---サーゼクス---
リアスが帰還したあの日以来、母上は変わってしまった。上の空の状態が多い。何かを考えて、溜息を吐いたり、俺達の話が耳に入らないこともある。
一誠君に何を聞いたのだろうか。とても、母上にはショックなことだったに違いないのだが…俺は、事実を知っているであろうアジュカの元を訪ねた。
「うん?一誠君の事?今は言える時期ではない」
表情を変えずに俺に返答するアジュカ。
「何か重大な秘密があるのだろう?」
アジュカに詰め寄る俺。しかし、
「言える時期ではない。さっき言っただろ?聞いていなかったのか?」
と、教える気がないアジュカ。
「では、一誠君を護っている勢力はどうなんだ?」
「サーゼクス、落ち着け。時期が来れば、一誠君の口から聞けるはずだ。俺の口からは言えない。誰に対してもな。俺は消えたく無い」
消える?アジュカが?それだけの者がいるのか?
「お前よりも強い者がいるのか?」
「サーゼクスよ。絶対に、敵にしてはいけない勢力とでも言っておこう。強いとか弱いとかいう問題はナンセンスだよ。そうだな、俺が師匠と呼びたい存在だ。うん♪」
アジュカが笑顔でそう言った。アジュカですら心酔するような人物がいる勢力なのか。
「アジュカ…お前…」
後の言葉が出て来ない…
「あぁ、そうだな。俺は魔王でなかったら、あの方の元に一緒に行きたいと思った。そういう者がいる勢力だ。あぁ、情報がオープンにできる日が待ち遠しいよ」
アジュカの心は、俺の知らぬ人物を心待ちにしているようだった。
---イッセー---
クリスさんは、あの日以来沈み込んでいた。クリスさんの沈み込んだ原因をリアスに伝えると、彼女がクリスさんを気遣うようになった。
「私のせいで…ごめんなさい…」
「関係ない。僕の問題だ。君が気にすることではない」
「でも…」
「いつまでも、その他人を思いやる心を持ちなさい。いいね」
リアスを見ずに話すクリスさん。髪の毛の色を除けば、リアスとヴェネナラさんはそっくりであったから。
「そうだ。イッセー、アジュカの処に行って、駒王町に家を手配してきてくれ」
家?そうか、駒王学園に通う拠点ですね。
「了解しました。広さはどのくらいですか?」
「イッセーの世界の家くらいを考えてくれ。次の鍛錬場所はヤマトさんと相談してみる」
ここでの鍛錬でも高レベルだと思うのだが。剣は木場さん、体術は白音さん、魔術は…あぁ、いないな。この辺りが鍛錬場所になるのかな?僕はアジュカさんの居城に転移した。
アジュカさんの居城に転移すると、サーゼクスさんがいらした。
「やぁ、一誠君、いらっしゃい。今日はどんな用件かな?」
いつもの暖かい眼差しで、僕を見つめてくれるアジュカさん。
「駒王町に駒王学園に通うための家を準備してくださいますか?」
さっそく、用件を伝えた僕。
「わかった。サーゼクス、用意してくれないか?駒王町はグレモリー家の領土だろ?」
僕を見る目が冷たいサーゼクスさん。僕は何かしてしまったのだろうか?
