---ヴァーリ---
イッセー君を苦しめている。あの救われない世界での事が、原因である。実戦に於いて、たらればは禁止である。そんなことを言ったら、キリが無いからだ。
百代を連れて、シアの部屋を訪ねた。あの救われない世界の話をする為である。なんでイッセー君は、シアと百代にあのように接しているかを、知って欲しいからだ。
「並行世界の私のせいで…」
シアが涙している。
「私達の師匠は、あぁなることを予見して、あなたに癒やし術を学ばせたんだと思う」
「イッセーは、並行世界の私の首を…化け物になりかけた私を…そんな惨いことをさせたのかぁぁぁぁ~!」
号泣する百代。
「だから、百代にはもっと強くなって欲しいのよ。慢心する事無く、二度とあんな事をしない為に。それはシアにも言える。もっと基礎を広げなさい。疲れを取る術を学びなさい」
あの戦争で多くの仲間達が逝った。生き残った者には、廃人になった者もいる。勝っても救われない戦争はあるのだ。
「その戦争には、私もいたのですか?」
何時の間にか、部屋にはリーラがいて、彼女は涙して、呆然と立っていた。
「いたわ…」
リーラ姿のメイビス様が…
「ダークドラゴンになって荒れ狂うイッセー君を助ける為に、返り討ちにあって…そして、愛しい人に看取られて…」
「そんな…」
ある意味、ここに同居する者全員、あの救われない世界に関わった者である。直接では無いものの、並行世界の自分は、ここにいる自分の鏡である。
「戦いってそういう物よ。勝っても負けても救われることは無い。生き残った者は、期待していた者の裏切り行為を恨むわ。シア、覚悟しておきなさい。そして、その汚名を払拭しなさい」
「はい…」
「百代は慢心しないで…イッセーの横に、いつまでも立てるようにして」
「わかった…」
「リーラは先走らないで…お願い…」
「わかりました」
「でも一番の罪人は私だわ。師匠の娘さんの魂を貰ってしまった」
『気にしちゃダメだからね』
って、ガイラさんの声が聞こえた。
『ヴァーリと一緒にいられるし、ドラゴニール、イッセーとも一緒にいられる。何よりも父様の傍にもいられるから、私は満足だし、後悔はしていないわ』
バーン!
突然、扉が勢い良く開いた。そこにはセーラさんがいた。
「ヴァーリ!女々しいマネをしないでね。姉さんの心意気が泣くわよ!」
セーラさんは涙を目に溜めていた。
「みんなもそうよ。私の自慢の姉さんの分まで、イッセーを支えてあげて…お願い…あの戦いで、イッセーは何度も殺されたの。だから…」
セーラさんが私に抱きつき、声を出さずに涙を溢していく。
◇
翌日…援軍がやってきた。回復だけでなく、攻撃も支援もできる魔法師であるフィアナとリトルである。
「魔法関係は任せてよ!みっちり、仕込まれてきたから」
「そうなると、このメンバーで登録かな?」
イッセー君が登録用紙を手にしていた。入学前に提出する眷属表のようだ。
「確定しているのは、『王』セーラ、『女王』ヴァーリ、『戦車』はミリムとクルム、『僧侶』はリトル、フィアナ。『騎士』は僕で、『兵士』がシア、百代だな」
「私、兵士なんですか?」
「魔力量が少ないだろ?上限値が低いと、『僧侶』になっても、そんなに底上げされないからな」
「シア、『僧侶』は回復力には恩恵は無いのよ。あくまで、魔力量の底上げだけなの」
「あぁ、そうなんだ」
シアは納得した。
「問題は『戦車』だな。これ、許可されるのか?」
異世界の魔王が2名…難しいかな。
「まぁ、種族をどう書くかだよな」
そこが一番の問題である。イッセー君の種族がまず問題である。現状のイッセー君の種族で一番近いのはダークドラゴンだと思う。そういう私もイレギュラーであるから、ハーフ悪魔としか、書けない気がする。
「面倒な問題はアザゼルに一任しましょう」
って、セーラさん。まぁ、専門家に任せるのが一番だね。
---アザゼル---
うぅぅぅぅぅ~。この小悪魔、なんて難問を持ち込んだんだ。唸るしか出来ない俺。
「どうなのよ!堕天使のエラい人」
う~むぅぅぅぅ~、これは無理だろう…いくら何でも…異世界の魔王が2名に、ダークドラゴンが1名、そこに神と魔王のハーフが1名、神と悪魔のハーフが1名、神とエルフのハーフが1名だって…イレギュラーにも程があるだろうに。
「この神って、あの神か?」
「1柱はね。後の2柱は別だよ」
小悪魔がさらっと解説している。
「異世界の魔王って、どの位の強さなんだ?」
「あっ!ちょっと待って!もう1名異世界の魔王が追加だわ」
おい…異世界の魔王が3名もいるのか…
「この世界のルシファー眷属より、強いのか?」
「たぶん、一人で行けるんじゃないの?」
小悪魔がさらっと、スゴいことを言っている。一人で、ルシファー眷属をボコれるのか?それは、認可されないだろうよ。
「とにかく、このリストでねじ込んでね」
って、言われても…へ?追加された箇所を見て固まる俺。『「騎士」魔王リアス』と追記されている。これは一体?
