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粛清理由
バカ親達は反省も無く、鬼がキレ、再びリセットへ…今度は、バカ親を排除した歴史になるらしい。
◇
転移するとすぐに、同化吸収をし、僕の身体は若く、幼くなっていく。
『イッセー、ドライグとアルビオンも同化吸収するぞ』
ドラゴニールの声が脳裏で聞こえた。眼下では、メイビスさん、ルシファーさん達が二天龍と激闘を広げていた。
『同化を開始する』
ドライグとアルビオンが、それぞれ紅い玉、白い玉になり、僕とヴァーリに吸収されていく。
「イッセー!あの5名をベースにつれて行くわよ」
セーラさんからの指示が飛んだ。僕とヴァーリで地表に降下していく。セーラさんは周囲を警戒している。
「あなた達は、誰?」
消えそうな声で、そう呟いたメイビスさんは、意識を飛ばした。要救助者達と共に、次元の狭間にある僕達の家へと転移した。
---メイビス---
意識が覚醒していく。二天龍と戦っていたはずだけど…ここは?周囲を見回すと、寝室のようである。ルシファー達はまだ目覚めていないようだ。
うっ!身体が軋む…痛みが残っている。でも外傷は消えていた。ヒールを掛けてくれたのか?誰が?
記憶を呼び起こしていく。そうだ…少年がいた。彼が救ってくれたのか?彼は誰なんだ?どこか、知り合いに似ている顔立ち…まさか…彼は死んだ筈だ。教会の雇ったはぐれ者の手によって…
「どうしても、わからなかったことがありました」
耳元で誰かの声が聞こえた。振り返ると、あの少年がいた。
「どうして、あの局面で、兵藤家が襲われて、皆殺しにされたのか。実際は、一人だけ生き延びましたけど」
彼は、生きていたのか…兵藤一誠君…
「でも、ようやくわかりました。僕は禁忌な組み合わせだからですよね?」
彼にバレてしまった。私の判断ミスだ。それが原因で、ルシファーと揉め、あのような大戦にまで達してしまったのだ。
「かって、ヨハネの血族が、同じ理由で粛清されましたし」
ソレも知っているのか…
「どうして、ソレを知っているの?」
「僕の恩人である師匠は、その時の生き残りです。禁忌なる力を持った、教会サイドでは大罪人扱いですよね?」
そう…見てはいけない物が見える能力。それは、正義である為に犯した罪すら見抜く能力である。教会的には生きていては困る能力者であった。
「彼も生きているの?」
「僕は師匠の養子です。イッセー・ヨハネという名前を頂きました」
粛清対象者同士、寄り添って生きていたのか…
「粛清はもう意味を為しません。ただ、アナタには罰を与えないといけません。僕達を見守ってください。この世界で何が起きようと、僕達を見守ってください」
禁忌なる者たちを見守るのか…彼らの両親に手を掛けた私の罪…それで、許されるなら、敢えてその罰を受け入れよう。
「待て!メイビスだけに負わせる訳にいかない。私達もその罰を受ける」
ルシファーが、会話に割り込んで来た。
「私達は、メイビス達の行為を防げなかった。同罪だよ」
力無く項垂れているルシファー達。
「で、彼女達は誰?」
イッセー君の後にお盆を持った少女が2名いた。その少女達は、私達が起きた事を知り、私達に食べ物を配り始めた。
「おかゆです。栄養がつくスープで煮込んであります」
黒髪の少女が説明をしてくれた。
「私は、セーラ・シトリー・鬼門…」
シトリー…鬼門?
「シトリー家に、君のような娘はいないはずだが」
ルシファーが怪訝は表情を浮かべた。
「えぇ、並行世界からきました。父はシュウ・ヨハネ・鬼門、母はソーナ・シトリーです」
並行世界から来た…イッセー君を助ける為に…ヨハネの血族の後継者なのか…
「なんだって…並行世界から来ただって…」
「私はヴァーリ・ルシファー・メイビス…」
銀髪の少女が有り得ない名前を口にした。どうして、私とルシファーの名前を持っているんだ?
