---イッセー---
「どっ、どういうことですか?」
葉桜さんに留学の件を切り出した僕。カリンちゃん、エスデスさんの了承はすんなりもらえたので、葉桜さんにも同じ内容で話したのだが…
「一緒に強くなってほしいんだ」
「強く?私は戦闘はあまり好きではないんです」
戦闘は僕も好きではないけど。
「なぁ、じゃ、なんで、この学校にいるんだ?」
イッセさんが割り込んできた。
「なんでって…」
「戦闘と縁のない者が、わざわざこの学校に来ることはないと思うが。まして、孤児院で育った身分なんだし。ここは私学だよ。桐生のように私立に通いたいっていうヤツもいるが、普通の家庭でお金もそこそこあるだろうけど。お前は奨学金だよな?九鬼財団のさぁ。将来的に九鬼で働くってことなんだろ?あの戦闘集団の末端として。それで、戦闘は好きではないは通らないと思うが、どうなんだ?」
俯いた彼女の表情は浮かない。
「イッセさんの言う通りだけど…でもねぇ、戦闘は好きではないのよ。これは本当です」
「西楚の覇王に申したい。あなたに接触したシュウの配下の者である。あなたの能力をお借りしたい」
ヤマトさんも割り込んできた。
西楚の覇王?って…項羽だっけ?
「あの者の配下か…」
葉桜さんの口調と声が変わった。
「あの者は元気か?」
「いえ、事故に遭いました」
え?事故?イッセさんも驚いたような顔をしている。団長はどうしたんだ?
「そうか…暗殺か?」
「それに近いです」
暗殺?…団長…え…なんで…
「そうか…私の能力をか?あの者の考えか?」
「えぇ。ここにいるイッセーの軍師になって欲しいようです。いかがですか?」
「軍師か…あぁ、そのくらいの位置が丁度良いかな。わかった、一緒に行こう…って…私…何を言っていたの?」
途中からいつも通りの葉桜さんの声と口調に戻った。
「じゃ、参加ってことで頼むよ。葉桜さん!」
あっけに取られている葉桜さん。ヤマトさんが、この場から立ち去ろうとしたので、呼び止めた。
「ヤマトさん……団長はどうされたんですか?」
「今夜、家でみんなの前で話す。アウロスに行けば耳に入ってしまうからな」
ヤマトさんがこの場を立ち去った。
夜、夕食後に、ヤマトさんが立ち上がった。
「留学に行く前に、みんなに話さないといけないことがある。シュウさんが赴任先で事故にあった。帰還する転移術の発動中に、別の転移術を合わせられて、身体と魂が別々の場所に転移してしまった」
身体と魂が分離されたってこと?それって…
「身体の方はキャッスルドランが回収をしたのだが、魂は別の世界へと転移されてしまった。団長の傍にいたメイビスさんも巻き込まれた」
この場は騒然とした。これが上の人達がざわついていた原因なのか…
「魂の飛ばされた先もわかっている。転移するための技術を本拠の研究チームが開発中で、完成次第、キャッスルドラン、チームオラリオが、その転移先へと向かう。あと、チームドラゴン、忍は団長に魂とリンクされているため、既に団長と共にいる」
チームドラゴンが一緒なら、一安心だけど…
「転移したというか、団長の魂が着地したのは、別世界の兵藤一誠、誠と一香の息子の受精卵だそうだ」
ちょ、ちょっと…暴発の危険が…
「暴発することなく成長できれば、戻って来られるはずだ。問題は、魔人の血を封印する術が、団長のパッシブスキルである封印無効のせいでかからない状態であるそうだ」
とっても危険な状態だ。僕みたいにドラゴンの器であれば、大丈夫だけど…
「まぁ、団長のことだから、チートな方法で乗り越えてくれると思うが、運まかせだと、団長の上司が言っていた」
絶対神様でも介入できないのか…
「この件により、2チームが本隊より離脱してしまうので、チームを補充する。団長が思い描いていたチームだから、みんな協力してくれ。チーム名はチーム一誠。隊長は兵藤一誠、副隊長は黒歌。チームメンバーは、イッセ・ルシファー、イッセー・ヨハネ、ヴァーリ・ルシファー、兵藤百代、ベンニーア、アルトルージュ・ブリュンスタッド、ティファニア、ルクシャナ、神城龍牙、エスデス、カリン、葉桜清楚だ」
