仮)好色平凡な中年オヤジがガンダムワールドを行く 作:触手スライム
かつて、コロニー建造ラッシュ時代に栄華を極めたサイド3の工業区画は、見張りがいない居住区画との間に形ばかりとなった隔壁や、コロニー外壁内を通るモノレールを残し、その多くは不正居住や店舗の魔窟となっていた。
「ほぅ、こんなところに店があるのか。
これぞスラムって感じは、まったくしないのな」
声の主はゴシックロリータに身を包んだ少女であり、その後にはモノレールの地下駅から出てきたタズサ一行が続いていた。
残念そうな声を上げたのは、バファリンであるが安全の為、コロロに手をつながれているので、背伸びしたお子様という目で見れば雰囲気が良く似合っていた。
「それはそうよ。
水に空気まで管理されて初めて住める環境になるわけだし。
もし、地球と同じようなネズミの死体が放置されてそこらへんにあったり、汚れた水があったら、こんな密閉空間じゃすぐにバイオハザードが起こるわよ」
リツコがそう言うと、他の面々は「へー」とか、「そんなものかぁ」など思い思いに返した。
そんなやり取りをしているなか、タズサは1人PDAを操作しながら、場所を確認していた。
(さて、このあたりには2つの組織があるって聞いているが、果たしてどっちがお迎えにくるのかな?
駅は中立地域。でもそこを出ると・・・・・・)
タズサが、場所の確認をしている間にも、見た目が女だらけというのは目を引いたようで、お約束というそうな台詞[せりふ]を吐くであろう一団が道をふさいだ。
「おい。ねぇーちゃん達。
そんな爺[じじい]と一緒にいないで、俺達と遊ばねぇか?」
「へー。
そんな台詞のナンパなんて初めてだ」
「いや、普通はこんなナンパしないでしょ」
「たしかに。
俺もあっちじゃ恥ずかしくて出来ないな」
その呟きは、ののののの、リツコ、コロロの順であったが、顔は微妙に引きつり、それぞれが武器を取り出そうとしていた。
「おい!
儂はシン・タズサと言うが、お前達はどっちの組合に入っとるんだ」
タズサが割り込むように、そう言うと声を掛けて来た男の1人がタズサに向かって言い放った。
「ああ?
爺、てめぇは引っ込んでろ!」
「そうか。
では、取引はレディの方にさせてもらうよ」
タズサがそう言って、銃を取り出すと他の面々を反対側の道に向かうように促した。
(強気でいかねぇと、これ危ないなぁ)
「ちっ。
てめぇ、客だったのか・・・・・・いいぜ案内してやる」
「なにか勘違いしているようだが、儂は決めたのであって交渉するつもりは無い」
(よくもまぁ、俺はここまで言えたもんだ)
タズサが内心では冷や汗をかきながら、相手が近づいてくるのにあわせて徐々に下がり、境界線を越えると何処からか背後に人が現れる気配がした。
「あっはっはっはっ。
ジョンスあんた馬鹿だねぇ」
若いが良く響く声が聞こえると、ジョンスと呼ばれた男は慌てたように立ち止まり、苦いものを口に入れた様な表情を浮かべる。
「シーマか。
そいつは、親父の客だ。
・・・・・・まさか横取りするのか?」
「おやおや、さっきの言葉を聞いていなかったのかい?
こちらの方はあたしらの島と取引するっていってんだよ。
レディに案内するのが筋さね」
ジョンスの問いかけに、シーマと呼ばれた女性はやたらと楽しそうに婀娜[あだ]っぽい声で返す。
しばらく睨み合いが続いたが、ジョンスが手を上げると男達の集団は引き返していった。
しばらく様子を見ていたが、相手が見えなくなるとタズサ達は漸くシーマに向き合い、その後に小銃や拳銃を構えた者達や、数台の装甲車が目に入った。
(こりゃぁ、相手も逃げるわな)
「さて、・・・・・・お久しぶりです。教官殿」
そう言って、シーマが敬礼をすると、つられた様にタズサは答礼で返した。
(また、知らない知り合いか)
「ああ、久しいな。
なぜお前さんが此処にいるんだ?」
とりあえず、話を続けようと尋ねたが、その問いかけにシーマの表情は強張る。
「いえ、教官のお陰で正規の士官として、暫く従軍しておりましたが、先日の辞令で除隊となり故郷に帰っておりました。
今は、この辺りを取り仕切るレディの下で食いつないでおります」
「まぁ、あまり詮索しないでおくかお互いにな。
すまないが、レディの所まで案内してくれないか?」
「はっ。
誰かエレカをまわせ」
タズサの言葉にシーマからそれまでの硬い表情が消え、瑞々しいまでの声で、周囲に指示を出す。
それらが終わると、シーマは怪訝そうにタズサ以外の面々に視線を向けた。
「・・・・・・所でそちらの方は?」
「ああ、儂の会社で一緒に働く事になったんだよ」
その言葉に、首をかしげながらもシーマは視界に入ったエレカに向かい、先導するかのごとく歩く。
タズサ達は、そのまま案内されたエレカにシーマと共に乗り工場の一番奥、湾ドックに近い工場跡に案内された。
「わるいけど、ここから先あたしはついて行けないよ」
「わかった」
シーマの宣言に、タズサはそう返事をすると部屋に入った。
一同が部屋に入ると、正面にある大型パネルに電源が入り、薄明かりの部屋を明るく照らす。
『よくきたな。
まずは、その部屋にある椅子に好きに座るといい』
映し出されたのは音声のみという字面。
その声に従うように、タズサがパネル正面に座ると、コロロ、リツコが左右に座り、他の面々は扉側に陣取った。
『では、早速商談でいいな?