「そうだな。用意する。でだ、一誠君、母上に何を話したのだ?」
あぁ、それは言えない。
「申し訳ありません。言えません」
「何故だ?母上に話せて、なぜ魔王である俺には言えないのだ?」
サーゼクスさんのオーラが攻撃的に感じてきた。
「おい、サーゼクス。いい加減にしろ!一誠君に何かするのであれば、俺はお前を消すからな」
アジュカさんはサーゼクスさんから僕を護るように、僕の肩を優しく抱きしめてくれた。
「はぁ?アジュカ、お前こそ、グレモリー家の問題に首を突っ込むなよ。一誠君、あの日以来、母上がおかしいのだ。何を話したのだ?」
あ…クリスさんのことだ。きっと…
「その件は、僕の関与できない問題なので、僕の口からは申し上げられません。ごめんなさい」
「一誠君が関与できない問題?どういう問題だ?君達はどんな秘密を隠しているのだ?」
「サーゼクス、いい加減に…」
「アジュカ、黙っていてくれないか?これは俺の母上にとっての大事な問題なんだ」
どうする。ここでサーゼクスさんを敵にしては、最悪なグレモリー家路線に戻ってしまう気がしてしまう。
「いい加減、マザコンを卒業したらいかがですか?」
この場にいなかった者の声が響いた。声の主を見ると、僕の隣にリアスが転移してきた。
「イッセーを虐める者は許さない。私は彼の眷属として、彼を護る義務がある」
リアスは滅の力を剣に具現化して、構えていた。
「リーア…そんなテクニックが使えるようになったのか…」
シスコンなサーゼクスさんは、僕の事よりリアスの事にしかないようだった。助かったのか?いや、根本の問題が解決していないから、ダメかな。
「私はグレモリー家を追い出された身です。私をリーアと呼ぶのは止めて頂いても良いですか、魔王様」
リアスの『魔王様』呼びにショックを受けたサーゼクスさん。泣きそうな顔だ。
「そんな呼び方は止めてくれないか?リーア…」
「では、イッセーに対して、攻撃的な態度を止めていただけますか、魔王様」
リアスは毅然とした口調で言い返した。その態度に、サーゼクスさんが纏っていた攻撃的なオーラは霧散していく。
「なぁ、リーア。何が君をそういう者に変えたのだ?」
「イッセーの師匠の存在です。対戦して、その圧倒的な戦闘能力を目の当たりにして、魔王なんて、ちっぽけな存在に固執していた自分に腹が立ちました。絶望的な戦闘能力、その師匠の元で鍛えられているイッセー達。私は彼らの中で一番弱いと言われているイッセーにすら恐怖を感じました。魔王様に伺いたい。今までに恐怖を感じ、死を予期することっておありでしたか?」
リアスは彼女が経験したことをサーゼクスさんに伝えた。
「ないな。俺よりも強い者と戦ったことはない」
「それは残念ですね。私が死を予期した感覚になったのは、イッセーの師匠が笑顔で会話されている時です。『戦わずして勝て』というのが、その師匠の持論らしいです。魔王様は死を予感するようなオーラを纏えますか?」
リアスはシュウさんのことを冷静に分析しているようだった。たった、あれだけの戦闘で相手の力量を測れるのはすごいことだと思う。
「纏えない。纏う必要がないだろ?」
「では、先程まで纏っていたオーラは、魔王様がイッセーと戦う気持ちがあったということで良いのでしょうか?」
「場合によってはな」
「はっきり言いましょう。元お兄様な魔王様。あなたではイッセーに勝てません。もし、本気で戦えば、死ぬのは魔王様です」
え?言い切らないで、ほしかったです。はい。勝て無いって…
「ど、どういう…根拠でだ、リーア?」
「根拠?彼らと鍛錬をして感じたことです、魔王様」
リアスが返答した直後、いきなり空気の質が変わった気がする。リアスもアジュカさんも顔から血の気が引いているようだった。これって…ははは…鬼降臨か。
「おい、今度は何の問題だよ。僕は忙しいんだよ!」
目の前に、既に怒りを纏ったシュウさんが転移してきた。
「もう、睡眠の度にあれこれと転移しやがって…熟睡したいのに…」
キレている。危険が一杯だ。
「なんだ?貴様は…」
顔が強張っているサーゼクスさん。しかし、シュウさんはスルーして、僕達の方に近寄って来た。
「はぁ…イッセー、リアス。報告しろ。何がどうなって、僕はここに強制転移されたんだ?」
しかしリアスは全身が震えていて、返答できない。
「団長…そのオーラは、リアスには無理です」
「そうか。では、イッセー。お前が報告しろ。もう寝る度にどこかに転移させられて、起きると必ず誰かが夜這いしているんだよ。僕の安眠を返せ~!」
キレている原因がわかった。夢の中の夢で、連日不眠不休なんですね…で、起きるとエロ行為ができない身体なのに夜這いされ、悶々として目覚めると…
「サーゼクスさんが、時期が来たら話しますとした件を、今聞きたいと…」
怒りのギアが1段あがったみたいだ。我慢の限界を超えたリアスは、意識を消失して僕に倒れかかってきて、僕は優しく彼女を抱き抱えた。
「そうか…サーゼクスが悪いんだ。おい、クソ魔王。イッセーとリアスに無理難題を持ちかけるなよ!」
更にギアの上がったシュウさんから放たれたオーラで、サーゼクスさんの目の前の空気が揺らいだ。それと共に腰砕けになるサーゼクスさん。彼の顔も血の気が引いていた。
「あぁ、そういうことか。クリスが原因か。だから、グレモリー案件はダメだっていったのに…アイツの心をかき乱すなよ~これは監督を変更する必要があるな。どう思う、イッセー」
読心術で、現況を読み取ったシュウさん。その上で、僕に意見を求めますか?
