他には誰もいない静かな図書室で俺と村上先輩の唇が交わる。
俺、村上先輩とキスしているのか?パニックになり過ぎたからか、一週して冷静になる。
村上先輩の唇、物凄く柔らかい。こんな感覚、初めてだ。病み付きになりそう。
数秒ほどすると村上先輩が唇を離す。
「……村上先輩、こんなことされると襲われても文句言えませんよ?」
「別に良いですよ。その代わり、私の秘密は誰にも言わないでくださいね」
そう言った先輩の表情は台詞とは裏腹に懇願するものではなく、むしろ俺を誘っているように見える。
こんな台詞をこんな表情で言われて我慢できるほど俺は出来のいい人間じゃない。
内心、いきなりの展開に少し怯えながらも右手を村上先輩の胸に伸ばす。
「――っ!?」
俺に衝撃が走る。
いつもの大人しい先輩からは想像できないほどの制服の上からでも分かる圧倒的な存在感。
あまりにも素晴らしい揉み心地に手が止まらない。いつまで揉んでいても飽きなさそうだ。
「ん、あっ……」
先輩も気持ち良いのか艶っぽい声を漏らす。
頬も紅潮しており、何とも言えないほど妖艶な雰囲気を醸し出している。
俺はごくっと生唾を飲み込むと覚悟を決めて、空いていた左手を先輩の制服の中に入れようとする。
ガタッ。
急に図書室の扉が開けられる音がした。
俺と村上先輩はこの音でおかしくなっていたテンションから元に戻って、恥ずかしくなりお互いに顔を真っ赤にしながら離れる。
……って、ラブコメみたいなことをしている場合じゃない!足音がこっちに近付いてくる!
今の状況を人に見られるのはマズイ。俺のモノはズボンの上からでも分かるぐらい大きくなっているし。
早く誤魔化さないと。
村上先輩は気付いたらカウンターに立っていた。運動は苦手なイメージがあったのに動きが速い。
俺は気付いたら足元に落ちていた本(抱き付かれた時に驚いて落としたのだろう)を拾って村上先輩に渡す。これで本を返却しているだけに見えるはずだ。いや、本当に本を返却しているんだけど。
「あら、あなた達。まだいたの?」
少し意外そうな顔をして現れたのは眼鏡をかけた英語教師の月白先生だ。
真面目そうに見えるが、どこか抜けており生徒から人気がある。
「補習のせいで本を返却するのが遅れてしまいまして」
俺は月白先生から股間部分が見えないように気をつけながら返事する。
薄い本では口止めで先生もまとめて犯すという展開もあるが、そんなことを現実でする奴はただの馬鹿だ。
現実は創作みたいに上手くいかない。もしやってバレたら退学だし、退学にならなかったとしても楽しい高校生活は送れないようになる。
「もうすぐ下校時刻だから用が終わったら早く帰りなさい」
「分かりました。ところで先生は何で図書室に来たんですか?」
「最近、下校時刻を過ぎても帰らない生徒が増えているから見回りをしているの」
そうだったのか。それは残念だ。
誰もいない図書室で村上先輩とあんなことやこんなことが出来るかと期待していたのに。もうそんな雰囲気ではなくなってしまった。
「じゃあ、村上さん。図書室の鍵だけはちゃんと返しておいてね」
「はい」
村上先輩が返事すると、月白先生は出ていった。
「ところで九条くん。本は借りていきますか?」
返却手続きが終わっていたようで月白先生がいなくなるのを確認してから村上先輩がそう聞いてきた。
う~ん、どうしよう。一応、借りたい本はあるんだけど。今から借りる気にはなれないな。
……いや、借りておこう。本は俺と先輩を繋ぐものだからな。
「すぐに取ってきますので待っていてください」
俺はそう言うと目的の本がある本棚に向かう。
何故か先輩と一緒に職員室に鍵を返しに行った後、何故か先輩と一緒に下校している。
先輩は電車通学だから駅までだけど。ちなみに俺の家は学校から徒歩二十分以内の場所にある。
何でこうなった?いや、特に理由はなく自然な流れでこうなったのは分かっているけど。
先輩と一緒に下校できるのは天にも昇る気持ちだけど、図書室の件のせいでお互いに顔を合わせられないでいる。
周りから見たら初々しいカップルに見えるかもしれないけど(見られていたら嬉しい)、本人達からしたらひたすらに気まずい。
ここは男の俺が何か喋らないと。
でも、何を喋ればいいんだ?図書室のこと?確かに気になるけど外で聞くことではないし。
じゃあ、本のことか?いつもならともかく今は盛り上がる気がしない。
……こうなったら思いきって家に誘うか?何をしているのかは知らないが俺の両親はちょうど仕事で海外に行っていて家にいないし。
……いや、それは無理だな。このタイミングで家に誘うとか下心丸出しだし、何より先輩の都合もある。先輩の両親もいきなり娘が男の家に泊まるとか言ったら心配するだろうし。
本当にどうしようか、と考えていたら意外にも先輩の方から話かけてくれた。
「……今日、九条くんの家に行ってもいいですか?」
「…………へ?」
え~と、先輩は何って言ったんだ?
落ち着いて考えてみよう。……先輩が俺の家に来る?マジで?
「今日は両親が帰ってこなくて一人なんです。……それに口止め料もまだ払っていませんし。駄目ですか?」
先輩が頬を赤らめながら上目遣いで言う。先輩、可愛すぎる!今すぐ押し倒したい!
正直、口止め料はキスとおっぱいを揉んだだけでも充分なんだが。それに最初から誰かに言うつもりはないし。
だが、そんなことを気にしている場合じゃない!これは一大事だ!
「駄目じゃありません!むしろ俺の方から誘おうと思っていたくらいです!」
「え~と……」
嬉し過ぎたせいでかなりテンション高めに答えてしまった。おかげで先輩が引いてしまっているじゃないか。
失敗した。
……まずは落ち着け俺。ここで興奮しても良いことはない。家まで待て。
「すみません。興奮してしまいました。とりあえず俺の家も今日は両親がいないので大丈夫です」
「そうですか……」
俺の言葉に先輩が気恥ずかしそうに頷く。
今後一生分の幸せを今日使っているんじゃないだろうか?そう思えるほどに幸せだ。
「じゃあ、俺の家はこっちなんでついてきてください」
俺は家の方向を指差しながら言う。
家に案内するまでの間、また無言になってしまったが、さっきまでと違って気まずさはない。
第二話終了です。
では感想待ってます。