いまは忙しいのでな、お互い闇取引に自己紹介は不要だろ』
「ああ、かまわない」
(声は渡辺明乃?
シェリー・クロムウェルみたいな声だけど・・・・・・まさかな)
タズサは、考え事をしながらも操作卓に自分のPDAを接続する。
『まず、そちらの要求を聞こうじゃないか』
「では、遠慮なく。
用意してもらいたいのは、コンテナ牽引ができる輸送船3隻、観測シャトル2艇、脱出艇兼用の20人乗りシャトル4艇。
モビルスーツ8機、これらを運用する人員450名と物資を3か月分。
大型貨物コンテナ3つ、貨客コンテナ3つ。
あとは整備機材一式」
タズサはそういいながら、端末へと対価を入力する。
『・・・・・・あれらにはあきれるな。
モビルスーツは、どこで知ったのか?』
「それは企業秘密ということで。
しかしながら、連邦いやアナハイム、他組織にも既に情報は漏れていると考えたほうがよいでしょうな」
レディと呼ばれる存在を意識して、タズサは画面を見つめる。
『話にならん。
船1隻、モビルワーカーは2機だな』
「ご冗談を。
そちらの労働者を雇用するのですから、発言力も強まるのでは?」
(事前の資料とは違うな。
試されているのか、吊り上げか?)
ややあって、音声のみだった映像が映し出される。
そこには、赤い髪に20台後半であろう油の乗った体躯、そしてジオン公国軍ではなく親衛隊の制服を着た女性が椅子に座ったままこちらを見ていた。
その隣には、しわがれた老婆が床に寝かされており銃口を向けられていた。
『時にタズサ少佐、最近軍内外で一年戦争という話が囁かれているのを知っているか?』
「いえ、そのような話は初めてですな」
(まずい、親衛隊にかぎつけられたか!)
『しかし、その存在は事実だ。
事実突如、あれらは発言をはじめ、部署によっては徒党をも組んでいるだけでなく、
何人かを取り押さえて、薬と女を与えてやれば枕元で面白いように語ったぞ。
ジム、ガンダムこれらに聞き覚えは?』
「なぜ、私にそのようなことを?」
タズサの問いに、相手は冷笑を浮かべる。
『この2年、フラナガン博士のもとへ時々会いに行っていた私が、変化に気がつかないとでも?
何よりそれを覚えていないことが証拠だな』
「・・・・・・さて、なんのことだか」
(やばい、フラナガンにいけるこの時期の親衛隊員は誰だ!?)
『ふふっ。そう怯えるな。
では、話を変えてやろう。
私はこの通り裏でスラムの連中を飼っているわけだが、今後に備えた方がいいことはあるか?』
「そう、ですな。
いま、一部のコロニーではモビルスーツ実験と巡洋艦の建造のため住民が退去させられています。
それは、艦艇数が増えればそれだけ増加するでしょう。
その中に、旧コロニー建造工場が多いマハルも含まれ、後3年内に退去が始められ、
ここはコロニーレーザーと変わるでしょうから、新たな受け入れ先を見つければ、発言力も増すのでは?」
その答えに、女は目を狐のように細くする。
『なかなか面白い話だ。
そうだな、船は2隻でどうか?
スラムの人員といっても特殊技能持ちは少ない、それに検査が終わっていない者もいるのでな』
「モビルスーツは?」
『8機つけてやる。
しかし、次からはもっと女性の扱いに気をつけねば、損失をこうむるぞ』
そういうと、女は楽しそうに笑う。
「そうかい。
受領できる船とモビルスーツのデータを」
『いいだろう。
おい、送ってやれ』
(準備ができているのか、これは乗せられた?