「どう思うって…クリスさんのことを思うと…」
「そうだな。アイツのことを思うと、アイツは副監督として残した方がいいな。母親に会いたいって心、わかるよ、僕もな」
しんみりとしたシュウさん。それと共に危険すぎるオーラが霧散していった。
「アジュカさん…グレモリー家を消していいかな?」
「消す…いや、それは…」
「だよね。消せないから、僕らが派遣されたんだろうし。はぁ…」
シュウさんはリアスの頭を優しく撫でながら、
「リアス、お前がクリスの心を癒やしてやれ。いいな」
リアスは無言であったが、頷いた。シュウさんへの恐怖心が消えていないみたいだ。
「イッセー、僕とヤマト以外から監督を選べ!」
え…シュウさんが良いんだけど…
「僕は鍛錬中の身だからダメだよ。そうだな…ガイアは魔王だし、アリスじゃ経験がないし、シルキーはアフォだし…どうするかな…あっ、ギャスパーがいたよな。アイツにしようっと。いいな、イッセー。クリスが立ち直るまでギャスパーの指示で動け」
ギャスパーさんかぁ。良い人選かな?
「おい、ドエス上司!僕は寝たいんだけど…」
そして、シュウさんは転移していった。戻れたのかな?
「何なんだ…今のは…」
顔色が未だにすぐれないサーゼクスさんが声を上げた。
「一誠君の師匠…俺の憧れの人物だ」
アジュカさんも顔色が優れない。あのオーラは危険だ。
「あっ…腰が…抜けた…」
「俺もだ…」
魔王様が二人共腰が抜けたようで、立ち上がれないでもがいていた。
「魔王様、わかりましたか?あれが私達のボス、ラスボスです」
リアスがサーゼクスさんに向けて言葉を投げた。
「ラスボス…あぁ、そうだな。まったく勝てる気がしなかった。生きているのが不思議なくらいだ。リーアが俺に言った言葉、肝に銘じておく。戦わずにして勝つかぁ…経験してわかった気がする。戦う気が起きない絶望的オーラ…あんなのがあるのか」
「今日のは優しい方です…キレていただけだし…ははは」
この前のヴァーリとプレイしていた時の方が、死を感じたし。キレた時はそうでもない時が多い。
「あれで、優しいのか…どんだけ、一誠君の師匠は怖いのか?」
「普段は温和ですよ。ただ、ちょっと、スイッチが入ると…」
「一誠君、1つだけいいかな?」
サーゼクスさんがまだ聞きたいみたいだ。こんな目に遭ったのに…
「言える範囲なら…」
「母上の抱えた問題…俺は肩代わりできるのか?」
「できません。ヴェネラナさん以外は無理な問題です」
「そうなのか…」
「僕からお願いがあります。ヴェネラナさんを1週間預かれませんか?」
「母上をか?」
「1週間あれば、問題を解決できるかもしれません」
「う~、父上と相談してみる。それで良いか?」
「はい」
------
そうして、僕はリアスとヴェネラナさんの3人で、帰宅した。
「どうして…」
ヴェネラナさんが一緒だったことに、クリスさんが動揺しているようだ。
「クリス…あなたの心を…ねぇ、閉じてしまっている心を…」
ヴェネラナさんはクリスさんを実の子供のように優しく抱きしめた。たぶん昔、僕にしてくれたように…
「クリスさん、母上がいる間だけ、私のお兄様になってください」
リアスがクリスさんに声をかけた。クリスさんは涙を流しながら、頷いた。そして、クリスさんの部屋にヴェネラナさんとリアスが消えていった。
「で、なんで、僕が監督になったの?」
って、ギャスパーさんから声がかかった。
「え?僕は関与していませんよ」
「うん?だって、イッセーしかいないだろ?団長とそういう話をする人物ってさぁ」
ジト目で僕を見るギャスパーさん。
「いやいやいや…僕に人事権なんか無いですよ。下っ端ですし…」
「う~ん、怪しい…」
「それよりも、魔法の鍛錬はどうなりましたか?」
「魔法の鍛錬?要らないでしょ?ドラゴンなんだし」
は?どういうこと?
