---セラフォルー---
アジュカちゃんの言う戦ってはいけない者…そう思う。サーゼクスちゃんが腰を抜かした…そうだろうな。実際に相対した今、私はわかる。あの絶望的な戦闘力は何?どうすれば、あんなに強くなれるんだ?
一人で考え込んでいたのだが、ファルビーから呼び出されたので、彼の元に転移した。
転移した先には、ファルビーとソーたんしかいなかった。
「アジュカちゃんとサーゼクスちゃんは?」
彼に尋ねた。
「あの二人抜きで話したい。アジュカは真実を知っているのだろうけど、口を割らないだろう。サーゼクスは体験はしたが、何も知らない感じだし」
私とソーたんが、何かを知っているようなことを言うファルビー。
「私達も知らないけど…」
「いや、お前の妹が調べてきたよ。無茶をしやがったな。たぶん、敵対行動と取られたかもしれない。その為の善後策を決めておきたい」
え?ソーたんが…何をしたの?私は妹を見る。顔色は悪い。身体が震えている。怖い思いをしたのだろう。
「お前の妹のおかげで、構成員の一部がわかった。ルシファー家が関与しているようだ」
ルシファー家?リリンしかいないはずだが…
「リリンの孫、ヴァーリ・ルシファー。調査をした結果、駒王町で以前あった爆発事件のあった家の住民だったようだ。人間とハーフ悪魔の死体が出て来た、あの事件だ」
あぁ、そういう事件あったわね。
「ハーフ悪魔の方がリリンと人間の間に産まれた子供のようだ。その事件の生き残りがヴァーリ・ルシファーと言う訳だ」
なんとなく話が見えた。リリンとリリンに恨みを持つ者の抗争になるのか?
「もう一人。異世界のルシファー家の現当主、イッセ・ルシファーだそうだ」
異世界?異世界から、ヴァーリ・ルシファーを助けに来たのか?
「更にもう一人…リアスの兄、クリス・グレモリー…銀髪で天使の翼を持つ純血悪魔だそうだ」
えっ?グレモリー家なのに銀髪…それって…
「昔話を覚えているか?ソーナ君から、話を聞いて、ふと思い出したんだけど。初代魔王ルシファーは天界から堕とされたって話…」
あぁ、小さい頃に聞いた童話だったような。
「古い書物を調べてみた。ルシファーが堕とされた時、彼女を慕う仲間達も一緒に堕とされたそうだ。もし、その話が真実で、元天使の悪魔の家の者同士が交配をするとどうなると思う?」
それは…イレギュラーで先祖還りを起こして…あぁ…天使の翼を持つ純血悪魔が産まれる。そして、その悪魔は最強の悪魔になる…
「セラフォルー…気づいたようだな。戦ってはいけない相手の正体だ。たぶん、これが正解だろう」
「私の戦った者も天使の翼を持っていた…」
「俺達悪魔が絶対に、いや束になっても勝て無い相手だ」
「無理やり事実を知った私達って…」
『詰んでいるよ』
突然、念話が頭に響いた。
今まで、この場にいなかったリアスちゃん、アジュカちゃん、銀髪の青年とイッセー君が、転移してきた。
「愚かなマネをしたな、ソーナ君」
アジュカちゃんの声は冷たい。
「アジュカ…結界を幾重にも張ってあったはずだが…」
ファルビーが叫んだ。
「結界?そんな物は意味をなさない。『結界無効』の能力者の前では空気と同じだ」
銀髪の青年が答えた。
「『結界無効』だと…」
ファルビーの声は震えていた。
「なんで、待っていられないのかな?知りたがりするぎるだろう?強欲だな、この世界の悪魔は」
この世界?彼も異世界から来たのか?