チーム一誠?なんだかなぁなチーム名…
「俺は?」
和樹君が声を上げた。
「はぁ?お前、実力がないだろ?剣術が合格点に達したら、考える」
と、ヤマトさんが現状では拒否の姿勢を打ち出した。
「剣術?俺は魔術師だぞ?」
「魔術師?未だに発動出来ずに連敗中なのに?ふざけるなよ。これは、お遊びのチーム分けではない。魔術は発動できない、自分の身を守れない、そんな無駄死候補を前線に出せる訳ないだろ?今回の留学中に、その地位から脱却しない場合は、大人しく式森家の次期当主として胡座をかけば良い。いいな!」
くやしそうな和樹君…だけど、ヤマトさんの言い分は正しい。戦場では、護りたくても護り切れない場合も有る。まして、護ろうとしたが為に、全滅するかもしれない。その辺りが、和樹君には実感がないのだろう。
「次、回復チーム。リシアンサス、キキョウ、ネリネ、リコリス、鬼門九重、月宮あゆ、沢渡真琴、銀華、白音。そして、サポートチームは、シトリー眷属、グレモリー眷属、アガレス眷属だ。現時点では補欠なのは、式森和樹。このチーム分けを踏まえて、留学中にチームが機能させるためにはどうすれば良いか、考えながら、学んでくれ」
ヤマトさんからの報告が終わると、和樹君は、どこかに出掛けていった。
---和樹---
式森本家に戻った。父さんに突きつけられた現実を話した。
「う~、それは、真摯に受けなさい。無駄死をさせたくないって、心遣いなんだろうかな」
「しかし、僕は魔術師ですよ…剣術をマスターしろって…」
「式森流にはないが、そういう魔術もある」
「僕は式森家の次期当主ですよ?他流派の魔術なぞ、学んでも…」
「そんな姿勢では、お前に次期当主の座は、渡さん」
え?なんで…
「忘れたのか?式森の魔術は、魔人には効かないってことを。いいか?和樹。伝統を守ることは大切だが、進化させていくことは大事なんだぞ。その辺りのことは理解しているのか?」
進化…
「お前の師匠は、自ら術式を書き、独自の魔術をいくつも考え出している。魔術は進化するのだよ。お前は勘違いをしている。多彩な魔術を使うことが式森家の真骨頂ではない。より強力な魔術を放つことができるのが式森家の真骨頂だと思う。今のお前に、強力な魔術を放つことができるのか?」
できない…式森流の魔術はすべて覚えたが、強力かどうかと言われると、多彩さ、展開数に重きを置いていた気がする。まぁ、展開数を今更自慢できないのはわかっている。
「お前の師匠は、お前に新たなチャンスをくれたのだぞ。剣技に魔術を組み合わせろと言うことだ。」
剣技に魔術…その発想はなかった。同じ斬るにしても、様々な属性で斬れれば、相手を翻弄できる。斬ると見せかけて、魔術を放てば、もっと…
「気がついたようだな。もっと言えば、お前の師匠は、剣で魔人を屠ったのだ。魔術の効かない相手にだ。この意味は、もうわかるよな?」
剣で斬りつけて、身体の内部で発動させる…そういうことかな?
「父さん、吹っ切れたよ。そうだよね。そういう手もあるよね。で、僕の師匠って誰?」
「お前の嫌いなイッセー君の憧れの人だよ」
父さんが意地悪そうに笑みを浮かべた。
---イッセー---
イッセさんと共に、父さんと母さんに呼び出された。なんだろう?
「ヤマトさんから、聞いたと思うが、団長は当分戻れない。でだ、君達二人に団長から託された物がある」
父さんから、カプセル状の物を手渡された。母さんが水の入ったコップを手渡して来た。これを飲めってことかな?迷わず、僕もイッセさんも、それを飲み込んだ。
「これって、なんですか?」
「団長の種だ…」
種?なんだ?僕もイッセさんも、頭の中がハテナで埋め尽くされていく。
「分かり易く言うと…精子だ」
はぁ?なんだって?