「この魔王リアスって?」
「リアス史上最強のリアスで、魔王をしているのよ」
まさか、コイツが、以前観測したエネルギーの発生源か?
「もしかして、殲滅の力を具現化出来るのか?」
「当たり前でしょ?魔王なんだから」
当たり前?それではサーゼクスの立つ瀬はない。
「わかった。交渉してみるよ」
少し興味を持ってしまった俺は、苦難の道を選んでしまった。
◇
レーティングゲームの実行委員長のアジュカを頼った俺。
「このリストなんだが、登録してくれないか」
「プロチームか?」
プロならいいのか?
「いや、駒王学園の新入生のチームなんだが…」
「はぁ?」
アジュカすら驚いているぞ。どうすんだ、小悪魔娘よ!
「これは、流石に無理だろ?」
「そこを何とか、頼む。なぁ~、アジュカよ~」
「何?!」
アジュカがアレに気づいたようだ。
「まさか、異世界から来たのか?」
「あぁ、そうだ。シアは、この世界のシアだがな」
「う~ん…」
シア自体も反則種族である。天使長と魔王のハーフって、何だ?
---アジュカ---
魔王会議で、アザゼルの持ち込んだ案件を持ち出した。セラフォルー以外は固まっている。
「わぁ~い、シアちゃんがデビュー出来るんだねぇ~」
って、セラフォルーは、喜んでいるんだが…どうするんだ?
「どうするんだ?」
「ダメだろう、出場禁止だ」
って、サーゼクス。妹の眷属では勝ち目は無いからな。
「興味はある」
とファルビウム。
「えぇぇぇぇ~!なんで、シアちゃんが出場禁止なのよ~!」
ぶー垂れるセラフォルー。
「そもそも、このセーラ・シトリーって誰だ?」
「並行世界から来たんだろ?」
「何…リーアがいるのか…」
「それは異世界から来た魔王の一人だぞ」
「うぅぅぅぅ~」
悩み始めた、リアス大好きなサーゼクス。
「で、俺からの提案なんだが、イレギュラーな者達は、種族を悪魔で登録しようと思うんだ」
これしか無いだろう。神を相手にして、勝てる気はしない。
「なぁ、いいか?この神って、どこの神か、わかるか?」
ファルビウムが質問をしてきた。俺はアザゼルに確認をすると…
「うん?ヘルメスと…メイビスと…名の無き神だと…」
なんか、マズい名前が2柱出て来たんだが…
「おい!マジか?神メイビスの子供がいたのか?それに名の無き神だと…それって、神界から攻撃喰らうレベルでないのか…」
天界より上にある神界…最高神の間との言われる、この世界を司る神々のいる場所である。名の無き神は、彼らの上司クラスであるのだった。
「拒否した途端、冥界が消えたら、シャレにならんぞ…俺はアジュカの案に賛成だ」
ファルビウムが折れた。いや、俺の心も折れてきた。
「私は最初から賛成だよ」
って、セラフォルー。三票入ったので決定であるが…どうするんだ、これ?対戦相手がいないだろうに。
---セーラ---
さすが、堕天使の総督は名ばかりでは無いようだ。あのリストで登録されたそうだ。但し、イレギュラー種族は、皆悪魔ってことにしてくれって。まぁ、しょうが無いかな。折れる処は折れよう。
そして、鍛錬の様子を見たいと、この世界の魔王達と堕天使の総督がやって来た。うん?天使長のミカエル様もいる。あぁ、シアの父親だったなぁ。
闘技場へ案内した。丁度、魔王リアスとイッセーが剣技での手合わせをしていた。
「何?あれは聖剣エクスカリバーかっ!」
堕天使の総督は、お目が高い。
「えぇ、7本を錬成した真なる聖剣です。彼と契約している為、彼にしか扱えません」
「え?!7本を錬成?じゃ、天界と教会にあるのは?」
ミカエル様が驚いて声を上げた。
「ダミーでしょう。だって、あれ1本しか無いし」