「そう、僕も違う世界から来た。クリス・グレモリーという。この世界では、グレモリー家の養子として、リアスの兄になった」
養子…
「さて、君達は何がしたいのかな?僕達と全面戦争か?一瞬で終わるぞ」
たぶん…一瞬だろうな。ソーたんとのレーティングゲームも一瞬で終わったらしい。
「待て…戦う気は無い。ただ、軍事担当として、戦力を知りたかっただけだ」
ファルビーが言い訳をした。
「戦力を知るってことは、戦う気があるってことになるけど。アジュカさんが敵ではないと言われていただろ?なぜ、敵対行動をするかな?」
「興味本位…」
「はぁ?軍事担当が興味本位で、同盟国の軍事力を、こっそりと調べるって?この世界の悪魔は何をしたいんだ?ねぇ、アジュカさん」
「すまない…まさか、こんな愚かなマネをするとは思わなかった」
アジュカちゃんが、クリスと名乗った銀髪の青年に謝った。
「で、どうするの?この場で戦ってみる?そちらは、魔王2名と次期当主1名で、僕達は、純血悪魔2名とイッセーの3名で相手するけど」
純血悪魔2名って…クリスとリアスちゃんってことか?
「アジュカさんは、戦わない。彼はこの先も大事な役目があるからね」
「おい、魔王相手に勝てると思っているのか?」
ファルビーが叫んだ。彼らはたぶん、勝てるんだと思う…
「口だけ魔王様、僕らのいる部隊の入団条件は、魔王以上の戦闘力が、最低限必要なんですよ。鍛錬を重ねている僕らが、魔王2名ごときに負けると思いますか?」
ファルビーが固まった。彼らの放つオーラに包み込まれたようだ。
「オーラに包み込まれて恐怖を感じているようなヤツに、負ける訳ないでしょ?僕達の師匠は、こんな物では無いんですから。そんな死を感じるオーラに包まれながら、僕達は日常生活を送ってきたんですよ。いかなる事態にも動揺しないようにね。さて、戦闘態勢に移るぞ」
彼らの姿が変化した。戦闘を行う態勢に移行していった。戦う気が満々のようだ。リアスちゃんは滅びの力を具現化して、剣と鎧にして纏った。クリスという青年は、天使の翼を展開して、聖なるオーラを纏っていく。そして、一誠君…闇なるオーラを纏っていた。オーラはドラゴンの姿へと変貌して、一誠君はダークドラゴンへと変身をした。
「戦いたかったんだろ?戦おうぜ!ふふふ」
ソーたんは、滅び、聖・闇という悪魔にとって絶望的なオーラを前にして、意識を失っていた。ファルビーは…こいつも意識はないようだ。私は、幸いどこかが壊れたせいで、正気を保っていた。
「なんだ、終わりかよ…弱すぎだろ」
クリスが呟いた。彼らは纏ったオーラを霧散させていく。
「ねぇ、私の身体を自由にして良いから、ソーたんは助けて…」
彼らに、ソーたんを助けてくれるように頼んだ。
「セラフォルーさんの身体?要らないよ。興味ないもん」
がーーん!
何か酷い言いようだ。興味ないって…
「僕は心に決めた者がいる。母さんに、リアスとの結婚を勧められたけど、固辞したよ。イッセーなら興味あるんじゃない?」
え?意外に身持ちの堅いヤツ。
「ぼっ、僕も…心に決めた相手もいるし、リアスがいるから…ごめんなさい。セラフォルーさんをどうのこうのって考えていません」
こりゃまた、ショックだ…リアスちゃんに負けたとは…
「そうだね…たぶん、僕達の仲間でセラフォルーさんに興味あるのは、団長だけじゃないかな?」
「団長?って、誰?」
「セラフォルーさんを破壊しまくった人…」
「あっ…あぁ…アイツか…鬼なのに天使の翼って、どういう種族なの?」
有り得ない物の正体を聞く。これ以上破壊されても、死だけだろうから、開き直った私。でも、彼らからは優しくて暖かいオーラが放出していた。私だけは、敵として認識していないようだ。
「見た目のまんまですよ。鬼と天使のハーフ。もっとも優れた種族です」
有り得ない種族…いや、聞いたことがない。
「攻撃が一切効かないないのは、種族の特性なの?」
「違います。あの特性は、努力の賜り物です。僕達、仲間を護る為に、色々な物を捨てた結果、あぁなりました」
「アイツの戦闘力ってどの位なの?」
「絶望敵な位です。ペナルティーを気にしなければ、一瞬で宇宙をまるまる2,3個消しますよ」
は?なんだ、その能力…それよりもペナルティーって?
