新たな鍛錬先
---シュウ---
貰ってきた研究施設は、お兄さんに譲ってもらった土地に設置した。研究資料をドクター達に精査してもらうように依頼をした。
「すでに、何名かの英雄のクローン人間が誕生しているみたいだよ」
ジェイルから報告があがってきた。
「英雄のクローンはまずいなぁ。かといって命ある者を狩るのもなぁ」
「クローンはダメかい?」
「神様サイドとしては、まずいですよ。移植目的のクローンはありだろうけど」
「あぁ、団長は神様サイドだったねぇ」
「そういうことです。身体はクローンかもしれないけど、魂は別人だしねぇ」
「英雄が魂によっては、ラスボスになるってことかな?」
「そういうことです。人工生命体よりは、ましですけどね」
「あの研究所はどうする?」
「神様から苦情の来ない研究で使ってください」
「了解だ。団長は気苦労が多いなぁ」
「はい…」
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ヤマトが慰謝料代わりにもらってきた、九鬼財閥の隠し財産。金塊がいっぱい。どうやれば、こんなにたくさんの隠し財産ができるんだ?
レビアさんとヴァリで、九鬼グループの金の流れを追ってもらうことにした。怪しい動きがあれば、通報しようかと思う。
ヤマトが次に『強奪』してきたのは、武器、弾薬類だった。こんなに…この国では違法だよな。銃刀法違反というか…アイツらも法に触れない人外なのかな?各勢力に人外かどうかの照会をしてみることにした。
武器、弾薬類は、金属と火薬に分けて売り払おうっと。
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今日の面談相手は、ナンバーズ4番『幻惑の使い手』クアットロさん。茶髪にダテ眼鏡の似合う女の子だ。ISは、「幻惑の銀幕」シルバーカーテンで、幻影を操り、対象の知覚を騙せるようだ。凄いのは、人のみならず、レーダーや電子システムすら騙せるそうだ。固有武装は「白銀の外套」シルバーケープで、高いステルス性能と魔法攻撃に対する耐性がそうだ。
「戦わずに勝つ」…僕と戦法が似ているような。
---イッセー---
懲りずにヒュームがまた来た。
「おい、小僧。お前らは何者なんだ?調べても、わからん」
「おい、ヒューム。また、痛い目に遭いに来たんか?」
師範代が相手をしてくれた。僕らは、師範代の後ろに付く。
「釈迦堂なんか、怖くない。今日は小僧の保護者がいないみたいじゃないか。少し貸してくれよ」
師範代の腹部にナイフを突き刺したヒューム。師範代は前のめりに倒れた。ナヴィさん…
「おい、あいつらを捕まえろ」
ヒュームの後ろから、武装した集団が入って来た。
「イッセー、下がっていろ」
百代が一歩前に出た。
「あなた達、まだ懲りていないのですか?」
奥からリーラさんが来てくれた。
「メイドには用はないが、ジャマ立てするようなら、コイツも拘束しちゃえよ」
バチバチバチッ
武装した集団が爆ぜていった。空を見ると、シルキーさんとガイアさんが来てくれた。
「おい、僕の弟分に何をしよとしているんだ?」
「人外がぁっ。お願いします」
ヒュームが後ろに声をかけると、堕天使が数名シルキーさん達に向かって飛んでいった。
「はぐれかぁ?」
シルキーさんの『ダイヤモンドダスト』が撃ち込まれたようで、堕天使の一団が空で爆ぜて、血肉の雨が降ってきた。
「最上級堕天使なのに…お前ら、何者だ?」
「僕の子供達だが、どうしたんだ?」
シュウさんが転移してきてくれた。
「お前の子供だと?」
「そうだけど、何か?ヒューム、謝罪しない上に、更にこれか…」
師範代の腹部に手をかざして、傷を癒やした。
「釈迦堂、大丈夫か?イッセー達を頼む」
「助かった。了解だ」
師範代は、僕らの前に立った。
「さて、ヒュームよ。どう落とし前を付けるんだ?」
ヒュームは十字架を取り出し、シュウさんに掲げた。
「お前はバカか?僕はヴァンパイアじゃない。聖者だと言ったろう。十字架なんか効かないぞ」
「人外の聖者なんかいる訳ないだろう?」
「知識のないヴァンパイアハンターだな。世界は広くて、いるんだよ」
ヒュームは信号弾を上空に向けて撃った。
「ならば、これで皆殺しにしてやる。2分後に戦略核をここに落とす」
「はぁ?あの爆撃機か?あれなら、九鬼の本社ビルに向かっているぞ」