「どういうことだ?並行世界の私は、男性だったのか?」
ルシファーが身を乗り出して訊いた。
「いえ…お二人とも女性でした。私は身体をロストしてしまい、魂だけの状態で師匠に保護されていました。元々の名前はヴァーリ・ルシファーです」
ルシファーの表情が固まった。並行世界では、子供を産んだってことだ。
「師匠がルシファーの血を入れた身体を、私に与えたいって…ルシファさんとメイビスさんのDNAで受精卵を作り、そこに私の魂を定着してくれました」
DNAで受精卵って…それは禁忌な技法では無いか。神にしか行ってはいけない御業である。
「お前の師匠も女性だったのか?」
レヴィアタンが訊いた。
「いえ、男性でした。でも、使えなかったんです。師匠のDNAは悪魔のDNAを灰にする可能性があるから」
それは聖属性が強いってことだ。DNAレベルで聖属性が強いって…神以外考えられない。私ですらDNAレベルだと微弱な聖属性しかないし…
「あなたの師匠は神なの?」
「だから、禁忌になったんでしょ?いかなる神も、三位一体の神の前では邪神ですから」
イッセー君が言い放った。その通りである。私のいる天界では、救世主以前の神は総て、邪神、悪神の扱いである。
ヨハネの血族の持つ禁忌の意味は、そこなのか…封印した…殺してしまった神の復活の阻止だったのか…
「ヨハネの血族は、黙示録の作者であるマリアと救世主の間に産まれた子供が、始まりです」
あのマリアは身籠もっていたのか…いや、イエスは彼女が逃げる時間を稼ぐ為に、ユダに告発させたのか?彼女の存在を歴史から消す為に…私の持っていた歴史観が崩れ、罪悪感が強くなっていく。
救世主の愛した女性は、マグダラのマリアだと思っていた。でも、違ったようだ。本当は、ヨハネのマリアだったのか。ユダの行動が今更ながら納得が出来る。あの裏切り以来、彼は歴史から姿を消した。それはヨハネのマリアに帯同していたのだろう。救世主の言いつけで…
「あなた達はヴァーリを護る義務がある。あなた達二人のDNAを持っているんですから」
そうね…
「わかった。この世界に於いて、ヴァーリを私の娘と認定をする。いいな、メイビス」
頷く私。
◇
彼らと過ごす日常。徐々に知らされる、彼らがこの世界に来た理由…
「既に数回リセットされているの?」
頷くイッセー達。
「この世界だけ、難航しているんです。どこをどう修正しても、最悪な結果にしか至らないというか…」
リセットの度に元凶となる者を排除しているそうだが、なかなか破滅へのレールから抜け出せないそうだ。
「今回は師匠の都合もあるんですが、師匠が関わらないで行けるところまで行けって…」
その師匠は、並行世界での私と結婚をし、看取ってくれたそうだ。いつか、逢いたい。その方と…
---イッセー---
えっ!どういうこと?この世界にシアがいるらしい。あのバカ親達を排除したはずなのに…どうして…
「シアは、セラフォルーとミカエルの娘だ」
外交担当同士で、逢う機会が多く、たった一度の過ちが大当たりに…この世界では、冥界と天界の関係は良好らしい。
「あそこは娘ばかりの子だくさんだよ」
シアだけでなく、ネリネ、リコリス、キキョウの4つ子だったらしい。バカ親達排除の影響がここに出ていたとは…ちなみ、シアとキキョウは聖属性寄りで、ネリネとリコリスは魔属性寄りだという。
「堕天しなかったんですか?」
「愛情では堕天はしない。それに、システム管理はミカエルの仕事だし」
自分だけを例外設定にしていた可能性もあるな。ミカエルさんだし…
◇
そして、運命の日を迎えた。各陣営のトップ同士の会談の日である。この日、リアス達がはぐれに襲われるはずである。
会談の行われる会場近くの公園で、まったりとする僕。目の前には女の子達が遊んでいる。シア達4姉妹とリアス、ソーナ、シーグヴァイラである。
ヴァーリとセーラも周辺で哨戒中である。
「ねぇ、あなたのお名前は?」
シアが寄って来た。
「ナナシの権兵衛」
「ナナシさん?ねぇ、一緒に遊ばない?」
「シア!人間に気安く声を掛けちゃダメよ!」
って、リアス。
「え?何で?」
僕の前に立ち、リアスと対峙するシア。
「そんな下等な生き物と、私達では、格が違うのよ!」
あぁ、リアスらしい言い分である。
『イッセー、来たよ』
セーラさんから指示が来た。僕も探査を開始した。上に堕天使、正面から悪魔か。後から天使もいるなぁ。
「シア、気を付けろよ!」