「ペナルティーで縛られているんです。一番凹んだペナルティーは、セラフォルーさんの介護だったらしいです…」
えっ?私の介護?どういう意味…そういえば、以前、外交の窓口を私にして欲しいって口にした時、アジュカちゃんが笑っていたのは…
「団長の世界で、セラフォルーさんは義理の姉になります。この世界のセラフォルーさんと違って、おバカで…暴走した挙げ句に要介護悪魔に…」
もうクリスからは敵対心を、まるで感じられない。いや、いつの間にフレンドリーなオーラになっている。それって、そういうこと?
「そういうことです。団長の世界では、ソーナさんは団長の奥様です。ですから、僕達はこの世界ではシトリー家とは争いをしたくないんですよ。僕達にとって一番怖い敵は団長ですから。その団長を敵にするような行為はしません」
「私を窓口にしなかったのって?」
「殆どの世界のセラフォルーさんは、おバカの代名詞でしたから…」
苦笑いするクリス。状況がわかって、肩の荷が降りた気がした私。彼らは敵ではなく、
「って言う感じです。ですから、僕達は敵対関係にはなりません。なんで、来たかは時期が来るまでお話できません。命を狙われている者を数名、保護していますから。僕達に用がある場合は、アジュカさんを通してください。グレモリー夫妻は巻き込みたくないから、お願いします」
そう言うと、彼ら4名は転移していった。
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彼らが去ってしばらくすると、ファルビーとソーたんの意識が戻った。
「ファルビー、私が代わりにお話を一杯したよ。彼らは敵にはならないことがわかった。戦力もわかった。ケンカ売っちゃダメだよ~」
「お前…お前をそこまで破壊した勢力だぞ。許せるのか?」
私の破壊された箇所…自慢の黒髪は白髪になったこと、処女が奪われたこと、そして、心の中で何かが壊れたことだ。
「許せるよ。理由を知ったら、怒れないよ♪」
「で、どのくらいの戦力なんだ?」
「彼らのボス一人で、一瞬で宇宙を2,3個消滅だって…絶望的でしょ?」
「…」
絶望すぎる戦闘力を前に、絶句したファルビー。
「まぁ、ぶち切れた場合らしいけど」
「星じゃなくて、宇宙だと…」
「あっ、なんかペナルティーが怖くて、宇宙消滅はさせないみたいだけど」
「ペナルティーって…おぃおぃ…あぁぁぁ~、思い出した。破壊神のシヴァから聞いたことがある。絶対神の特務機関の団長、鬼畜と呼ばれているそうなんだが…ソイツだぁぁぁぁ~!」
頭を抱えるファルビー…どした?
「敵の罠に嵌まって、窮地に陥った時があって、その時に彼の配下の者達が、絶対神を脅迫して、彼を救ったらしいんだが、彼にはペナルティーが科せられたって…」
あぁ、それだな。きっと…
「って、言うか絶対神を脅迫って出来るの?」
「彼らの部隊なら出来るそうだ。配下の者の一部は一人でも宇宙を1つ位なら消滅できるそうだ。でも、それをヤッチャウと団長にペナが行くのでやらないって話だ」
「で、このまま敵対するのかな?」
「しないよ。悪魔だけの問題ですまないから」
「詫びを入れた方が良くない?」
「そうだな…」
「窓口は私でね♪」
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自分の家で、ソーたんとまったりしている。ソーたんは落ち込んでいた。リアスちゃんの能力に目を見張ってしまったから。滅びの力を具現化して武器、防具にして、纏うようになれたリアスちゃん。
仲間を護る為に王たる者は、より強くならないといけないって、リアスちゃんは彼女なりに結論を出し、それを叶えるよう能力を進化させていた。
一方、ソーたんは、王たる者は指揮力、指導力があれば、下僕を護るほど強く無くても良いって考えだったが、この前のレーティングゲームの結果でわかる通り、ソーたんの考えでは、リアスちゃんのチームに勝てなかった。
