未来からの訪問者
---兵藤一誠---
嵐の吹き荒れる晩…玄関のドアが激しく叩かれいる。風にしてはおかしい。気になり、玄関へと向かうと、そこにずぶ濡れになった金髪の少女がいた。見た事の無い少女であったが、どこかしら知り合いに似ているような気がした。
「お願いです。助けてください。仲間が襲われているんです」
俺に泣きすがる少女。
「誰に?」
「追っ手にです。お願いします」
戸惑う俺。これはワナかもしれない。
「イッセー!何をしているの?困っている人が目の前にいるのよ。躊躇してどうするの?ゼノヴィア、ロスヴァイセ、朱乃、一緒に行って来なさい」
俺の頼りになりになる彼女が指示を出した。少女に道案内をしてもらい、現場へと行くと…わずかな稲光に照らされて、少年が着物姿の剣士に首をはねられたところだった。
「遅かった…リーチ君…」
その場に崩れる少女。俺達は目の前の敵に臨戦態勢を取った。
「これはこれは兵藤一誠君では無いですか。ちょうど良い。一緒に来て貰おうか。後の者達は肉便器にちょうど良いかな?」
稲光に浮かんだ顔は…俺達の知り合いの顔に似ていた。ソイツの後ろには黒いスーツに身を固めた男性がいた。
「ふざけるな!朱乃さん達を肉便器だと?!『バランスブレイカー』」
俺はドライグの力を纏った。
「ギャスパー!時間を止めてくれ。赤龍帝にチェンジすると厄介だ」
「わかりました。祐斗さん」
知り合いの名前であった。だけど、俺の知る二人よりも大人の感じがするのは何故。その疑問が浮かんだ瞬間、俺達の行動は制限された。時間を止める能力が発動したようだ。木場似の剣士が、ゼノヴィアに近づき、衣服を斬り刻み、全裸にしてから意識を狩っている。次にロスヴァイセ先生、そして朱乃さんに手を掛けた瞬間。
カッキーン!
金属のぶつかり合う音、木場もどきが後ろに下がった。
「何ヤツだ?」
朱乃さんを護るように、知らない男が立っていた。
「気にするな。通りすがりの者だ」
木場もどきが体勢を整え、その男に斬りかかった。
「愚かな…」
木場もどきの全身が燃え上がっていく。
「なんだって?」
ギャスパーもどきの悲鳴のような声、そちらへ視線を移すと、ギャスパーもどきの首筋から血柱が上がっていた。
「もう、動けるだろ、兵藤君」
確かに動ける。
「お前は、何者だ?」
「僕か?アザゼルの知り合いとでも言っておく。この事態の理由は、そこの少女に訊け!じゃ、またな」
目の前から、アザゼルの知り合いの姿が消えた。転移術のようだ。
◇
全裸のゼノヴィアとロスヴァイセ先生と少女には、先に家へ転移してもらった。残った俺と朱乃さんで現場を調べ始めた。木場もどきと、ギャスパーもどきの死体は消えていた。あの男が回収したのか?それとも最後の力を振り絞って、逃亡したのか?あの少女がリーチと呼んでいた少年の遺体だけを持ち帰った。
「リーチくぅぅぅぅ~ん!」
少女が頭部と身体が分離した少年に泣きすがった。
「ゼノヴィアと、ロスヴァイセから事情は訊いたわ」
リアスが心配そうに彼女を見つめていた。
「どうも、未来から来たらしいのよ」
俺と朱乃さんが戻るまで、少し事情を訊いたらしい。
「未来から?じゃ、あれは、未来から来た木場とぎゃー助?」
「みたい。なんで、敵対しているのかな?気になるんだけど…」
少女の悲しみをアーシアが寄り添い、いやしているようだ。そうだ!あの少女はアーシアの顔に似ているんだ。それって、アーシアの子供ってことか?誰との子供なんだ?
