---イッセー---
迷宮に潜って居る。
「サイラオーグ!イッセーの力量を考えて、ガードしなさい。イッセーのジャマよ!」
僕を護ろうとする気持ちの強いサイラオーグさんが、僕の前に立ち塞がり、攻撃が出来ない。そんな状況を見て、アスナさんから指示が飛んだ。
「そうだな。イッセー、すまない」
「いい?仲間の力量を覚えて!ガード仕切れなくても、攻撃のジャマになってもダメよ!」
問題が発生したら、直ぐに指示を出すアスナさん。アスナさんもそうやって、鍛えられたのだろう。僕とヴァーリはアウロス学園で学んだが、アスナさんはアウロス学園で学んだ経験は無く、違う鍛錬施設であるアルフガンの卒業生である。アウロス学園は基礎、理論に重点が置かれていたが、アルフガンは実戦教育だと言う。
「ヴァーリ!疲れたら、下がって回復しなさい」
「はい…」
「イビルアイ、ヴァーリの穴を埋めて」
「了解!」
「小猫ちゃん、拾えそうな魔石は拾ってね」
「にゃん♪」
そして、ミノタウロスの大群を殲滅出来た。
「少し休憩♪でも、索敵はしてよ!」
アスナさんは疲れているようだ。
「じゃ、折り返しで、後半戦は私が指示を出します」
って、ミトさん。指揮官は二人体制である。行きと帰りと一人ずつ。で、予備の指揮官はヴァーリだそうだ。
「じゃ、後半戦は祐斗君、アスナさんとツーマンセルでね♪」
高速剣技持ちのアスナさんの技を学ぶ為の配慮らしい。
「わかりました。アスナさん、よろしくお願いします」
「うん♪こちらこそね」
休憩していた僕達の耳に、ミノタウロスの咆哮が聞こえた。後方からだ。
「休憩は終わり、行くよ!」
ミトさんの声で、立ち上がり、走り出した僕達。誰かが襲われているかもしれない。急がないと…
---アイズ---
ティオナと潜った。レフィーヤを誘ったのだけど、まだ怠そうなので、二人で潜った。
「どこかのファミリアが潜ったのかな?あんまりいないな」
って、ティオナ。確かに、いつもより、魔物の数が少ない。殲滅しながら、進軍しているファミリアがいるのかも知れない。
これといった魔物に出逢わないので、帰ろうとした頃、ミノタウロスの咆哮が聞こえた。前方から聞こえる。誰かが襲われているかも知れない。
「ティオナ!」
「あぁ、ようやくありつけそうだな♪」
咆哮が聞こえた方へ急いだ。このフロアでは無かった。だとすると、相当な大声である。
「イレギュラー?」
「その可能性は大だ」
逸る心を抑え、先を急いだ。
「うわぁぁぁぁ~!」
壁から次々に現れるイレギュラーのミノタウロス。逃げ惑う、白髪の少年。確か、ヘスティア様の子供だっけ?
「アイズ、行くよ!」
ティオナに頷く私、風を纏い飛び出した。
---イッセー---
壁から次々に産み出されているミノタウロス。逃げ惑うベルさん…後衛陣の魔法が次々に撃ち出されていく。
「撃ち漏らしたヤツは、前衛陣で屠るよ!」
「「はい!」」
ミトさんの指示に返答し、飛び出して行く。
「フィアナ、壁を粉砕してみて」
「了解!」
壁に爆裂魔法が撃ち込まれ、壁が破壊されて行く。
「産まれ無くなるまで破壊して」
大方のミノタウロスを粉砕しきった後衛陣は壁を破壊し始めた。
---アイズ---
いきなりの爆風…吹き飛ばされる私とティオナ。上層の通路近くまで吹き飛ばされた。何?何が起こったの?目の前で、あの時の集団が、イレギュラーに襲い掛かっていた。魔法で大半を吹き飛ばし、あの白髪の子を救助して、壁を破壊し始めていた。残ったミノタウロスは、戦士達が屠っていく。
「何だ…無詠唱魔法だと…それも、ほぼみんな…」
無詠唱だけでも驚きであるのに、破壊力が凄まじい。
「撃ち方止めぇ~!」
指揮官の指示で、ぴたりと止む魔法。なんていう統率力。前衛陣が次々に屠っている。先発陣は確実に足を斬り裂き、動きの止まった魔物達を、後衛陣が確実に仕留めていく。役割分担がなされているようだ。
私のような、私だけでって、者はいない…それはそれで衝撃であった。
「大丈夫ですか?」
エルフの女性が近寄り、私とティオナに治癒魔法を掛けてくれている。これも無詠唱である。って、あのイレギュラー達をかいくぐって、私達の処まで来てくれたようだ。
「大丈夫…うっ!」
「あぁ、動かないでください」
背中が暖かい。背中を怪我したようだ。治癒の力で暖かく感じる。
「アイズ…大丈夫か?」
「うん…大丈夫…」
心配そうに私を見つめるティオナに笑みを返す。