僕は立ち上がり、シアの肩に触れた。
「えっ!どうして…」
シアが何かに驚いている。
「お嬢様達、魔王様が呼びですよ」
ニタついている、はぐれ悪魔。彼女達にいたずらするのかな?僕は聖剣を手にした。
「貴様!何者だ?」
僕を認識したはぐれ者達が、僕に攻撃を仕掛けてきた。シア達は、セーラの防御結界で護っている。
『『バランスブレーカー』』
僕とヴァーリは禁手化した。僕は聖剣ではぐれ悪魔達を屠っていく。ヴァーリははぐれ天使達を、はぐれ堕天使達は、助っ人で来てくれた魔王リアスさんが屠っていく。
そして、正規の軍勢を探知したので、僕達はベースへと転移した。
---リシアンサス---
遠くから、見た事のない悪魔の集団が近づいて来た。上から堕天使、後から天使達である。何が起きるんだ。
「シア、気を付けろよ!」
ナナシさんがそう言って、立ち上がり、私の肩に彼の手が触れた。
「えっ!どうして…」
どこか懐かしいオーラを感じる。そして、身体の芯が暖かくなっていく。
「お嬢様達、魔王様が呼びですよ」
知らない者の代表者が声を掛けてきた。それと同時に、彼が聖剣を手にして斬り掛かっていた。聖剣の放つオーラでリアス、ソーナ、シーグヴァイラがよろけている。次の瞬間、私達を取り囲むように防御結界が張られた。
誰かが私達を護ってくれているようだ。
結界の外では、紅い鎧の着た者2名と、白い鎧を着た者1名が、襲撃者と戦ってくれていた。その中の赤い鎧に一人は、ナナシさんである。あの聖剣を手にしているし。
あれよあれよのウチに、襲撃者達を撃退して、何時の間にか去って行ってしまったナナシさん達…
---アザゼル---
会場近くで高濃度のエネルギーを感知した。会議は中断して、現場へと急ぐ俺達。そこには、はぐれ者達の多数の死体と、呆気に取られている悪魔の少女達がいた。
「おい、何があったんだ?」
サーゼクスがリアスに訊いた。
「紅い鎧と白い鎧が倒してくれた」
「シアちゃん、ソーたん、大丈夫?」
セラフォルーが娘達と妹を気遣っている。
「ナナシさんが助けてくれたんだよ」
って、シア。俺達はシアに視線を集めた。
「そいつは、どんな奴だ?」
「オジサン、恐い…」
え?俺じゃダメなのか?
「シア、どんな奴だったんだ?」
ミカエルが訊き直した。
「男の子…私達と同じくらいの…紅い鎧を着て、聖剣を持っていたの」
紅い鎧?神器か?それに聖剣だと…どこの勢力だ?
「あとね、後3人いたよ。紅い鎧の人と、白い鎧の人と、防御結界を張ってくれた人の、全部で4人だったよ」
4人?チームなのか。
「アザゼル、どう思う?」
サーゼクスに訊かれた。
「鎧は神器だろうな。それに聖剣か…教会関係では無いのか?」
「天界関係者に鎧系の神器持ちはいない」
って、ミカエル。
「じゃ、どこの勢力だ?」
たぶん、皆の脳裏に一人の少年の顔が浮かんでいるんだろうな…
◇
検知した高濃度のエネルギーを分析した結果、驚くべき結果が出た。
「どうしたんだ、アザゼル」
アジュカに訊かれた。
「有り得ない…コイツら、この世界の者では無いのかもしれない」
全身に鳥肌が立っている。
「どういう理由からだ?」
ミカエルに詰め寄られた。
「分析結果は、殲滅する力だった。この力を持つ者は、この世界で、確認されているのは2名だけだ。サーゼクスとリアスだ」
サーゼクスは俺達といた。リアスは襲われた側にいた。では、3人目のコイツは誰だ?
「更に、エネルギーの放出量は、サーゼクスを凌駕している。一番の驚きは、装備として具現化している点だ」
サーゼクスは纏うだけ、リアスは集めるだけしか出来ない。具現化なんて、高度な制御が出来ないのだ。コイツ、何者だ…
「グレモリーの隠し玉か?」
俺はサーゼクスに訊いた。殲滅する力は、グレモリー家の者にしか宿らないからだ。
「隠す者何も…だから、この世界の者では無いんだな。では、どこの世界から来たんだ?そもそも、何の為にだ?」
「どの世界かはわからないが、目的は、あの少年の保護では無いのか?」
あの少年…俺達の憧れた夫婦の忘れ形見である少年である。あの夫婦が襲撃された時、夫婦の死体は見付かったが、あの少年の死体は見付からなかった。それは、誰かに保護されたか、拉致されたかってことである。
「異世界人に、拉致されたのか?」
「いや、保護の可能性もある。異世界っていうより、この世界と並行にある世界かもしれないから」
並行世界では、似た事案が起きるらしいから。