---ヤマト---
ナヴィから緊急連絡が入った。彼女は泣いているのか、聞き取りにくい。
『団長が転移寸前に狙撃されて消えました…』
はぁ?転移寸前だって?無防備じゃん…いや、透過しなかったのか?
『透過しなかったのか?』
『転移寸前で油断したのかもしれません。メイビスさんも消えたようです』
二人共?誰にやられたんだ?
『誰にやられたんだ?』
『不明です。完全にノーマークでの予想外の攻撃だったようです。調査チームを派遣しましたので、詳しくわかりしだい。お知らせします』
心のバーストでの消滅でないようなので、少し安心だが、どこの勢力にやられたんだ?みんなには伏せておこう。詳細がわからないと混乱しそうだ。
---ソーナ(シュウの世界)----
緊急連絡がナヴィから入った。仕事先で狙撃されて、シュウとメイビスさんが消えたそうだ。今、調査チームがスクランブルしたそうだった。
え…なんで…頭の中が真っ白になっていく。思考が停止していく。
「園長、どうされましたか?」
椿姫の声で現実に引き戻された。
「魔王領に行ってきます。留守の間、お願いします」
私は魔王領の魔王の間に転移した。魔王の間にはファルビウム様と、お姉様がいた。
「緊急連絡が入りました。シュウが…あの人が…」
最後まで言葉が出ず、その場で泣き崩れてしまった私。
「どうしたの?ソーたん?」
姉が優しく抱きしめてくれた。ちゃんと言わないと…
「任務遂行中にシュウ・ヨハネ・鬼門と神メイビスが消失しました」
「なんだと…」
ファルビウム様とお姉様が固まる。お二方から次の言葉が出て来なかった。
「撤収の為の転移寸前に狙撃された模様です。詳しい状況は、調査チームの報告待ちです」
ファルビウム様が、会話用の魔法陣を2つ発現させて、たぶん残り2名の魔王様を呼び出したようだ。すぐに転移魔法陣からサーゼクス様とアジュカ様が現れた。
「シュウ君が?」
「本当か?」
「どうする、サーゼクス?」
ファルビウム様が、サーゼクス様に尋ねた。
「しばらく、この5名だけの秘密にしよう。他勢力の者に他言はせぬようにな。世界のパワーバランスが崩れかねないから…」
「いやぁ~!」
叫び声と共にお姉様が…
「お姉様…」
「セラフォルー…」
お姉様は自分自身を氷詰めにしてしまった。まるで、シュウ君のいない世界を拒絶するように…
「なんてことを…どうやれば、出せるんだ?気持ちはわかるが…これでは、魔王失格だな。サーゼクス、ガイアを呼び出してくれ。欠員が出たので、あいつを魔王に昇格させる」
「パワーバランスの為か?」
「あぁ…ガイアが魔王なら、敵対する者は出ないだろう…たぶんな」
---ヤマト---
絶対神の間に強制転移された僕。目の前にはシュウさんの上司の絶対神様がいる。
「すまんな、突然呼び出して。急用じゃから」
「シュウさんのことですね?」
「そうじゃ…居場所は特定できたのじゃが…」
困惑の表情を見せる絶対神様。
「戻って来られないんですか?」
「いや、いずれ戻っては来るとは思う。仲間を大切に思う奴だからな。だが、当分は無理じゃ。不運な事故じゃ…シュウの転移陣に、とある神族の広域魔法陣が重なったのじゃ。あれは、さすがのシュウでも避けるのは不可能だ」
多重魔法陣?発動のタイミングが合ってしまったのか…
「そうじゃ…で、シュウとメイビスは魂の状態で転移したのじゃ。身体はキャッスルドランが回収したようで、無事じゃ」
魂だけダイブしたのか…それって…
「そうじゃ、弱っていた心の器が新しい器になるチャンスなんだが…寄りによって、別世界の兵藤誠・一香夫妻の子供の受精卵に着地したようじゃ」
はぁ?魔人の血?暴発するじゃん…
「困ったことに、パッシブスキルの『結界・封印無効』が有効な状態で…兵藤夫妻の魔人の血の封印術が掛からない状況じゃ…」
はぁ…ダメじゃん…暴発決定なのか?
