兵藤誠、一香夫妻の死亡、その子供が行方不明というニュースは人間界のみならず、天界、冥界を駆け巡った。
---天界---
「おい、どこの勢力が仕掛けたかわかったか?」
神王ユーストマが陣頭指揮を執り、情報収集をしていた。
「わかりません。ただ、悪魔の残留思念を計測しました」
「悪魔が仕掛けたのか…どこの家の者かはわからないか?」
「はぐれらしいです」
「ボウズの行方はどうだ?」
「以前、不明です」
「調査を続行しろ!」
---冥界---
「はぐれ悪魔が仕掛けたのか?なんてことをしやがる」
冥界では悪魔王フォーベシイが陣頭指揮を執っていた。
「子供は、どこかの陣営に保護されたのか?」
「どこの陣営も調査チームが出ていますので、まだだと思います」
「とにかく、手がかりを探せ!」
---兵藤家 本家---
本家の屋敷の地下にある洞窟に、二人の大人が佇んでいる。目の前には大きな蝋燭が2本、小さな蝋燭が1本、それぞれに炎が灯っていた。
「三人とも生きているようじゃなぁ」
「きっと、こうなる事を予見して、身代わりを使ったのかもしれませんね」
「まずは一安心じゃ」
地上へと階段を昇ると、子供二人が駆け寄ってきた。
「ねぇ、いっくんは無事だった?」
「誠お兄様達は?」
「悠璃、楼羅よ。三人とも生きている。但し、このことは他言無用じゃ」
「ねぇ、お父様。いっくんといつ逢えるの?」
「一誠様に逢いたいですわ、お父様」
お父様と言われた兵藤家現当主の兵藤源氏は難しい顔をした。
「直ぐに現れれば、また狙われるじゃろうから、しばらくどこぞに潜伏するじゃろう」
「「しばらくってどれ位?」」
「う~む、しばらくじゃ」
「早く逢わせてくれないと、お父様って呼ぶことをやめるからね」
源氏の顔は更に険しくなっていった。
「それは、困る」
「「なら、早く逢わせてね」」
門下生の前では威厳のある当主であるが、娘の前では単なる親バカで、娘にからきし弱い父親であった。
そんな亭主を優しく見守る妻の羅輝。
---堕天使領---
堕天使組織、通称グリゴリの本部では、総督のアザゼルとシュウが会話をしていた。
「まさか、あの時の特務機関が関わっていたとはな」
「あの時の介入は、今回のためだよ。あのまま続ければ、神メイビスと4大魔王は死んでいたからね。あと、ドライグとアルビオンは神器となり、最悪の未来へと導かれてしまうし」
「まぁ、俺達は特務機関に今後も協力をしていくよ。裏からな」
「助かりますよ。それで、ヴァンはどう証言をしていますか?」
「黒幕は兵藤家の反誠派のようだ。アイツが戻ると、当主の座を持って行かれちゃうからな」
「予想通りだ。たぶん、式森家も関わっていそうだな」
「どうする気だ?」
「イッセーを鍛える事を優先するよ。はぐれ者に頼むってことは、依頼者は金は有るが、戦闘は弱いんだろうしな」
「俺達であぶり出せたら、やっておくよ」
「頼むよ、アザゼル」
「イッセーの留学先の候補に、入れておいてくれよ」
「あぁ」
---イッセー---
冥界での生活。僕は学校で学んで、お父さんとお母さんは、シュウさんの仕事を手伝うことになった。
「イッセー、世界は広いぞ。この僕が苦戦をする相手がまだまだいるんだよ」
お父さんが瞳を輝かせて楽しそうに、仕事の話しをしてくれる。お母さんも同じだけどね。冥界での生活、今迄よりも両親と過ごす時間が増えて、僕は嬉しかった。
学校では、人間界の義務教育を教わり、悪魔、堕天使、天界の基本事項、歴史、文字を教わっている。戦士の為の学校なので、格闘術、魔術、気術などの戦闘に必要な基本を習い、それぞれの得意分野を極めていくようだ。
専門コースになると、レーティングゲーム、実戦、特殊任務など様々なシチュエーションを想定した戦い方を学ぶようだ。
僕は、両親と一緒に働きたいので、特殊任務コースを選択した。これが一番厳しいコースであるそうだ。
同期で入学した純血悪魔のレイヴェルさん、ライザーさん兄妹とミリキャス君とお友達になり、互いに刺激しあって、学んでいる。
「イッセー、この世界の一誠に神滅具の使い方を習っておけよ」
ライザーさんからアドバイスをもらうことは多々ある。ここの先生達とは仲間だったらしいけど、ある事件で妹のレイヴェルさんと共に浦島太郎状態らしい。なので、昔の事をよく覚えているそうだ。
「この世界の一誠さんって、兵藤先生かな?」
「そうだ。たしか、エロの権化とか言われていたなぁ」
男ならエロくても良いと思うけど、権化って。まぁ、気にしないで僕は、兵藤先生の部屋を訪ねた。
「俺に教わりたいの?あぁ、ドライグ持ちだからか」
「お願いします」
「シュウに昔習ったのは、ドライグとか神器に宿っている魂と、会話をすることが大事ってことだ」
「会話ってできるんですか?」
「できるんだよ。俺も始めは半信半疑だったけどね。慣れてくると、神器に精神が潜れるようになるんだ」
「先生、凄いんですね」
「俺は凄くないよ。むしろ、君の方が才能があると思う」
「戦ってみな」
いつの間にかシュウさんがいた。
「一誠VSイッセーで、戦ってみな」
僕と兵藤先生は仮想フィールドに強制転移させられた。あとから、シュウさんも転移してきた。
「おい、シュウ。いきなりかよ」
「いきなりだよ。お前はいきなりの方が力を出せるだろう?予定だと緊張しすぎてダメな場合が多いしな」
「あぅ…その通りです」
兵藤先生は凹んだみたいだ。
「イッセー、こいつのドライグの使い方は特殊だ。マネはするなよ。赤龍帝を持っているのにサポートタイプという変わり種だからな。応用としては参考にはなるかな」
シュウさんがコイントスして、コインが床に落ちた。試合開始だ。
『おい、ボウズの中のドライグよ。起きていたら、出て来てやれよ』
兵藤先生の左手に籠手が出現して、話している。あれがドライグの声なのか。
『人間には協力できないのか?』
僕の中のドライグは言葉を発しない。シュウさんが近寄ってきて、僕の頭に手を置いた。とても暖かいオーラを感じる。
「今、潜ってみたけど、宿主のスペック次第だそうだ。イッセーの中にはドラゴンが5匹、九尾の狐が1匹入っていたぞ。まずはそいつらと会話をしてから、再戦だな」
僕らは兵藤先生の部屋に、転移した。
「そんなに入っているんですか?」
「九尾の狐は取り憑いただけだけど、協力はしてくれるみたいだ。一誠、黒歌はどこにいる?」
「黒歌は、授業中じゃないかな?」
黒歌先生って、いつも和服を着ている人だったっけ?