「何か遭ったの?」
ソーナと椿姫さんがやってきた。リアスが呼んだのだろう。
「ちょっと問題があってね。私だけでは無理だから」
「どんな問題?」
ソーナの眼鏡のレンズが、キラっと輝いた。
◇
落ち着きを取り戻した少女が話し始めた。
「私の名前はリーシアです。お父さんは兵藤一誠で、お母さんはアーシア・アルジェントです」
俺とアーシアが見合う。俺とアーシアの間の子なのか…
「私のガードをしてくれていたリーチ君のお父さんは兵藤一誠で、お母さんはリアス・グレモリーです」
今度はリアスと見つめ合った。俺の子供達…
「私のいた世界は、それなりに平和でした。母親が不明の異母兄弟が現れるまで…」
母親が不明の異母兄弟。それは、父親は俺で確定なのか?
「その者の名前は?」
リアスがリーシアに訊いた。
「神上一誠です」
神上?誰だ?
「イッセーに心あたりが無いか、訊いてみたの?」
リアスが訊いた。
「それが、お父さんが暗殺された後に、現れたんです」
アーシアに縋り憑くリーシア。
俺が暗殺された。それは衝撃的である。平和な世界なのに、俺は何をやらかし、暗殺されたのだ?
「死因は?」
「サマエルの毒での毒殺です」
あの毒か…あれはダメだ。アレを盛られたら、生きていられない。それほどの猛毒である。
「犯人は捕まったの?」
リアスがたたみかけるように質問をしていく。
「犯人は、リーチ君のお母さんでした」
「えっ!」
リアスの顔から血の気が失せていく。リアスにとって、ショッキングな事実だったようだ。俺にとってもだけど…
「なんで、リアスはイッセー君を?」
ショック状態のリアスに代わって、ソーナが質問をしだした。
「リーチ君のお母さんは、神上一誠と再婚されました」
えっ…息子が父親の愛人と?
「その再婚を機に、冥界を中心に世界が変貌していきました。冥界、冥府、地上界はグレモリー帝国の領土となり、天界、天上界がグレモリー帝国と攻防を繰り広げたのです」
リーシアは、顔面蒼白状態のリアスを睨んでいる。
「アジュカ様は?」
そうだ、魔王として君臨されているはずだ。
「アジュカ様も絶対隔離領域にいる戦士様達も、神上一誠に殺されました」
何…サーゼクスさん、アザゼル先生、セラフォルーさん、オーディンじいさんもか?
「何の能力を持っているの?」
「『幻想殺し』という神滅具です。相手の持つ異能力、魔法、特殊能力などを、総てロストさせることが出来る能力なんです」
能力無くすって…
「無力化ってことか?」
俺が声を上げた。
「そうです。人間と同じ程度の戦闘力にされて…神上は邪龍を2匹使役させていて、敵対勢力を食わせることで、戦力を間引くんです」
人間と同じ程度の能力では、邪龍に勝てる訳が無い。神上ってヤツは無敵じゃないか。
「その上です。トライヘキサを冥界に解き放ち、グレモリー帝国に反抗する悪魔、堕天使を食わせています」
酷い…酷すぎる。神上一誠って何者だ。
「ねぇ、どうやって、この世界まで来たのですか?」
リーシアに優しく語りかけるように訊いたアーシア。リーシアはアーシアと見つめ合う。
「もう一人、一緒に来てくれた仲間がいるんです。その仲間が亜空間転移術を持っているんです。名前は、代羽大樹君っていいます」
「その子は、誰の子供?」
「彼が言うには兵藤一誠と、ヴァーリ・ルシファーの間に生まれたって…でも、私の世界のヴァーリ・ルシファーは男性なんですよ」
えっ!男との間に子供が?はぁぁぁぁ~!
「どういうこと?」
ソーナが訊いた。
「大樹君は平行世界から救援に来てくれたって…」
平行世界では、ヴァーリは女性だったんかぁぁぁぁ~!驚く俺。