「作戦を指揮する以前の問題よね。まさか、逃げきれない位の破壊力で開幕砲撃するなんて…」
ゲーム中は転移術による移動はできない。能力を使った移動に限定されるのだが、本陣にいたソーたんは、あの砲撃に気づいたようだったが、破壊範囲からは逃げ切れなかったそうだ。
「防御魔法の出来る者を傍に置いていたのに、防げなかった…」
いや、あの破壊力は防げないでしょ。魔王4名全員でも無理かもしれない。仮想フィールドに穴が空いたらしい。あんなに強大な破壊力は想定していなかったって、アジュカちゃんが言っていた。
「私、間違っていたのかな?お姉様…」
経験者談として、
「間違っていたんだよ、ソーたん。王たる者、強くて優しい者であるべきだよ」
私は私を破壊した者を思い描いていた。別世界の私の介護がペナって、なんか微笑ましいし。
「あと、下僕って、思うのも間違っているのかも。彼は配下の者を仲間って言っていたし」
「彼って?」
え?顔が熱くなる私…
「お姉様、どういうことですか?」
「へ?何が…」
ソーたんの問い掛けに、動揺している私。ドキドキと心臓の鼓動が大きくなっていく。
「リアスのことを擁護するようになったみたい。何がお姉様をそうさせたんですか?」
「何かな…そうだな、私よりも絶望的に強い者に逢えたことかな」
「その彼ですか…」
耳まで熱い…彼の事を思い出してしまった。あの時は怖いだけであったが、クリスからの話で、怖いだけの存在では無い気がしたのだ。なんか人間臭いというか。
「その彼は王なんですか?」
「どうだろうなぁ…あっ…」
神って呼ばれていたな。本人は否定して生きているって言っていたけど。うん?否定してって…それって、神って事なのか…
「王ではないよ…神だ」
「神?初代魔王4名で倒したはずですよね?」
「そう言われているけど…実際はどうだったんだろうか?」
アジュカちゃんは、魔王を引退したら、彼の仲間になるって言っていた。神様…シュウ様って呼んでいた。神は死んでいないんだ。
「そう言われれば、純血悪魔で天使の翼って?先祖還りって?」
ソーたんも少し気づき始めたようだ。悪魔至上主義が生み出した闇を。
「元々天使だったんだよ、悪魔って。全部が全部ではないけど、一部の悪魔はね。分かった居るのは、ルシファー、バアル、アガレスだ」
「そんな事を、学校で習わなかったです」
「魔王だけが、引き継ぐ情報があるんだ。そこには記されている。で、先祖還りが起きるのを防ぐため、その3家の間では交配をしないように、禁忌な事項になっている」
「じゃ…あのクリスって青年は…」
「銀髪はルシファー家の証だ。で、ヴェネラナさんの言動から、バアルの者で間違え無い。最強の魔王ルシファーと滅びの力を持つバアルの力を併せ持ち、聖属性だ。最強の純血悪魔で間違い無い。あと、イッセー君なんだけど、彼も何か隠している気がする。誠殿、一香殿には闇属性は無かったし」
そこで、有る言葉が頭の中で蠢く…『禁忌』…
その日から、私とソーたんとで、図書館で調べ物をし始めた。『禁忌な配合』についてだ。配合における禁忌の場合、イレギュラーな者が産まれる場合が多い。そのイレギュラーな者を生み出さない為に、禁忌にしているのだが、大抵の場合、その者が恐怖な対象になる場合が多いのだ。
そんな私達は大公アガレス殿の目に止まった。
「毎日、何を調べているのかな?」
大公アガレス殿、魔王と悪魔上層部のパイプ役である。魔王は戦闘力が異常に高い者がなる。上層部は昔から勢力のある家の者が代々受け継ぐ役職である。それとは別に、初代魔王家ルシファー、大公家アガレス、大王家バアルが、別格として存在して、冥界を運営しているのだ。
