---イッセー---
朝、目覚めると、団長とセーラさんが、何か揉めていた。リビングは、リアスとヴァーリがいるだけである。
「父様、何をやらかしたんですか?」
セーラさんが詰め寄り、団長が困った顔をしている。やらかしたのは確実だった。
「何もしていないよ」
「このお赤飯は何ですか?」
テーブルに置かれた折り詰めには、赤飯が入っていた。誰かの初潮か?
「リアスの再起動祝いだよ…」
「それだけですか?!」
セーラさんは何かを掴んでいるようだ。ギャラリーが集まってくる。
「それだけだよ。どうしたんだ、セーラ…」
顔が強張っている団長。セーラさんの心の中を見たらしい。
「聞きましたよ」
「何の話かな?」
「自白の機会を与えたつもりですけど、じゃ、指摘します。孫って、誰と誰の子供ですか?!」
孫?団長の?誰の子供だ?伴侶持ちはアリスさんだけだが…アリスさんに子供が出来たとは、聞いていない。
「う~ん…」
困った顔の団長。相当やらかした時の表情である。
「それは、言えないですよね。本人達の知らない間に、借り腹で産ませたんですから」
借り腹…えっ!それって…借り腹の必要なのは、魔人の血持ちだけだ。メンバーの中で魔人の血を持っているのは…僕だけであるが…えぇぇぇぇぇ~!誰との子供だ?
「イッセー…自白して貰おうか」
ヴァーリも気づいたのか、僕に詰め寄って来た。えぇ?ヴァーリ以外と交わったのは、リアスだけど…再起動したばかりだし。
「リアス以外には誰だ?」
うそっ!ヴァーリがキレている。僕の心の中を熟読し始めた。やめてぇぇぇぇ~!
「父様、イッセーが疑われていますよ。父様のせいですが…いいんですか?」
「う~ん…」
「団長!誰と僕を掛け合わせたんですか?」
「う~ん…」
とっても言いづらそうな団長。
「団長!」
ヴァーリが怒りのオーラを団長に向け始めた。
「う~ん…その前に言っておくことがある。案件中に子作りはするなって言ったよな…」
って、僕を見て言い放つ団長。えっ!僕が容疑者か?
「まさか…父様…それで、父様が罪を被ろうとしていたのですか。ごめんなさい」
何かに気づいたセーラさんが、団長に泣きすがっている。何に気づいたんだ?
「まぁ、ヴァーリが訊きたいなら、教えてやるよ。お前とイッセーの子供だ。避妊を失敗していて、受精していたぞ」
「「えっ!」」
僕とヴァーリの顔から一気に血の気が失せていく。避妊を失敗していた?
「で…そのまま、放置でも良かったんだが…自己責任だからな。でも、ガイアとドラゴニールの子供だと思うと、救いたくなって、ヴァーリの身体から受精卵を『強奪』して、借り腹で育てたんだ」
まぁ、適切な判断ではある。出産時にヴァーリが爆死する可能性が大だし。だけど、何かが引っ掛かる。団長の孫だよなぁ?ヴァーリと僕では、団長の孫は産めない。どういうことだ?
「あっ!まさか、やらかしたのは、孫の方では無くて?」
ヴァーリが何かに気づいた。
「まさか、私?」
「「えっ!」」
団長とヴァーリ、再起動したてのリアスを除いた者全員が驚いた。
「何の話だっけ?」
団長が誤魔化した。ヴァーリはビンゴに辿り着いたようだ。って、ヴァーリは団長の娘なのか?それはセーラさんが末娘では無くなるってことだ。
「父様…ヴァーリは、私の妹なんですか?」
「はて…」
団長の誤魔化しに、ショックを受けるセーラさん。嘘を吐けないスキル持ちの団長。誤魔化しやハッタリで逃げる時は、嘘を吐きたい場合が多い。
「あっ!そうか…女性と女性では子供は産めないのは、理なんだわ。だから、ルシファーさんとメイビスさんの卵子で、卵子を強化したのね。そこに父様の種を植えて…」
「じゃ、帰るかな」」