「白音にするか」
僕とシュウさんは、どこかの部屋の前に転移した。シュウさんはドアをノックした。
「白音、いるか?」
ドアが開いて、白音先生が出て来た。
「お兄様、どうしたんですか?」
シュウさんと白音先生、黒歌先生は義兄妹らしい。
「イッセーに、瞑想のやり方を教えてやってくれないか?イッセーに中のヤツラと会話をさせたいんだ」
「わかりました。瞑想室に行きましょう」
僕らは瞑想室に移動した。瞑想室は、室内なのに、緑豊かな植物、木々が生い茂り、実際の滝がある部屋で、瞑想がしやすい環境らしい。
「脚を組んで、その上で手を組んでください。手の中に気のボールを作るように集中してくださいね。ボールを感じるようになったら、滝の音、空気の流れる感覚を全身で感じてみてください。自然と自分の中の気の流れとかを感じることができるようになりますから」
僕は教わった通りに、手の中に気のボールを作ることに集中した。
『ようやく話せるレベルになったか?』
誰?
『【魔煌の絶禍龍】ネメシスだ。この中のドラゴンで一番強い俺様が、お前の中を仕切っているのさ』
なるほど。ドライグは起きている?
『起きている。さっき、潜ってきたやつにドヤされて、みんな協力する気になっている。俺様より強いドラゴンを召還してドヤしてもらうぞって言われてね』
「おい、ネメシス。来てやったぞ。ふふふ」
僕の目の前に知らない女性と紅髪の少女と黒髪の女の子がいた。
『マジかぁ…』
「おい、ネメシスよ。お前が一番強いドラゴンだって?笑わせるなよ。ほぉ、ゾラートとメリアもいるのか。懐かしいな」
『リヴァなの?』
「ほかに何がいるというのだ?ジズもベヒモスもいるぞ。神器でなくて人化でな」
『生き延びたかい?』
「いいや。私は主のシュウに蘇らせてもらった。アイツを呼び出すためにね」
『まさか、アイツもいるのか?』
「主のシュウ以外の言う事を聞かないので、人化ではなくて、獣門に封じている。時には鎧化するけどな。ネメシスよ、アイツと戦ってみるか?」
『…』
「お前ら、あんまりダダをこねて、主のシュウを困らすなよ。真龍も龍神も仲間になっているんだからな。あと、九尾の狐よ。主のシュウは鬼門の者だ。お前が逆らって良い相手ではないことを肝に銘じておけよ。じゃあ、またな」
女性と紅髪の少女と黒髪の女の子は消えた。
『イッセー、覚えておけ。あの三人がドラゴンの三強だ』
「ネメシスよ、順列は変わっているんだ。今のツートップは、真龍と龍神の子供2匹だよ」
シュウさんの声が聞こえた。
「イッセー、潜らなくても、会話はできるんだ。オーラを感じて、それを読み、それに念話を送るんだ」
そうなのか。僕の中にいる皆さん、僕に協力をしてください。よろしくお願いします。
『協力する。お前のボスを怒らせると怖そうだ』
「僕はドラゴンマスターだ。よろしくな」
ドラゴンマスターってなんだろう?
「ドラゴンマスターは、ドラゴンを調教したり使役させたりできるジョブだ」
『あぁ、俺達ドラゴンが唯一頭の上がらないヤツらだ。はぁ…』
ネメシスが溜息を吐いている。
「取り敢えず、左手の籠手はドライグ、右手の籠手はゾラート、背中の翼はアルビオン、鎧はメリアとゾラートで頼むな。ネメシスは遊軍で臨機応変にサポートしてやってくれ。狐は気のコントロールの手助けだ」
シュウさんが役割を分担してくれた。
「イッセー、もう1つの戦闘体型もあるけど、それは経験を積まないと発動できないから、取り敢えず、ドラゴン軍団を使えるようにしろ。それが、お前の課題だからな」
わかりました。
そして、僕は瞑想から覚醒した。