魔王は外交、軍事、戦略、防衛など、対別種族の戦力であり、冥界の政治は上層部が執り行うしきたりである。魔王は政治に口は出せない。しかし、魔王の決め事は絶対的なルールであるのだが、上層部が承認しないと、ルールとして認められない場合もある。冥界にはルールはあるのだが、その微妙な関係故、ルールの解釈に抜け穴が多数。無法な状態に近かった。『悪魔ってそういう者。契約以外は破り放題』なのだ。冥界だけなら、それでも良いが、多種族が絡む問題、眷属問題でも、そういうローカルルールを盾にする上層部は多いのが、魔王としては頭が痛い問題である。しかし、悪魔は一番優れた種族であるという悪魔至上主義を掲げている上層部、魔王の悩みなど、これっぽっちも気にしていない。
「禁忌についてか?う~ん、禁忌な者は、どの勢力でも粛正対象だぞ。もし知り合いにいるのであれば、隠し通しなさい」
と、大公様からアドバイスを頂いた。
「粛正って、殺す対象って事だよね、お姉様…」
頷く私。
「上層部が知れば、粛正しろと言い出すからね。注意してあげて」
大公様のアドバイスを受けて、調べるのを止める私達。しかし、事態は…
------
魔王の間に、上層部の者達が陳情に来た。
「禁忌な悪魔がいるそうです。ルールにしたがって粛正をお願いします」
っと…あっ、私達の軽はずみな行動が…
「どこからの情報かな?」
アジュカちゃんが応対をした。
「セラフォルー様が禁忌な悪魔について、連日お調べをしていたようです。そうでうよね、セラフォルー様。で、我々も気になって調査をした結果、天使の翼を持つ純血の悪魔がいるそうじゃないですか。セラフォルー様の妹君のソーナ・シトリーが告発をしてくれました」
上層部の代表が、ソーたんのサイン入り告発書を見せた。その結果、私は他の3名の魔王に、睨まれた。あっちゃ~
「ルールって、何のルールだ?」
サーゼクスちゃんが聞き返した。
「我々、上層部で決めたルールですよ。魔王様と言えども、従ってもらいますよ」
「認められない。そんなルールを決めたとは聞いていないぞ」
ファルビーが食い下がる。
「これは政治的な問題です。魔王様が首を突っ込む問題ではないです。魔王様の仕事、ジャマ者は速やかに消すことをしてください。その為の魔王という職務なんですから」
そこまで、言うと上層部の陳情団が帰って行った。
「おい、セラフォルー。どういうことだ?」
アジュカちゃんの声が怖い。
「何をしているんだ、お前ら姉妹は…」
サーゼクスちゃんの声も怖い…
「レーティングゲームに負けた腹いせか?お前の妹は…告発ってどういうことだ」
ファルビーが珍しくキレている。
「いや、知らない…濡れ衣だよ~」
アジュカちゃんが、魔法陣を発現させて、何かを操作して、発動させるとソーたんが強制転移してきた。
「ソーナ・シトリーに問う。告発ってどういうことだ?」
アジュカちゃんはソーたんに怒りをぶつけていた。ソーたんは、私の方を泣きそうな顔で見る。
「知らない…知らないんです…サインしろって、命令されて、サインしただけです」
ソーたんは、泣きくずれた。
「嵌められたな…たぶん、リリンが裏で暗躍しているのだろう」
ファルビーが推察を口にした。
「なんて、軽はずみな行動をしてくれたんだ?おい、セラフォルーよ」
サーゼクスちゃんの怒りは凄まじい感じだ。
「彼は、グレモリー家に養子として入った、俺の義理の弟なんだぞ。それを…」
「それにしても、あのルールは何だ?いつ決めたのやら」
アジュカちゃんが、何かを調べ始めた。
「はぁ?決めたのは、今さっきじゃねぇか…アイツら…」
冥界のルールブックを、調べていたようだった。
「それって、告発書にサインした後か?」
ファルビーの問いに、頷くアジュカちゃん。
「告発に基づいて制定したようだ…くそっ!上層部は腐っているな…」
政治に介入できない魔王…防衛、粛正、戦争時以外は名誉職に近い。
「どうするんだ?」
サーゼクスちゃんが、アジュカちゃん、ファルビーにきいた。
「どうにもならん…う~」
「最悪、この星は消えるのか…」
あぁ、消えるよね。仲間を殺されたら、その報復は…考えたくもない。
「とにかく、回避をする方法を考えないと、シトリー姉妹の処遇はその後に決めるから、お前ら、謹慎していろ!」