「すまない、巻き添えを食らわしてしまったようだね」
指揮官の人が…やはり、イレギュラーをかいくぐって来てくれたようだ。
「どうだ、フィアナ?」
「骨まで行っているかも…」
「そうか…すまない。責任を持って、治療をするよ」
光に包まれた私。光が霧散すると、ダンジョンでは無い場所にいた。転移術…確か、高位魔法って聞いたことがある。
「悪かったな。僕の弟子達が迷惑を掛けて」
あの人が目の前にいた。俯せにされて、背中に治癒魔法を受けた。暖かい…とても気持ちいい…ゆっくりと瞼を閉じた。
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瞼を開けると、先程とは違う場所にいた。腹這い状態でベッドの上にいる。
「アイズ…大丈夫か?」
ベッドサイドにティオナがいた。心配そうに私を見つめている。
「2,3日、入院すれば大丈夫だ。骨は治した。神経も大丈夫だけど、安定するまで、動かせない」
あの人が治してくれたんだ…
「ここは医療系のファミリアなのか?」
ティオナが質問をした。
「フレイヤ・ファミリアの別働隊だ。だから、冒険系になるんじゃないか?ここでは、自前で何でも出来る様にしているが」
何でも…
「何でも?まさか、スミスもいるのか?」
「いるよ。当たり前だろ?前線で装備が壊れたら、居なかったら死ぬだけだぞ」
そうだ…剣が折れたら死が待っている…
「お前達、舐めすぎだろ?前衛二人だけで潜るって…」
舐めていた。こんな大怪我をするなんて…
「はぁ?お前達の魔法の爆風が無ければ、アイズは大怪我しないで済んだだろ?」
「ふっ…避けられないヤツが悪い。そもそも、コイツは風使いだろ?爆風くらい避けられないのか?」
ミノタウロスを倒すことしか考えて居なかった。まさか、別のパーティーが戦闘をしていたとは…
「なんだよ~!ちょっと待て!」
え?ティオナ…どうしたの?身体が動かせず、ティオナを視線で負えない。
---ティオナ---
私をじっとみている男性。
「なんだよ~!」
いきなり抱きつかれた。えっ?
「ちょっと待て!」
唇と唇が重なる。背中に腕が回り、男性の胸と私の胸が…気持ちいい…あっ!下半身に力が入らない。あの時と同じ…
何かが体内で蠢いている。天に昇る感覚である。水に浮かんでいる感覚…
気が付くと、アイズの隣のベッドに寝ていた。あれ?何時の間に…眠気…それも心地良い眠気…
---イッセー---
他のパーティーを巻き込んでしまった。それも、よりによって、団長のお気に入りの二人だし…
「爆風の生じる魔法は、不向きだぞ」
「すみません…ダンジョン内だと、そうですよね。他のパーティーを確認してからで無いと」
ミトさんが反省中である。後、撃った本人のイビルアイさんだ。
「二人とも初心者だから、どうのこうの言うつもりは無い。次回から気を付けろ」
「「はい…」」
凹んだ二人…
「団長、お連れしました」
アスナさんが、相手ファミリアの副団長のリヴェリアさんをお連れした。
「アイズとティオナは大丈夫なのか?」
「アイズは3日は絶対安静だ。ティオナは目が醒めれば、連れ帰っても大丈夫だ」
「ここは医療系のファミリアなのか?」
「自前で何でも出来る様にしているだけだ」
リヴェリアさん大好きな団長は、ぶっきらぼうに言い放ち、距離を取ろうとしている。
「で、ここの主神は?」
「フレイヤだ。何か、問題とか、文句でもあるのか?」
「いや、それは無い…戦闘に巻き込まれたと聞いたが、どんな状況だったんだ?」
「イッセー、説明をしてあげなさい」
僕はリヴェリアさんに説明をした。
「そうか…確かに避けられなかったこちらにも、落ち度はあるな」
「状況を判断せずに、見かけたら突っ込みって、危ないぞ」
「そうだな」
「ロキ・ファミリアでは前衛二人だけで、潜らせているのか?」
「いや、潜らせた訳ではない。彼女達の判断だ」
「まぁ、いいや。ティオナが起きたら、知らせる。豊饒の女主人で待っていてくれ」
「ここではダメか?」
団長に一瞬動揺した表情が…だけど、直ぐに無表情に戻った。心で葛藤しているんだろうな。
『イッセー、裏でみんなで賭けをしているぞ。団長が今日中に、リヴェリアを堕とすかどうかを』
って…不謹慎なことを言うジムさんからの念話。
「ここで待つのか?あまりいて欲しくない」
「都合が悪いのか?」
「抱きつきたくなるから、出来れば、あっちで待っていてくれ」
正直すぎる団長。そこは誤魔化すところでは?
