと注文をした。
「ふふっ。
そう警戒しないでほしいですね」
(誰だ?プレイヤーじゃないな。
プレイヤーなら、さっきの連中みたいに見ていればPの文字が浮かぶはずだ)
「お忘れですか?
私が学生時代に、教官の元で艦船運用を学んでいたブリシア・エーメリーです」
ブリシア・エーメリーと名乗った女性のことや、教官をしていたという事に記憶がないタズサは内心で慌てた。
(何のことだ?
PDAに記録があるか?
やばいやばい、とにかく話をあわせて……)
「そういえば……
そう呟きながら、死角となるテーブルの影からPDAで情報を検索すると、自分の経歴が記載されていた。
0052年 士官学校卒業。ムンゾ自治共和国防衛隊に入隊。
0063年 コロニー護衛艦隊のミサイル護衛艦砲雷長に着任。
0067年 共和国防衛大学校学校艦船指揮教官に着任。
0072年 ジオン公国防衛大学校学校にて論文を発表。同年、軍を辞職。最終任官は少佐。
0072年 公式では消息不明となり、グラナダ強化人間研究所にて後天的遺伝子改造を受ける。
0076年 サイド3第3番地コロニー「マハル」に放棄される。
(なんだよこれ、やばい経歴になってやがる)
「思い出していただけたようですね」
ブリシアはそう言うと、僅かに微笑みをうかべた。
タズサは、からからに乾いた喉を潤すためにコーヒーをひとくち飲むと口を開いた。
「もう、教官をやめて3年もたつからな。
それでなにか用事か?」
「はい。
いまは軍籍にありませんが、退役士官として予備役に入っているタズサ教官に会えて私は運命を感じておりますわ」
タズサの言葉に、微笑みながらブリシアはそう返すと、ちょうどそこにウエイターがやってきて彼女が注文したであろう品を置いていった。
僅かに視線をウエイターに向けた後、よくは見えなかったがかるく手を握るしぐさを見せ、向き直ると紅茶の入ったカップを傾ける。
その仕草はどこかの令嬢を思わせるが、先程の行動からここは諜報関連の店のようだとタズサに思わせた。
「私は今、公国におけるとある方の派閥に入っております。
今はまだ説明できませんが、代表は広く人材を欲しているのですが、特に連邦にそれと思われずに公国の船舶数を増やす方法について思慮されているのです」
「それで?」
ブリシアはいったん言葉を区切ると、指先でカップソーサーをいじるしぐさを見せた後、やおら口を開いた。
「ここから先を聞いたら、戻れませんがそれでも?」
強い視線が、タズサを射抜いた。
(そもそも、最初の時点で逃がす気はないだろこいつ。
しかしどうするよ、このまま何も動かないでいれば最悪予備役から戻されて、史実のルウムかサイド2攻撃にまわされるか?
いや、そもそも、独立を宣言した後の突撃機動軍か宇宙攻撃軍になるかもきまっていない。
どっちもできれば関わりたくないな)
しばらく考えた上で口が自然と開く。
「・・・・・・かまわない」
タズサは、気がつくとそう答えていた。
その答えに、暫しブリシアはタズサを見つめていたが、やがて頷いた。
「公国の各省では、5年以内に連邦と開戦するであろうと想定して動いていますが、肝心な公国軍の戦闘艦艇数は、建造中の戦時型宇宙巡洋艦を含め、さらに甘い見積もりでも連邦の方面艦隊と同数が良い所だろうという認識であり、補給等を担う補助艦艇に関しては戦時徴用でまかなうものとして試算しています。
しかしながら、それでも不足する為、小型のシャトルや連絡艇も徴用されると懸念しております。
その場合、国民生活を賄うだけの物資の輸送量が完全に不足することが明らかになっているのが現状です。
過去の大戦でも似たような事例がありますが、公国軍がどう動くかはいまだ未知数である為、現状を鑑[かんが]みて、徴用を避ける為に公国政府、公国軍が共同で人員、資源、軍事物資の輸送を専門とする機関つくることになりましたの、結果ダミー企業が多数生まれましたが、その一翼をタズサ教官に担っていただきたいのですわ」
「つまり、民衆が強く記憶している34から40年代にかけて発生した、資源不足によるインフレや通貨危機が再来するだけでなく、戦域の拡大による国力の低下をできるだけ防ぎたいということか」
タズサは、ブリシアからの話で思い出した宇宙世紀の歴史の分岐点とも言える、ラプラス事件に次ぐ、U.C 0034の資源枯渇によるインフレと、それに引きずられた通貨危機の設定を思い出していた。
そもそもは、この時期まで製造業も新たなコロニー開発のため、連邦政府と民間出資のコロニー公社からの発注で経済的に潤っていたが、第一次移民が終わりを見せたときに、資源の調整を実施した連邦政府への不満がもとで、ジオニズムが生まれたわけであり、連邦との開戦を行ったが為に同じ状態になることは、今は少数である反政府組織だけでなく、新たな勢力、組織を生み出しかねないと考えられた。
「ご理解が早くてたすかりますわ。
その上で、何か聞きたいことはありますか?」
「さっき、一翼をといったが、具体的に何をさせたいんだ?