魔王領にある牢に入れられた、私とソーたん…
---アジュカ---
どうする…聞いていた最悪なシナリオに近い展開になってきた。上層部による粛正…イッセー君を含めたあの戦力全員が殺されるシナリオ…悪魔はなんと愚かな生き物なのだろうか。
『大公アガレスを味方にしろ』
っと、シュウ様から念話が届いた。
「なぁ、アガレス殿を味方にできないだろうか?」
俺は彼のアドバイスを口にした。
「アガレス殿か…アジュカは、どこまで真実を伝えられるんだ?」
ファルビウムに聞かれた。
「どこまでだろうか…でも、信じて貰える程度、情報は出さないといけないだろうな」
「お前は、消されるのか?」
ファルビウムが俺の身を案じてくれた。
「まぁ、最悪、この世界から消えるだろうな…口外は契約違反だし。でも、俺の消滅だけで済めば、御の字だろ?なぁ、ファルビウム」
「そうなる…なぁ、すまん…アジュカ…」
俺はクリス君に問題が起きたことを知らせた。もちろん問題の内容もだ。そして、シュウ様からのアドバイスを伝え、指示を待った。
『最悪なシナリオから、リアスを排除できても、上層部は難しいんですね。シュウさんが、そうおっしゃるのであれば、アガレス殿をお連れください。後、シトリー姉妹は、こちらの監視下に置きますので、連行をしてください』
と、返事が来た。アガレス殿のこと、シトリー姉妹の事を、ファルビウム、サーゼクスに伝えた。
「指示に従ってくれ。冥界は、俺とサーゼクスで抑える。アイツら、死を覚悟して、この世界を救いに来たのか?」
理解の早いファルビウム。真実にだいぶ近づいてきたようだ。
「あぁ。俺達魔王も死を覚悟して、この局面を乗り切らないとな」
ファルビウムにそう告げ、俺は、シトリー姉妹とアガレス殿と一緒に、色々な場所を経由して、彼らのベースキャンプへと転移した。追っ手を撒くためである。
---クリス---
思っているより早く、試練が舞い降りてきた。セラフォルーさんが、おバカでなかったことが敗因かな。そうなると、おバカなセラフォルーさんが正解なのかなって思える。
リビングルームで待っていると、アジュカさんが、大公アガレス殿、シトリー姉妹をつれてやってきた。
「「ごめんなさい」」
シトリー姉妹が土下座で謝る。
「謝って解決する問題って少ないんだ。そもそも、謝って済む問題では無いだろ?」
「「…」」
彼女らもわかっているようだから、これくらいにしよう。文句を言っても解決できないし。
「君が、禁忌なる悪魔なのか?」
アガレス殿にきかれた。
「そうです。別世界から来ましたリゼヴィム・ルシファーとヴェネラナ・バアルの間に産まれたクリス・グレモリーです」
僕は天使の翼を展開して、すぐに閉じた。翼を展開すると、聖なるオーラが拡散してしまうので、聖なるオーラに対する抵抗力のない悪魔の前では、直ぐに閉じる事にしている。
「別世界から、何をしに来たのだ?」
僕は、元々起きるはずだったシナリオを話した。
「最悪のシナリオからリアス君を切り離したが、上層部の問題だけが残ったのか…で、これを信じる為の根拠はあるのかい?」
僕は、初代魔王4名、神メイビスを呼び出した。
彼女達を見て固まる、アガレス殿とセラフォルーさん。
「生きてらしたんですか?」
涙を流しながら、ルシファーさん達に縋り付くアガレス殿。
「まさか…イッセー君達が隠していたかった者って…」
セラフォルーさんも泣いている。彼女達の正体を知らないソーナだけが、唖然としていた。
「お姉様…あの方達はどなたですか?」
「ソーたん…初代魔王様達と神メイビス様です」
っと、妹に目の前の者達の正体を知らせるセラフォルー。
「えっ…死んだはずじゃ…なんで…」
「私達は、クリス君達に助けて貰い、ここで暮らしています。死んだ事にしていないと、また狙われるからね♪」
神メイビスが、ソーナの疑問に答えた。
「狙われているんですか?」
「そうなのよ、アガレス。悪神ロキにね」