「団長の細胞には違いない。これによって、お前達の何かが変わるはずだ」
え…何だろう…身体の内側から物凄い力を感じた。僕達二人は、トレーニングルームに強制転移された。後から、父さんと母さんが転移してきて、
「力を解放してみなさい」
と、父さんに言われた。解放?身体中に力を込めると、僕は初めて龍化した。イッセさんも今まで出来なかった通常サイズでの龍化ができていた。
「それが、団長が君達に残したプレゼントだ。その力を留学中に、駆使できるようにしてこい。そして、団長を迎えに行けるようになれ。いいな!」
「「はい!」」
僕とイッセさんは、目で合図をしながら、組手を始めた。新たに授かった力を試すように、団長の想いを感じながら。きっと、僕やイッセさん、言成の成長を、見守っていたかったはずだ。うん、いつか迎えに行けるようになりたい。
翌朝、目が覚めると、僕の身体は、どっちかというとひ弱だった肉体が、がっちりとした物になっていた。イッセさんも一回り以上大きくなったようだ。みなが、僕達を見て驚いている。
「何をしたんだ?イッセー」
僕を良く知るヴァーリでさえも、驚いていた。
「団長の想いを受け立ったんだよ、ヴァーリ♪」
「なんか、威圧感があるぞ…う~、あの部屋に行こうよ、イッセー」
えぇ~、今からか?朝飯を逃しそうだ。ヴァーリを宥めて、朝食を摂りに行く。
朝食後、この家に住んでいない、葉桜さん、カリンちゃん、エスデスさんと合流して、アウロスへと転移を重ねていく。
そして、アウロス学園に…懐かしい。アウロス学園の近くに寄宿舎ができていた。僕達もそこに、住む事になっていた。
「今日は観光なり休むなりしてよい。明日からは学んで貰う」
と、ヤマトさん。
---シーグヴァイラ(シュウの妻)---
アウロス学園に大量の留学者が来たと言う事なので、現場復帰の要請がソーナからあった。初めての一時退院となった。我が家に向かう足取りは重い。私が家の内部を破壊してしまったから。リアスは直してくれないもんな…自分で直すか。
家に入ると…新築のような様子だ。誰が直してくれたのだろうか?サンデッキへと向かうと、一時退院の期間だけ、私と同居してくれる娘のシーナがいた。
「誰が直してくれたの?」
娘にきいた。
「父様…」
えっ?あの人が?お見舞いに来ないのに?
「父様はお見舞いを断られたの。母様に逢いに来てくれたんだけど…」
なんで?
「父様のオーラで母様の容体が悪くなるといけないという、お爺さまの配慮だよ」
父の配慮?そんな…逢いたかったのに…謝りたかったのに…涙があふれ出してきた。
「母様、お部屋に戻ろう」
娘が肩を貸してくれて、私を部屋に連れて行ってくれた。部屋には、大きな箱が二つ置いてあった。遠い昔に見た覚えがある箱だ。箱の上にはあの人の字で、
『いつか約束通り、果たせていない新婚旅行をしよう』
っと、メモ書きが残されていた。うん、行きたい。一緒にねぇ。あの人の代わりに娘が、私を優しき抱きしめてくれた。
「父様は、母様の事を忘れない。だから、ゆっくり治そうね、母様♪」
そうだね。
「ねぇ、留学してきた生徒達って、あの人が面倒みている子達?」
娘に何気なくきいてみたのだが、娘は泣き崩れた。何か、私って失言したかしら?
「どうしたの?シーナ…」
「うっ…母様に言わないといけないことがあるの。父様はね、遠方に赴任していて、今回の留学について来れなかったの」
声の震え具合から、娘の言いたいことはわかった。赴任先で何か起きたのね。それで、戻れないのね、シュウ…待っているからね。
あの人の代わりに、あの人の教え子の面倒を見ないといけないよね。
「で、リアスは?どこかに出掛けたの?」
この家に住んでいるはずのリアス。でも、リアスが住んでいる割にきれいな室内。あの娘は掃除しないはずなのに。
「リアス叔母さんは、入院中なの」
「彼女も?私と同じ?」
「違う…更年期障害で不感症に…」
はぁ?まだ、そんな歳でないでしょうに…なんで?
「どうして?」
「あのねぇ…母様との同居ができなくなって…栄養が…」
あぁ…掃除だけでなくて、料理も出来なかった…あの娘は…
「お昼は、学園の食堂で食べていたらしいけど…」
「1日1食だったのね…」
「ですね。リアスおばさんらしいけど…でね、リアスおばさんのしていた仕事を頼みたいそうです」
事務仕事ね。
「そうね。一時退院の身では、教鞭は無理だものね」
「私も一緒に仕事しますから」
娘には回復能力がある。私に何かあったらの配慮なのね。ありがとう、シーナ、ソーナ。
「ヴァイラさん、いらっしゃいますか?」
ドアがノックされて、声がかかった。この声はクリス君の声ね。
「はい、います。どうぞ」
ドアを開けて、クリス君達が入って来た。クリス君の他に、レイベルさん、レイナーレさん、フィアさんが入って来た。
「僕のチームメンバーが、ヴァイラさんの一時退院中、メイドとしてこの家で働きます。ですので、なんなりと言いつけてくださいね」
「ありがとう…」