「何言っているんだ?」
「システムは乗っ取ったよ。ここに向かう怪しい爆撃機がいたから、進路を変えてあげたよ。あと、潜水艦から撃ちだしたミサイルもねぇ。九鬼邸の庭に着弾する」
シュウさんはヒュームに笑顔を見せた。対照的にヒュームの顔は青ざめている。
「僕たちが、なんのガードもせずに、イッセーをここに預ける訳ないだろ?色々なシステムを監視して、ここへの攻撃はさせないよ。お前みたいな害虫は小さすぎて、検知できないけどな。おい、携帯が鳴っているぞ」
ヒュームは携帯電話を取りだし、耳に当てた。
「え…本社ビルが…そうですか…指示は川神院でした…システムを乗っ取られたようです…はい…わかりました」
会話を終え、携帯電話をしまったヒューム。
「ふふふ、今米軍の将校達はここに向かっている。お前というテロリストを捕縛しにな」
え?シュウさんをテロリストにしたの?…知らないよ、本当にテロリストになっても…
「治外法権だけどな。僕は人間でないから、人間の法律で裁かれない。僕を裁けるのは絶対神だけだよ。愚かな人間よ」
そうこうしていると、米軍の将校らしい人が部下を連れて来た。
「あっ、マスター・シュウ。どうしたんですか?」
「うん?カーネル・ライアンじゃん。久しぶり」
「テロリストがここにいて、我々の軍事システムを乗っ取ったと聞いたのですが」
「あぁ、九鬼財閥が乗っ取ったみたいだ。ライアン、ここに攻撃命令って発令されたのか?」
「ここに?まさか…市街地に攻撃なんかしませんよ」
「僕達がしたのは、ここに攻撃をしかける軍用装備のシステムを、操ることだけだよ」
「ここに何が攻撃をしに来ることになっていたのですか?」
「潜水艦からのICBM(大陸間弾道弾)と、爆撃機からのバンカーバスター(地中貫通爆弾)を検知したので、最初にシステムを操った輩にお返しをしたよ。じゃないと、迂闊に着弾できないだろう?威力がデカイしね」
「貴様、米軍と知り合いなのか?」
ヒュームがシュウさんに尋ねた。
「知り合いというか、僕らの財団は、派兵兵士の精神的後遺症の軽減に協力しているんだよ。ヒーラーが数名いるからね」
「マスター・シュウの能力が一番高いです。私も救われた一人です。って、貴様は誰だ?」
「九鬼財団からの刺客だ、ライアン。ソイツに仲間が刺された。既に、ヒールして、治したけどね」
「了解です。この者を捕縛しろ、本部に連れて行って尋問をする。では、マスター・シュウ。次回はゆっくりと会いましょう」
軍人さん達はヒュームを連れて、帰っていった。今回も戦わずに勝ったみたいだ。
「コネは最強の武器だよ」って、シュウさんから念話が届いた。確かに。
---シュウ---
「貴様、何やつ?」
九鬼財閥のトップ、九鬼帝(みかど)の前に、現れた僕。
「悪夢の道化師バイパー」
「なんの用だ?」
「はぁ?お前の教育が悪いから、ヒュームのせいで、僕の仕事が阻害されているんだ。営業妨害だ」
「貴様のような、見た事もない小さい人間なんぞ、相手にする訳ないだろう?」
「一つだけ、忠告してやる。お前らの手を出した者は兵藤家に関係する者だ。悪いけど、2回目なので、兵藤家当主には連絡させてもらった。あとは両家で話し合え」
僕は、その場から転移魔法で離脱した。
---イッセー---
その後、お爺ちゃんが介入してくれて、相手から謝罪が有ったようだ。僕との直接接触はしないと一筆書いたそうだ。レビアさん達の労力の結果、国税局が九鬼財団に切り込んだそうだ。とてつもない額の追徴課税を受けたと、テレビニュースで報じていた。更に、国税局が九鬼邸を捜索した際に、大量の銃器類も見つかり、銃刀法違反で警察も介入したようだ。
でも、政治家が介入してきて、指揮権っていうもの発動させて、なぁなぁで済ませたみたいで、特にバツは受けなかったらしい。追徴課税を払わないで良いのかって、シュウさんが激怒していたもの。
「一筆書いたけど、イッセー、あいつら直接接触してくるかもしれないぞ」
「その時はどうすれば良い?」
「ここでの修行はここまでだ。次の場所に移るぞ」
「次の場所って?」
「バチカン」
「はぁい?」
「剣の使い方を学べ。ヴァーリと二人で行け。百代はアウロスで鍛える」
「剣…」
「あと、コネも作るんだぞ」
「僕、キリスト教徒でないし、ヴァーリはハーフ悪魔ですよ」
「ヴァーリは転生天使にして連れて行くよ。僕もキリスト教徒でなかったけど、バチカンで剣の練習をしたから、問題はない」