「ルシファー様…本当ですか?」
「アガレス、私は嘘を言わないわよ。で、私の孫を殺せって?上層部は何を考えているのかしらね」
「孫?」
目が点なアガレス殿。
「クリス君はリリンの子供でしょ?ならば、孫になるでしょ?」
「なりますね…」
「ここには、私を含めて4名のルシファー家の者がいるのよ。家族っていいわね♪」
「そんなに…」
「その家族を殺せって、どの口が言っているのよ」
ルシファーさんがアガレス殿にプレッシャーをかけている。
「お祖母さん、アガレス殿に言ってもダメだって…」
助け船を出したつもりが…
「クリス君、お祖母さんって呼ばないの!名前で呼んでよ♪」
しまった…孫だからって意識してしまった。
「ルシファーさん、ダメ!」
「じゃ、誰に言えば良いの?」
「誰に言ってもダメだろうな。僕が退場すれば良いのかな。ベースキャンプから指示を出すようにするかな」
「ダメよ~、グレモリー夫妻と暮らしなさい」
ルシファーさんから命令された。僕に指揮権があるのだが、家族に言われる分には抵抗は少ない。
「別世界での私はどうなんだい?」
アガレス殿に尋ねられた。
「僕達の師匠の義理の父親です。お孫さんは双子で一男一女です。二人共天使の翼と悪魔の羽を持っているのが難点です」
「そうか…君達の師匠は、ルシファー家かい?バアル家かい?」
「師匠は悪魔ではないです。天使と鬼のハーフ。天界における禁忌な者です」
つい、メイビスさんを睨んでしまう。彼女は僕の視線に怯んでいた。
「天使と鬼のハーフだと…一番の禁忌じゃないか…」
「僕達の仲間には禁忌な者が多いんです。僕なんかまだ幸せな方です」
「後、どのような禁忌な者がいるのか?」
「兵藤一誠…兵藤家と式森家の交配は禁忌でした。その結果、イッセーは人間ではなく、魔人とドラゴンのハーフです」
この発言に、アガレス殿だけでなく、シトリー姉妹も目が点な状態になっていた。
「兵藤家も式森家も人間のはずだが…」
「えぇ。でも産まれる子供は魔人になり、母体が人間の場合、暴発する危険がありました。なので、安全のために誠と一香をドラゴンに転生させて、暴発に備えたんです」
「だから、イッセー君はダークドラゴンに…」
セラフォルーさんが呟いた。
「あと、僕達の部隊の副長。人間と神のハーフです」
「それ自体は禁忌ではないようだが…」
「えぇ、普通はね。でも副長は、エヴァと維持神の間の子供です」
「それって…」
「そうです。救世主の双子の弟。産まれてはいけない、存在してはいけない存在です」
「なんって、勢力なんだ…」
「究極のイレギュラーもいます」
「まだ、いるのか…」
「リリンの作り上げた最強の生物です。リリンのDNAとオーフィスのDNAとグレートレッドのDNAを持つ悪魔とドラゴンのハーフ…別世界のルシファー家の現当主です」
「はぁ…なんていう集団なんだ。たぶん、冥界の上層部が知れば、全員粛正対象になるぞ」
「悪魔至上主義な上層部だと、そうなりますよね。自分達よりもすぐれた種族は認めないはずですから」
「なぁ、アガレス。私の孫達を護ってくれよ。別世界の者とはいえ、今では家族なんだよ」
ルシファーさんがアガレス殿にお願いをした。
「出来る限りのことは協力します。ルシファー様達を、救って頂いた恩に報いたいと思います。しかしながら、状況は厳しいです。あぁ、どうしましょうね」
頭を抱えたアガレス殿。
「最悪、この世界から離脱も考えないとダメかな?」
「それって、任務放棄ですか?」
僕のぼやきに、イッセーが反応した。
「あぁ、そうなるが、冥界と戦うのは避けたい。手加減しても、たぶん悪魔は全員消滅するだろうからな」
メインの攻撃陣である、僕、イッセー、イッセは手加減しても、ダメなレベルである。文官な上層部を相手にしたら、全滅するのは目に見えている。
「そうですね…全滅はダメだろうな。リセットか、また、違う世界で最初からやり直しかな」
それは避けたい。それならば、任務放棄が一番平和的ではある。