「魔法なんか、それしか手立てのない者が使う方法だよ。イッセーの場合、ドラゴンなんだから要らないと思うんだ」
「いや、シュウさんとか」
「団長の場合は、魔法が先だから。イッセー達と違って、戦う術が他になかったからだよ」
あぁ、そう言えば…
「団長の場合は後天的に能力が増えていったから、魔法も肉弾戦を剣も使えるんだ。でも、イッセーの場合は、先天的にドラゴンなんだから、極端なことを言ったら肉弾戦向きだ。無理に剣を極めるより、ドラゴン的な戦い方を覚えた方が良い」
それは考えてなかった。そうだ、僕はドラゴンだった。ハーフだけど…
「イッセもそうだけど、彼の場合は、ハーフ悪魔だ。魔力もある。だから、魔法も使えるんだ。でも、魔法をあまり使わないでドラゴンショットで済ましているだろ?」
そうですね。
「団長が良く言っているだろ?適材適所ってさぁ。イッセーの場合、ドラゴンを主体で、剣は補助と思うと楽になれると思う。どうかな?」
「そうですね…」
「イッセーの場合は、宿しているドラゴン達も多い、彼らとの連携が強みだと思う。白音さんに体術を習いながら、連携も鍛錬するのが良いと思うよ♪」
---サーゼクス---
1週間後、母上が晴れやかな表情で帰宅された。もう思い悩んでいる素振りの欠片すらない。
「どうされていたんですか?」
「どうって?親子水入らずで生活してましたわ。良い息子と娘を持って幸せだと思う」
「息子って?俺以外にいるんですか?」
「内緒♪」
母上の顔が眩しい。なんだ?息子?誰だ?
「一誠君のことですか?」
「彼は孫かな…たぶん、孫だと思うわ」
え?では誰のこと?
「リアスと一緒になってくれると良いんだけど、もう決まった人がいるんだって。少し残念だわ」
は?
「誰の事を言っておられるんですか?」
「うん?ふふふ♪」
こんなにかわいらしい表情をする母上は初めてだ。誰だ?
父上に母上の変化と謎の息子の話をした。
「息子?サーゼクス以外にいないはずだが…う~ん」
悩む父上。
「わかった。私から聞いてみる」
---ジオティクス---
「息子?あぁ、サーゼクスに聞いたのね」
妻は怪訝な顔をしていた。
「息子って、どういうことだ?」
「はぁ…あの子はおしゃべりだわ。魔王として、どうなのかしらね」
「サーゼクスの事は良い。私の疑問に答えてくれないか?」
「誰にも言いませんか?おしゃべりサーゼクスにもダメですよ」
「あぁ、誓う」
そして、神メイビスと神シュウに対して誓わされた。神シュウってなんだ?神メイビスも死んだはずだし…
「誓いを破れば、あなたは消えますよ。一種の呪いと思ってくださいね」
なんか、恐ろしいことを言っている妻。悪魔が神に誓いを立てること自体、何か恐ろしいのだが。それも約束を破ると神の呪いって…
そして、妻から驚愕な真相が語られた。別世界から来た妻とリリンの間に産まれた男。彼の閉ざされた心を開く為に1週間かけて、愛情を注いで来たという。
「信じるも信じないもあなたの自由ですが、他言は無用ですよ。約束を破って、あなたを消したくないですからね」
妻の声が冷たく感じる。彼の事を話している時は、とても暖かく感じていたのに。
「なんで、そこまで、君がするのだ?」
「彼に恩義を感じていますから。恩義の内容は今言えません。約束を破る訳にはまいりませんから」
「なぁ、バアルとルシファーだと禁忌のはずだが」
「そう…禁忌だったのよ。その意味も知った。そして、それを破って産まれた子供の悲劇もね。だから、彼がとても愛おしく感じるのかもしれない。リアスが改心したのも彼のおかげかもしれない。とても優しい子なの。なのに、別世界のグレモリー家は愚かな判断をした。色々な世界のグレモリー家のした事を聞いた。だから、私のいるこの世界だけは、愚かなグレモリー家にはしたくないの」