「シュウさんもバチカンで鍛えたの?」
「鍛えたというより、療養だったけどね。リーラにも付いて行ってもらう。下宿先で面倒をみてもらうためだ。いいな、リーラ」
「了解です」
「百代はアウロスで問題ないよな?」
「問題ないです。今回は、お仕置き部屋に行かないようにします」
百代の顔は、何かに怯えているようだ。
「釈迦堂、世話になったな」
「また、来てくれよな」
「おっ!九鬼が静かになったら、戻ってくるよ」
そして、僕達はバチカンへ、百代はアウロスに連れて行かれた。
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バチカンで戸建て住宅を借りて、リーラさんとヴァーリと僕の三人で暮らし始めた。まず、言葉を覚えるために、リーラさんに一ヶ月習うことにした。言葉がわかないと、授業に付いて行けないもんなぁ。
ようやく日常会話が出来るくらいになり、バチカンの修練所に通うことにした。そこで、懐かしい出会いがあった。
「あれ?イリナじゃないか」
「え?…イッセー君?生きていたの?」
幼なじみのイリナが、爆泣しながら僕に抱きついて来た。
「シスターイリナの知り合いか?」
ストラーダ先生が、イリナに話しかけた。
「えぇ、そうです。生き別れた友達です。死んだと思っていたよ」
「殺さないでね」
「で、君達の保護者は何者だ?わざわざミカエル様が送迎しておったが」
「シュウさんは、天使と鬼のハーフの聖者です」
「はぁ?禁忌の組み合わせの聖者?」
「黙示録の作者の子孫です」
「あ…それって…」
「初代の人と同じ能力をお持ちだそうです」
「ミカエル様の行動に納得だ。で、トライヘキサの正体も知っているのか?」
「知っているも何も、使役されていますよ」
「うげっ…それは、確かに聖者だなぁ…すごい人物が保護者なんだな」
「「はい」」
僕とヴァーリは元気良く返事をした。
教会の戦士の授業って、剣だけでなくて、魔法、礼儀作法、教会のルールなども学ぶようだった。どれも一通り、リーラさんとメイビスさんに習っていたので、さほど問題もなく、剣の修練に臨めた。
友達も徐々にではあるが、増えていった。イリナつながりであるが、エクソシストのグリゼルダさん、デュリオさん、戦士仲間のゼノヴィアさん、リースさん、シスターのアーシアさん。
「え?イッセーどんの保護者もエクソシストなの?」
デュリオさんは、僕の事を「イッセーどん」と呼んでいる。
「そうです。たしか、義理の親の方が、教会で働いています」
「ふ~ん、それはお会いしたいなぁ。歴戦の強者なんだろうな」
「それはもう」
「それよりも、イッセー君とヴァーリはどういう関係なのよ」
なんかイリナは、僕とヴァーリがいると機嫌が悪い。
「どういう関係って…相棒だよ」
「僕は…いや、私は、イッセーのガードだよ」
ヴァーリはたまに一人称が『僕』になる時があるが、直ぐに『私』に言い直す時もある。
「何よ、それっ」
「何って、僕らの所属しているチームでの役割だよ」
「チームって?」
グリゼルダさんも口を挟んできた。
「団長の下でミッションをこなすチームです」
「団長って?」
「僕達の保護者のシュウさんです」
「どんなミッションなんだい、イッセーどん」
「うっ…言えないです」
「イッセー君って、人に言えないことをしているの?」
「う…」
困っていたら、目の前の空間が揺らめいた。
「イッセー、しゃべりすぎだよ」
目の前にシュウさんが転移してきた。
「まぁ、隠し事をしないのは、イッセーの良い点もあるけど、突っ込まれれば困ることになることは喋るなよ」
「すいません」
「団長、まさか、『身体停止』をかけましたか?」
ヴァーリが、シュウさんにきいた。
「かけたけど…女性陣、全員泡吹いているねぇ…教会は刺激が少ないから、ははは」
「笑いごとではないですって」
ヴァーリが半ばあきれていた。
「一応、記憶を操作して置くよ。イッセー、今度から注意しろよ」
「すみませんでした」
僕は団長に頭を下げた。
「ヴァーリ、食べちゃダメ?」
「団長、私達の友達を食べないでください」
ヴァーリが団長に抗議している。
「ダメかぁ~。では、1分後に時を動かす。お前達二人はこの場を、離れておけ」
「「了解です!」」
「では、またね♪」
シュウさんは転移していった。僕らもこの場から去った。