「でも、任務放棄をすれば、この世界は最悪な道を進むんですよね?」
心配そうな顔でリアスを見るイッセー。
「そうなんだよ。リアスを優しい魔王に育ててあげたい。そうすれば、最悪な道からは外れるとは思うんだけど」
僕もリアスを心配しながら見る。
「最悪なシナリオでは、魔王ってどうなるんだい?」
アジュカさんから質問が出た。
「確か、上層部の言いなりです。上層部に抵抗していたアジュカさん、ファルビウムさんは失脚して、行方知れず。サーゼクスさん、セラフォルーさんは魔王を引退していて、権力無しです。上層部の改革に力を入れると宣言して魔王になったサイラオーグは、上層部の操り人形になりさがったそうです」
「そうか…徐々に魔王は権限という意味では、弱体化されるんだな」
「腐った上層部を排除しないと、避けられないな。どんな道を行こうと。困ったなぁ…」
「ねぇ、私達はどうなっちゃうの?」
ルシファーさんから質問された。
「目障りな存在として、粛正されます」
「ひどい…」
「悪魔至上主義って、そんなもんですよ。この世界のセラフォルーさんに期待した僕が、バカだった…」
凹む僕。
---セラフォルー---
期待されていたんだ…それなのに、私って…
「私が上訴部を全員、屠る」
私は提案をした。
「それはダメです。代わりがいない状態でそれをやると、冥界は更に無法地帯になります」
クリスに、速攻で却下された。あれ以上に無法地帯って、考えたくもない。
「上層部の権限を弱体化って、できませんか?」
「それは無理だ。権利ばかりを主張する最上級悪魔達が主体なんだ。眷属を使って反乱をされたら、無法地帯がより一層広がる」
アガレス殿がクリスの提案を速攻で却下した。
「徐々に消していくか?」
「たぶん、志が高い者を補充しても、同じにような者になってします。過去にもそういう改革をしたのだが、ダメだったよ」
クリスの提案は、またも却下。どうにもならないのか、冥界は、もう…
「あっ、上層部を全員、人間にするのは?」
イッセー君から奇抜なアイデアが提案された。
「そんなことできるのかい?」
アガレス殿が喰い付いた。
「できます。聖杯持ちがいるので、割と簡単に種族変更は可能です」
聖杯持ち…この集団には無い物はないのか?
「そうだな…原因不明で、人間になったことにすれば、権限はなくなるが」
「人間に転生したことがバレなければ、混乱は少ないかと。徐々に消えていって、新しい良い悪魔を補充していくとか」
「それは、やってみる価値はあるが、やった者がバレた時がこわいな」
空気が突然重くなった。これって、鬼降臨か…
「やってきたぞ、イッセー♪上層部は全員転生人間にしてきた」
「「団長!」」
「今回はキレていないよ。仲間のピンチだ。喜んで睡眠を献上しよう♪」
「君は誰かな?」
アガレス殿が尋ねた。
「僕は、コイツらの責任者です。配下の者達がご迷惑をおかけして、申し訳ありません」
鬼はアガレス殿に頭を下げた。
「君が聖杯持ちなのか?」
「僕だけが持っている訳でないです。3名は持っているんじゃないか?ただ、やった犯人がどうのこうの言う問題であれば、僕がやるのが適任だと思います。僕にペナを掛けられるのは、僕の上司一人だけだし。今回はその上司の許可も貰ったので、ペナ無しですしね」
「君は何者なんだ?」
「単なるエロ好きな子供です。じゃあな、クリス。撤退は許さないからな!肝に銘じておけよ」
鬼はそういうと去っていった。
「今のは誰だい?」
「天使と鬼のハーフ。セラフォルーさんを破壊した張本人です」
「彼が…」
正体を知って、青ざめるアガレス殿。
「ねぇ、クリス。私もアジュカちゃんと一緒に彼の元で生きたい。交渉してくれるかな?」
突然の私のお願いに驚くクリス。いや、私以外全員が驚いている。
「お前、破壊されたのに…ドエムなのか?」
アジュカちゃんが、笑いながら言う。
「うん♪彼には責任を取ってもらうの♪」
耳と顔が熱くなる私。