俺1人じゃ何もできんぞ」
「ええ、それは当然のことですわ。
私共としては、これから作るダミー企業のうち1社に入っていただき記録的には3年前に創業ということに致します。
実際に輸送等の依頼を、軍民問わず行っていただければそれで充分です。
当然、船舶の購入などにも口添え可能な範囲で後押ししますし、人員についてもこのコロニーの人材は余っておりますから教官のご自由にしていただいてよろしいですわ」
「その企業に所属する船舶は俺の船……、いや1隻だけなのか?」
「まさか!
面倒な初期の事務作業は、可能な範囲でこちらの人員が行いますので、教官は社長兼船長として自分の船を保有し、活動していただいて、より大きな会社にしていただきます。その上で、来[きた]るべき時に必要となる大小様々な船舶を増やしていただかなければ困ります。
理想としては、来年までに1000隻は保有していただきたいところですわ」
タズサはその言葉に一瞬唖然とし、アイスコーヒーをひとくち飲むと再び話を続ける。
「ずいぶんな話だな。
俺の資金はそれなりだと思うが、それでも船を動かすには人、物資、燃料も必要になる。
やってみる価値はあるが、其方[そちら]からも人を出してもらいたいものだな」
「船は、マハル内のジャンクギルドにいけば横流し品が手に入りましてよ。
人員は士官学校の卒業生から、兵学校までの卒業生、果ては民間人までお好きに斡旋所で雇用していただいて問題ないですわね。
ただ、こちらからの人員を出すとすれば目立たせるわけにいかないので、教官の船にのみという形でよろしいのかしら?」
「今はそれでいい」
ブリシアは、自分の端末を少し弄[いじ]るとやがて顔をあげた。
「わかりました。
では、人員はあとで連絡を入れるとして、この契約書にサインを」
そういって差し出されたのは、赤い表紙にジオン公国を示すドラゴンの国旗が描かれているもので、開くと特殊機関への所属、および代表として祖国のために尽くす等々と書かれた文章があった。
タズサが、そこにサインをいれると、ブリシアも連名でサインを行う。
「とても良い商談ができてよかったですわ。
できれば今度会うときは仕事抜きであいません?」
「そうだな。期待しないでまっているよ」
ブリシアは席を立ち、店の死角のほうへと向かい姿が消えた。
(あれでよかったのだろうか?
最善だったのだろうか)
最初に頼んだアイスコーヒーから、3杯目となるコーヒーを飲みながらタズサはPDAをいじっていた。
突然現れた人物、なんとか誤魔化したが自分の経歴、そして受けてしまった大きな依頼。
全てが彼を悩ませる。
そして、PDAに2通の情報が送られてくるとそれを眺めるしかなかった。
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送信者:不明
件名:昇進通知
シン・タズサ 殿
U.C 0076.01.06 をもって サイド3 153番地「ツクヨミ」
ツバキ警備会社 社長への就任を命ずる。
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送信者:コロニー管理局
件名:【管制連絡】
シン・タズサ 殿
U.C 0076.01.06 サイド3 153番地「ツクヨミ」宙ドック 121553の利用を許可す。
ジオン公国宇宙航行法 特例3項に基づき、サイド3の各コロニー湾ドッグ
および、周辺への直接入港は認めらない。
よって、物資搬入口からコンテナおよび人員を輸送されたし。
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(ツバキ警備会社って、ダミー会社の名前か?
まあ、いい加減胃がもたれたし、MAPにあった工業区のジャンク屋にでもいくか――いやまずは、日用品から揃えよう)
店を出たタズサは、再び日常という空気の漂う世界を歩き始めた。
初回、どうでしたでしょうか?
説明文が長すぎる感じはしたのですが、何度も読んでいて、理解できる最小限にしたつもりです。
また、ご意見や誤字などありましたら連絡を下さい。