「待って!私達の子供の名前は?」
ヴァーリが団長に訊いた。
「代羽大樹だよ」
団長は、そう言い残し、この場から逃げるようにして去って行った。
◇
孫の誕生…セーラさんにショックを与えた。孫に代羽姓を与えた団長。それはヨハネの血を受け継いだ証であるから。
「私が継がなかったから…」
『違うわよ。自信を持ちなさい、セーラ』
ガイラさんの声が聞こえる。
「でも…姉様…」
『セーラにはセーラらしく生きて欲しいのよ』
「私らしく?」
『だって、あなたは生き返りでしょ?その時点で、ヨハネの資格が無いし』
「あぁ…そうですね。私…殺されたんだ…」
『残りの人生、あなたらしく生きて欲しいのよ。リアスもそうよ』
「私も?」
リアスにもガイラさんの声が聞こえるようだ。
『ヴァーリは戦い続ける定め、イッセーと共にね。だから私は、彼女に私を捧げた。たぶん、その自己犠牲な行為がヨハネの血を濃くしたのかもしれないわ』
「ヨハネの血?」
リアスがガイラさんに訊いた。
『そうヨハネの血よ。どんな苦境にも諦めないの。リアスもイッセーもヨハネの姓を継いでいるでしょ?それに、ヴァーリはヴァーリ・ルシファーなのよ、セーラ。あなたは鬼門を継いでいるでしょ?鬼門はヨハネを護る者なのよ』
あぁ、ヴァーリは、ヨハネの姓を貰えていない…
『父様は隔世遺伝の可能性に賭けたんじゃ無いかな?』
隔世遺伝…
「そうか…鬼の血の代わりに魔人の血を使って、天使からヨハネの血を引き出したのか」
答えが見えた気がする。
『イッセー君、正解よ。総てを見通すには、真逆の存在を受け入れ無いとダメなのよ。ヴァーリの場合は天使の血が薄かった。だから父様でブーストして、イッセー君でフィニッシュさせたのよ』
未来が見える能力。団長は結果が見えたのか。
『だから、みんな、父様を責めないでね。私はいつでもヴァーリと共にある』
そうだ。団長は先々を見ているんだった。もし、放置されたら、ヴァーリもガイラさんもロストしていたのだろう。
「って、やっぱり、このお赤飯は、孫の誕生祝いだったんじゃないの…」
蓋を開けると、ゴマ粒を使って『大樹』って記されていた。
◇
鍛錬に一層力が入る僕、ヴァーリ、セーラさん、リアス。いつか、団長の孫と戦い、戦士の先輩として勝ちたいからだ。
リアスは転生天使として、回復術を極め始めた。シアさんとは違い単なるヒーラーでなく、バーサクヒーラーを目指していた。戦えるヒーラーである。シアさんが後方援護であるならば、リアスは、中段からの援護になると思う。相手と戦いながら、味方を回復させていく感じである。
「う~ん、なんかリアスに負けた気分よね」
って、ソーナさん。悪魔成分の濃いシトリーでは回復系は難しいからだ。
「攻撃魔法があるじゃ無いですか」
水、氷系の魔法が得意なシトリー家。広域魔法なので、戦いたく無い相手である。
「セーラさん、何か無いかな?」
「う~ん、水流刃とか氷剣はどうですか?」
紙に描いて説明するセーラさん。セーラさんは魔力の上限が低い為、知識があるけど、行使は出来ない物が多いらしい。
「なるほど…ありがとう。練習してみるね」
この世界のラスボスはどんな敵だろうか。このメンバーで勝てるのだろうか?
---ヴェネラナ・グレモリー---
結局、リアスを弔う事は無かった。酷い母親である。
久しぶりに亭主と街まで出た。亭主は酒場へ向かい、私はシトリー邸を訪ねた。そのシトリー邸の庭で、リアスが立っていた。一生懸命に、何かを練習しているリアス。イッセー君とヴァーリという少女と共に、連携を確認していた。
「リアス!」
娘に声を掛けた。だけど、一瞥しただけで、連携を確認し始めた。どうして?