別世界のグレモリー家の愚かな行為の数々も聞いた。確かに、それは愚かな行為でありつつ、悪魔としては正当である行為だった。
「この世界だけは…彼らにこんなグレモリー家もあるのよって知らせたいの。愛情深い家柄のはずなのに、間違った愛情の注ぎ方をしていたなんて」
妻の悩んでいたこと、この家のことだった。リアスがあんな風に育ったのは、間違った愛情の注ぎ方だったのではと思い悩んでいたようだ。そんな時に、彼と知り合い、他の世界でも、間違った愛情を注いでいたことを知ったようだ。
「悪魔だからしょうがないって、悪魔とはそういうものだって、そんなことはダメなのよ。道を外れたら躾けないと、親友の子供の死体を注文するって、悪魔だから許されるって思わせたのは、私達が間違った愛情を注いだせいかもしれない」
「そうだな。誠殿、一香殿に会った時に、どんな顔をすればいいか、わからなくなるところだったよ」
「まだ会うまでに、しないといけないことがいっぱいあるの。あなた、手伝ってくれる?」
「もちろんだ。リアスが改心しても、今までにしてしまったことは消えないからな。娘の行為は親の責任だと思う。償わないとな」
「あなた♪」
---サーゼクス---
翌朝、父上も母上も何事もなかったように、普段と変わらない日常に戻った。謎の息子の話を聞くと、
「時期が来れば、話せるから」
と、言われるだけだ。誰と誰の子供なんだ?
「グレモリー家の問題だ。家を出たお前には関係はない」
とも、言われた。何が起きたのだろうか?
モヤモヤした俺は、外交担当の魔王セラフォルーに相談した。外交担当だけに、割と情報通な面があるから。でも、
「サーゼクスちゃん、何もなかったんじゃないの?担がれたとか?」
お気楽な答えが返ってきた。
「担がれる意味がない」
「固く考えすぎじゃないの?そういえば、リアスちゃんに会っていないけど、元気なの?」
言葉に詰まった俺。我が家では死んだ事になっているが、死んだとは公式に発表していなかった。
「あぁ、元気だよ。先週も会ったし」
歯切れの悪い返答しかできない。
「ふ~ん、そうなんだ。うちのソーたんがリアスちゃんと仲良かったんだけど、最近見かけていないって、心配していたのよ」
「冥界に今いないんだ。ちょっと留学に行っていてね」
「留学?どこに行ったの?」
自分で自分の首を絞めた気がした。再び、言葉に詰まる俺。
「嘘なんでしょ?サーゼクスちゃんは嘘が下手だから」
セラフォルーから冷たい視線を感じる。
「どうして、嘘を吐くの?何があったの?」
言葉が出せない俺。
「リアスちゃん…まさか…」
「うっ…」
「死んだの…?」
否定できない俺。
「なんで?」
俺はいたたまれなくなり、その場から転移して逃げた。しかし…
家に戻ると、父上、母上、グレイフィアはもちろん、アジュカ、セラフォルー、ファルビウムがいた。
「はぁ…サーゼクス。お前には失望した。なんでお前は、そんなにおしゃべりなんだ?」
父上から怒声に似た言葉を浴びせられた。
「では、本当のことなんですね?」
ファルビウムが父上に確認していた。
「ファルビウム、すまない。俺の一存で報告を上げなかった」
アジュカが俺の代わりに対応してくれた。
「アジュカ…そうか。お前の判断は正しい。俺も同じことをしたと思う。魔王輩出家で、娘の暴走に対して、殺害してしまったなど、大問題だからな」
「ファルビウム様、まさか娘が、誠殿と一香殿の息子さんの死体を注文したなんて、夢にも思いませんでした」
父上は素直に告白をしている。
「で、娘さんは今どこにいるのだ?」
「信用出来る勢力によって、生き返らせてもらい、そこで保護してもらっています。高校に通う歳になったら、駒王町に戻ってくることになっています」