しかし、これ以上は無理そうだな)
つないでいた端末に受信したデータを、他の面々に転送すると確認を始める。
最初にでてきたのが、ムンゾ共和国時代の輸送船組合が発注した標準貨客船が1隻。
新造船のため、船籍、船名なしで対デブリ用のロケットランチャーが1基ついている船だ。
この船は、史実のヨーツンヘイム級の基にもなっているだけにコンテナ運搬船としても信頼できる。
しばらく、船とセットになっているコンテナや物資等を見進める。
次の船は異色異様といえた。
基は先の標準貨客船ではあるが、スクラップ扱いとなっていて、船籍、船名ともに抹消済み、機関取り外し済み、船体軍関係設備除去済みとなっていた。
そこから、船体図を閲覧すると船のあちこちが、歯抜けとなっているのだが、船体内部特に中心部に不自然な空間があった。
(なんだこれは?
秘密の部屋か、拉致のための特殊任務で利用していたんじゃないよな)
それ以降の情報では、先に要求したものが一揃えあったのは間違いなかった。
(ザクだなこれ)
データ上は、モビルワーカーとなっているがスペックでみるかぎりMS-05BないしMS-05Aといえた。
図面においても、その姿はそのままであるが問題もあった。
念のため、タズサがリツコやコロロに確認を取ると、見間違いではないと確証が取れた。
しかし、ちらりとパネルを気にしており2人の顔は青くなっていた。
「モビルスーツの武装がないのと、この船では航宇[こうかい]に出られないのは気がついているのか?」
『おや、船は2隻であるし、モビルワーカーも機定数だろう』
その言葉に、タズサの頭に血が上る。
「先の金額は船3隻分だ。
船の機関を含めた補充部品と艤装、モビルスーツの武装も入れてもらおう。
それに、人員の資料が無いがスラム出身でザビ家の影響に無い者にしてもらおう」
『それで?』
女は銃口を老婆から外すと、怪しい笑みを浮かべながらそれを取り出した布で磨く。
「先々のことは変化するが、近く連邦のサラミス級がサイド3でコロニーに衝突し、
食料プラントを破壊する。
その後、軍教練用コロニーで、連邦軍施設を士官候補生が占拠する事件が起こる。
その首謀者は、ガルマ・ザビのはずだ」
『ふっ。・・・・・・あれがか?
それを見定める試金石とするか、いやしかし士官学校には既に仲間もいるのだぞ、
仮に事実だとしても阻止されるのではないか?』
女は、何かを考えるように、首を傾けながらタズサを目で見ていた。
「なら、他組織のモビルスーツ鹵獲ならどうだ」
『連邦以外にも、戦力があるような言い分だな』
しばらく、女の視線が部屋にいた他の面々を見つめるが、皆すぐに視線を外してしまいタズサのもとへと視線は戻る。
『まあ、いいだろう。
私は近くグラナダに行かねばならん、その護衛として仕事を依頼するとしよう。
報酬の前渡しだ』
その言葉に続くように、新たなデータを受信する。
データには、モビルスーツの武装、105mmハイパーライフル、シールド、ヒートホークとあり、船舶の新型熱核ロケットエンジン、機関砲、ロケットランチャーが含まれていた。
(この女、何者だ?)
タズサは、考えながら先に提示した金額255,795Cを送金する。
それは相手に受領され、やがて物品などに関する複製できない権利データなどが受信され始める。
『それ以外にも、必要なものがあれば今度会ったときに交渉するとしよう。
さて、意外と有意義な時間だった』
それだけ言うと、パネルは暗くなり相手が切ったことを知らせる。
「おわった・・・・・・」
思わずでた声が誰のものだったか、しかしタズサは確かめる気はしなかった。
いまさらながら、購入時の明細です。
ムンゾ標準輸送船
単価 38,000C
数量 3
総額 114,000C
観測機
単価 2,000C
数量 3
単価 6,000C
脱出兼用移動ランチ
単価 1,000C
数量 4
総額 4,000C
MS-05B
単価 9,500C
数量 8
総額 76,000C
ZMP47D 105mmハイパーライフル
単価 500C
数量 8
総額 4,000C
ZHW28N ヒートホーク
単価 600C
数量 8
総額 4,800C
ZMP47D 弾
1ドラムあたり単価 10C
数量 16
総額 160C
保存食 1ヶ月300人分
単価 5C
数量 12
総額 60C
医薬品、輸血パック
単価 1C
数量 300
総額 300C
医療器具<リツコ指定>
単価 25C
数量 1
総額 75C
最新宙空間用医療ベッド
単価 10C
数量 20
総額 200C
MS・船艇整備機材一式
単価 1000C
数量 3
総額 3,000C
総合計 255,795C