実際は2本有るのを知っている私。1本は父様が持ち、イッセーのはソレのコピー品である。
「なんだって…」
「あれが異世界のリーアかぁ」
歓喜の声を上げているシスコン魔王様。
聖剣と殲滅剣が接触する度に、衝撃波が場内を襲う。観客席にはリトルさんとフィアナさんで防御結界を張って貰っているが、それでも衝撃波が襲ってくる。まあ、空気の振動は結界では防ぎきれないからね。
「スゴい…二人の剣技が美しい」
軍事担当の魔王様から、お褒めの言葉を頂いた。
「彼らの種族は何になるんだ?」
アジュカ様に訊かれた。
「魔王の方は、悪魔です。相手はダークドラゴンになります」
「悪魔はどなたかな?」
「並行世界のリアス・グレモリーですよ。強くて優しい魔王になる為、努力を重ねたそうです。あぁ、タイムアップよ!次はミリムとヴァーリ」
強拳魔王と受け流し悪魔の戦いに変わった。
「あの幼い子は?」
「異世界の魔王です」
「なぁなぁ、魔王のリーアより強いのか?」
シスコン魔王が割った入ってきた。
「たぶん、リアスさんより上でしょう」
「何?そんなに強いのか?」
「ねぇ、シアちゃんは?」
「戦闘員では無いです」
あなたの娘は、ここの戦闘に巻き込まれただけで、死んでしまうって。
「なぁ、あのダークドラゴン、元は誰だ?」
堕天使の総督が気づいたのか?
「誰だと思いますか?」
「なぁ、メイビスは生きているのか?」
総督の言葉で、ミカエル様の顔が強張っていく。彼は真実を知っているから。そして、まだ生きている宣言をするのに、タイミングが早いと知っているのであった。
「さぁ、どうでしょうね」
はぐらかす私。
「流石に、肝が据わっているな。三勢力のトップを前にしても、動じずか?」
「えぇ、普段から畏怖なるオーラに晒されてましたから、この程度は、何ともありません」
「畏怖なるオーラ…アザゼル、まさか、彼女が?」
「あぁ、名の無き神の娘だ」
そう、父様のオーラに比べれば、この程度は何ともない。
ズッドーン!
轟音と共に、堕天使の総督が、向こうの壁まで殴り飛ばされた。
「堕天使風情がセーラを虐めるな!」
クルムがキレた。ミリムがクルムをガードするように立った。
「申し訳ございません。今日は、お帰りくださいませんか?」
シアが矢面に出てくれた。私はクルムとミリムに抱きつき、彼女達の感情をクールダウンさせていく。
「うむ、セーラ、良く頑張ったのだ」
クルムに褒めて貰えた。
---アジュカ---
油断していたとは言え、アザゼルが入院をする大怪我をした。なんだ、あの破壊力は…飛ぶ打撃で結界を突き破って、壁に激突だなんて…この世界へ有り得ない力である。それも軽く殴っただけでだ。
「ファルビウム、どう思う?」
「戦いたく無い相手だ。味方にするのが得策だな」
「シアちゃんと戦うのは、許さないよ!」
って、セラフォルー。お前は親バカになったな。
「サーゼクスはどうなんだ?」
「あんな風に具現化しようとは思わなかった。彼女は相当努力したんだろうな」
滅の力のコントロールの難しさを一番知っているサーゼクスは、あの異世界のリアスを買ったようだ。俺も、彼女は相当努力したと思う。
「だが、戦える相手はいない気がするな。勿論、ルシファー眷属としても戦いたく無い」
だろうな…魔王なリアスとダークドラゴンの剣士は要注意だろう。
「戦車も危険だろう?」
「アザゼルを病院送りにしたからか?」
「あぁ、そうだ。問題は、あの王だな」
「うん?彼女、シトリー出身だって、シアちゃんが言っていたよ」
って、セラフォルー。シトリー家なのか?並行世界の…あの落ち着き方だと、母親はソーナ君か…チーム戦を見てみたくなってきた。問題は、対戦相手だな。