母上が返答した。
「信用出来る勢力とは?」
「俺が保証する。敵ではない。味方だ」
アジュカが返答してくれた。ファルビウムは、俺に質問をしようとしない。セラフォルーからは、相変わらず冷たい視線が飛んでくる。
「アジュカが保証するのか。なら、信用しよう。で、サーゼクス、お前は何か言うことがあるか?」
「どういう意味だ?」
「セラフォルーの質問に答えずに逃げたそうじゃないか?お前、魔王って立場をわかっているのか?質問に答えず逃げるって有り得ないだろ?」
ファルビウムの言う事はもっともだ。俺は魔王として、やってはいけないことをしてしまった。
「お前の行為で、埋もれていた魔王輩出家で起きた事件が、明るみになるとはな。ジオティクスさん、生き返っているなら、問題は無いです。ただ、その保護をしている勢力と我々も接触はしないといけない。魔王としてね」
「それは、困ります」
ファルビウムの申し出を、拒否する父上。
「困るとは?」
「そういう約束です。公になると困ります」
父上と母上が俺を睨んでいるようだ。
「魔王が信じられないのか?」
頷く父上と母上。頭を掻きながら、俺の方へ振り返るファルビウム。
「実の息子の魔王が、この有様じゃな。信用できぬというのもわかる。アジュカ、どうなんだ?」
「接触はしない方が良い。厚意で保護してくれているんだ。刺激をしないでほしい」
「お前は、事情を知っているのだな」
「そう思ってくれてかまわない。責任は俺が取る。だから、刺激をしないでくれ。彼らを護ると約束した。破れば、俺は消える。そういうルールだ」
アジュカの発言に驚くファルビウムとセラフォルー。
「お前ほどの魔王が消えるって?」
「そうだ。そういう勢力だ。敵にしない方が良い。俺なんか瞬殺だよ」
真剣な顔でファルビウムに対応するアジュカ。
「戦ったのか?」
「戦わないでもわかる。その勢力のボス、俺の憧れの人物なんだが、その方のオーラだけで、俺とサーゼクスの腰が抜けた。初めてだよ。立ち上がるのにジタバタしたのはさ」
笑みを浮かべたアジュカ。
「お前とサーゼクスがか…オーラだけで…」
ファルビウムが絶句した。あれは勝てる気がしない。
「ねぇ、アジュカちゃん、憧れの人物って?」
セラフォルーは違う箇所に喰い付いた。
「俺の作る悪魔の駒よりも、優れた駒を作れる人物なんだ。俺はもっと、あの人と話しがしたい。同じ時間を生きたいと思ったんだ。初めてかもしれない。そんな風に思ったのは」
「わかった。私はアジュカちゃんを信じるよ。でも、外交担当なんだから、私を通して欲しかったなぁ」
セラフォルーは頬を膨らませた。
「あぁ…それは…まぁ、色々事情があるから…ははは」
「俺もアジュカを信じよう。でも、構成員の情報はもう少し欲しいな。軍事担当としてはな」
「構成員と言うか、保護している人物なら、答えられる。リアス君、一誠君、ヴァーリ君、朱乃君、朱璃さんだ」
「それって、駒王町で起きた謎の爆発事件の不明者達か?」
「そうだ。彼らが保護をしてくれた。保護するのが精一杯で、爆発の阻止はできなかったそうだ」
「わかった。それが公にできない事情なんだな。襲った勢力の目撃者達で、未だに狙われているのか」
「ファルビウムは理解が早くて助かるよ」
そういう勢力なのか、あいつらは…
「今後もアジュカに窓口を頼む。ただ、何か困ったことになりそうだったら、報告は上げろよ」
「ああ、そうするよ」
話し合いも終わり、三人の魔王達は転移して行った。
「この世界のグレモリー家も愚かなのかしら…」
母上がそう呟き、父上の胸に頭を預けて泣いていた。
サーゼクスさんを、ヘタレにしすぎたかな(^^;;