『不器用な人だから♪』
って、ヴァーリから念話が届いた。それにしても…
「えっ…どういう意味だ?」
耳を真っ赤にしたリヴェリアさん。スゴい…あんな一言で、堕ちたらしい。
『見習っちゃダメだよ。団長の「女難の相」の為せる業だから』
って、エリザベスさん。それにしても…見習いたい…僕には無い能力だけど。
「どういうって…まぁ、そういう意味だ。ケダモノになる前に、本当に出て行ってくれないかな?」
リヴェリアさんのオーラにピンク色が重なっている。顔は無表情ではあるが、とても嬉しそうである。
「そうか…わかった。あなたが紳士の内に出ることにする。アッチで待っている」
リヴェリアさんが、ホームを出て行った。団長は自分の部屋へ転移して、逃げた…
「ヘタレだからな、団長は女性問題に関しては…」
って、ジムさん。リヴェリアさんに負い目がある団長。でも、本当に好きなんだろう。襲いたいくらい…
---リヴァリア---
初めてだ。私に抱きつきたいって言われたのは…私を前にして、ケダモノになりそうって言われたのも。彼は私が好きなのだろうか?ロキ・ファミリア内では、ババァとか母親とか言われている。歳の割りに酷い言い方をされることが多い私のことが…
彼を前にすると心が弾む感じがする。でも、そんな心がバレないように、無表情で通していたが、耳が熱かった。真っ赤だったのだろうか。
あの時、あの術を掛けたのは彼だろう。心の重荷が降りていく感覚、身体が軽くなって、天に昇るような感覚、そして、感じた事のない感覚…たぶん、ハイエルフである私が感じてはいけない感覚に思えた。
豊饒の女主人で待っていると、ティオナがやって来た。
「お待たせ~♪」
「怪我は?」
「無いよ。ショック状態だって。安眠したら治ったよ」
「そうか」
うん?ティオナの雰囲気がいつもと違う。なんでだ?
「あれ?リヴェリア、何か良いことでもあったの?」
「何故だ?」
「いや、表情が柔らかくなったようだ」
そうだ、ティオナも表情が柔らかくなったように見える。
「ティオナもそうだぞ。あのホームにいると、そういう恩恵があるのかもな」
話を曖昧にした。
---イッセー---
今日は午前中は、組手である。サイラオーグさんの攻撃を避けたり、受け流したりしていく。それが終わると、全員で受け身の練習である。昨日のティオナさん、アイズさんのようにならないように、咄嗟の場合の受け身を身に付けて行く
「練習を終わりたい者から、2メートル上より背中から落ちて」
それは、落ちて大丈夫になるくらい、受け身の練習をしろってことですね。誰も、飛び降り台に向かわずに、黙々と受け身の練習をしている。で、最初のクリアした者はヴァーリだった。
「そうだ、それでいいんだ、ヴァーリ。じゃ、クリアした者からランチにしていいぞ♪」
って…怪我してもエリザベスさんと団長がいるから、直ぐに治ると思うのだが、二度目が飛べないと思う。激痛はトラウマになるから。
で、サイラオーグさん…失敗。小猫ちゃんは成功。僕も成功。祐斗君は失敗…失敗組は案の定、2度目のチャレンジをしたくないようだ。
「時間制限だ。あと10分でクリア出来ない者も、ランチに行っていいそ!」
って、それは見放すってことだ。出来ない者に無理強いはしない団長。その代わり、出来ないって烙印を押される。それは、そういう局面は使わないってことだ。
タイムアップ後、祐斗君とサイラオーグさんは、ヴァーリに頼んで、練習につきあってもらうことにしたようだ。
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ランチは豊饒の女主人でだ。シルさんが忙しい時間帯なので、お店で食べることにしている。
「なんで…いるんだ?」
団長の目の前に、笑顔のリヴェリアさんが現れた。
「なんでって、飯を食いに来ただけだ」
ぶっきらぼうな言葉ではあるが、瞳が潤み、耳に赤みを帯びている。
『やっぱ、堕ちちゃったね♪』
って、ヴァーリ。確かに…「女難の相」の為せる業か。
「ここ、いいか?」
リヴェリアさんは団長と相席しょうとしている。
「だから…ケダモノになりそうだと…」
「なってもいいよ…うふっ♪」
『完全に堕ちているよ。今までで最速で無いのか?どうすんだ、団長は…』
ヴァーリは呆れたように念話を送って来た。
「いや…そうもイカン。主神に迷惑を掛ける」
「同意の上だ。迷惑は掛けないぞ」
リヴェリアさんの言葉に固まる団長…
「そうだ。用を思い出しだ」
あっ!転移して逃げた…
「転移術…だと…あの方は何者だ?」
狩る様な目付きのリヴェリアさんと目が合ってしまった。マズい…僕の目の前の席に移動してきた。
「お前…あの方の弟子だよな?」
「ごめんなさい」
僕も転移して逃げた…