「今更、何か用ですか?」
セーラと言う少女が話し掛けてきた。
「娘を返して。ねぇ、お願いだから」
「返す、返さないの問題では無いでしょ?グレモリー邸内で、あんな伸び伸びとしたリアスはいましたか?」
いなかった。
「お帰りください。ジャマです!」
ジャマ?アナタがでしょ?咄嗟に滅の力を使い、セーラを傷つけてしまった。
「これだから、グレモリー家はクソよね!直ぐに相手を力でねじ伏せるんだから」
もう静かになりなさい。今、存在を消してあげるから…だけど、消すことは出来なかった。私の力をリアスが受けとめ、セーラに回復術を掛けていた。
「お母様、お帰りください。私の恩人に怪我をさせるなんて…酷いです」
「リアス…分かったでしょ?グレモリー家の姿が…」
まさか、罠…わざと怒らせて…
「えぇ、酷すぎます、セーラさん…セーラさんをロストさせる気で、襲い掛かりましたよね、お母様」
「どうした?あぁ、リアスの母親か」
娘と睨み合っていると、もう一人のリアスが現れた。
「セーラを切ったのか…有り得ない。この世界のグレモリー家もクソだな」
二人のリアスに睨まれている。そんな私の窮地に、サーゼクスが転移してきた。
「母上…どうされましたか?貴様!」
サーゼクスが怒りで化け物になっていく。きっと、あのリアスが腕をロストさせたのであろう。
「莉愛様、私がやります。私の母がしたことですから」
娘がサーゼクスに襲い掛かった。
「うん?リーア…何をするんだ?!うごっ!」
有り得ない。化け物に変化中に、リアスによって片足を灰にされたサーゼクス。あれは聖属性攻撃…なんで?なんで、使えるの…
「お母様…私はセーラ様の加護で、転生天使になりました。どんな悪魔でも、灰に出来ます。ですから、もう災いを持ち込まないでください」
災い…私達が災いなの?ソイツらで無くて…
「母上、撤収しましょう。ここは危険です」
サーゼクスの転移術で、グレモリー邸へ連れて行かれた私。
---アジュカ---
魔王の間にサーゼクスがやって来た。その身体は痛々しい。片腕だけで無く、片足も無くなっていた。
「アイツらは危険だ。粛清すべきだ。兵藤一誠同様にな」
うん?兵藤一誠を粛清だと?
「「どういうことだ?」」
ファルビウムと同時に訊いた。
「何がだ?」
「お前が…誠殿と一香殿に手を掛けたのか?」
「は?人間で悪魔に勝つ?有り得ないだろ。あぁ言うのは早めに芽を摘むべきだ」
「おい…」
「神メイビスと手を組み、兵藤一誠を粛清したんだよ。その際に、誠殿と一香殿は巻き添えで…」
「お前…あの夫婦をロストさせたのか?」
「兵藤一誠を護る為か…殆ど無抵抗だったよ」
「なんてことを…」
ファルビウムも俺も知らなかった。コイツの過ちに…
「無抵抗では無く、息子を護っていたんだろ?」
「死んだヤツの話しはもういいだろ?ソレよりもだ、シトリー家に滞在している奴らは危険だ。俺の身体をこんな風にしたんだぞ!」
いや、危険なのは、コイツの悪魔至上主義だ。
「俺の妹を聖属性にしやがったんだ、あのセーラって女は!」
「怒りのポイントはそこか?」
「他に何があるんだ?」
こいつ、訊いていないのか?
「お前、訊いていないか?」
「何をだ?」
「リアスが転生天使になった理由をだよ」
「誰にだ?」
グレモリー家は終わって居るのかもな。
「お前の両親にだ。いいか?リアスは、次期当主の座を、お前の息子に奪われて、生きて意味を見失って自殺したんだよ」
「うん?何をつまらない冗談を言っているんだ?生きていたぞ」
「だから、生き返って転生天使になったんだよ。生きたまま、転生天使になれると思うか?」
「あっ!」
サーゼクスも気が付いたようだ。普通に考えて、生きたままだと灰になるはずだ。それも純血悪魔なら尚更だ。聖属性のオーラを身体が受け付けないから。
「なんで、お前達は知っているんだ?」
「事情聴取をした。転生天使になったけど、冥界に居てもいいかって、相談されてね。お前の父親に言われたそうだ。今後、ミリキャスの予備だから、普通に生きて良いけど、結婚したら継承権が無くなるから、良く考えろってな。そんなことを言われて、絶望しない方がおかしいぞ」
って、ファルビウム。
「そんな…リーア…」
「総ては、サーゼクスよ、お前から端を発した出来事だ。他人のせいにするな。そもそも、お前は魔王で無いんだから、ここに入るな」
「何を言っているんだ?俺は最強な魔王だぞ」
「片腕、片足で、最強って名乗るなよ。迷惑だ」
とファルビウム。俺も同意見だ。
「間違っているぞ!」
「いや、間違っているのは、サーゼクス、お前だ。そうか兵藤夫婦殺しの犯人はお前だったのか…」
「ルシファー家も皆殺しだろ?本当に罪深いな、グレモリー家は」
「違う…あんな名ばかりの旧家が、エラそうにしているのが、おかしいだろ?俺はルシファーの名を継いだんだぞ!」
「クーデター犯として捕縛するわ」
ブチ切れ気味のセラフォルーが来て、サーゼクスを氷詰めにした。
「その氷は、滅の力で、ロスト出来ないわよ。聖水の氷だからね」
聖水程度なら問題無いセラフォルー。最強はコイツでは無いのか?
「アナタの母親が斬ったセーラは、私の名前から名付けられたのよ…一度殺されているから、身体が弱いのに…お前の母親は何してくれたのよ!」
セーラを斬ったのか…サーゼクスの母親は…問題だろ…それは…