「あとは、シュウにまかせるしかない」
「僕をその世界に行かせてください。僕の能力でシュウさんを護りたいです」
「ダメじゃ…お主にはシュウの代わりをしてもらう。チームアイの団長代理だ。いいな」
無理…僕にはシュウさんのような…うっうっ…
「泣いてもダメじゃ…救いはメイビスだな。あやつをシュウに接触させるようにする。彼女も魂の状態であるから、その世界のリーラに着地するように手を回してある。あと、チームドラゴン、ハートアンダーブレードはシュウの魂とリンク付けしてあるので、一緒におる。コチラの世界では、当面呼び出せぬと思ってくれ」
結構な戦力がついているのか…暴発さえ免れれば…
「予定では、あちらの世界で18歳くらいになれば、戻れるはずじゃ。シュウのチートさによっては、もっと早いかもしれぬ。そういうことじゃ」
そこまで聞くと僕は僕の部屋に転移させられていた。
誠にだけ話をした。
「別世界の俺達の子供?」
「そうみたいなんだ。魔人の血での暴発が防げれば、しばらくすれば帰って来られる」
「暴発したら…」
「魂の状態だし…チームドラゴンがいるとはいえ、魂に宿っている状態だから…ダメかもしれない」
「そんな…俺達が子供を作ろうと思わなければ…」
頭を抱える誠。
「それは違う。誠と一香は悪くない。愛し合った結果だろ?子供の問題だ」
僕もそうだけど…親を恨んだことはない。どう成長して、どう生きるかは子供の問題なんだ。そうですよね、団長…
---イッセー---
兵藤先生がみえてから、僕のドラゴン達とは会話をし続けた。鍛錬では相変わらず、ドライグしか使えない。
鍛錬の合間に兵藤先生に、最近感じている疑問をぶつけた。
「最近、チームドラゴンの方達を見ないのですが…」
「あぁ、シュウと行動を共にしているみたいだ。ここには当分、戻って来ないらしい」
長期任務なのかな?
「そうだ。シュウから書物を預かっていないか?」
僕はお守りにしていた書物を手にした。
「これを返してもらっていいか?シュウが必要みたいなんだ」
シュウさんが必要ならと思い、兵藤先生に手渡した。
「すまない。3冊1セットで効果があらわれるらしいんだよ。俺も詳しくはわからないけどな」
と、兵藤先生は書物を大事そうに抱えて、持っていった。
夕食後の鍛錬の後、イッセさんが近づいてきて
「なぁ、最近、上の人達がバタついているようだな」
上の人達…シュウさんのチームの1軍メンバーの人達である。
「そうだね。何かあったのかな?」
「どこかのチームで問題が発生したのかもな」
シュウさんのチームは1チームではなく、いくつものチームで編成されていた。適材適所の場合、パフォーマンスが良くなるらしい。
僕は僕を鍛えて、シュウさんのお目にかなう戦士になりたい。それだけだ。上の人達の喧噪も気になるが、僕には関係がない。意見をいえるほどエラくもないし、強くもない。
そして、学校の僕のクラスの人数は減った。シュウさん、アポさん、オーフィスさん、忍さんが消えた。ヤマトさんが目を光らせているので、混乱はないけど。
変化はまだあった。いつからだろうか…父さんと母さんから戦いの手ほどきを受けるようになった。兵藤流、式森流に加えて、父さんと母さんの戦闘術もスパルタ方式で学ぶこととなったんだ。どうして、こうなったのか、疑問ではあるが、身になることなので、真摯に受け止めて、学んでいく。
そして、月日は流れ、夏休みに…
「夏休みは、冥界の次期当主を除く全員、アウロス学園に留学だ。勉強漬けだ。いいな」
って、ヤマトさんから指示が出た。
「なぁ、アウロス学園って、ここよりもハードなのか?」
って、和樹君。
「ハードって言えばハードかな?」
と、僕が返答した。
「本拠に留学でなくて良かった」
とは、イッセさん。うん、本拠は地獄だからね。死んでも生き返らせて、死ななくなるまで、同じ相手とバトルって、地獄だよな。それに比べて、アウロス学園は学校なので、そこまでスパルタな鍛錬方法ではない。が、
「和樹君と龍牙君は、まず言語からだね」
「言語?」
冥界にある学校である。基本、悪魔の言葉での会話が主である。人間以外の種族であれば、方言程度ではあるが、人間には…
「悪魔の言葉を習うんですか?」
と、龍牙君。
「あと、神族の言葉と堕天使の言葉かな。上級コースだと神格文字もあったかな?」
「英語ですら危ないのに」
心が折れた龍牙君。
「戦士の学校なのに?」
和樹君が疑問を呈した。
「だって、チームメンバーは人間だけでないから、言葉での意志の疎通がないと、戦場では死ぬよ」
僕の言葉に、和樹君の顔の血の気がなくなっていく。
「戦場…死ぬ…」
「だって、戦士の養成の学校だよ。戦場に行くための予備練みたいな処というか」
「ヤマトさん、私達もですか?」
と、シアさんが質問をした。
「勿論だ。今回は働かないで、勉学だけしてくれ。学費はシュウさんが払う」
「それはそれで、後が怖い気が…」
シアさん達が震えている。前回の留学で、色々あったらしい。
「あと、ここにはいない者も連れて行く。シュウさんから指名リストがあるから、それに基づいて、イッセーを中心に、説得をしてくれ」
え?説得?誰を?疑問が僕の頭の中を駆け巡っていく。ヤマトさんから手渡されたリスト、そこにはカリンちゃん、エスデスさん、葉桜さんの名前があった。
この辺りより、終盤にかけて、主人公はイッセー君だけの予定です(^^;
団長ルートは『神器なき男2』へと続きます。